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吉沢亮「自分の芝居なのに、ちょっとウルッときました(笑)」。「青天を衝け」ラスト2回、家康とも“対面”2021/12/18

吉沢亮「自分の芝居なのに、ちょっとウルッときました(笑)」。「青天を衝け」ラスト2回、家康とも“対面”

 カウントダウンが始まっている大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)。12月19日放送の第40回は栄一(吉沢亮)が日米関係を改善するために民間外交にいそしみます。栄一を演じる吉沢亮さんと演出を手掛けた黒崎博さんに、第40回の見どころを伺いました!

――吉沢さんは演じられる中で、黒崎さんは制作に携わる中で、本作の栄一に対する思いに変化はありましたか?

吉沢 「撮影前は、調べれば調べるほど偉大な功績を残していることばかりが出てきて、とんでもないスーパーヒーローを演じるんだなっていう印象がありました。でもいざ台本をいただいて、現場で演じていくうちに、物語としての栄一には、抜けている部分や失敗するところがとても魅力的で、人間くさい男だなという印象に変わりました。そして、作品の主人公は栄一ですが、彼が91歳まで生きていく中で、時代ごとに瞬間、瞬間の主人公がいっぱいいるんです。栄一はそういう人々が成し遂げてきたことや失敗した瞬間、そして時代の変化を見てきた人。いろんな人からバトンを渡されて、最後まで生きて、つないでいった人なんだなと。演じていて人に愛された人だと思いましたし、僕もすごく好きでした」

黒崎 「吉沢さんが今言ってくれた“失敗だらけの人”という部分は、大事に作ろうと思っていたところです。ただの成功者じゃなくて失敗だらけの人だったからこそ、この物語の主人公になり得たと思います。吉沢さんがそれをストレートに演じてくれたから、愛すべき栄一になりました。いつの間にか、史実上の渋沢栄一さんと吉沢さんが演じた栄一が、自分の中でないまぜになって、どっちが本当なのか分からなくなって。でもそんなことはどうでもよくなるくらい、チャーミングな人物になったと思っています。そんな部分を視聴者の皆さんが愛してくださったのならば、とてもうれしいです」

――第40回では、70代になった栄一が妻・兼子(大島優子)と一緒にミリオンダラートレイン(100万ドル列車)でアメリカを旅する話が描かれますが、そのシーンの撮影エピソードを教えてください。

吉沢 「旅のシーンはほぼ列車でしたね(笑)。列車が走っているように見せるため、スタッフの皆さんが全力で揺らしていたんです。窓の外は全部グリーンバックなので、想像して演技をしていたのですが、その感じが楽しかった。みんなで『この列車が止まるタイミングは動きを止めた方がいいよね』などと、演技の話も相談しながら作ったことも楽しかったです」

――完成した映像をご覧になっていかがでしたか?

吉沢 「列車の外はアメリカの広大な土地が広がっていて、奇麗な映像だなと思いました。その後、栄一がアメリカで演説をするシーンは、どこに感情を向けるべきかなど考えながらお芝居をしていたし、英語の通訳と栄一のセリフが同時進行で進んでいく部分があったりして、映像化するのが難しいのかなと思ってたんですが、とてもいい感じに仕上げてくださって、自分の芝居なのに、ちょっとウルッときました(笑)」

――どんなシーンになっているのか楽しみです。そして、ミリオンダラートレインのシーンはパリ編で使われたCGの手法を使われているそうなので、黒崎さんには苦労された点や工夫したことをお伺いしたいです。

黒崎 「苦労したのはなかなか揺れなかった列車です(笑)。20人ほどのスタッフが、セットを囲んで揺らしてくれたんです。今は笑い話だけど、本当に現場でみんなスタッフが頑張ってくれました。すごく狭い列車のセットで長時間の撮影だったから、役者の皆さんもスタッフも大変だったんですが、結束感が生まれた不思議な作業でもあったなと。栄一と兼子のこれまでには出てなかった夫婦関係も見えましたし。終盤のこの期に及んで、合成が大変なグリーンバックの撮影で、スタッフには本当に迷惑を掛けましたが、『青天チーム』の一体感が生まれた瞬間を感じて、それが良かったです。演説のシーンは、吉沢さんの芝居の熱量に驚きました。こんなに強いシーンになるんだと、想像をぐっと超えて演じてくださったので、アメリカ編をやって良かったです」

吉沢亮「自分の芝居なのに、ちょっとウルッときました(笑)」。「青天を衝け」ラスト2回、家康とも“対面”

――同じ第40回では、喜作(高良健吾)と栄一が肩を組み合っているシーンもあるそうですが、これまでの喜作とのシーンで印象深い場面を教えてください。

吉沢 「喜作との印象深いシーンはもうたくさんありすぎて。第14回(5月16日放送)の一橋家に仕官して、2人で布団にくるまりながら酒を飲んでいるところや、第19回(6月20日放送)の2人が異なる道に進んでいくところも印象的でしたけど、やはり第40回のシーンはとてもいいシーンでした。音楽も一番盛り上がる曲を使っていて良かった。2人のどっちが兄貴分で弟分なのか分からない凸凹な感じが最後まで続いて、喜作がもっともらしいことを言って、兄貴感を出して勝ち逃げしていく感じも、喜作と栄一らしくて好きなシーンです」

――吉沢さんが好きという第40回での栄一と喜作のシーンは、どんな演出になっているのでしょうか?

黒崎 「栄一と喜作には物語上、光と影のようなところがあるんです。栄一が歴史的な光の部分を歩いて、喜作が影の部分、少し陰ったところを歩いたのかもしれないけど、2人の中では交互に光と影が入れ替わっていたんじゃないかと。若い頃は栄一が正論を言うことが多かったですが、年を取ったら栄一が間違っていて、喜作が正してくれる面もたくさんあったし、2人で1人のような不思議な関係を吉沢さんと高良さんが演じてくれました。肩を組み合っていたシーンは、短い時間の中でのロケで、日没まであと1分30秒くらいのギリギリの奇麗な光を狙って撮りました。お芝居について僕から何か言うことはなかったのですが、2人が築いてくれた関係を醸し出してくれました。ドキュメンタリー的にハンディーカメラで追いかけていく撮り方だったんですが、光に包まれている瞬間を目の当たりにして、この2人をずっと見続けることができて良かったなとしみじみしました」

――第40回には徳川家康(北大路欣也)も出てくるそうですね。

黒崎 「これは言っちゃいますけど、最終回まできちんと家康に見届けてもらおうと思っています。最初は歴史の語り部として登場してもらった家康ですが、あっという間に客観で見ている語り部ではなくて、一緒に物語を見ている家康になったなと。そして、『青天を衝け』の家康は栄一のことが好きなんだろうなと。イノベーター・栄一を家康の立場で応援してるのがにじみ出ていて、時には息子のように孫のように見ている瞬間もあったかもしれない。それは人としてのまなざしを出してくださった北大路さんの力だと思います。だから、われわれとしても物語を最後まで伴走してほしいと。家康の最後の撮影の時に、吉沢さんが現場にいらして。お二人が感無量な顔をしていて、肉親に再会したような様子が繰り広げられたんですが、時空を超えた不思議な時間でした」

――最後に第40回の見どころをお願いします!

黒崎 「放送あと2回ということで、渋沢栄一の物語を奇麗に閉じていくにはどうしたらいいのかと悩んだ時期もありましたが、無理でした(笑)。最後の最後まで、栄一は文字通り駆け抜けるように生きた人で、次から次に物事を成し遂げていくので、収束しきらない物語になったなと思っています。第40回でも、この後に及んでアメリカに行く展開になっていますが、それは栄一が悪いのであって、われわれが悪いのじゃないということで…(笑)。最後までエネルギーあふれる物語になっています。吉沢さんが全身全霊で91歳の最後の瞬間まで演じきっているので、そのパワーが伝わると信じております」

吉沢 「何歳になっても衰えない栄一が、終わりに向けて人生のまとめに入るのではなく、最後までやりたいことをやって失敗もします。栄一が年を重ねてもどんどん挑戦していく姿が、この作品の肝です。最後までやりきったので、そこを見てほしいです」

――ありがとうございました!

吉沢亮「自分の芝居なのに、ちょっとウルッときました(笑)」。「青天を衝け」ラスト2回、家康とも“対面”

【番組情報】

大河ドラマ「青天を衝け」
NHK総合 
日曜 午後8:00~8:45ほか ※12月19・26日は午後8:00~9:00
NHK BSプレミアム・NHK BS4K 
日曜 午後6:00~6:45 ※12月19・26日は午後6:00~7:00

NHK担当 K・H



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