ポリティカルライター・平河エリに学ぶ「私のNEWSの拾い方」とは?2022/07/29
私たちが正しく判断するために、今、何をどう知るべきか。その極意を学ぶ連載「私のNEWSの拾い方」。月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS」で掲載中の人気連載が、TVガイドwebにも登場。初回は、政治ライターとして活躍する平河エリ氏にお話を伺いました。
POINT 1◆全容を調べた上で、個々のニュースを判断してみる
POINT 2◆選挙時だけでなく、日頃から政治に注目してみる
――今、私たちはどんなニュースの拾い方をするべきですか?
「現在、ニュースメディアは非常に増えていて、ネットメディアはその信頼性やクオリティーにかなりのばらつきがあります。メディアは良くも悪くも情報を編集した上で掲載しているので、メディアの良し悪しを見極めるために、自分でその情報を調べて見るのをおすすめします。たとえば政治分野だと、関心がある議題について国会の議事録を調べてみて(「国会会議録検索システム」で誰でも検索可能)、その議論の全容を理解した上で個々のニュースを見てみる。そうすると、それぞれのメディアがどういう基準で情報の取捨選択をしているかが分かってくる。そうすることで、メディアに対する判断力・リテラシーも養われていくと思います」
――こんなニュースの拾い方をしてはいけないと思うものは?
「ある特定のメディアの見方や、自分にとって心地いい情報だけに依存するのはおすすめできません。そのメディア内ではストーリーとして完結しているように見えても、深掘りして調べていくと、その論理が崩れてくることもあります。一つの情報に対して、できるだけ奥深く…論文を読んだり本を読んだりして、多角的に見ていくことが大事です。手間はかかりますが、そこまでやってみると、どのメディアが正しくて、どのメディアが間違っているのかが見えてくると思います」
――SNSは「太陽光発電は害悪」のように、情報の理解や更新を抜きにしたまま、「ある問題についてはこの“定説”を言っておけばいい」という傾向がありますが、どう思われますか?
「コミュニケーションが非常に簡略化されてきている問題は確かにあると思いますし、それでなくとも情報量が多すぎてついていけない人は多くいるのだと思います。複雑な物事を複雑に捉える能力が、社会的に衰えてきているのか、あるいは、もともと衰えていたものがSNSで可視化されただけなのか…。私は前者だと考えています。かつては、大卒者のように一定の知識を修めた人であれば、本を読む習慣は当たり前にあったと思うのですが、最近ではそういうことが軽視されがちになっている。いろいろな本を読んで系統的に知識を習得するよりも、目の前の問題に即応するような知識がバラバラに摂取されている…社会全体として、そういう傾向があるように感じます」
――掲載時には参院選が終了していますが、選挙後はどういう心構えでいるべきでしょうか?
「選挙運動も政治の一形態とはいえ、政治は1年・365日行われているものです。選挙の結果に一喜一憂せず、そこを政治を考えるきっかけにしてほしいと思います。普段は特に政治に関心を持たず、数年に一度の国政選挙の時だけインスタントに関心を持って、投票が終わったら自分と政治の関わりは終わり、しばらく経つと誰に投票したのかさえ忘れていたりする…というのは、日本の政治文化にとって大きな問題だと考えています」
――最近のニュースメディアについて感じていることは?
「私の本業はマーケティングなのですが、ネットメディアというのは、ビジネスモデル的に非常に持続可能性が低いメディアだと感じています。紙メディアを含めて、きちんとしたビジネスモデルがあるメディアに頑張っていただくことが、今後ますます重要になってくると思います。特に政治の分野というのは人目を引きにくく、お金になりやすいわけではないので、メディアがどういう戦略でそのバランスをどう取っていくか…個人的にはそういうところに関心を寄せています」
【プロフィール】
平河エリ(ひらかわ えり)
議会政治・選挙などを専門分野とする政治ライター。自身が主宰する政治の解説メディア「読む国会」が話題となり、各メディアに執筆・出演などを行う。著書に「25歳からの国会 武器としての議会政治入門」(現代書館)がある。
【書籍情報】
「25歳からの国会:武器としての議会政治入門」
現代書館 1,980円(税込)
「総理大臣と国会、どちらが偉い?」などの分かりやすいトピックで、政治の仕組みを分かりやすく解説。基礎から学びたい人に最適な1冊。
【「見つけよう!私のNEWSの拾い方」とは?】
「情報があふれる今、私たちは日々どのようにニュースと接していけばいいのか?」を各分野の識者に聞く、「スカパー!TVガイドBS+CS」掲載の連載。コロナ禍の2020年4月号からスタートし、これまでに、武田砂鉄、上出遼平、モーリー・ロバートソン、富永京子、久保田智子、鴻上尚史、プチ鹿島、町山智浩(敬称略)など、さまざまなジャンルで活躍する面々に「ニュースの拾い方」の方法や心構えをインタビュー。当記事に関しては、月刊誌「スカパー!TVガイドBS+CS 2022年8月号」に掲載。
取材・文/前田隆弘
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