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吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー2021/12/16

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

 TBS系で放送中の金曜ドラマ「最愛」。本作は、殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央(吉高由里子)と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリーです。

 2006年、梨央が青春時代を過ごしていたのどかな田舎町で失踪事件が発生。15年後、時代をけん引する実業家となった梨央の前に事件の関係者が現れたことにより、当時の記憶とともに封印したはずの事件が再び動きだします。「アンナチュラル」「MIU404」(同系)のプロデューサー・新井順子さんと演出・塚原あゆ子さん、そして「夜行観覧車」「リバース」(同系)で2人と組んだ奥寺佐渡子さんと清水友佳子さんの脚本による完全オリジナルの物語です。

 本作では多くのキャストの皆さんにお話をお伺いしてきましたが、最後は主演の吉高由里子さんを直撃。最終回の見どころをはじめ、これまでの撮影のエピソードや本作に込めた思いを快くたくさん語っていただきました!

これまでの撮影を振り返って…

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

――いよいよ残すところは最終回のみとなりました。今の率直なお気持ちをお聞かせください。

「すごく密度の濃い作品だったので終わってしまう寂しさが大きいですし、その分、この作品に自分がのめり込むことができたのだと実感できています」

――これまでの撮影を振り返って思い起こすことはありますか? 

「白川郷での撮影がもう何年も前のことのように感じています。皆さんと一緒にいた時間が濃すぎて、とても3カ月前だったとは思えなくて…。その分、自分も年を重ねている感覚があります。みんなが愛情を育みながら作っている作品だったのですごく充実していましたし、皆さんのおかげで梨央という人間が本当にそこにいたのではないかと思ってもらえる作品になったんじゃないかなと感じています」

――本作で多くの方と共演されていますが、まずは松下さんとお芝居してきた印象をお聞かせください。

「大輝はあんなに無骨な男なのに、愛嬌(あいきょう)と寂しさの両方を兼ね備えている男性です。刑事として梨央に関わっていく葛藤があったり、仕事の立場が悪くなっても梨央との愛を育もうとしたり、本当に複雑な心情を持った男性を松下さんは素晴らしく演じてくださっていると思います」

――お二人の“禁断の愛”感あふれるシーンにも毎回ひきつけられました!

「ありがとうございます。梨央は決して派手な女性ではなく、社長なのに一般的なマンションに住むような素朴なところを大事にしている人です。“美人&格好いい”カップルではなくて、小さな幸せを見つけるのが上手な素朴なカップルだなと思って演じていました」

――井浦さん演じる加瀬の包容力も素晴らしいですよね。

「そうですね。(井浦)新さんの加瀬という役の愛情や懐の大きさが、話数を重ねるごとにどんどん大きくなっていって、包まれている感覚や安心感がすごくありました。以前から新さんとは面識があったので、またご一緒できる安心感はあったのですが、それとはまた違った感覚で。梨央を包み込む愛情がどんどん大きくなっていったキャラクターだったなと思います。梨央としてはその愛情に甘えたり苦しんだりすることがあったり、ハッとした部分もありました」

――高橋文哉さん演じる優との姉弟のシーンからも目が離せませんでした。高橋さんと共演されてみてどんな印象でしたか?

「文哉くんは、本当に20歳なの?って思うくらい落ち着いている一面もあれば、びっくりするくらいピュアで素直な一面もあるので、母性本能をくすぐられる感覚がありました。本当はしっかりしている部分もあるのかもしれないけど、甘え上手さと人懐っこさがあって、今まで経験したことのないお姉ちゃんの気持ちにさせてもらえたのも、文哉くんの力だなと思います」

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー
吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

私から言わせてもらえば、『ミッチーあなたもね!?』って感じです(笑)

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

――今までのキャストインタビューでは、必ず「吉高さんが現場を太陽のように照らしてくれている」というエピソードが出ていたのですが…。

「本当ですか? こうやって答えてくださいって書いてあるプリントがあるんじゃないの?(笑)」

――そんなものありませんよ!(笑)。ご自身で現場を盛り上げようと意識されていたのでしょうか?

「現場を盛り上げようと思って行動しているわけではないですが、自分が一番楽しんでやるぞという思いは常に持っています。どの作品も楽しんだ分だけ自分の中に深く刻まれるものになると思いますし、本作はキャストの皆さんが本当にいい人たちばかりなのも大きかったです」

――なるほど。サスペンスの現場だから暗くならないように、と思っていたわけではなく、素で楽しんでいらっしゃったんですね!

「そうですね。もともと悲しいシーンで悲しさに浸るタイプではないし、そういう役作りをしてこなかったからかも。本番とカットがかかった後は切り替えようと自分では思っています。現場のスタッフさん同士も仲良くて和気あいあいとされていました」

――そういえば、本番とカットがかかった瞬間の吉高さんのギャップがすごいというエピソードを、新井プロデューサーや及川光博さんから伺ったのですが…。

「私のお芝居は瞬発力タイプなのか、カットがかかったらそのスイッチを外せるという意識があるんです。自分で決めたルールというわけではないのですが、無意識にそういうルーティンになっているのかもしれません。でも、私から言わせてもらえば、『ミッチーあなたもね!?』という感じです。無表情で立ちはだかっていたり、けがをしてムッとした顔をしていたのに、カットがかかると急にスイッチが入ってキラキラポーズを決め始めたりするんですよ(笑)」

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

「みんなが新井Pと塚原監督とドラマを作りたくなる理由が分かった気がしています」

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

――ドラマはサスペンスラブストーリーということで、ラブの面でもさまざまな名シーンが生まれました。その中でも吉高さんが思わずキュンとしたシーンはどこでしょうか?

「個人的には第1話の最後と、第2話の最後がヒリヒリしました。よくそんな顔で『初めまして』言えるなって。演じながら、私感じ悪いなって思っていました。第2話も『どこから話す?』なんてあんな挑発的に言って(笑)。ラブではないかもしれませんが、第5話も強く印象に残っています。優が連行されて、それを追いかける私を大ちゃん(大輝)が止めて。その前には大ちゃんが自分の後輩である桑田仁美(佐久間由衣)に頭を下げて、その場をつないでくれるという3人の関係性が出る家族の話だったので、また違う形の“最愛”を見ることができたシーンでした。王道のラブシーンだとどこだろう…みんなは歩道橋からの追いかけっこが好きなんじゃない?(と、ニヤリ)」

――そうですね! 第6話はかなり視聴者からの反応も大きかったかと!

「こういうのが好きなんでしょ?って思いながら撮影してました(と、楽しそうに撮影を振り返る吉高さん)」

――(笑)。サスペンスからラブまで幅広いシーンを撮影されたかと思いますが、女優としての成長や気づきはありましたか?

「発表直後から新井P&塚原監督がタッグを組む作品ということで話題でしたし、2人のファンが多すぎて作品の世界観を壊さないようにしないと、とおびえていました。視聴者の皆さんからの期待値も大きかったので、自分へのハードルやプレッシャーもすごく上がっていましたが、撮影が進むにつれて皆さんがそのプレッシャーをはねのけてでも、この2人とドラマを作りたくなる理由が分かった気がしています」

――その理由を一つ挙げるとしたらどんなところでしょうか?

「お芝居の技術だけではなく、ちゃんと心の動きを考えて演出を作ってくださっているところです。毎シーンちゃんと心を打たれるような言葉で説明してくださったのがすごく印象的でした」

――実際にはどのようなアドバイスをもらいましたか?

「登場人物それぞれの愛が同時に並行して動いている作品なので、同じシーンにいてもみんなの愛の矢印の方向が違うことがあるんです。だからこそ普通のセリフの裏にこういう感情があるんじゃないかとか、この関係性だったら悲しいから泣くのではなく、悲しいから笑った方が視聴者に感情が伝わるよね、などとお話ししてくださいました。ただ自分で自分の表情を見るのが怖くてモニターチェックをしなかったので、オンエアを見て、こういう顔をしてたんだ! と驚くシーンもいくつかありました。最初は新井Pや塚原監督から『ヘラヘラ封印だよ! 笑顔も禁止だからね!』って言われていたので、もっとキレキレで冷淡な女社長を演じるのかと思っていたのですが、ちゃんと人間らしく感情が動く社長だったので、そういう心のお話ができてホッとした部分もあります」

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

――幅広くいろいろな表情を見せてくださる吉高さんですが、ご自身で得意だなと思っている表情はありますか?

「なんだろう…おいしいものを食べてる時の顔は一番素直な顔だと思いますよ! 撮影ではあのおいしそうなもんじゃがいつも食べられなくて…。この現場が終わったらマネジャーさんたちともんじゃを食べに行こうという話になっています!」

――そんなおあずけを食らっていたとは…。逆に苦手なシーンはありますか?

「大人数いて自分だけしゃべるシーンですね…。自分でも『おい主演!』って思うんですけど、あんまこっち見ないでくれって思いながら頑張っています(笑)」

視聴者の共感を得る生々しさ

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

――SNSでは考察や感想が投稿されて毎週盛り上がっていますが、吉高さんにもそういった反響は届いていますか?

「普段連絡が来ない人からも連絡が来て、『先が気になる』とか『来週で終わらないで』と言っていただけています。そんなにドラマ見る人だっけ?と思うような人からも連絡が来るんです。ネットニュースで言えば、週末の夜は上がっている記事の数がすごいですし。エゴサーチは怖いからしないのですが、記事へのコメントならまだ傷つかないかなと思ってチラッと見ることはあります」

――そのコメント欄を見ていると満足度の高いものばかりで、本当にすごい作品だなと思っています。それだけ愛される理由はどこにあると思われますか?

「(少し考えて)誰しも心に抱えている何かが、登場人物が抱えているものに当てはまるのかもしれませんね。誰もが自分の中に開けたくない箱を抱えているからこそ、本作の生々しくてリアルな人間たちに共感しやすいのかも。あとは、ちゃんと続きが気になるように作ってくれていましたからね。思わず『この!』って言いたくなるようなエンディングで、次の話につなげていく力があったと思います」

――確かに…。宇多田ヒカルさんの主題歌「君に夢中」も「最愛」とは切り離せない要素ですよね。

「本当に宇多田さんの主題歌の力はすごいです。『君に夢中』は見ている人をドラマに巻き込んでくれる求心力を持っていると思います。毎話、誰と夢中になるんだろうって考えながら撮影していました。私は全話コンプリートしそうな勢いです。あ、マネジャーさんに『そりゃそうです!』って言われちゃった(笑)。優越感に浸らせてもらっています!」

――(笑)。見る人に考える余白が残されているのも印象的です。

「確かにそうですね。『最愛』は、何かをしながらとか、誰かと一緒に見るのではなくて、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」

――では最後に、最終回に向けて見どころと、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

「さて、どんな展開になるでしょう(笑)。最終回は、梨央を守ろうとするみんなの愛が詰まっていると思います。私を守ろうとしてみんなが動いてくれた結果が分かる内容になっています。そんなエピソードになってたの!?って驚いていただけると思いますので、ぜひ心して見てください!」

吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー
吉高由里子「最愛は、1人でちゃんと向き合って見たい作品なんだなと」――「最愛」インタビュー

【プロフィール】

吉高由里子(よしたか ゆりこ)
1988年7月22日生まれ。東京都出身。2006年、映画初出演となる「紀子の食卓」で「第28回ヨコハマ映画祭」最優秀新人賞受賞。08年に映画「蛇にピアス」で主演を務め、「第32回日本アカデミー賞」新人俳優賞と「第51回ブルーリボン賞」新人賞をダブル受賞。14年には連続テレビ小説「花子とアン」(NHK総合ほか)でヒロインの村岡花子を演じた。主な出演ドラマは、「東京タラレバ娘」「正義のセ」(ともに日本テレビ系)、「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)、「知らなくていいコト」(日本テレビ系)、「危険なビーナス」(TBS系)。映画「ユリゴコロ」「検察側の罪人」「きみの瞳が問いかけている」など。

【番組情報】

「最愛」
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54

TBS担当 A・M



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