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「永遠の831」斉藤壮馬 インタビュー2022/02/02

「永遠の831」斉藤壮馬 インタビュー

「神山さんは、基本的にこちらが提案させていただいたものをベースにして、演技を構築してくださる印象でした」

「永遠の831」は、WOWOW開局30周年記念作品。アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(2002~03年)などで知られる神山健治監督が手掛けたオリジナル長編アニメだ。舞台は、“未曾有の大災厄”により、混迷を極める現代。大学生のスズシロウ(斉藤壮馬)は、自分と同じく時を止める力を持つ少女・なずな(M・A・O)との出会いを通し、国家を揺るがす事件へと巻き込まれていく。今回は、そんな話題作でスズシロウを演じた斉藤に、作品について聞いた。初回オンエアは好評のうちに終了し、現在は配信が続いていて、3月18日からの全国劇場公開も決定した中、未見の人も、リピートしようと考えている人も要チェックのインタビューだ。

――出演が決まった経緯と、スズシロウ役に決まったときのお気持ちを教えてください。

「今回はオーディションを受けさせていただき、縁あってスズシロウ役で作品に関われることになりました。オーディションの時、神山健治監督の作品だとは聞いていました。今までも、実は神山監督作品のオーディションを受けさせていただいたことはあったのですが、実際に声優として関わらせていただくのは初めて。すごくうれしかったですし、アフレコが楽しみでしたね。オリジナル作品ということもあり、オーディションの段階ではまだ作品についてそれほど具体的なことはお聞きできなかったので、想像しながらアフレコ本番を待っていました」

――視聴者として、神山監督作品についてのイメージは?

「やっぱり、緻密かつ重厚なドラマ作りがすごく魅力的だと感じています。僕は、監督が手掛けられた『東のエデン』(09年にTVアニメを放送、09年と10年に劇場版が公開)が好きなんです。サスペンスタッチで物語が複雑に進行していき、“次はどうなるんだ!?”という期待感とともに、どんどん物語にのめり込んでいきました。神山さんは、ご自身でアフレコのディレクションもされます。声優としての視点でお話すると、あまり大きな味付けはせず、生っぽいと言いますか、抑制の効いた芝居による“すき間”で見せていく演出をされるのかなと予想していました。そして、今回現場でご一緒して、そのイメージは大きくは間違ってはいなかったなんだなと感じましたね」

――アフレコで何かディレクションはありましたか?

「そんなに細かくディレクションをいただくことはなかったです。2日間の収録のうち、初日には作品のルールの解説がありました。例えば時が止まった世界の中において、スズシロウはどう振る舞えるのか、何ができて、何ができないのか。神山さんは、基本的にこちらが提案させていただいたものをベースにして、演技を構築してくださる印象でした。その上で、大きく違えばそこは話し合って軌道修正もする…。すごく対話を大切にされている方なのかなと思いました」

――スズシロウ役については、何かお話があったのでしょうか。

「『過去の事件が原因で心に傷を抱えていて、本人の意図せざる形で時間を止める能力を得てしまった青年』ということでした」

――スズシロウは新聞配達をしながら大学に通う学生。不思議な力を持ってしまったとはいえ、序盤での力の使い方は等身大で、“普通の青年”に映りました。どのように演じられたのでしょうか?

「スズシロウは、モノローグやナレーションを行うシーンがすごく多いので、“スズシロウ本人がこう感じているのではないか”ということは、台本に書かれている情報から引き上げることができました。そこに対してフラットに、足し過ぎず、引き過ぎずのアプローチができればと…。彼には彼の思いや主義主張があるので、作品を見た方がそれをいろんな角度から捉えられるようなキャラクター造形がされています」

――斉藤さんからご覧になって、スズシロウはどんな人物ですか?

「彼には当然自分の“イズム”があって、“自分にとってこれが正しい、間違っている”といった判断が自己の中にあります。けれど、劇中におけるある事件がきっかけで、何が本当に大事なことなのか、自分の中にだけ存在する正義は一体何なのかが分からなくなっている人なのかなと…。彼の時間を止める能力は、その状態をある意味、比喩的に表しています。彼の中で、今、時間が止まってしまっている状態で、そのことに対して“いい、悪い”といった判断も、物語中盤ぐらいまではあまりないんです。人生において、停滞してしまっている状態なのかなという感じがします」

――作品の中では、“未曾有の大災厄”に見舞われ、社会自体が停滞しています。どこかスズシロウの状態とも重なりますね。

「スズシロウと重なるというよりは、この作品に描かれていることが、多角的に読み取れるということなのかなと思うんです。個人的な見解では、“世界全体がどこか停滞している、自分はそんな社会の中でどうなんだ”というように、個と全の対比がいろんな形で描かれていると感じました」

――いろいろな捉え方ができる作品なんですね。

「そうですね。見終わった後に、人によってかなり違う感想が出てくる作品なのではないかと思うんです。なので、見た後に、それぞれが思考していくことこそが、この作品の続きに値するのではないでしょうか。見た人同士が、自分の中で考えたことを対話することで見えてくるものがある作品なのかなと思っています。見て楽しんでいただき、その後にどんなことを感じたのか、見た人と対話もしていただきたいですね」

「永遠の831」斉藤壮馬 インタビュー

【プロフィール】

斉藤壮馬(さいとう そうま)
4月22日、山梨県生まれ。牡牛座。B型。アニメ「オリエント」(テレビ東京ほか)、「天才王子の赤字国家再生術」、「佐々木と宮野」(ともにTOKYO MXほか)などに出演中。アーティストとしても活躍しており、2月9日に2nd E.P.「my beautiful valentine」をリリース。

【作品情報】 

「永遠の831」斉藤壮馬 インタビュー

[WOWOWオリジナルアニメ「永遠の831」]
WOWOWオンデマンドにて配信中、3月18日全国ロードショー

神山健治が監督・脚本を務めた、WOWOW開局30周年記念のオリジナル長編アニメ。大学生のスズシロウ(斉藤)は、自分の意志と無関係に時間を止められる力を持っている。彼が、同じ力を持つなずな(M・A・O)と出会い、国を揺るがす大きな犯罪へと巻き込まれる。

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取材・文/仲川僚子 撮影/山本れお ヘア&メーク/三田彩聖 スタイリング/本田雄己



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