「WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』」細谷佳正　インタビュー2023/01/18

「謎めいた部分が多いので、視聴者的にも気になる存在だと思います」

　少年と少女が成長しながら、火を失った最終戦争後の世界の真実に迫る日向理恵子の人気児童文学小説「火狩りの王」。「SAMURAI DEEPER KYO」（2002年）や「今日からマ王！」（04～09年）などを手掛けた西村純二が監督、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」（1995年）や「イノセンス」（04年）、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」（08年）などで知られる押井守が構成と脚本を務め、タッグを組んでアニメ化。WOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて放送・配信中だ。同作で、主人公の1人である煌四（石毛翔弥）を導く流れ者の火狩り（安全に使える唯一の燃料である異形の獣たち・炎魔の体液を集める人）・炉六を演じる細谷佳正に、作品の魅力や炉六という役について話を聞いた。

――炉六役に決まった時は、どんなお気持ちでしたか？

「押井さんと音響監督の若林（和弘）さんが組んでる作品なので、高級感のある作品になるだろうなという予感があったので、決まった時はうれしかったです」

――最終戦争後の話であるとか、火というエネルギーを失った世界であるとか、実際の現代社会にも通じるような世界観や設定だと思いますが、そのあたりについてはどういった印象ですか？

「まったくあり得ない世界の話というよりも、物理的に“あり得るかもしれない”という可能性を残している世界観だと思います。一度滅んだ世界が再構築されてからのある時点での話で、脚本が押井守さんなので、きっと本格的な大人向けの作品になっていくのだろうなという印象でした」

――細谷さんは、炉六という火狩りの1人を演じます。炉六は第5話（2月11日放送）から登場して、煌四にさまざまなことを教えるなど、どんどん存在感を発揮していきます。炉六という役については、どういう印象ですか？

「謎めいた部分が多いので、視聴者的にも気になる存在だと思います。謎めいている雰囲気を保つようにアフレコしました。炉六以外のキャラクターは出自がはっきりしているんですけど、炉六は流れ者で、人となりが明らかではないんです。登場人物の中で深く関わってきた人物がいないので、出自も分からない。でも、落獣（炎魔と違って空を飛び、熟練した火狩りでも採取が難しい獣）を狩るということに関しては、他を圧倒する技術力を持っている、というのが個性的で視聴者が気になるキャラクターだろうなという印象です」

――ビジュアルを見るとガッチリとした大柄な体型で、豪快な面もあるのかなと思いましたが、細谷さんはいかがでしたか？

「豪快な部分ってあまり感じたことがなくて。煌四と一緒に山に入るシーンから始まるんですけど、焦っている煌四とは対照的に冷静沈着だし、煌四に対してカマをかけるシーンがあって、そういう動きを見ても、いわゆる筋肉バカみたいな感じではなくて、知性的だし、冷静さや狡猾さを持っているキャラクターだと個人的には感じました」

――見た目と中身とで少しギャップがある役柄ということで、演じる上でどんなディレクションがあったのでしょうか。

「いわゆる“脳筋”（脳みそまで筋肉のような肉体派）のタイプというようなディレクションが最初にあったんですけど、自分はそう感じなかったので、“知性のある強い者”というイメージでやりました。結果、特に何も言われなかったので、多分大丈夫なんだと思います（笑）」

――アフレコ現場では、煌四役の石毛翔弥さんと一緒になることが多かったと思いますが、どんな雰囲気でしたか？

「石毛さんは、真面目な人という印象が強くて。主人公として担う部分が大きいという自覚を持って仕事をされていると思うし、積極的に話すタイプではないとその時は感じたんですけど、恐縮しながらご自分の過去の台本を見せてくれました。その台本にメモが詳細に書かれてあって、すごいなぁと。僕は自分の台本を他人に見せることは恥ずかしくてできないんですけど。石毛さんの字はきれいでした（笑）」