【加藤シゲアキ インタビュー〈前編〉】初のNHKドラマで関西弁に苦戦!? メンバー&先輩のおかげで「肩の力が抜けました」2021/02/05
2月6日から土曜ドラマ「六畳間のピアノマン」(NHK総合)が始まります。事故で亡くなった夏野誠(古舘佑太郎)が動画投稿サイトに残したビリー・ジョエルの名曲「ピアノ・マン」。それに触れた4人の人生が交錯していくストーリーで、第1回の主人公で夏野の元同僚・村沢憲治を加藤シゲアキさんが演じます。
パワハラを受けていた夏野の死をきっかけに、人との関わりを避けてきた村沢は、派遣先の職場で再びパワハラを目撃。かつて行動に移せなかった自分との葛藤に苦しみます。
今回は村沢役の加藤さんに、作品の魅力はもちろん、出演が決まった時のお気持ちや役づくりの苦悩など、たっぷりとお話を伺いました。前編、後編にわたりお届けします。
――今回、NHKのドラマは初出演ですよね。以前、ご自身の原点を“NHKのリハーサル室”とおっしゃっていましたが、原点でもある放送局のドラマに出演することへの思いやお気持ちを教えてください。
「感慨深いというか、うれしいですね。NHKさんには、ドラマ以外ではたくさんお世話になってきました。今までドラマのご縁がなかったので、嫌われているのかなと思っていたんですけど(笑)。この機会に出演させてもらえるのは、すごくうれしかったですね! また両親が喜んでいました。『やったね。おばあちゃんにも勧められるわ』と言っていました。親戚一同、楽しみにしてくれています」
――本作はとてもシビアな内容に感じましたが、実際に演じてみていかがでしたか?
「おっしゃる通り、発端となっていることがとても苦しいものではあります。僕は、事故で亡くなった夏野の同僚という立場なので、その事故自体はとても悲惨ですが、台本を通して読むと、どこか抜けのある話というか、希望にあふれた物語になっています。もちろんそのシーンを演じる場面はとても苦しいのですが、最終的には見た方が一歩踏み出せる、とても前向きな物語だと思います」
――23歳と32歳を演じ分けて、心境の変化もすごくあると思います。役づくりで意識されたことはありますか?
「スーツの形などの見た目は変わっていますが、ルックスに関して、それほど差はありません。ただ8年前はガムシャラな新入社員で、現在は人と関わるのをやめて、達観したような派遣社員なので、別人を演じているようなところがありました。全部が全部ではないですが、まず現在のシーンを撮影してから、8年前を撮るような流れだったんですね。派遣先の職場で登場する、パワハラを受けている永津昇(森永悠希)という人物に、過去の自分を重ねたので、23歳の村沢は永津を意識しながら演じるという、逆輸入のような感じでした」
――加藤さん演じる村沢憲治は、どのような人物でしょうか?
「セリフにもありますが、8年前の村沢は上司に『洗脳されていた』。でも洗脳という言い方だけではなく、すごく視野が狭くてガムシャラでした。完璧に仕事をこなしたいがゆえに、大事なものを見誤って、欠落させていたことに対して後悔します。夏野が亡くなったことによって変わってしまった村沢は、“人と関わるのをやめる”という選択をする…。それほど彼にとっては、つらいことだったんですよね。“誰とも関わらなければ傷つくことはない”という感覚は、分からなくないなと…。むしろ共感できるところでもあります。しかし、本当にそれでいいのか…本当にそれで幸せなのか…。村沢は思考停止状態で自分を律しているので、そういうことは考えない。この物語を通して、村沢がどう変化し、どう成長していくのかというところが見どころかなと思います」
――ガムシャラだった村沢が人との関わりを避けるようになるという点で、感情の出し方や頂点への持っていき方など、工夫したことがありましたら教えてください。
「物語の順番でいくと、冷めたところからトラウマを呼び起こして変わる決意をするので、いろんな気持ちをイメージして現場に臨みました。大立ち回りのようなシーンがあるんですが、そのシーンは撮影2日目に撮ったので、ゆっくり作るというよりは、一気に上げていく感じで…。パワハラをする上司・仁藤武勝役をメッセンジャーの黒田有さんが演じられたのですが、そのパワハラ上司と永津のお芝居を見て、どんどんいら立ちを重ねていきました。現場で瞬発的に作っていくことが多かったです。あと、関西弁が難しかったのですが、方言が強くなればなるほど感情が出ているように見えるので、逆に関西弁のニュアンスに助けられたかなと思います。セリフの力に引っ張ってもらったかな…」
――実際にその言葉を発した時、パワハラ上司に対して、どのようなお気持ちになりましたか?
「もちろん永津を助けたいという思いもありますが、結局のところ、永津を助けることで自分を助ける話なんですよね。そういう意味では、浄化したというか、すごくスッキリしました。とても勇気のいる行為ですが、結果的にすごくスッキリして、一皮むけたというか、一歩前に進めて、足取りが軽くなった感じはありましたね」
――村沢は過去の自分に葛藤して苦しみますが、そのようなご経験はありますか?
「あんまりないんですよ。昔はあったと思うんですが、過去を反省しないんです。そんなことをいうと語弊がありますが、過去のことを反省するよりは、参考にしようと思っています。反省すると減点方式ですが、参考にすると、一つのパターンとして少しライトにいられます。そういう意味でいくと、どんな失敗も一つの前例になるので、僕は反省するよりも参考にするようにしています」
――役づくりをする上で大変だったことや、入りやすかったことがありましたら教えてください。
「今までの作品と一番違うのはセリフが関西弁なので、難しかったです。子どもの頃、5年ほど大阪に住んでいたので、すんなり入れたと思うんですが、お芝居の中で演じる関西弁と頂いた台本の関西弁は、当時僕がしゃべっていたニュアンスとは違っていて…。最初の壁というか、いわゆるタスクみたいなものでいうと、そこが一番難しかったです。関西弁にもグラデーションがあるんですよね。例えば、営業先では標準語っぽく話して、語尾だけ関西弁にしたり、仲間内で飲んでいる時はラフに関西弁が出たり…。グラデーションがいろいろあると思うので、そういう相談をさせてもらえたのは良かったです」
――具体的にどのような練習をして、関西弁のイントネーションを習得されたのでしょうか?
「方言指導の先生から全セリフの音源データを頂いて、それを聞いていました。ただ、イントネーションの確認なので、あえて無感情で読み上げてくださっていて、お経的な関西弁なんですよ。その音声を聞きすぎて、夢を見ました(笑)。夢というか、何も音がないところで先生の声が聞こえるような…幻聴!? 音源を聞きながらどうお芝居をするか考えるのは別の能力が必要でしたね。関西弁のニュアンスや役を演じるしぐさ、人間性をどういうふうに表現すると面白いのか…やりがいのあるところでした。現場にも同じ先生がいらっしゃるので、『合っていますか?』と、その都度確認をしています」
――幻聴が聞こえるほど勉強をされているということは、日常でも関西弁が出てしまいそうですね。NEWSのメンバーから何か反応はありましたか?
「僕が音声を聞きながら台本を読んでいるのを見て、小山(慶一郎)がまねするんですよ。彼はそういうのが全然できなくて(笑)。“あ! 下手な人の関西弁はこうなんだな”と…実はとても勉強になりました。“これは違う!”というのが分かりました」
――増田貴久さんは何かおっしゃっていましたか?
「まっすーとは『方言のセリフ難しいよね。方言のドラマはやったことある?』みたいな話をした気がします。少しだけ方言を使う役はあったかもしれませんけど、ここまでがっつり話すのは、おそらく初めてだと思います」
――最初に“関西弁のセリフがある”と聞いた時、どう思われましたか?
「楽しみだなと思いました。ただ台本を読んで文字だけ見たら、東京の言葉でしゃべることができるセリフもあるわけですよ。やっぱり最初に脳で変換されるのが東京の言葉だったので、結構悩ましかったです。音源を聞いたけど、実際にどうやって芝居をするんだろうと…。もう少し感情を入れたバージョンの音源を頂いた方がいいのかなと思ったんですが、偶然、関ジャニ∞の丸山(隆平)くんと会って、『初めて関西弁のドラマをやるんですよ。関西の人は東京に来た時、こういう感覚だったんですね』と方言の話をしたら、丸山くんは『俺は、感情を入れない棒読みのイントネーションの音源の方がありがたいんだよ』と言っていて…。経験者がそう言うので、方言に対する向き合い方は、こういうものなんだなと思いました。丸山くんと話しているうちに、肩の力が抜けていって…。1回現場に行ったら、なんとなくつかめてきたところもあったので、結果的には力を借りずに撮影に臨めました」
インタビュー後編では、共演者とのエピソードをはじめ、音楽や動画に関するお話も伺いました。明日2月6日正午に公開です。メンバー愛あふれるエピソードも飛び出しましたので、お楽しみに!
第1回あらすじ(2月6日放送)
村沢(加藤)、夏野(古舘)、大友啓介(三浦貴大)は、上司の上河内秀人(原田泰造)からパワハラを受けていました。心身ともに限界だったある日、夏野は事故で死去。それ以来、人と関わらないように生きてきた村沢は、8年後、派遣会社で再びパワハラを目にします。過去の自分と葛藤する村沢。しかし、夏野が動画投稿サイトに残した「六畳間のピアノマン」を見て…。
【番組情報】
土曜ドラマ「六畳間のピアノマン」
2月6日スタート(全4回)
NHK総合 土曜 午後9:00~9:49
NHK担当 M・I
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