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「鬼滅の刃」「SPY×FAMILY」が生み出すテレビアニメの新たな可能性とは? 2021-22年間「大人アニメ」ランキング大発表!2022/09/29

SPY×FAMILY

 今回のテーマは「大人アニメ」のリアルな見られ方。長年テレビを支えてきたキッズ向けやファミリー向けのテレビアニメとは一線を画した形で発展してきた「大人アニメ」は、近年ではすっかり日本を代表する動画コンテンツとして世界で認知される一方、製作環境の変化など課題も多い。今回はそんな「大人アニメ」が今テレビでどのように見られているのか、関東94万台を超えるレグザの最新視聴データを基に検証する。実はこの1年は歴史に残る特別な1年だったのである。

 まずは、放送回ごとの年間ランキングを見ていこう。TVガイドwebで毎週紹介している「地上波録画視聴ランキング」の数値を基に、2021年7月~22年6月までの1年間に地上波で放送された「大人アニメ」を、録画視聴された回数の多い放送回順に並べた「年間放送回ランキングベスト30」である。ポイントは1位を100とした場合の割合である(以下同)。なお、大人アニメのセレクトは、レグザの「みるコレ」サービスで「大人アニメ」として定義されている番組を参考にしている。

2021-2022 アニメ年間放送回ランキング/ベスト30

 圧巻の「鬼滅の刃」(フジテレビ系)大旋風。「無限列車編」全7話、「遊郭編」全11話、合わせて全18話が完全に上位を制圧している。特に国内歴代興行収入第1位となった「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の大ヒット後、待望のテレビ新シリーズとなった「無限列車編」第1話の録画視聴ポイントは桁外れの高ポイントとなった。並み居る超ド級ヒットドラマの最終回よりもさらに高い数字で、第1話でこれをたたき出すというのはちょっと考えられない。新しいテレビシリーズへの期待がいかに高かったかを示すとともに、相当数のユーザーが二度三度と繰り返し視聴したのではないかと考えられる。この第1話は劇場版に至るプロローグとして作られた新作で、その前宣伝のすさまじさも功を奏したと思われる。

 「無限列車編」の2~7話は、新規映像等もあったものの基本的に劇場版を再利用したものだったので多少勢いは収まったが(それでもアニメとしては破格なのだが)、続く新シリーズの「遊郭編」は再び高ポイントを連発、最終回に向けて数字を上げていく、いわゆる人気ドラマと同様の推移を見せた。

 午後11時台に放送されたということも含め、テレビアニメにこういうポテンシャルがあることを示したという点で、この「鬼滅の刃」現象は画期的であった。やはり午後11時台に放送されて、「鬼滅の刃」に続く年間第19~30位を占めた「SPY×FAMILY」(テレビ東京系)の成功もそれを証明している。

 続いてはより多く録画視聴されている作品をクールごとに検証していこう。期間内の録画視聴ポイントの平均値が高い順に並べたランキングである。まずは21年7~9月の「大人アニメ録画視聴ベストテン」。

夏クールアニメ録画視聴ベスト10/2021年7月~9月

 今回は7月スタートのアニメに限定して集計したので、昨年4月スタートの2クール連続放送作品は含まれていない。トップに立ったのは「転生したらスライムだった件 第2期 第2部」(TOKYO MXほか)。1月クールに「第2期 第1部」が放送され、4月クールにもスピンオフ「転スラ日記」(TOKYO MXほか)が放送されていて3クール連続のランクイン。安定した人気を誇る。4月からの2クールアニメが多かったこともあるだろうが、トップの「転生したら~」はじめベストテン中6作をTOKYO MX放送作品が占めている。また、異世界もの、転生ものが上位を占める中、3位の「うらみちお兄さん」(テレビ東京ほか)が異彩を放っている。女性アニメファンの支持の強さがうかがえる。

 続いて21年10~12月クールの大人アニメベストテン。いよいよあのモンスターアニメが登場する。

秋クールアニメ録画視聴ベスト10/2021年10月~12月

 「鬼滅の刃 遊郭編」は初回から第4回までの平均値だが、「無限列車編」全7話の平均を大幅に上回っている。「無限列車編」は初回こそ爆発的な数字だったものの、2話以降は相応に落ち着いた数字になっていたことが分かる。3位「ワールドトリガー」(テレビ朝日系)以下の数字が相対的に小さくなっているが、ほかのクールのランクイン作と比べて決して遜色のないポイントを獲得している。前クールとは打って変わって、すべての民放局がベストテンに作品を送り込んでいる。著名な原作も多く、各局の力の入れようが分かる。

 続いて22年1~3月クールのベストテンである。

冬クールアニメ録画視聴ベスト10/2022年1月~3月

 ともに10月クールからの継続となるフジテレビの「鬼滅の刃 遊郭編」「王様ランキング」が1位と3位にランクイン。惜しくもベストテン入りは逃したが、11位には吉田玲子脚本&山田尚子監督コンビで話題を呼んだ「平家物語」もランクインしていて、フジテレビアニメの充実が光る。「鬼滅の刃 遊郭編」は5~11回の平均だが、5話などは正月三が日なのに定時に放送していた。今後放送されるであろう続編も含めて、「鬼滅の刃」は現時点でのフジテレビ最優良コンテンツなのだろう。2位の「進撃の巨人 The Final Season」(NHK総合)も、ほかのクールなら文句なくトップをとれる高ポイントであった。

 最後は22年4~6月クールのベストテンである。

春クールアニメ録画視聴ベスト10/2022年4月~6月

 トップに立ったのはテレビ東京の「SPY×FAMILY」。「鬼滅の刃」があるのであまり目立たないが、「SPY×FAMILY」のポイントもアニメとしては破格の高ポイントであり、十分画期的なアニメシリーズだったと言っていい。しかし、その好記録もやはり先例として「鬼滅の刃」があったからこそだとも思える。「鬼滅の刃」が切り開いた“夜11時台のアニメ”というプレミアム感を、「SPY×FAMILY」は(局こそ違うが)実に巧みに引き継いだと考えられるからである。やはり、リアルタイム視聴に適した時間帯は強い。

 この連載では何度も書いているが、局や時間枠というブランディングは、タイムシフトで視聴する人々の動向をも大きく左右するのである。「鬼滅の刃」「SPY×FAMILY」クラスのヒットは、従来のアニメファン以外の層を取り込まないと発生しない。前提として、作品自体の面白さや話題性はもちろん不可欠だが、“スペシャルなアニメ”であることの証としてテレビ東京が新たにこの放送枠を用意したことの意味はとてつもなく大きい(NHK総合の「進撃の巨人」「キングダム」の時間枠編成にも同様の効果が感じられる)。

 製作環境の変化やネットメディアの台頭などで苦境も報じられるテレビアニメではあるが、まだまだやり方次第でテレビアニメならではのヒット作を生み出すことができるのである。もちろん「鬼滅の刃」クラスのヒットがおいそれと生まれるわけではないけれど、そんなテレビアニメの新しい可能性を感じさせる1年だった。10月からは「SPY×FAMILY」の第2クールも始まり、「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」の製作も発表されている。ほかにもまだまだ面白いアニメ、新しいアニメが登場してくるはず。今後も新たなテレビアニメの動きに注目していきたい。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社



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