1月クールドラマを深掘り分析!「DCU」「真犯人フラグ」を寄せつけず、あのドラマの大躍進でフジテレビが久々の戴冠2022/04/27
今回は、関東83万台を超えるレグザの視聴データをもとにTVガイドwebで毎週紹介している「地上波録画視聴ランキング」を集計し、2022年1月クールのドラマを振り返るという恒例企画。1月クールに放送された全ドラマの中で、最も支持されたドラマはなんだったのか。世帯視聴率だけでは分からない視聴者たちの本音を探っていこう。
まずは、1月クールに放送されたすべての連続ドラマを放送回ごとに集計した「放送回ランキング」ベスト30。ポイントは1位を100とした場合の割合である(以下同)。
ご覧の通り、1~12位を「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)の全12話が占めるパーフェクト勝利という結果となった。原作コミックの評価が高く、放送前から1月クールの本命ドラマと目されていた作品だ。硬派な謎解きの要素が強く、録画視聴に向いている題材であることに加えて、主人公・久能整(菅田将暉)の情報量満載の長ゼリフや、菅田、伊藤沙莉ら、芸達者な若手俳優による味わい深い名演の数々が多くの支持を集めた。20~21年にかけてずっと続いてきたTBSドラマトップ独占の牙城を切り崩した意味は大きい。フジテレビの月9ドラマがこれだけ圧倒的な強さを発揮したのは、17年7月クールの「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON」以来、4年半ぶりのことである。
「ミステリと言う勿れ」に続く上位には、「DCU」(TBS系)と「真犯人フラグ」(日本テレビ系)の2作品。どちらも録画視聴では実績がある枠のドラマで、局の力の入れ具合とともに、“日曜放送ドラマ”の優位性をあらためて感じる。
続いて「平均録画視聴ランキング」のベスト20。各ドラマの録画視聴ポイントを、初回から最終回まで全話平均して、高い順に並べたベスト20である。
トップはもちろん「ミステリと言う勿れ」。2位以下に大差をつけてのぶっちぎり首位である。フジテレビの月9が平均録画視聴ポイントでトップに立つのも「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON」以来だ。そして2位には阿部寛主演の日曜劇場「DCU」。仕方ないとはいえ、北京オリンピックで1回お休みになったのは不運だったと言えなくもない。3位の西島秀俊主演「真犯人フラグ」は2クールの放送でポイントも2クール分の平均値だが、後半10話の「真相編」に入ってからの追い上げがすさまじく、同じ日曜10時半枠で成功を収めた「あなたの番です」(日本テレビ系)の方程式をきちんと踏襲している(後半10話分だけの平均値で比較すると、順位は逆転しないまでも「DCU」との差はもっと僅差になっていた)。同時期、西島が主演を務めた映画「ドライブ・マイ・カー」のアカデミー賞国際長編映画賞の受賞の話題が各地で取り上げられることが増えたことも有利に働いたかもしれない。
4位以下はあまり大きな差がついていないが、4、5位は「妻、小学生になる。」 「ファイトソング」とTBSの2作が占め、6~9位には、フジテレビと日本テレビのプライムタイムドラマが続いている。
今度は「最終回継続率ランキング」を見てみる。「最終回継続率」とは最終回のポイントを初回ポイントで割った数値。最終回継続率が高い(=初回に比べて最終回のポイントが高い)ということは作品内容に対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。
継続率が100%を超えた(=最終回の録画視聴が初回より多かった)ドラマは8本。決して多い方ではない。そして見事継続率トップをゲットしたのはテレビ朝日金曜11時台の「愛しい嘘~優しい闇~」であった。今までも、テレビ朝日金曜11時台のドラマが継続率上位にランクインすることはよくあった。初回のポイントが低い方が継続率的には有利だという側面があることは否めないが、逆にドラマの内容が着実に支持されている証拠でもある。この「愛しい嘘」も、波瑠、林遣都といった実力者をそろえたディープなラブサスペンスで、スピーディーな展開も相まって回を重ねるごとに注目を集めた。ポイントも初回から最終回(第8話)まで一貫して増加を続けるという快挙を成し遂げた(実はこの記録は結構難しい)。そして2位に入ったのが「真犯人フラグ」。数字は昨年10月に放送された第1話と最終話との比較だが、「愛しい嘘」と同レベルの高い継続率を示した。最近はすっかりサスペンス系ドラマの犯人考察がブームになっているが、1月クールではこの2作品がブームを引っ張ったと言えるかもしれない(NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の考察もかなり盛り上がったけれど)。
そのほかで注目したいのは、5位の「相棒season20」(テレビ朝日系)と7位の「恋せぬふたり」(NHK総合)。「相棒」のようなドラマは基本的に録画率が一定で、継続率が高くなることはあまりないのだが、今回は反町隆史演じる冠城亘のラスト回ということで最終回のポイントが大きく上昇。堂々のランクインとなった。そして「恋せぬふたり」は、意欲的なテーマを大胆に取り上げ、継続率ランキングで100%を超えるドラマも多かったNHK総合の「よるドラ」枠最後のドラマ。今作も他者に恋愛感情や性的志向を抱かない2人のつながりを丁寧に描いて共感を呼び、脚本の吉田恵里香氏が本作で向田邦子賞を受賞するなど高評価を得た。
この4月の改編では、ドラマ枠にもいくつか大きな変動が見られた。配信ドラマがますます伸長していることへの対応といえるかもしれないが、いずれにしてもドラマファンとしては面白いドラマを数多く楽しめることが一番。これからもさまざまな形でテレビの楽しみ方をお伝えしていこうと思う。
文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社
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