Series 連載

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー2024/08/28

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー

「今回のハーフアルバムは私の“好き”を重視して、いろんなことが自由に表現できる場所にしたいと思いました」

 声優・アーティストとして活躍する水瀬いのりが、8月21日(水)にオリジナルハーフアルバム「heart bookmark」をリリース。来年12月2日に迎えるアーティスト活動10周年に向け、今という瞬間にブックマークをする意味で、水瀬自身がタイトルを命名。彼女の“好き”と“お気に入り”が満載された作品に仕上がった。また、同作には崎宮ミサキ役で出演したTVアニメ「デッドマウント・デスプレイ」EDテーマ「アイオライト」と同作第2クールOPテーマ「スクラップアート」のほか、自身がベリーブロッサム(乃苺佳寿)役で出演する10月放送スタートのTVアニメ「アクロトリップ」OP主題歌「フラーグム」をリード曲として収録。さらにジャケット写真は五輪に沸いたパリで撮影、初回限定盤にはパリで撮影した別冊40Pフォトブックも封入される。アルバムやパリの思い出など話を聞いた。

――今回はハーフアルバムという形態でリリースされるのですね。

「単純にフルアルバムのハーフサイズということで、楽曲数もフルアルバムより少ないのですが、“ハーフアルバム”という言葉の響きもかわいくて気に入っています」

――異なる個性を放つ楽曲が収録され、ハーフと言いながら充実感がありますね。

「ありがとうございます。ファンクラブイベントでアコースティックライブをやらせていただいた時、アーティストとして挑戦していないことがまだたくさんあるなと気付いて。その上で今回の作品を制作したのですが、“ハーフアルバム”という形態も新たな試みの一つです。今までのアルバムは世界観を統一して、バラバラな曲であっても共通したキーワードがあったりしたのですが、今回は統一感よりも、私の“好き”を重視して、いろんなことが自由に表現できる場所にしたいと思いました。実際に初めてのアプローチをした曲、今までありそうでなかった曲、来年の12月2日に迎えるアーティスト活動10周年がますます楽しみになる楽曲などを収録しています」

――リード曲「フラーグム」も、“好き”が表現された1曲です。10月から放送されるTVアニメ「アクロトリップ」のOP主題歌とのことで。

「魔法少女ものということで、アニメの世界観に合わせて、好きな気持ちや変身するといったところに着目しながら、カノエラナさんに作詞していただきました。タイトルは、私の役がベリーブロッサム(乃苺佳寿)という名前であることと、好きという気持ちが甘酸っぱい苺みたいであることから、ラテン語で苺を意味する『フラーグム』と名付けたとのことです」

――TVアニメ「アクロトリップ」は変化球の魔法少女もので、主人公が魔法少女を好きすぎて、悪の参謀になるんですよね。

「“何で?”って思いますよね(笑)。主人公・伊達地図子はベリーのオタクで、“推し”のいろんな顔がもっと見たい、そのためにはベリーをピンチに落とさなければいけないと思う。一方、悪の組織はベリーオタクの地図子ならベリーの弱点が分かるんじゃないかと考え、需要と供給が合致して、地図子が悪の参謀に抜てきされるという。ギャグあり心温まるシーンありの作品です。地図子はおなじみの(伊藤)美来、敵であるクロマを島﨑信長さんが演じ、信長さんの怪演が光っています!」

――キラキラとしたドラマチックな曲でありながら、ヒーローものっぽいところがあって。

「変身バンクと言うか。私は『美少女戦士セーラームーン』や『ふたりはプリキュア』の世代ですが、変身するときの劇伴やキラキラ、パワーアップした様子を、間奏などの音に取り入れていて。歌が乗っていないところも、魔法や何かの変化を感じさせるサウンドで、聴いていて飽きない1曲です」

――変身と言えば、「スクラップアート」「アイオライト」ですね。

「はい! 歌や楽器を録り直したわけではありませんが、マスタリングで楽器を後ろに、歌が前に出るよう調整し直しています。特に『スクラップアート』は、聴こえ方がまるで違うんじゃないかと思います。シングルのバージョンと聴き比べてもらったら、違いをより楽しんでいただけると思います。そういう細かいこだわりで言うと、曲間の秒数も私が考えていて、『スクラップアート』から『アイオライト』の間は5秒くらいで、『heart bookmark』から『フラーグム』の間は2秒くらいです。曲同士の世界観の違いもあるし、余韻を楽しんでほしいし、特に『スクラップアート』はテンポが速いので、次の曲がすぐ来ちゃうと息切れしちゃうから。実は、1stシングル『夢のつぼみ』のときから、トラックダウンやマスタリングにはほぼ参加して、自分の意見を言わせていただいています。中でも曲間を決めるのは大好きで、本当に1秒や0.5秒の違いで、聴こえ方がすごく変わるんです。自分がドンピシャだと思う秒数が出たときは、めちゃめちゃ気持ち良くて!」

――オタク気質がそういうところにも出るんですね。

「あははは」

――アルバムタイトルと同じ曲名の「heart bookmark」は、作詞が岩里祐穂さん、作曲は「五等分の花嫁」シリーズの楽曲でもおなじみの武田将弥さん、そして編曲は白戸佑輔さん。「heart bookmark」と言う言葉自体は水瀬さんが考案して、作家さんたちに伝えられたとのこと。

「はい。その言葉に込めた意味はプロデューサーさんを通して岩里さんに伝えていたのですが、冒頭の<いつだって We are all right! きみの大好きが きみを作ってくよ>は『heart bookmark』過ぎて驚きました。Bメロの頭の<幸せっていう感情はなんだかまだ少し>は、この音にこの言葉をハメてくるとは想像もしていなかったし」

――そもそも「heart bookmark」という言葉は、どういう意味で?

「アコースティックライブ後、10周年に向けて思いを巡らせ、気持ちや好きな言葉をパズルのようにしていって。10周年まではまだだけど、今という瞬間も私の大事な1ページで、心に栞を挟むという意味で『heart bookmark』と名付けました」

――歌詞の最後に<ハートにbookmark!>と出てきます。

「タイトル回収です!」

――10周年までは1年以上あるので、プレ10周年記念曲みたいな。

「10周年過ぎる曲になっちゃって、実際に10周年を迎えるときは『どうしよう』って(笑)。でも、感謝の気持ちは何度伝えてもいいと思うので、この曲では9周年のありがとうを伝えられたらなって」

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー

――「ほしとね、」ではラップを披露、「グラデーション」は最後の水瀬さんの鼻歌も聴きどころ。そして最後の「燈籠光柱」は、水瀬さんの“WWWシリーズ”の楽曲や「スクラップアート」でもおなじみの栁舘周平さんが作詞・作曲・編曲されています。

「『燈籠光柱』という言葉は、漁船の明かりが光の柱のように空に映る『漁火光柱』という現象からきているそうです。ランタン(燈籠)をたくさん飛ばして光の柱のように見える様子を表していて、私の活動が光の柱となってずっと先まで続いていて、その上を歩いているような意味も含めて栁舘さんが付けてくださいました」

――中国っぽい雰囲気で始まり、サビはサンバカーニバルなどが出てきて、世界の民族のお祭りみたいな。

「そうそう。サウンド感としては世界のお祭りがテーマです。間奏は3パターンくらい作っていただいたのですが、やるならド派手にと思って、1番派手なものをチョイスしました。サーカス団のパレードが街を渡り歩くみたいな感じ。みんなで行列を成して、次の一歩を踏み出す様子をイメージしていただければ」

――「ハッハッ」という掛け声や、いろんな声が入っています。これはスタッフさんも参加して録ったのですか?

「実は、私がいろんな声で録っています。これは私も初めて知ったのですが、過去の私の楽曲は全て私の声だけで、私以外の声はコーラスやハモにも一切使われていないそうです。せっかくだからそれも特徴の1つとして踏襲していこうとなって。『ハッハッ』とか『ヤー!』いうかけ声もそうだし、スペイン語っぽい言葉の叫び声や、花火が上がったときの『わ〜』とか『すご〜い』という歓声など、いろんな声で録りました」

――アニメのアフレコで言うところのガヤをやっているみたいな。

「それを全部1人で(笑)」

――Dメロの歌詞に<私たちの祈りを>と、水瀬さんのお名前である「いのり」が出てきます。

「栁舘さんが私の曲の歌詞で、“祈り”を使ったのは初めてだそうです。とっておきだったようで、『ついに使ってしまった!』って言っていました(笑)。でも愛にあふれる歌詞で、栁舘さんの思いを感じます」

――そんな「heart bookmark」は、ジャケット写真などのビジュアルの撮影をフランス・パリで行ったそうで。

「ヨーロッパ全般が候補だったのですが、パリは街全体がアートなので、私がニュートラルでいても絵になるということでパリになりました。あと個人的に、大好きなテーマパークがあるので絶対行きたい!と(笑)」

――パリは東京のテーマパークとは違うんですか?

「万国共通のアトラクションもあるけど、シンボルになっているお城が東京とは違うお話のお城だったり、キャラクターがエッフェル塔と一緒に描かれたグッズがあったり」

――どんなところで撮影を?

「いろんな名所で撮りました。でも雨の日もあって現地で傘を買ったり、あまりに雨がすごくて撮影ができない日があったり、ハプニングもたくさんあったけど、トントン拍子であっけなく終わるよりも思い出に残るパリ撮影でした。いい写真をいっぱい撮ろう!と、みんなでアクシデントを乗り越えながらやっていたので、最終日にはすごく一体感が生まれていて。現地コーディネーターさんとお別れするときは、長年の親友との別れかのように泣きながらハグしました(笑)」

――パリで印象深かったエピソードはありますか?

「カフェが日本のコンビニくらいたくさんあってビックリしました。あと、ホテルの近くのショッピングモールで『NARUTO -ナルト』展をやっていたり、入店後すぐに店員さんが『日本人?』って声を掛けてきてアニメ好きをアピールされたり(笑)。現地ドライバーさんの娘さんが私のファンとのことで、私を知ってくれていたことがすごくうれしかったし、私が担当したキャラクターが海を越えて愛されていることを、肌で感じることができました。フランスの方は皆さん優しくて、日本文化が大好きで…自然と明るい気持ちになりました」

――では最後に、9月から開催のツアー「Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark」に向けて意気込みをお願いします。

「会場に来てくれた皆さんが驚くようなことを用意しています。こういうことはあまり言ったことはないのですが、初日からファイナルまで期間が長いので、なるべくネタバレはナシでいてくれたらうれしいです。フランスで私が見たものや感じたことも取り入れながら、『heart bookmark』に込めた温かい気持ちを皆さんにも感じていただけるように、このライブを皆さんの心にブックマークしてもらえるようにできたらと思っています。ぜひ足を運んでくださったらうれしいです!」。

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー

【プロフィール】

INORI MINASE
12月2日生まれ。東京都出身。B型。

主な出演作は「五等分の花嫁」(2019年~23年)、「阿波連さんははかれない」(22年~)ほか。待機作に10月スタートの「アクロトリップ」などがある。9月15日から6都市7公演をめぐる「Inori Minase LIVE TOUR 2024 heart bookmark」を開催。

【作品情報】 

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー

ハーフアルバム「heart bookmark」
NOW ON SALE

新録5曲を含む全7曲が収録された、自身初のハーフアルバム。Blu-ray+フォトブック同梱の初回限定盤と通常盤の2形態で発売中。タイトルにはアーティスト活動10周年を来年に控えた今年、ブックマーク(しおり)を挟むことで、この先も物語が続くことや、お気に入りが詰まったアルバムであるという思いが込められている。

【プレゼント】

「heart bookmark」水瀬いのりインタビュー

サイン入り生写真を1名様にプレゼント!
応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:8月28日正午~9月4日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」9月6日号(P98)をご覧ください。

取材・文/榑林史章 撮影/牛島康介 ヘア&メイク/大久保沙菜 スタイリング/田村理絵



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.