「ブラックペアン」「おっさんずラブ」…胸キュン満載の春ドラを斬る!~データから見たドラマ分析・2018春~2018/07/20
TVガイドWebでは、関東約27万台超の東芝レグザの視聴データを基に、毎週録画視聴ランキングを発表している。今回はその特別編として4~6月に放送された連続ドラマ(春ドラマ)にスポットを当て、ドラマ視聴者たちがどのドラマをどんな風に楽しんだのか、深く探っていこうと思う。世帯視聴率とはひと味違うドラマの楽しみ方が伝わってくるだろう。
まずは4~6月クールに放送された春ドラマを各放送回単位で集計したのが以下のランキングである(ポイントは1位を100とした場合の割合を表す。以下同)。
表を見てもらえれば一目瞭然、圧倒的強さで上位を独占したのがTBS日曜9時の「ブラックペアン」である。海堂尊原作・二宮和也主演の医療ドラマで、スタート前から今クール人気ナンバーワンの呼び声が高かったにもかかわらず、世帯視聴率では前半思うように数字が伸びず苦戦が伝えられたが、録画視聴ランキングでは開始早々から高ポイントでずっと上位をキープしていたことがわかる。しかも終盤に向け、獲得ポイントがきれいに上昇カーブを描いており、こうした録画視聴の好調ぶりが8話以降の世帯視聴率上昇にも一役買っていたといえる。最終的には番組終了後、続編にも期待が集まるなど多くの視聴者の心をつかみ、名実ともに今期のトップドラマとなった。
続いて各ドラマの録画視聴ポイントの全話平均を算出して数値の高い順に並べた、春ドラマ平均録画視聴ポイントランキングを見てみよう(4~6月クールの連続ドラマに限定したので、クールをまたいで放送されているドラマは含んでいない)。
「ブラックペアン」に次いで全話平均ランキングの2位につけたのは、やはりTBSの火曜10時「花のち晴れ~花男Next Season~」。杉咲花、平野紫耀、中川大志のトリプル主演で「花より男子」シリーズの続編として話題を集め、録画視聴でもコンスタントにポイントを獲得した。3位も同じTBS金曜10時の「あなたには帰る家がある」であった。今クールの世帯視聴率を見てみると、平均で2ケタを獲得したのは4作。トップは最後の追い込みで「ブラックペアン」がゲット、録画視聴との2冠を達成したものの、残りの3作はテレビ朝日の「特捜9」 「未解決の女」 「警視庁・捜査一課長」が占めた。そして3作ともが録画視聴では下位に甘んじている。これだけはっきりと視聴傾向に偏りが出るのも珍しい。
いずれも警察官が主人公で、警視庁が舞台という極端な編成だったことが注目を集めたが、前クールの「99.9」 「アンナチュラル」 「BG~身辺警護人~」が視聴率でも録画視聴でも好成績だったことを思えば、いわゆる事件もの、一話完結ものであることを視聴傾向の原因とするのは早計だろう。シリーズものであること、キャストの傾向、ステーション・イメージなど、さまざまな要因が絡み合ってのことと考えられるが、いずれにしても興味深い結果である。
前クールでも用いた「最終回のポイントを初回のポイントで割った割合」、いわゆる「最終回継続率」による分析を今クールでも行ってみた。初回より最終回のポイントが高い(=最終回継続率が高い)ということは、作品内容に対する満足度が高い傾向にあるのではないか、という仮説の下での検証である。今クールの「最終回継続率」のランキングは以下のようになった。
上位10番組が100%を超え、初回より最終回の方が録画視聴者を増やしたということになる。そして、堂々首位に立ったのが話題騒然「おっさんずラブ」。SNS周りでは早くから人気に火が付き、回を追うごとに大きなムーブメントになっていった、今クール最大の話題作である。田中圭、吉田鋼太郎、林遣都、眞島秀和らが繰り広げる大人の男の純愛物語。BL好きの女性層が旗を振ったのは間違いないが、物語が進むに連れてそれ以外の多くの女性ドラマファンが熱狂的に支持。ドラマ終了後も“おっさんずロス”現象が冷めやらない。男性陣のキャラ立ちの鮮やかさに加えて大塚寧々、内田理央ら女性陣の配置も絶妙で、全体にファンタジーテイストが振りかけてあるとはいえ、性別を取り払った総当たりラブストーリーというのは、まさに一種の発明と言っていい。とにかくドラマ内に流れる空気の優しさ、心地よさが際立っており、それがこれだけ多くの人々を熱狂させた大きな要因だろう。続編希望の声も多く、局も前向きな姿勢を見せているので、ブームはまだまだ続きそうだ。2位の「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」も視聴率では苦戦したが、最終回に向けて録画視聴ポイントを大きく伸ばし、継続率は「おっさんずラブ」に肉薄する健闘を見せた。また、「花のち晴れ」「ブラックペアン」「あなたには帰る家がある」の3作は継続率でも上位を占め、内容への満足度も高かったことがうかがえる。
また今回は特に深夜帯ドラマ(午後11:00以降にスタートするドラマ)の平均録画視聴ポイントランキングを出してみた。
「家政夫のミタゾノ」や「孤独のグルメ」などシリーズ物の強さが目立ち、「おっさんずラブ」も2位につけている。同じ深夜帯といっても、放送開始が深夜0時を回る深い時間帯のドラマは下位に甘んじている。録画視聴であれば時間帯は関係ないはずだが、やはり影響はゼロではないのだろうか。あるいは、今回「おっさんずラブ」が大きな注目を浴びたように内容次第で下克上の可能性はあるのか。今後の動きが注目される。
今回もレグザデータを使った多面的な分析によって、視聴率だけではわからない番組の視聴傾向が見て取れた。今後もこのコラムではさまざまなテレビの楽しみ方を紹介していくので、お楽しみに。
文/武内朗
提供/東芝映像ソリューション株式会社
【ご注意】
・ランキングデータは、関東1都6県の東芝製テレビから、許諾を頂いた視聴情報を集計し、ランキング形式でまとめたものです。
・ランキング集計期間には、集計日当日の翌日AM5:00までの番組を含みます。
・ポイント数は1位を100とした場合の比率となります。
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