佐久間由衣「塚原監督がほかのキャストに演出されている言葉も聞き逃さないように」――「最愛」インタビュー2021/11/04
TBS系で放送中の金曜ドラマ「最愛」。本作は、殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央(吉高由里子)と、梨央の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリーです。
2006年、梨央が青春時代を過ごしていたのどかな田舎町で失踪事件が発生。15年後、時代をけん引する実業家となった梨央の前に事件の関係者が現れたことにより、当時の記憶とともに封印したはずの事件が再び動きだします。本作は、「アンナチュラル」「MIU404」(同系)のプロデューサー・新井順子さんと演出・塚原あゆ子さん、そして「夜行観覧車」「リバース」(同系)で2人と組んだ奥寺佐渡子さんと清水友佳子さんの脚本による完全オリジナルの物語。第3話の放送を終えSNSでは早くも考察合戦が盛り上がりを見せています。
今回は、若い女性警察官たちから頼りにされている駒沢署の刑事で、大輝とコンビを組む桑田仁美、通称“桑子”を演じる佐久間由衣さんに、役柄の魅力や本作の見どころについて語っていただきました。
――まずは、出演のオファーがあった時のお気持ちをお聞かせください。
「純粋にとてもうれしかったのと、私自身、塚原監督の作品をたくさん見させていただいていたので、信じられない気持ちの半々でした。私はサスペンス作品を読み解くことにかなり時間が掛かってしまうタイプなので、演じる側として置いていかれないように頑張ってついていかないとなと思っていました」
――桑子の役柄について、新井プロデューサーや塚原監督からの要望はありましたか?
「クランクイン前に髪形などのビジュアル面の相談をさせていただいた際に、塚原監督から『ドラマで“女性刑事と言ったらこう!”っていうある程度のイメージがあると思うんだけど、そういうものに縛られずに自由にやってほしい』と言っていただきました。女性刑事だからといって、向上心むき出しな男前なわけではなく、ナヨナヨしたようなキャラでもない。その間の人たちっていっぱいいるはずだよねという話し合いをさせていただいたので、中性的な存在になればいいなと思いながら演じています」
――夏クールで出演されていた「彼女はキレイだった」(フジテレビ系)の桐山梨沙とはまたガラッと違う役柄ですよね。刑事を演じるにあたって参考にされた俳優さんや、作品はありますか?
「本作では、もし自分が刑事だったらどういうことに興味があって疑問が沸くのかを考えて、なるべく自分に落とし込むようにしてるので、あまりないですね。あとは、松下さんや(山尾敦役の)津田(健次郎)さんとの関係性の中で生まれてくるものがあるので、そこを大切にしています」
――桑子は若い警察官から頼りにされる役柄ですが、ご自身は頼りにされる側ですか?
「どちらかと言えば頼る派かなと思います。よく周りに心配されるので…(笑)。3人きょうだいで下に妹と弟がいるのですが、きょうだいからも両親からも長女なのに心配されて育ってきて、周りの友達もしっかりしている人が多いので、クヨクヨした時にはよく背中を押してもらっています」
松下洸平&津田健次郎とはアドリブでほっこりシーンを演出
――コンビ刑事役の松下さん、上司役の津田さんとは共演シーンが多いと思いますが、お二人の印象はいかがでしたか?
「2人とも、とにかくすてきな俳優さんです! 最初刑事の役柄をいただいた時は、きっと難しい説明ゼリフがたくさんあるんだろうなって構えておびえていたんです(笑)。でも、ふたを開けてみたらその役割を全部津田さんが担ってくださっていて…。しびれる声で難しいセリフを言っていて、格好いいなと思いながら一緒にお芝居させていただいています。一方で、普段はとてもチャーミングな一面もあって、台本に書かれていないことや、思ってもなかったことを突然演じられることがあるんです。松下さんは本作で一番ご一緒しているので、作品や役柄についての相談にたくさん乗っていただいています。『このセリフってこういう意味ですかね? どうやったら思いが伝わりやすいでしょうか?』って聞いたりして、とても頼りにさせていただいています」
――お二人とも会う前の印象から変化はありましたか?
「松下さんはテレビで拝見していて、優しくて穏やかで、一緒にいる人たちを緊張させない空気感をお持ちの方なんだろうなと思っていました。実際お会いしてもそれは変わりませんでしたが、現場を盛り上げて笑わせてくれるような面白い一面もあり、新しい発見でした。津田さんはびっくりするくらい物腰が柔らかい方です。それが演じていらっしゃる時とのギャップになっていてとてもチャーミングで、見ていて癒やされるような感覚になります」
――津田さんとは第1話の撮影から桑田の名前を忘れるというアドリブを受けたとお伺いしました。打ち合わせなしの掛け合いだったとのことですが、その時のエピソードをお聞かせください。
「あの時は津田さんの『桑…』っていう思い出せないお芝居がすてきで、自然に『田です』って出ちゃいました! 桑田が桑子と呼ばれるようになる流れを津田さんが膨らませてくださったこともとてもうれしかったです」
――2人のやりとりを確立したシーンでしたよね! 山尾と桑子の掛け合いは、シリアスな物語の中でも気が緩まる貴重なシーンです。
「本作をほっこりさせられるのは山尾と桑田だけだよねというお話を聞きました。私も何かいい演出アイデアはないか常に探すようにしています。後半になるにつれて作品はきっとシリアスになっていくけれど、桑子は桑子なりに、自由度を失わずに事件に関わっていくようにしたいなと思っています」
――そうなんですね! 佐久間さんがこれまでに出されたアイデアはどのようなものでしょうか?
「第1話の登場シーンでハンドクリームを松下さんの手に塗ったのですが、あれ実は台本になかったんです。本作では塚原さんがリップクリームとか、日焼け止めとか、虫除けスプレーだったりの小道具を桑子用にたくさん用意してくださっているのですが、第1話の撮影用の台本に“桑子、ハンドクリーム”とだけメモの記載があったんです。それでいろいろ使い方を考えた結果、あのアドリブが出てきました」
――あのシーン! 本当にナチュラルなしぐさでしたし、思わずこういう女子いるよなと思ってしまいました(笑)。
「いますよね〜(笑)」
――打ち合わせなしでハンドクリームをつけるのは勇気が必要だったと思います。松下さんの反応はどうでした?
「少し勇気がいりましたがやってみました! 松下さんはとても優しく反応してくださって、『なにこれ?』って。『ハンドクリームです』って返したら、『ベタベタすんなぁ』って(笑)。ナチュラルな反応をしていただいて、役として本当にありがたかったです!」
――先日、佐久間さんのInstagramに、松下さんが撮影されたオフショットが掲載されていました。仲が良さそうな雰囲気が伝わってきましたが、コンビを演じる上で現場ではどんなお話をされていますか?
「あの写真は大きなシーンの撮影が終わった後、帰る支度をする前にスタッフに『2人で撮り合いしてみたら?』って勧められて撮影しました。なので、いつか私が撮った松下さんも掲載されるのかな…? と思っています。撮影の合間は、好きな食べ物の話だったり、訪れたことのある美術館についてやアートのお話をすることが多いです。どうしたら良いコンビ感が出るかなっていうことも話しながら、現場では楽しくお話させていただいています!」
「かのきれ」で同世代から受けた刺激「私ももっと頑張りたい」
――明日放送の第4話では吉高さんとの共演シーンもあるかと思います。撮影をご一緒された時の印象はいかがでしたか?
「吉高さんは太陽みたいな人です。いつも大きな声で笑っていて、現場を明るく照らしてくれる存在なのですが、梨央さんになった時の豹変(ひょうへん)ぶりがすごくて鳥肌が立ってしまいます。お芝居中なのに見入ってしまうような瞬間が何度もあって、その切り替えが本当にすごいなと思いました」
――吉高さんの切り替えがえげつないという話は新井Pのインタビューでも話題になりました! 撮影現場で吉高さんとお話する機会はありますか?
「作品の内容はシリアスですが、現場自体は和やかなので吉高さんともいろいろなお話をさせていただいています。私はカレーが大好きなのですが、おすすめのカレー屋さんを吉高さんに教えていただいて食べに行ったので、その報告をちょうど昨日させていただきました(笑)」
――とても和やかそうな現場ですね! 同世代に囲まれた「彼女はキレイだった」(以下、かのきれ)の現場との違いも教えていただきたいです。
「撮影現場は全体的に和やかなのですが、皆さんがそれぞれのアイデアをディスカッションされている時間がすごく多くて、置いていかれないようにするのに必死です…(笑)。皆さんが話し合っていることや、塚原監督が違うキャストさんに演出されている言葉も聞き逃さないように常に耳を大きくしています。でもそれは私だけじゃなくて、役者さんみんながそういう姿勢で臨んでいるんですよね。『かのきれ』は同世代だからこそ刺激し合って、みんなで楽しく切磋琢磨して頑張っていこうという雰囲気に近かったのですが、本作ではより集中力を途切れさせないように、先輩方に必死についていっていろいろ学びたいという気持ちで現場にいます」
――和やかさの中にも皆さんの研ぎ澄まされた集中力が垣間見えます…! 「かのきれ」から学んで生かせていることはありますか?
「『かのきれ』は同世代キャストの皆さんのプロ意識の高さとか、見ている人に届けたいという思いの強さを目の当たりにして、私も頑張りたいと思わせてくれたきっかけの作品でした。その思いを途切れさせずにこの現場に挑めていることが大きな学びだと思っています。メインキャストの中島健人さん、小芝風花さん、赤楚衛二さん、3人も本作を見てくれていて、その都度、感想を送ってくれるんです。みんなのおかげでもっと頑張ろうという気持ちになれています!」
オリジナルストーリーの醍醐味「桑子がいい意味で変化していってくれたらうれしいな」
――お話を伺っていると、オリジナル脚本ならではの演出の出し合いが作品に生きている感じがします! 自分の役柄の先が見えないところで演じる魅力もあるかなと思うのですが、いかがでしょうか?
「毎回台本をいただく時はちょっと怖くて、ドキドキしながら読んでいます。ゴールが見えないからこそ、あまり頭で決めつけすぎずにその瞬間を生きていけるというのがすごく楽しいです。役柄に正解がないからこそいろいろ挑戦できるのですが、その分しっかりとした軸を持っていないとキャラクターがブレてしまうかなって考えることも多いです。でも今は難しさよりも、楽しさを強く感じています!」
――新井Pと塚原監督の中では作品の大まかな流れは決まっていると思いますが、回を重ねるごとにどんどん役柄の存在が大きくなってきて、設定が変わる…なんてこともあるかもしれませんよね。
「そうですね。俳優陣だけじゃなくて、周りのスタッフの皆さんがオンエアとともに視聴者の意見を踏まえて変わっていくことができるという状況は貴重ですし、私も桑子がいい意味で思っていたよりも変化していってくれたらうれしいなというモチベーションを持ちながら演じています」
――ちなみにここまで本編をご覧になられて、一視聴者としてお気に入りの役柄や展開はありましたか?
「私は加瀬(井浦)さんが、いつも魅力的だなと思って拝見しています! あんなに格好よくてかわいいキャラクターを井浦さんが演じていらっしゃるのがすてきで、視聴者として完全に見入ってしまっています(笑)」
――私も今は加瀬派なのでお気持ちとても分かります!(笑)。では、最後に視聴者に向けてのメッセージをお願いします!
「私も桑子がこれからどうなっていくのか全く分からないまま、楽しみながら撮影しています。見てくださっている皆さんも考察を楽しんでくださっていると聞いています。これからもっといろいろな事件が起きていくので、より楽しみにしていただきたいです。桑子もどんどん事件に絡んでいったり、トライアングルの三角関係にちょっとグイって足を踏み入れたりする瞬間もあるので、そういった部分も注目して見ていただけたらうれしいです!」
【プロフィール】
佐久間由衣(さくま ゆい)
2014年に映画「人狼ゲーム ビーストサイド」で女優デビュー。主な出演作品は、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK総合)、「チア☆ダン」(TBS系)、「ニッポンノワール-刑事Yの反乱-」(日本テレビ系)、「彼女はキレイだった」(フジテレビ系)など。主演映画「君は永遠にそいつらより若い」が上映中。ファースト写真集「佐久間由衣写真集 SONNET 奥山由之撮影」が発売中。
【番組情報】
「最愛」
TBS系
金曜 午後10:00〜10:54
TBS担当 A・M
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