「AYAKA ‐あやか‐」梅原裕一郎 インタビュー2023/06/07
「同じ立場で足並みをそろえて一緒にやっていく人がいるというのは、やはりうれしいし、楽しいですね」
「K」シリーズを手掛けた作家集団・GoRAとキングレコードがタッグを組んだ完全新作オリジナルアニメーション「AYAKA -あやか-」(TOKYO MX、BS11ほか)が7月よりスタート。七つの島が連なる綾ヵ島を舞台に、さまざまな人間関係が描かれていく。不思議な存在である“ミタマ”(命脈を流れるエネルギーの塊が地表に出たもの)が当たり前のように生息する奇妙な島の調和が崩れ始めた時、主人公の幸人(上村祐翔)が目にする真実とは…。“アラミタマ”(“ミタマ”が暴走した時の呼び名)を駆除する専門組織・アヤカセキュリティの所長を務めている伊吹朱を演じる梅原裕一郎に、作品のこと、そしてデビューから約10年を迎えた声優業について話を聞いた。
――この作品はオーディションがあったのでしょうか?
「はい。テープオーディションで、鞍馬春秋と伊吹朱を受けていました。ご縁があったのが伊吹だったのですが、オーディション原稿には鞍馬と伊吹が言い争っているシーンがあったので、2人には確執があって、方向性が違うのかなと思っていました。伊吹の感じている怒りは、人物を語る上で重要な部分なんだろうなとも感じていましたね」
――オリジナル作品の場合は、どのように声を作っていくのですか? キャラクターの見た目から入っていくのでしょうか?
「見た目は確かに重要ですね。あとは、2~3行のキャラクターの説明を見ながら普段は作っていくのですが、『AYAKA -あやか-』の場合は、あらすじや細かい設定がしっかり資料に書いてあって、オリジナル作品ですが、だいぶ情報は多かった印象があります」
――ちなみにどちらの役の方がご自身にしっくりきていたのですか?
「鞍馬ですね(笑)。鞍馬は動じないというか、落ち着きを原稿のせりふからも感じていました。一方、伊吹は若い部分が強いキャラクターで、感情で言葉を発している部分が多いんです。数年前だと鞍馬は難しいかなと思ったのですが、今は僕も32歳になったので、鞍馬くらい心が凪いでいる方がやりやすかったりします(笑)。逆に、『伊吹の荒々しさ、刺々しさ、若々しさをナチュラルに演じられるか』と言われたら難しいと感じたのですが、結果的に伊吹で選んでいただいたので、“キャラクターに歩み寄って演じなければ!”と思いました。ただ、実際にアフレコが始まってみると、伊吹にも落ち着いた部分があって、年齢にしては大人びているところが多々あったので、それもあって選んでいただいたのかなと」
――伊吹は“アラミタマ”や兄弟子に当たる鞍馬(鳥海浩輔)に対して怒りの感情が強いキャラクターですが、普段怒らなそうな梅原さんは、演じていていかがでしたか?
「いや、僕自身、わりと怒りの感情で動くことの方が多いんですよ。それは、他者に対する怒りとかではなく、自分自身に対するものが多いんですけど。伊吹の場合、その矛先が他者に行ったりもするけど、大元は自分への怒りでもあったりすると思うので、そこは実は共感できる部分だったというか。怒りを原動力にすることって、ままあることなのかなとは思いました」
――「AYAKA -あやか-」は、綾ヵ島を舞台に、それぞれに宿命を背負った男たちの切なくも美しい絆を描いていく作品ですが、序盤の見どころというとどんなところになりますか?
「映像が奇麗なので、綾ヵ島が日本のどこかにあると思っていただきながら、キャラクターたちがどんな宿命を背負って、どういう行動原理で動いているのかを考えながら見ていただけたら楽しいと思います。あとは、術を使って戦うシーンがカッコいいんです。それぞれのキャラクターに決めぜりふのように唱える祝詞のような言葉があって、少し古風な言葉なんですけど、それは伊吹にもあります。それに、伊吹は少し狂気的な戦い方をするのですが、その時は普段とは違うギアの入ったしゃべり方になるように意識して演じたので、そういうところも見ていただけたらと思います」
――梅原さんは声優デビューが13年になりますが、約10年活動されてきて、何か成長や変化を感じることはありますか?
「少し前に、スケジュールが詰まりに詰まった時があったんです。すべてのレギュラー役がそこに凝縮されているとんでもない1週間だったんですけど、5~6年前だったら多分無理だったなと(笑)。でも、何とか乗り切れたので、10年近くやっていると、こういうことも何とか乗りきれる体力と、効率の良さと言ったらあれですけど、慣れてきた部分があるのかなと感じました」
――力の抜き方を覚えたような感じですかね?
「そうだと思います。いい感じに力が抜けて、効率が上がったんでしょうね。でも、あの1週間はもうやりたくないですし、年に1回くらいでいいかな(笑)」
――声優というお仕事は、毎回役がオーディションで決まったりします。この作品にもライバルという関係性が出てきますが、梅原さんにとって、ライバルはどんな存在ですか?
「オーディションの話だと、自分と同じ役を受ける方がライバルになると思うんですけど、僕にはあまりライバルという意識はなくて。いろんな役があって、いろんな役者さんがいるので、一番役に合う人がやればいいと思うんです。僕が受からなかったとしても、ピタッと合う人がやればいいと思うだけなので。だから、ライバル意識はないのですが、いい意味で「あのオーディション受けた?」、「頑張ろうぜ!」みたいに語り合うライバルはいるのかなと思います。敵視するとかではなく、一緒に切磋琢磨する関係みたいな。同じ立場で足並みをそろえて一緒にやっていく人がいるというのは、やはりうれしいし、楽しいですね」
――また、この作品では主人公の幸人が綾ヵ島に来て新たな生活を始めますが、新しいことを始めたり、チャレンジする時に大事なのはどんなことだと思いますか?
「結構飽き性なところがあるので、のめり込むときはのめり込むんですけど、その期間が過ぎると集中力がなくなってしまうことが多いんです。だいたい3カ月くらいしか集中力が持たないので、熱中する時間が短いことを念頭において手を付けるんですね。で、その熱中している時に大事なのが、あまりわれに返らないことなのかなと感じていて。冷静さを多少失っても、そのエネルギーを大切にしたほうがいいのかなと思うんです。声優を目指して養成所に通おうと思った時も、おそらく冷静さは欠いていたので(笑)」
――確かに「声優になれるのか?」、「どのくらいお金がかかるんだ?」とか考えたら、立ち止まってしまうかも。
「そこで冷静さがなかったからこそ、勢いでできた部分もあるんですよね。だから、“いろいろ考えないことの方が大切な時もある”という感じでしょうか」
――最初の情熱は大事にするべきだと。それで、10年、声優の仕事を続けられていますからね。
「何かを10年続けたことって、声優業以外になかったかもしれないですね。それだけ日々、何だかんだ楽しく仕事ができているんだろうなって思います。次から次へと新しい作品に出会ったり、毎日違う現場に移動したり、本当に目まぐるしいので。飽きることがない職業だから、自分に向いていたのかもしれません」
――これから新たにやりたいことはありますか?
「やりたいこと…う~ん、仕事の幅を広げたい欲はそんなにないんですよ。僕が声優を目指していた頃の声優像があって。アニメに出て、外画に出て、ナレーションをやって、自己表現をする場所と言えばラジオくらいっていうのが僕の知っている声優業なので、コツコツとこれからも声優業をやっていこうかなと思っています」
【プロフィール】
梅原裕一郎(うめはら ゆういちろう)
3月8日、静岡県生まれ。O型。アニメ「彼女が公爵邸に行った理由」、「Opus.COLORs」、「マッシュル-MASHLE-」(いずれもTOKYO MX、BS11ほか)に出演中。
【作品情報】
「AYAKA ‐あやか‐」
7月スタート
TOKYO MX、BS11
放送日時未定
日本のアニメ界が誇る作家集団・GoRAとキングレコードが手掛ける絆の物語。本土の児童養護施設で育った幸人(上村)は、10年ぶりに綾ヵ島へ戻る。そこに生息する不思議な存在“アラミタマ”を幸人、尽義(寺島拓篤)、鞍馬(鳥海)、伊吹(梅原)らが特別な力で浄化していく。
【プレゼント】
サイン入り生写真を1名様にプレゼント!
応募はコチラ→https://www.tvguide.or.jp/tvguide_enquete
(応募期間:6月7日正午~6月14日午前11:59)
ハガキでの応募方法は「TVガイド」6月16日号(P98)をご覧ください。
「TVガイド」の購入はコチラ→https://honto.jp/cp/netstore/recent/tokyonews-book/01.html
取材・文/塚越淳一 撮影/Marco Perboni ヘアメイク/時田ユースケ スタイリング/笠井時夢
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