目黒蓮主演「海のはじまり」を抑えてトップに立ったのは？夏ドラマを大検証！2024/10/30

　今回は7月クールの連続ドラマを振り返る。関東140万台を超えるレグザの視聴データを基にした恒例の検証企画だが、TVガイドWebの「週間テレビ視聴ランキング」の指標が変わったので、こちらの企画もその新しいデータを使用。「リアルタイム視聴」と「録画視聴」を合算して、より総合的に「最も見られたドラマ」を浮かび上がらせて行く。果たしてこの夏、視聴者から最も支持されたのはどのドラマだったのか？

2024年の夏ドラマ全話から放送回をランキング！

　早速、7月クールに放送された連続ドラマを放送回ごとの視聴データで集計した「放送回ランキング」のベスト30を見ていこう（朝ドラや夜ドラの帯ドラマは除いている）。ポイントは1位を100とした場合の割合である（以下同）。

　ベスト10中、6位を除いた9本を「ブラックペアンシーズン2」（TBS系）が占めた。2018年に放送された二宮和也主演ドラマのシーズン2ということでスタート前から注目されていたが、見事期待にこたえた形だ。そして、最終回の6位を筆頭に、特別編含む13話すべてを24位以内にランクインさせたのが「海のはじまり」（フジテレビ系）。目黒蓮主演、生方美久脚本×風間太樹監督×村瀬健プロデューサーの“silentチーム”が手掛けた月9ドラマで、こちらもまずは合格点というところだろう。そのほかベスト30には、宮藤官九郎脚本の「新宿野戦病院」（フジテレビ系）や松本若菜主演「西園寺さんは家事をしない」（TBS系）が名を連ねている。

ドラマの全話平均データでは3位以降が接戦に

　続いて、7月クール連続ドラマの「ドラマ平均値ランキングベスト20」を見ていただく。各ドラマの「リアルタイム視聴」と「録画視聴」の合算データから、全話の平均を集計し、高い順に並べたランキングである。

　「ブラックペアンシーズン2」が頭一つ抜け出しての第1位、「海のはじまり」がそれに続く2位に入った。それぞれTBSとフジテレビの看板ドラマ枠で、内容も枠のイメージを正しく反映した力作であった。どちらかと言えば、「ブラックペアン」はリアルタイム視聴に強く、「海のはじまり」は録画視聴で地力を発揮した。名実ともに今クールを代表する2作品であった

主演の二宮和也、竹内涼真、小泉孝太郎などキャストが集結！日曜劇場「ブラックペアン2」制作発表会見

　3位以降は互いに決め手を欠く接戦となった。中でもダイナミックな動きを見せたのが「新宿野戦病院」で、前掲の放送回ランキングで初回が13位に入りながら、2話が25位。3話以降はさらに数字を下げ、平均値では3位「西園寺さんは家事をしない」の後塵を拝しての4位。5位の「笑うマトリョーシカ」（TBS系）にも差を詰められる形となった。軽快かつ斬新な切り口でハードなテーマを扱い、歯ごたえを感じさせた“クドカン脚本”ならではのドラマだったが、視聴者が期待していたイメージと違った部分があったのか、各話で大きく数字が上下した結果、4位のランクインとなった。

　例年のことだが、7月クールのドラマは大きな行事に左右される。今年はパリオリンピックがあったし、東京都知事選挙もあった。「27時間テレビ」（フジテレビ系）や「24時間テレビ」（日本テレビ系）もそうだし、大谷翔平選手が初HRを放ったMLB（メジャーリーグ・ベースボール）のオールスターゲームもこの時期であった。そして暑さも厳しい。落ち着いてドラマを見る環境ではないということで、各局とも編成に苦慮した様子がうかがえるが、その中でベスト5に3作品をランクインさせたTBSはやはり一枚上の底力を示したと言えるし、2位と4位のフジテレビ2作品も確かなクオリティーで結果を残した。形としては、この上位5作が7月クールを代表するドラマだったと言える。

夏ドラマで満足度が高かった作品はどれなのか？

　では、クール全体としてはどうだったのか。下記の表は「最終回継続率ランキング」のベスト20である。「最終回継続率」とは最終回のポイントを初回ポイントで割った数値。最終回継続率が高い（＝初回に比べて最終回のポイントが高い）ということは作品内容に対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。

　最終回継続率が100％を超えている（＝最終回の録画視聴ポイントが初回より高い）ドラマは全部で6本。しかも、1位「夫の家庭を壊すまで」（テレ東系）と4位「あの子の子ども」（フジテレビ系）は午後11時台、2位の「広重ぶるう」（NHK総合）は早朝6時台の放送だから、いわゆるゴールデン・プライム帯（午後7時～午後11時）のドラマで継続率が100％を超えたのは、わずかに「海のはじまり」と「スカイキャッスル」（テレビ朝日系）、「笑うマトリョーシカ」の3本だったということになる。個々の作品としての評価はともかく、クール全体としては、視聴者が継続して視聴した（＝満足度が高かった）ドラマは少なかった、いささか低調なクールだったと結論せざるを得ない。

　ただ、これだけでドラマ自体の停滞の証とは言えないだろう。朝ドラ「虎に翼」（NHK総合ほか）への高評価や動画配信サービスのオリジナルドラマ作品などへの注目度を考えれば、ドラマ自体への関心はむしろ高まっているといえるかもしれない。そして10月クールのドラマには、各局の野心や思惑が詰まった力作がそろっている。どんなドラマが私たちを楽しませてくれるのか、新たな指標による毎週のランキングにも注目して、ドラマを楽しんでほしい。

文／武内朗
提供／TVS REGZA株式会社