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「メイクアガール」増田俊樹インタビュー2024/12/25 00:00

「メイクアガール」増田俊樹インタビュー

「『メイクアガール』を見た時は、時代が変わった瞬間を目の当たりにした気がしました」

 SNS総フォロワー数が600万を超える人気アニメーション作家の安田現象が原作・脚本・監督、絵コンテ・演出、CG監督を務めた劇場アニメ「メイクアガール」が、2025年1月31日に全国公開。主人公の水溜明(堀江瞬)が、人造人間の彼女・0号(種﨑敦美)を作ったことで巻き起こる物語を描いた作品だ。その中で、増田俊樹は、明のクラスメイトで、明が0号を作るきっかけとなる人物・大林邦人を演じている。一見ラブコメのように見えて、終盤にはドキッとする展開に戦慄が走る。増田はこの作品の世界観をどう捉えたのか。

――安田現象さんの作品をご覧になったことはありましたか?

「はい。SNSなどで公開されているものを拝見したことがあります。3DCGアニメーションと言うと、例えば『トイ・ストーリー』などのような海外作品が有名ですが、安田さんの作品はそれらとは異なる、日本で独自に生まれた3DCGアニメーションだと感じました。『メイクアガール』を見た時は、時代が変わった瞬間を目の当たりにした気がしました」

――主人公の水溜明が人造人間の彼女・0号を作るわけですが、0号の明に対する感情は単にプログラムされたものなのか、それとも自ら芽生えたものなのか、悩ましいですよね。

「そうですね。シンギュラリティ(AIが人類の知能を超える時点)という部分では、映画『ターミネーター』とは違ったシンギュラリティの捉え方に挑戦している作品だと思いました。今まさにそういう時代が近づいているからこそのリアリティーもこの作品の面白さの一要素だと思います」

――シンギュラリティは実際に起こり得ると思いますか?

「起こると思います。シンギュラリティは、指数関数的に技術が発達していくことから生まれた理論、定説です。具体的には、つい数年前まで数キロバイトしか使えなかった携帯が今ではギガバイトが当たり前だし、USBメモリも2ギガバイトが数百円で手に入るようになりました。それと同じように、AIの能力は、今こうしている間にもどんどん伸びているわけで、そう考えるとその先にはきっと起こると思います。ただ、何を持ってシンギュラリティとするかは主観でしかないですけど、AIに心が芽生えるようなこともあり得るかもしれません」

――では、「メイクアガール」のようにロボットの彼女が作られて、実際に恋をするなんてことも?

「考え方によっては、それはすでに起きていると思います。ただ、この議題って、突き詰めて行くとすごく深みにハマってしまうところがあって(笑)。何をロボットとするのか、何をAIとするのか、デジタルとアナログの違いなど、捉え方はさまざまです。デジタルは1と0で表現するけど、アナログは1と0では表現しない。でも、人間が、1と0で表現されているものを1と0で認識しなくなったとしたら、それはアナログと≒なんじゃないか、とか」

「メイクアガール」増田俊樹インタビュー

――「メイクアガール」の世界みたいに、AIやロボットの技術がどんどん発展していってほしいと思いますか?

「声優業界が声明文を出していますけど、(声優の声が無断で利用されるケースが相次いでいて)今のAI技術によって奪われているものが往々にしてある立場なので、あまり肯定的には言えませんが、ロマンはありますよね。僕としては、フェアな世界を望んでいるわけで、やるべきことをやった人間に、それに見合った対価があると考えています。我々はアナログなものをやっているのに、デジタルから搾取されるのは、ちょっと受け入れがたいかなって思っていますけど、これは単純に法整備の問題でもありますから。ただ、その対抗手段として、我々クリエイターの産物をデジタルに載せないということがあってもいいと思います。そうすれば勝手にラーニングされてしまう問題を回避できますから。僕が朗読劇を精力的にやっていきたいと思ったことのきっかけの一つも、そういうことでした」

――会場で見て、聞くことに、より価値を置くということですね。

「我々がAIとの生存競争に生き残る術は、アクティビティーとしてのアナログというものが一つポイントになるかもしれません。デジタルのイラストもはやりましたけど、ここからは、アナログの絵画、現物として1点しかないものに、もっともっと価値が生まれる時代になっていくと思います」

――もっと単純に考えて、「メイクアガール」に出てくるソルトみたいなお使いロボットと言うか、生活の助けになるものはあっていいですよね。

「いいですよね」

――実際にファミレスで配膳ロボットがいるみたいに?

「ただ、あれって、最終的に自分でお盆を持たなきゃいけないじゃないですか。目の前まで持って来てくれたら完璧ですけどね。あれは、AIの進歩と言うより、人件費削減の意味合いが強いでしょうけど」

――映画の話に戻りまして、増田さんが演じる大林邦人はどんなキャラクターですか?

「邦人に限らず、今回の作品は明と0号を主軸にして、そこに対する周りの人間は、明たちがどう歩んでいくのかを表現するために必要な、素材的な立ち位置なので、邦人自身についてはあまり細かく描かれていません。邦人を含む明の幼なじみチームは、あくまでもファクターとして、明が変化するタイミングで影響を与えていかなければいけないので、自然に変化が促されるように、注意しながら演じたという感じでしょうか」

――明については、どんなふうに感じましたか?

「自分の目的のために周りをないがしろにしてしまう人間で、監督からは“クズ”だと説明されました。ただ、僕は明に共感するところもあったので、相対的に見て僕もクズなんだなって(笑)」

――どういうところに共感をしたのでしょうか?

「明は、目的のために必要なことをしているだけで、それがモラルに反していたとしても、モラルは人類が勝手に作ったものであるという考えなんです。僕は、モラルは守りたいと思いますけど、“今日はモラル、必要なくない?”という日にモラルを求められたら…」

――モラルが必要ない時ってありますか?

「舞台上では、日常のモラルは必要ありません。あるのは、舞台に立つ上でのマナーくらいです。例えば、相手を傷つけるようなセリフを吐くシーンで、相手を思いやる気持ちは必要ないじゃないですか。それと同じように、明は、自分がやるべきだと思っていることに対して愚直なんです。そこに共感するという感じです」

――では、最後に、0号の魅力と、作品のおすすめポイントを教えてください。

「0号の魅力は、存在全てです。おすすめポイントは全部です(笑)。余計な情報を入れずフラットに楽しんでほしいです」

「メイクアガール」増田俊樹インタビュー

【プロフィール】

増田俊樹 (ますだ としき)
1990年3月8日生まれ。広島県出身。B型。2025年1月10日スタートのアニメ「Übel Blatt〜ユーベルブラット〜」(TOKYO MXほか)、1月24日公開の劇場版「美男高校地球防衛部ETERNAL LOVE!」などに出演。

【作品情報】 

「メイクアガール」増田俊樹インタビュー

「メイクアガール」
2025年1月31日公開

海外でも高い評価を得ている安田現象による全編フル3DCGオリジナル長編アニメ。高校生の明(堀江瞬)は、クラスメート・邦人(増田)の助言で人造人間の彼女・0号(種﨑敦美)を作るが、彼女として努力する0号にいら立つ。一方、明の技術を盗もうとする動きもあり…。

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「メイクアガール」増田俊樹インタビュー

取材・文/榑林史章 撮影/コザイリサ ヘアメーク/河口ナオ スタイリング/MASAYA(PLY)



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