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綾瀬はるか主演「あなたのそばで明日が笑う」東日本大震災から10年、改めて思うこととは?2021/03/05

綾瀬はるか主演「あなたのそばで明日が笑う」東日本大震災から10年、改めて思うこととは?

 綾瀬はるかさんが主演を務める、東日本大震災10年 特集ドラマ「あなたのそばで明日が笑う」(NHK総合ほか)が3月6日に放送されます。

 “後ろを向くことで、前に進んでいっちゃ駄目なのかな…”。それは綾瀬さん演じる真城蒼が、震災で行方不明になった夫・高臣(高良健吾)を待ち続けている“夢の時間”です。未曽有の被害をもたらした東日本大震災から10年。宮城県石巻市に移住してきた建築士・葉山瑛希(池松壮亮)と出会い、蒼は“現実の時間”を積み重ね始めます。二つの時間を生きる蒼と、震災を知らない瑛希が心を通わせていく…。両者を思い、前を向いて歩み始める、心温まる愛の物語です。

 今回は、復興を応援し続けている綾瀬さんに、作品に込めた思いや、演じていて感じたことなどをお伺いしました。

――震災から10年という節目のドラマで主演を務める思いを教えてください。

「私自身もこのドラマをやらせていただくことによって、10年たった今、どういう風に感じているか、現地がどうなっているのかを改めて知り、驚いたことや苦しくなったことがたくさんあります。震災の被害に遭われた方々のことを知らない人たちにも、作品を通して、“前を向いて頑張っている人たちがいるんだよ”ということが伝わり、少しでも寄り添ってもらえたらいいなと思います」

――初めてドラマのタイトルを聞いた時、役柄を知った時の印象はいかがでしたか?

「作品名は、前向きなメッセージがあると思いました。役柄については、震災で行方不明になった夫を受け入れるという経験を抱えながら日々苦しんで…でも前を向こうと、もがきながら生きている女性なので、少し苦しい役だなと思いました」

綾瀬はるか主演「あなたのそばで明日が笑う」東日本大震災から10年、改めて思うこととは?

――震災前と震災から10年たった今、“二つの時間を生きる女性”を演じる上で大変だったことはありますか?

「いなくなってから10年たっても、毎朝変わらずに旦那さんのご飯を作るような経験をしたことがないので…。突然の出来事で、受け入れることにも時間がかかるし、まだ受け入れられていない部分もあるし、そういう葛藤が長かったので、気持ち的にも鬱々(うつうつ)としたのが大変でした」

――撮影を終えた感想をお願いします。

「震災から10年たって、被災地で暮らす方々や震災に遭われた方々が、今どういう気持ちで過ごされているのかを、本当に少しですが、感じることができました。現地に行って、まだまだ復興途中ということも感じられましたし、より明確になりました」

――コロナ禍ではありますが、現地の方と直接お話することはできたのでしょうか?

「街の人や、お店の方としかお話はできなかったのですが、誰かに会って、いろんな思いを聞くというよりは、『私の夢まで会いに来てくれた』という本を読んで、役の気持ちを知っていきました。震災に遭われた方々が、“亡くなった人や行方不明になった人が夢に出てきた”というエピソードをつづった本で、実際のお話がたくさん語られているので、それを読んで、どういう別れ方をしたのか、何年たってどう思っているのかを知ることができました」

――石巻の撮影で、印象に残っていることはありますか?

「津波によって被害を受けた小学校がそのまま残されていたり、街の壁やお店の中に『ここまで波が来ました』と記されてあったり、10年たっても、すごく刻まれていて、皆さんの出来事として、胸に抱えながら、日々一生懸命過ごされていました。癒えていないことが多い中、今あるものに目を向けて頑張っている姿を見て、改めて“まだまだこれからだよな”と感じました」

――蒼を演じて、感じたことがありましたら教えてください。

「“待っていても帰って来ない”と分かっていても、いまだに待っていることに対して、ずっと苦しくて…。でもそれを否定したり、苦しいと思ってしまうのは駄目だと思ったり…何度も同じことを考えていたと思います。自分の中でまだ消化していないからこそ、息子に大事なことが話せていなくて…。“行方不明の夫を待っていてもいいんだ”と初めて許した時に、自分の深い気持ちや悲しみに向き合ったことで、息子と本音で話ができて、理解できたと思います。第三者の瑛希には、本当のことが言えたのもあると思いますが、瑛希も『待ちたい』と言ってくれたことで、自分が癒えて前に向かうことができた…。自分が変わることによって、周りも変わっていったのかなと思います」

――心温まる物語だと思いますが、胸に響いたシーンはありますか?

「蒼は、旦那さんのことを“忘れよう忘れよう”と、切り替えて前に進もうとしていたのですが、そうではなくて、旦那さんの存在を一緒に抱えながら、この先を作っていきたいという…。瑛希は旦那さんの代わりにはなれないけど、自分も一緒に待つことができると言ってくれたシーンは、蒼の悲しみやいなくなった旦那さんの存在を、周りにいる人も大事にしながら、一緒に前に進んで行く感じがして良かったです。忘れることはできないけど、本当の意味で受け入れることができて、心の中で融合させている感じが、一歩踏み出せる大きなきっかけになった気がします」

――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

「池松さんは寡黙で、一見話し掛けづらいのかなと思っていたのですが、役の話や、たわいない話もしました。最終的には、池松さんが突っ込まれ役で、みんなからいじり倒されていて、皆さん仲が良かったです」

綾瀬はるか主演「あなたのそばで明日が笑う」東日本大震災から10年、改めて思うこととは?

――綾瀬さんご自身が思う、ドラマを通して伝えたいことを教えてください。

「大事な人を失ったという現実を受け入れることは、忘れるのではなくて、悲しみみたいなものを自分の中に取り込んで、前に進む力に変えていけますし、前に進むことで、新たな出会いもあると思います。人それぞれ大小関係なく、悩みや苦しみがあると思いますが、時間がかかっても、受け入れながら前に進んでいくと、明日はつながっていくよという前向きなメッセージが伝わればいいなと思います」

――ありがとうございました。

あらすじ

綾瀬はるか主演「あなたのそばで明日が笑う」東日本大震災から10年、改めて思うこととは?

 一人息子と暮らす蒼(綾瀬)は、街中の空き家をリノベーションして、震災で行方不明になった夫・高臣(高良)が愛していた本屋を再開させることを決意。義理の妹・遥(土村芳)の紹介で、人付き合いが苦手な移住者の建築士・瑛希(池松)と出会います。蒼と瑛希は、正反対の性格と異なる境遇から分かり合えないまま、一緒に本屋を作るうちにひかれ合っていきますが…。

【番組情報】

東日本大震災10年 特集ドラマ「あなたのそばで明日が笑う」
NHK総合・NHK BS4K
3月6日 午後7:30~8:43

NHK担当 M・I



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