Series 連載

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー2024/09/18

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー

「自分にないものを引き出しながら、肉付けしながら演じる。それも楽しい過程です」

 モブとは“その他大勢”や、名もなき登場人物を指す言葉。現代バトルファンタジー「モブから始まる探索英雄譚」は、そんな“モブ”を自称する男子高校生・高木海斗が主人公だ。現代日本に現れたダンジョンに日々潜るものの、ステータスが低く、ひたすらスライムと戦う日々。しかし、そんな彼の人生を激レアアイテムが一変させ、やがて成り上がっていく。主演を務める声優の保住有哉は、自身とはまったく違うタイプだという小心者の海斗をどう演じたのか? 最終回を前に、語ってもらった。

――テレビアニメ『モブから始まる探索英雄譚』は、保住さんにとって、2021年放送の「回復術士のやり直し」に続く主演作です。決まった時のお気持ちは?

「“ようやく…”ですね。やっぱり主演は活動していく上で大きなものですから、うれしいです。『回復術士のやり直し』は海外人気が高い作品だったので、海外のファンの方も新たな主演作を喜んでくださっていて、ありがたいですね」

――主人公の高木海斗はどんな男の子でしょうか。

「いやもう、情けない(笑)! 自分では“モブ”と言っているけれど、『君、変だよ』っていうポイントがたくさんあるんですよ。まず、幼なじみの春香にずっと『ダンジョンに行っていないよ』と小さなうそをついているんですが、それがバレバレ。『なんでそれでごまかせると思ったの!?』と思わずツッコミたくなります。ただ、そのうそは、春香を心配させないためではあるのですが…。春香に好かれているけれど、両思いであることには気付かない。『そんなはずがない』とガチガチに否定してしまうんです。でも、そんなところが彼のかわいさでもある。それに、実直なところもあって、『英雄になる』という夢に向かって進んでいる男の子なんです」

――海斗は、1話では殺虫剤を使ってスライムと戦っていましたね。

「それでかっこつけているのが海斗なんですよね。殺虫剤でスライムが倒せることは、みんな知っているんですよ、たぶん。スライムが倒せたら、そこで手に入れられるアイテムでお小遣い稼ぎもできる。でも、誰もやっていない。それはそういうことだよ、と言いたくなります(笑)。全身タイツみたいな探索用のスーツを『カッコいい!』と着ていたこともありますし、海斗はズレているんですよね。オンエアされたアニメで、動いて声がついているのを見ると、海斗はよりモブ感が出ているなあと思います。だけど、やっぱりやっていることはしっかりと主人公なんです。『自分はモブだ』と卑下していた海斗が、最終回に向けてどう成長していくか。そこを楽しんでいただけるよう、グラデーションをつけて演じたつもりです」

――演じる上で、大変な点はありましたか?

「海斗と僕が、タイプがまったく違うところでしょうか。僕自身は、ヘタレ寄りの性格ではないので…。1話のアフレコのテストで、『自分の思う海斗』を演じたところ、さらに誇張された海斗を求められたんです。そこから、『自分が思っているより、もっと全部が顔に出ちゃう子なんだ、隠せない子なんだ』と考えながら、肉付けしていきました。自分にはないものを引き出し、考えながら演じていく。そんな過程が楽しいところでもあるんですよね。アフレコを重ねる中で、自分の中にあった『海斗像』と現場で求められたものが徐々に合わさって、どんどんまとまっていきました」

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー

――タイプがまったく違うとのことですが、海斗に共感できるところはありましたか?

「う~ん、共感できるところ…。海斗は売ったら10億になると言われる激レアアイテムを手に入れて、それを売らずに使っちゃうからなあ。僕だったら売っちゃうと思う。海斗の選択は、目先のお金よりも、『英雄になる』という夢を優先したからこそ。その結果、彼は強いサーバントのシルフィーを召喚して、人生が変わっていきます。そういうところは、僕が声優を目指していた頃と重なるかもしれません。お金にはなかなかならないし、養成所に通うにもお金がかかるけれど、それでもこの仕事をしたかったから、アルバイトをして頑張っていた。だいぶ前提は違いますけれど、志としては一緒ですよね」

――作品の魅力は?

「モンスターと戦うところはちょっと『異世界もの』に近い雰囲気があるんですけれど、この作品の舞台はあくまで現代社会。そこにダンジョンがある設定です。ダンジョンに潜って戦っている時は緊迫感があるけれど、一方、朝になったら海斗は学校に通って日常を過ごす。バトルと日常がほぼ半々で描かれるからこその、ゆったりとしたリズムがあるんです。毎週、グッと力を入れながら見るというよりは、緩やかに、心を休めながら見られる。そこが魅力の一つだと思います」

――前回の主演作「回復術士のやり直し」で保住さんが演じたケヤルは復讐に燃える男で、自分を“モブ”と思っている海斗とは対照的です。主人公像によって、演じる楽しさや難しさは変わりますか?

「ケヤルのように感情を爆発させて『オラオラ!』と演じるのも楽しいし、今回の作品のように、ゆったりとしたストーリーの中でわちゃわちゃしているのも面白い。ただ、タイプが違えども、彼らに共通しているのは、しっかりとした軸が一つ固まっていること。ケヤルは復讐、海斗だったら『英雄になりたい』。そのベースを崩さずにキャラクターを動かしていく、という点では同じかもしれません。単にキャラクターの中の感情の起伏が違うだけと言いますか。たとえば同じ『怒り』でも、おとなしい人が怒った時と、いつも怒っている人が怒った時では、幅が違いますよね。そういった幅やベクトルのプラス・マイナスが違うだけで、やっていることは一緒なんじゃないかな、と思っています」

――そろそろ物語も終盤です。見どころは?

「この作品のヒロインといえば、海斗の幼なじみの春香なのですが、終盤には、『この子、ヒロインだったっけ!?』という存在になるキャラクターがいます。今までも出てきた子なのですが…。その子の問題がクローズアップされて、海斗は解決のために戦います。海斗にとって、『英雄になりたい』以外の目的が初めてできたんじゃないか…と思える展開です。海斗は物理的に強くなったことでメンタル面が変わって、『モブだ』と卑下することもなくなっていきます。ぜひ注目してほしいですね」

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー

【プロフィール】

YUYA HOZUMI

1993年12月14日生まれ。福島県出身。O型。主な出演作は「回復術士のやり直し」(2021年)など。男性声優レーベルKiramuneでユニット「SparQlew」としても活躍。10月には、Kiramune Presents READING LIVE 2024「幻視探偵 -笹嘉神島の殺人-」の大阪・東京公演に出演。

【作品情報】 

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー

モブから始まる探索英雄譚(終)
9月21日

TOKYO MX
土曜 後10:00~10:30

現代日本に現れたダンジョンで、小遣い稼ぎをする高木海斗(保住)。幼なじみの春香(和氣あず未)に憧れつつ、スライムばかりを狩るさえない海斗の日々は、激レアアイテムからサーバントのシルフィー(花澤香菜)、続いてルシェリア(相良茉優)を召喚したことで一変する。やがて、探索を通して神宮寺愛理(青山吉能)らと知り合った海斗は、ダンジョンのさらなる下層を目指す。

【プレゼント】

「モブから始まる探索英雄譚」保住有哉インタビュー

サイン入り生写真を1名様にプレゼント!
応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:9月18日正午~9月25日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」9月27日号(P98)をご覧ください。

取材・文/仲川僚子 撮影/Marco Perboni ヘア&メーク/氏川千尋 スタイリング/後藤泰治 撮影協力/月島長屋



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.