中川晃教、スヌーピーとして見る景色【ミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」リレーインタビュー⑥】2021/03/29
世界中で読み継がれ、愛され続けている大人気コミック「ピーナッツ」(著:チャールズ・M・シュルツ)。これを原作としたミュージカルの歴史は古く、1967年にオフ・ブロードウェーに初登場し、99年にはブロードウェーに進出。まさに、世界中の多くの観客を魅了し続けています。
そんなミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」が、2021年3月30日より日比谷シアタークリエに登場。17年以来の再演として新たなキャストを迎え、さらにパワーアップして帰ってきます! 今回は、そんな注目作のキャストの皆さんを取材。会見の様子と合わせ、インタビューを通じて作品の見どころやそれぞれの魅力を深掘りしてご紹介します。
(ミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」リレーインタビュー①はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-744208/、②はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-745626/、③はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-745657/、④はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-745640/、⑤はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-745693/)
最後にご登場いただくのは、世界で一番有名なビーグル犬・スヌーピーを演じる中川晃教さん。スヌーピーという役柄を通して見る本作の楽しみ方や、日々大切にしているモットーについて語っていただきました。
――2017年の初公演から引き続きでのご出演ですが、お気持ちはいかがですか?
「心のどこかで『いつか再演したい』と思い続けていた作品だったんですよ。4年たって、初公演の印象も程よく残りつつ、またお客さまに新鮮に受け止めていただけるかなと思います。初演での経験や前回のメンバーと作り上げてきたものを自分の宝物として心の糧にしながら、今回もスヌーピーという役を演じられたらと思っています」
――今回はどういった点がポイントになるのでしょうか。
「この作品は原作が4コマ漫画なので、短い物語が連なっているんですよね。その断片が集まって一つのブロックになって、そのブロックのオムニバスというような構成なんです。初公演の時はその断片を一つ一つ丁寧に作り、それを1時間半通したらどのような物語になるのか…とにかく手探りの中で作っていたんですが、今回は一度完成した経験が土台にあり、確実に作品への理解が深まったいい状態でスタートが切れていると感じます」
――スヌーピーは作品の中でも一つの“アクセント”となる存在かと思いますが、演じる魅力はどのようなところにありますか?
「スヌーピーと、その飼い主である(花村想太さん演じる)チャーリー・ブラウンが“対の存在”に見える瞬間ですかね。物語の中で一貫して、チャーリー・ブラウンという存在からスヌーピーという存在が、反対に、スヌーピーという存在からチャーリー・ブラウンという存在が見えてくるところがあるんです」
――興味深いです。ぜひ具体的に教えてください。
「スヌーピーとチャーリー・ブラウンは、どこか共通する悩みを持っているのではないかと思う部分があるんですよね。例えば、チャーリー・ブラウンは本質的にとても優しくていい子なんだけれども、自信が持てず、大事な場面で、どうも自分の思った通りにできないところがあるんです。そんな“自分”という悩みを抱えていて、けれど彼は彼なりに毎日を楽しく一生懸命生きているというのがこの作品のいいところだと思うんですよね」
――確かに。チャーリー・ブラウンから勇気をもらえる部分ですね。
「一方で、スヌーピーは『自分は昨日犬だった。今日自分は、やっぱり犬だ。ということは、明日も犬なの?』と考える瞬間があるんです。『そんなこと考えたってしょうがないよね、考えるのやーめた』となるんですけど、スヌーピーはある意味“自分が犬であること”に悩んでいるんですよね。悩みにもいろんな度合いがあるけれど、“自分は何者か”を自問しているんです。そういった意味ではスヌーピーも悩んでいるのかな、自分と向き合ってるのかなと思ったりするんですよ。そういうところがチャーリー・ブラウンと似ているな、対の存在なんじゃないかなと思うんです」
――そう考えると、スヌーピーとチャーリー・ブラウンは深いところに共通点があるんですね。
「さらに、これを脚本を基に役者がどう深めて表現するか。それがどうお客さまに伝わっていくのか。内容に焦点を当ててみると、今お話したような部分はスヌーピーを演じていて楽しいところですね。台本の読み方からいろんな考え方ができるけれども、そんな2人をセットにして考えてみると、芝居も深まっていくのかなと思います」
――見る側としても、今のお話を聞いた後ではまた新しい視点を持って楽しめそうだなと感じます。話は変わりますが、「ピーナッツ」には“幸せとは、人生とは”という大きなテーマがありますが、中川さんが人生のモットーにしていることはありますか?
「『今日もいい1日だったな』と思えるように過ごすことですかね。1日の終わりに心地いい疲れを感じられるとか。その日の自分の仕事や役割を全うして、ギリギリの綱渡りのような場面もあったけど何とかいったな、みたいな。諦めず妥協せず、もちろん自分のこだわりを無理に押し通すということではなく、確かな選択をして『あの判断は正しかったな』と思えるようにというか。もちろん反対に『なんであの時…!』という気持ちになることもあるけれど、1日1日を『今日も頑張った』『今日もいい1日だった』と思えるように過ごすことはこの作品のテーマにも通ずるし、僕自身も大切にしていることです」
――では最後に、舞台を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
「この作品が持つパッケージといいますか、ベールやラッピングは、とても洗練されていてかわいくてすてきなんです。その上で、シアタークリエという劇場で、まるでシュルツさんの描いた4コマ漫画が展開していくように、セットや衣装、音楽、そして私たち役者一人一人の思いや芝居、どのパーツを取っても洗練されたものとして届けられるよう日々ブラッシュアップしています。シュルツさんが描いた物語のすてきなベールやラッピング、そしてその中で世界観を表現していく私たちの姿の両方を、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらと思います」
――ありがとうございました!
作品に対する愛を語ってくださった中川さん。「今日もいい1日だった」と思えるように日々を過ごされているからこそ、中川さんは一つ一つのことを大切にできるのだと感じました。インタビューを通じて、“自分を幸せにできるのは自分” “小さな意識の変化で見える景色は変わる”、そんな人生を豊かにするヒントをいただけたように思います。
ついに明日開幕する、ミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」。今だからこそ見たい、“小さな幸せ”が詰まった作品が日比谷シアタークリエを彩ります。日本中を笑顔にする、6人の愛すべきキャラクターたちに注目です!
【プロフィール】
中川晃教(なかがわ あきのり)
1982年11月5日生まれ。さそり座。宮城県出身。2001年、自身が作詞作曲した「I Will Get Your Kiss」でデビュー。同曲で「第34回日本有線大賞 新人賞」を受賞。02年、ミュージカル「モーツァルト!」ではタイトルロールを演じ、「第57回文化庁芸術祭賞 演劇部門新人賞」「第10回読売演劇大賞 優秀男優賞」「杉村春子賞」を受賞。以降、音楽活動と並行して数々のミュージカル作品に出演し、唯一無二の存在感で観客を魅了している。
【作品情報】
ミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」
東京公演 日比谷シアタークリエ/2021年3月30日〜4月11日
大阪公演 サンケイホールブリーゼ/2021年4月15日〜4月18日
愛知公演 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール/2021年4月20日
長野公演 長野市芸術館メインホール/2021年4月23日
取材・文/佐藤佳奈恵
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