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「Dearest」七海ひろきインタビュー2024/08/21

「Dearest」七海ひろきインタビュー

「今回の新曲は、いつも一緒に歩いてくれているファン=Dearest(最愛の人)のみんなに想いを届ける曲にしたいなと思いました」

 アーティストデビュー5周年を迎えた8月21日に、“最愛の人”を意味する「Dearest」というタイトルのデジタルシングルをリリースした七海ひろき。宝塚歌劇団の退団から5年、アーティストとして俳優として、さらなる活躍の場を広げ続ける七海の傍らには、常に“Dearest”の存在があった。

――アーティストデビュー5周年おめでとうございます。宝塚歌劇団を退団後、アーティスト、俳優、声優と幅広いジャンルで活躍されていますが、この5年間でターニングポイントになった作品はありますか。

「俳優、声優、アーティスト、それぞれの活動で自分の中でターニングポイントだったなという作品はあって。アーティストとしては、『FIVESTAR』(2021年発売のアルバム)のライブを行った時に自分のキャパシティーに気づいたというか、全部を自分でやるのは無理なんだと思った瞬間がありました。それまで結構完璧主義なところがあって、とにかく早くから練習して、自分の中で“できた”という自信を持ちたいというところがあったんです。でも『FIVESTAR』以降は、常に自分のできる精一杯をやった上で、難しい部分は演出を変更したり、歌い方を見直してみたりなど、工夫すればいいんだということに気づき実践しています。そうすると、また新しいものが生まれ、私も最高のパフォーマンスをお届けできる。あと、周りの頼れる人たちには頼ることができるようになりました。できる/できないを自分でちゃんと見極めて、“私はこれはできるけど、ここはできないから助けてほしい”と言えるようになりました。」

――俳優のお仕事、舞台のお仕事ではいかがですか?

「舞台『刀剣乱舞』シリーズに出演させていただいたのは、すごく大きかったなと思います。3作品ほど出演させてもらって、その全てが新しい挑戦でしたが、この5年間で最も緊張してドキドキした瞬間が「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」の初日だったかなって。禺伝はシリーズの中でもチャレンジングな作品だったので、とてもプレッシャーを感じていたのですが、お客さんがすごく楽しんでくださっていることが伝わってきたので、やらせていただいて良かったなと思う作品です」

――では、昔からの夢だったという声優業でのターニングポイントは。

「声優を始めて最初の2年くらいは、なかなか現場に慣れなくて、毎回毎回緊張していたんです。でもちょっとずつ現場に慣れていくことで、特にこの1年ぐらいで担当させていただいた『マッシュル-MASHLE-』のアビス・レイザー役や、『烏は主を選ばない』の浜木綿役あたりから、自分の緊張がだんだんほぐれていった感覚があります。そして今回、主役の千夜を演じている『戦国妖狐 千魔混沌編』では、エンディングテーマも歌わせていただいていて、この作品は自分にとってターニングポイントになるだろうと、リアルタイムで感じています。これまではたくさん稽古をして、自分で自分を落ち着かせて収録に向かっていたのですが、『戦国妖狐』の収録は、主人公となるとかなりワード数が多くて、やってもやっても追いつかなくて、“もうダメだ”って思ったんです(笑)。それからは、練習はしていくけれど、現場でのスタッフさんからの言葉や、周囲の皆さんの空気感などを感じ取って応用していく力が声優には必要なんだと考えるようになりました」 

「Dearest」七海ひろきインタビュー

 ――「戦国妖狐 千魔混沌編」エンディングテーマ「夜の隨」に続き、8月21日はアーティストデビュー5周年記念シングル「Dearest」がデジタルリリースされます。こちらは七海さんご自身が作詞された楽曲ですね。

「はい。5周年ということもあって、いつも一緒に歩いてくれているファン=Dearest(最愛の人)のみんなに想いを届ける曲にしたいなと思って。『Dearest』は宝塚を退団する前に行ったディナーショーのタイトルであり、先日のアーティスト活動5周年を記念したオーケストラコンサートのタイトルでもあるのですが、よく思うのは、ファンの皆さんって“いつ、七海ひろきと出会ったか”を気にされている方も多いんです。昔から応援してくださっている方ももちろんいるし、宝塚時代を知らずに、アーティストとしての新しい七海ひろきから知ってくださっている方もいて。いろいろなファンの方がいる中で、出会った時期は関係なく、私にとってはずっとみんなが最愛の人=『Dearest』なんだよって伝えたい気持ちがありました」

――お話をうかがっていると、七海さんとファンの関係性はとても理想的だと感じます。

「この関係性を私1人だけで作ろうとしても本当に無理なことで、私が全部理解できているかと言ったら、分からない部分ももちろんあるんです。でも“私はこう思う”ということと、支えてくれるファンのみんなや出会ったいろんな人たちと意見を交換しながらみんなで作り上げた関係性だなと、今は感じています。宝塚在団中の時よりも、みんなで一緒に“七海ひろき”を育てて、歩んでいるという感覚がすごくあります。その“一緒に”には、もちろんDearestの皆さんも入っていて。なんというか、この関係を言葉にするのは難しくて、文章にするのも大変だと思いますが、七海ひろきという“木”の根幹には私がいるんですよ。でもその木が大きく育っていくには栄養や水など、いろいろ必要じゃないですか。だから幹は私だけど、どう育って、どんな花が咲くか、どこまで大きくなるかは、一緒にいる皆さんに頼っている感覚ですね。もちろん、ファンの人が望むからと自分のやりたいことを変えることはないけれど、常に“こんなことをやったら喜んでくれるかな”“楽しんでくれるかな”という想いがあります。だから、ファンの皆さんとは、一緒に歩いていく…っていう感覚が一番しっくりくる気がします」

――9月には、手塚治虫の名作を原作とした、ミュージカル「七色いんこ」が控えています。先日の舞台「サイボーグ009」でも感じましたが、七海さんの2次元のキャラクターを3次元に再現する力、原作ファンの期待を形にするパワーは本当にすごいと思います。今回の七色いんこ役も難役ですね。

「はい、たぶん難しい役なんです(笑)。でも私が演じさせていただいた全ての作品において、原作があるものはやっぱり原作が素晴らしいんです。だからプレッシャーはあれど、原作が素晴らしいので、自然と良い作品になると思っていて。私は自分自身がもともとアニメやマンガが好きというのもあって、原作ものを演じる時は原作をすごく大切に、原作が好きな人も納得できるものにするという考えが、宝塚時代からずっとあるんです。今回の『七色いんこ』も手塚治虫先生は本当に素晴らしく、最終話を読んだ時にこんなにも余白が多い、考えさせられる作品なんだと思って。まだお稽古も始まっていない段階ですが(※取材は7月)、見終わった後、家に帰ってからもキャラクターのことを考えてしまうような、見た人の心に何か形として残るものを意識して芝居をしていきたいです」

――最後に「TVガイド」にちなみ、七海さんの原点といえるテレビ番組を教えてください。

「原点でいうと、宝塚との出会いはテレビで放送されていた、月組の天海祐希さんがレット・バトラーを演じた『風と共に去りぬ』でした。それを見ていなければ宝塚にも入っていないし、宝塚音楽学校を受験しようとも思わなかった。それに、アニメ『るろうに剣心』で主人公の緋村剣心を演じているのが元宝塚の涼風真世さんだということも、宝塚に興味がなければ知らなかったと思うんです。あの時、テレビで天海祐希さんに出会わなかったら、いまの私は本当にいない。アニメが好きだったから、声優は目指していたかもしれないけれど、今のような活動はできなかったかもしれないし、そもそも声優になれなかったかもしれない。そう考えると、私の原点といえるテレビ番組は、やっぱりあの時に見た宝塚時代の天海祐希さんになりますね」

「Dearest」七海ひろきインタビュー

【プロフィール】

HIROKI NANAMI
1月16日生まれ。茨城県出身。O型。

2019年に宝塚歌劇団を退団後、アーティスト、俳優、声優など幅広く活躍。主演アニメ「戦国妖狐 千魔混沌編」(TOKYO MXほか)が放送中のほか、9月からは主演ミュージカル「七色いんこ」の上演が控える。

【作品情報】 

「Dearest」七海ひろきインタビュー

DIGITAL SINGLE「Dearest」
8月21日 RELEASE

七海自身が作詞を手掛けた、アーティストデビュー5周年記念となるデジタルシングル。最高の人・最愛の人を意味するタイトル「Dearest」は、宝塚歌劇団在団中に開催したディナーショー、さらに7月に開催されたオーケストラコンサートと同名となっている。

【プレゼント】

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サイン入り生写真を2名様にプレゼント!
応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:8月21日正午~8月28日午前11:59)

ハガキでの応募方法は「TVガイド」8月30日号(P98)をご覧ください。

取材・文/齋藤春子 撮影/山本絢子 ヘア/塩田勝樹(Sui) スタイリング/藤長祥平
衣装協力/ジャケット、パンツ(ラッド ミュージシャン)、その他スタイリスト私物



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