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高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」2021/03/18

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

 高畑充希さんがテレビ朝日系連続ドラマ初出演にして初主演を務めるドラマ「にじいろカルテ」。連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK総合ほか)などで繊細に物語を紡いできた脚本家の岡田惠和さんとタッグを組んだヒューマンドラマで、演出を手掛けたのは、ドラマ「僕とシッポと神楽坂」(同系)などで知られる深川栄洋さんです。

 今回、TVガイドwebでは深川さんにインタビューを敢行。岡田さんが描く脚本を演出する難しさや、作品へのこだわりなどをお聞きしました!

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

――岡田さんと久々のタッグでしたね。

「僕が岡田さんの脚本を映像化するのは3回目、舞台を含めると4回目でした。岡田さんの脚本は型がなく、毎話変わる“物語の始まり”を見つけていくのがとても難しいなと感じています」

――どういうところが難しく大変なのでしょうか。

「台本は脚本家からのラブレターだと思っていますが、岡田さんから届く台本を読むと、『誰の物語なの?』『誰を見ていったらいいの?』と、僕の低いアンテナでは分からないことがあるんです。でも、膨らませるべき物語はどこかを考えながらもう1回読んでいくと、『この人をフィーチャーしたらいいのか。ということは、このセリフを大事にしなきゃいけないのか』と見えてくるんです。ただ、ようやく見つけられたと思っても、『これって地味だな』とか『これって(物語が)大きくなるのかな。クライマックスになるのかな』と、乗り越えていかなきゃいけない壁が出てきて…。でもそれは、台本を何度も読み直しながら僕や音楽家、小道具、役者たちが輪郭をはっきりさせていけばいいと思ってやっています」

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」
高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

――「にじいろカルテ」の中で物語を拾うのが大変だった回はありましたか?

「北村匠海くん演じる(蒼山)太陽くんの物語です。4話では(浅黄)朔さん(井浦新)の物語がありました。(紅野)真空さん(高畑)も自分が病気になってしまったところから、医者としての姿はどうあるべきかと考えていきます。でも、太陽くんは自分には特徴的なものが何もない、つまらない人間だというふうに感じていて。周りの人がうらやましいと思ってるんですね。ほかの人たちは味付けを濃くしていけば(キャラクターや物語が)立ち上がってくるんですけど、太陽くんの物語はどうやって立ち上げていったらいいんだろう…と、結構悩みました」

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

――どうやって拾い、大きくしていったのでしょうか。

「まずは太陽くんが味付けが濃い人たちの“濃い部分”を見た時に、どういう反応をしているのかを盗み取っていくところから始めました。見ていただいたら分かると思うんですけど、自分のことに触れられると怒ったりキレやすくなったりしていましたよね。薄い自分を自覚しているからで。だから、太陽くんの周りにいる人々をさらに強めて表現することで、自分に何もないと言っている太陽くんを際立たせました」

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」
高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」
高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

――最後に、この作品全体を通してこだわった部分を教えてください。

「世知辛く窮屈で苦しい状況ですけど、それが今の東京の情景で。その姿をこのドラマでは色のトーンを青く暗くしていく、冷たい色彩で表現しました。それが、虹ノ橋を渡ると色が出てきます。東京の人たちは感情を押し殺し、村の人たちは感情の起伏が激しいという違いが、色でも見ている人に伝わるといいなというメッセージでもあります。『ゲゲゲの鬼太郎』では、人間は通り一遍にしか描かれないんですけど、妖怪の方は豊かに描かれているんですね。そこからヒントを得て、人間を東京の人、妖怪を真空も含めた村の人たちに置き換えてみました。全編を通して分かりやすくは描かれないですけど、伝わりにくい部分も大事にした作品になったなと思っています」

【プロフィール】

深川栄洋(ふかがわ よしひろ)
1976年9月9日生まれ。千葉県出身。専門学校在学中から自主制作映画を監督。2005年に公開された映画「狼少女」で劇場用長編映画監督デビュー。その後、映画「60歳のラブレター」で脚光を浴びると、映画「白夜行」「神様のカルテ」、ドラマ「手紙」(テレビ東京)など次々と話題作の演出を手掛けた。22年には映画「桜のような僕の恋人」の公開が予定されている。

【番組情報】

高畑充希主演「にじいろカルテ」演出・深川栄洋がこだわったのは「世知辛く窮屈な東京の様子を冷たい色彩で表現すること」

「にじいろカルテ」
テレビ朝日系
木曜 後9:00~10:09

テレビ朝日・ABCテレビ担当 Y・O 



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