Series 連載

TBS王者の風格。苦労が実るかフジテレビ。そして攻める日本テレビ…4月クールドラマを徹底分析2021/08/27

「デジタルTVガイド 2021年6月号」表紙:ドラゴン桜
「デジタルTVガイド 2021年6月号」東京ニュース通信社刊

 今回は、TVガイドwebで毎週発表している「録画視聴ランキング」(関東約71万台超のレグザ視聴データを基に集計)の数値で、2021年4月クールのドラマを振り返っていく恒例企画。どんなドラマが支持されていたのか、世帯視聴率だけでは分からない各ドラマの魅力に迫っていく。

 まずは、4月クールの地上波連続ドラマの放送回ランキングがこちら。今回は上位ベスト50のドラマを紹介したい(ポイントは1位を100とした場合の割合である)。

2021年春ドラマ 放送回ランキング ベスト50(1~25位)
2021年春ドラマ 放送回ランキング ベスト50(26~50位)

 今回、特徴的な動きをしたドラマがいくつかあるので、通常30位のところ、上位50番組までを掲載した。

 4月クールもTBSの二つのドラマ「ドラゴン桜」「リコカツ」が上位ベスト20を独占している。中でも「ドラゴン桜」の安定度は群を抜いており、特に話題となった最終回は圧倒的な高ポイントを獲得して、全放送回のトップに立った。「リコカツ」も最終回のポイントが最も高くなっており、作品への満足度の高さがランキングの高さにつながっているといえるだろう。そしてこの2作品を除いた最高位は、21位の「恋はDeepに」(日本テレビ)の第1話であった。

 この“ドラマ放送回ランキング”では、同じドラマの各放送回は同じような順位に固まることが多い。今クールでも20位台には「イチケイのカラス」(フジテレビ)、30位台には「着飾る恋には理由があって」(TBS)が集中している。その意味で21位の「恋はDeepに」と、30位の「ネメシス」(日本テレビ)は、第1話だけが突出しているところが特徴的である(この2作ほど突出してはいないが、48位の「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ)も第1話のポイントが一番高い)。「ドラゴン桜」や「リコカツ」「イチケイのカラス」「着飾る恋には理由があって」の初回の数字がむしろ低い部類に属するのと対照的である。もちろん初回から次第に上がっていくドラマと下がっていくドラマに分かれるのは仕方のないところだが、これだけ突出して初回のポイントが高いということは、視聴者のドラマに対する事前の期待度が相当高かったということがうかがえる。

 続いて「平均録画視聴ランキング」のベスト20。各ドラマの録画視聴ポイントの全話平均値を高い順に並べたランキングである

2021年春ドラマ 平均録画視聴ランキング ベスト20

 「ドラゴン桜」が順当に首位。16年前の第1シリーズの面白さをきちんとトレースしながら、日曜劇場らしい要素も巧みに加えたストーリー運びは見事だった。平手友梨奈、髙橋海人ら生徒役の新鮮な魅力や最終回の第1作メンバー集結など話題にも事欠かず、世帯視聴率の快調も含め、最も成功した4月クールドラマだろう。続く「リコカツ」も3位以下に終始リードを保っており、TBSドラマの優位は続いた格好だ。そして3位はフジテレビ月曜9時の「イチケイのカラス」。月9枠がベスト3に食い込んだのは、はっきり快挙と言っていい出来事だと思う。恋愛ドラマから離れたと言われて早4年、ようやく路線が定着しつつあるのかもしれない。4位には、安定の火曜日10時枠「着飾る恋には理由があって」が入っている。

 そして今回も「最終回継続率ランキング」を見てみよう。「最終回継続率」とは最終回のポイントを初回ポイントで割った数値。最終回継続率が高い(=初回に比べて最終回のポイントが高い)ということは、作品の対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。

2021年春ドラマ 最終回継続率ランキング ベスト30

 こちらも最終回の高ポイントが効を奏して「ドラゴン桜」がトップに立っている。“Wどんでん返し”と呼ばれた展開の面白さに加えて、前作メンバー登場も注目を集め、録画視聴が伸びる要素満載の最終回であった。次いで2位に飛び込んできたのが、8月2日に最終回を迎えたばかりのテレビ東京月曜11時台の西島秀俊主演「シェフは名探偵」。初回の数字が低かったことが継続率アップに貢献しているとはいえ、平均値ランキングでも全体の12位(深夜枠では「珈琲いかがでしょう」に次いで2位)につける好調さは、作品の持つ力の証明だろう。実際、内容面でも好評であった。「珈琲いかがでしょう」も「シェフは名探偵」もテレビ東京月曜11時6分の新設ドラマ枠「ドラマプレミア23」のドラマで、現在、深夜ドラマとしてカテゴライズしているドラマの中でも、最も放送時間が早い。クールの切り方も他局とは一線を画していて、今後も注目の時間枠になりそうだ。

ドラマプレミア23「珈琲いかがでしょう」主演:仲村倫也

 一方で、平均値ランキングでベスト10にランクインしている「恋はDeepに」「ネメシス」「大豆田とわ子と三人の元夫」、「コントが始まる」(日本テレビ)といったドラマたちが、この継続率ランキングでおしなべて下位に沈んでいる。平均値でベスト10に入っているのだから、決して見られていなかったわけではない。実際にどれも見応えのあるドラマではあったのだが、継続率につながっていないケースが多かったというのが4月クールの大きな特徴なのである。特に「恋はDeepに」「ネメシス」に関しては、前述したように初回のポイントが飛び抜けて高い。言葉を変えれば、初回のポイントが2回目以降に引き継がれなかったということである。視聴者の期待とドラマの狙いが微妙に違っていたのかもしれない。

 一方で「大豆田とわ子と三人の元夫」や「コントが始まる」は、力のある脚本家が挑んだオリジナルの冒険作でもあった。そうした制作者たちの冒険が新たなドラマの地平を切り開いてきたことも私たちは知っている。ここから何を読み取るか。たとえば「ドラゴン桜」は、視聴者の期待を最大限に生かし、それを武器として成功したドラマだと言える。同じクールでこうした現象が起きていることに大いに注目してほしい。同じようなドラマばかりになってしまってはつまらないから。

 テレビやドラマを取り巻く環境は今までにも増して厳しくなっている。コロナの影響もますますのしかかっているように見える。それでも作り手たちの意欲と情熱に期待したいし、応援していきたいと思う。スポーツの夏の次は、ドラマの秋がやって来る。今後も新しいドラマやテレビの見方を紹介していきたいと思う。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社



関連記事

この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.