町あかりのプレイリスト~テレビのうた~◆その14:伝説のオーディション番組「ASAYAN」関連ソング5選2023/07/15
日本のテレビ放送開始から70年。ドラマ主題歌やCMソングなど、テレビによって国民に周知された楽曲は無数にあります。「町あかりのプレイリスト」は、昭和から令和までテレビを通して愛された楽曲について、平成3年生まれのシンガー・ソングライターの町あかりが、独自の目線で語る連載です。
アメリカ、イギリス、韓国をはじめ、世界中で公開オーディション番組が人気を博しています。そこで、今回はテレビ東京で1995年~2002年まで放送されていた、伝説のバラエティー・オーディション番組「ASAYAN」をピックアップ! つんく♂︎さんや小室哲哉さんをはじめとした先鋭プロデューサーによって、モーニング娘。や鈴木あみ(現・鈴木亜美)さん、CHEMISTRYなど多くの才能が世に送り出されました。
第14回では「伝説のオーディション番組『ASAYAN』関連ソング5選」と題して、番組をきっかけに誕生した名曲の中からチョイス。若いエネルギーがあふれる、フレッシュな気持ちになれるプレイリストを作ってみました。
1曲目は、YURIMARI「HELLO, I LOVE YOU.」(98年)。番組内で行われた「乱発オーディション」に合格し、YURIとMARIがユニットを結成。サンプラザ中野さん、パッパラー河合さんによるプロデュースでデビューし、本曲は3枚目のシングル。フジテレビ系テレビアニメ「ドクタースランプ」の主題歌にも起用されました。歌詞には「CPU」「メガヘルツ」など、ロボットであるアラレちゃんの顔が浮かぶようなポップでデジタルなワードが並びます。その中に「あなたのお側においてほしいの」という、往年のヒット曲、殿さまキングス「なみだの操」を彷彿(ほうふつ)とさせる古風なフレーズが挟まっているのが面白い! 人間に恋をしたロボットの女の子が恋人の役に立ちたいと奮闘するような楽しいストーリーが描かれています。スカのリズムに乗った無邪気なボーカルがゆるく&かわいくて、リラックスできる1曲です。
次は、Say a Little Prayer「小さな星」(97年)。田口理恵さん、片桐華子さん、大櫛江里加さんの3人によって結成されたユニットのデビューシングル。河村隆一さんによるプロデュースで、作詞はメンバーが担当しています。番組では本曲のインディーズ盤を10日間で1万枚を完売するミッションが課せられていたのだとか。しかし、わずか2日間で完売。メジャーデビューを勝ち取ったのだそうです。真夏に自転車で駆け抜ける画が浮かぶような疾走感に、透明感たっぷりのメロディー。想像の余地があるロマンティックな恋物語を描いた歌詞は、誰もが自分の経験に当てはめて共感できそうです。抽象的な表現がむしろ心地よく、何度も繰り返し聴きたくなる魅力があります。蒸し暑い夏に、体感温度をグッと下げてくれるような清涼感にあふれています。
3曲目は、亜波根綾乃「大きな風」(96年)。“沖縄の天才少女”と注目を浴びた彼女のデビューシングルで、作詞は片岡大志さん、作曲は関淳二郎さんが担当。とにかく彼女の歌声パワーがすごいです! 10代らしいストレートさと大人っぽさが混在していて、特に低音域に強烈な魅力が詰まっています。歌い出しを1秒聴いた瞬間、誰もが「ドキッ」としてしまうはず。素直だけど人に懐かないようなクールな雰囲気もあり、でも本当は愛情深く、リスナーを包み込むような温かさも持ち合わせている…。一言では語りきれない不思議な歌声です。切ない気持ち、いとしい気持ち、いろんな気持ちが押し寄せる中で、一つ一つ受け入れながら大人になっていく思春期。そのつらさを「大きな風」が見守ってくれるという、自然のエネルギーも感じられるような美しいテーマの楽曲です。彼女の故郷・沖縄の三線のような音色がふと聴こえてくるアレンジも粋です。
4曲目は、CHEMISTRY「PIECES OF A DREAM」(01年)。番組内の「ASAYAN超男子。オーディション」で合格したCHEMISTRYのデビュー曲であり、01年のオリコン年間シングルチャート第3位にチャートインしたミリオン・ヒット曲です。作詞は麻生哲朗さん、作曲・編曲は藤本和則さんが担当。手話を用いたミュージックビデオ(MV)も印象的です。歌がうまくてルックスもいい2人ですが「臆病なボクたち」「強がるわけじゃない」というフレーズが等身大で、聴いた瞬間にグッと近い存在に感じます。恋人への未練を隠さずに吐露している様子もむしろカッコよく、彼らの素直なイメージにもぴったり。そこに当時多くの人が強く共感したのでしょう。また21世紀を迎え、テロ事件や戦争も勃発したこの年。不安を抱える多くの人の心を癒やした存在だったのかもしれません。
最後は、鈴木あみ「love the island」(98年)。「ボーカリストオーディション・ファイナル」の最終電話投票審査で304万140票中、80万2157票を集め1位となり、小室さんのプロデュースによって本曲で歌手デビューしました。楽曲制作の際、「女子高生の気持ちを分かりたい」と感じた小室さんが、鈴木さんと一緒に電車に乗ってみたという逸話もあるそうです。そして、その体験は楽曲にもしっかりと反映されているように感じます。一見明るい曲かと思えば急に不安が入り混じったような寂しいメロディーが登場したり、単なるポップソングとは言えない奥深さがあります。まるで、表面上は明るいけれど内心は不安でいっぱいな10代の心理を、そのまま歌にしたかのような味わいです。実は恋人との別れが描かれた切ない歌詞ですが、鈴木さんの無邪気な歌声と笑顔によって明るく、カラフルに彩られています。
いかがだったでしょうか? 今回のプレイリスト(Spotify)はこちらから!
>>https://open.spotify.com/playlist/46x0aEml2od3DopiFNlsiC?si=a34274f3400d451c
番組放送当時、私は早寝の小学生だったため「ASAYAN」をほとんど見たことがなかったので今回もとても勉強になり、大収穫でした! 最近「平成レトロ」というワードを目にしますが、まさに平成レトロの魅力にあふれた楽曲ばかり。当時の世相やトレンドも垣間見えるのが面白いですね。実際に番組を見て、アーティストたちを応援していた方が羨ましいです。きっと曲を聴いただけでは分かり得ない、さまざまなドラマがあったことでしょう。
時代を超えてオーディション番組が注目を集める理由は、「私も頑張ろう」とパワーを貰えるから! そんな夢を追うフレッシュさにあふれた楽曲を楽しみながら、日々の活力をゲットしてみるのはいかがでしょうか。
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町あかり
シンガー・ソングライター。2010年から活動を始め、作詞・作曲、編曲、執筆、イラストや衣装制作まで自身で行う。19年には、ビクターエンタテインメントからメジャー5thアルバム「あかりおねえさんのニコニコ♡へんなうた」をリリース。20年10月に、日本コロムビアから初のカバーアルバム「それゆけ!電撃流行歌」を発売。ほか、アーティストへの楽曲提供も行う。映画「男はつらいよ」と昭和歌謡曲、そして文鳥を愛する。最新アルバム「総天然色痛快音楽」が好評発売中。
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