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朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」2025/04/18

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

 NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜午前8:00ほか)。今田美桜が主人公・朝田のぶ役を演じる本作は、脚本家の中園ミホさんがアンパンマンを生み出した漫画家・やなせたかしさんをモデルとした柳井嵩(北村匠海)と、嵩の妻・のぶの激動の人生をおくる。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでを描き、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語を届ける。

 本日4月18日放送の第15回では、嵩の母・登美子(松嶋菜々子)が突然、高知の御免与町に帰ってくる。わだかまりはあるものの、母に会えてうれしい嵩。一方、のぶは登美子にある思いを伝えるが…。今回は、そんな嵩を演じる北村さんにインタビュー。役柄や実在する人物を演じる上での心境などを語ってもらった。

――のぶを主人公に、嵩の人生が描かれることについて教えてください。

「2人は常に擦れ違い続けていて、戦争や別々の世界で、お互いが人生でつまずいたり、起き上がったりしています。僕は嵩としてしか生きていないので、『今、のぶは何をしているのか』『何を考えているのか』と、考えている日々です。脚本を読んでいても、のぶの視点、嵩の視点で描かれているような部分があって、『一つだけではなく夫婦の描き方なんだろうな』と思いました。2人の視点が一つになった時に、初めてのぶの視点で描かれていて、お互いに支え合っていて、とても温かい気持ちになりました」

――試写会の際に、「やなせさんの本などを読んでいる」とのことでしたが…。

「一番見ていたのは、やなせさんのインタビュー動画です。思想、哲学、戦争に対する思いや、アンパンマンの話を繰り返し見て聞いていました。(やなせさんの)声で聞く情報、表情から見る情報がすごく助けになりましたし、文字で見るよりも、戦争や“逆転しない正義”への思いを学べました」

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

――実在の人物を演じる上で、大切にしている心構えや楽しさ難しさはありますか?

「基本的にどんな役も向き合い方は同じです。偉大な方であるからこそ、情報をたくさん自分の中に蓄積できる良さはありますが、実在する方を演じるというのは皆さんが抱いているイメージとは異なる瞬間もあると思います。常に『これが正解なのか』と思いながら、嵩だったら、やなせさんだったら…というふうに自問自答する日々です。やなせさんに似ている、似ていないというのももちろん大事ですが、やなせさんをモデルにした嵩だからこそできた表情と思える瞬間もたくさんあったので、普段やっている役とは違う楽しさがあります」

―現在戦争シーンを撮影中とのことで、何か意識していることはありますか?

「戦争シーンを撮影する時は、座長の気持ちでいます。ただ引っ張っていくというより、キャストの皆さんやスタッフさんも含めてコミュニケーションを取ることを意識していました。座長としてつなぐ役割をやるというのが、自分のモットーなので、監督・助監督のお話を聞いて、それぞれの動きの中で空いているパズルを探すような感覚でいました。戦争シーンは別作品のような感覚もあり、『あんぱん』という作品の色のようなものがなくなればなくなるほど面白いと思ったので、今田さんが座長としてやっている時の感覚は一度捨てて、柳井嵩という人間が主演の戦争作品をやっているという思いで演じました」

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

「キャスト陣は人がどんどん移り変わっていきますが、現場全体の空気としては変わらないなと思います。『あんぱん』という作品は明るい部分のみならず苦しい部分もたくさんあって、スタッフも皆さん寄り添ってくださっていて、撮影が終わって(待機場所の)前室に戻ると皆さん泣いてたり…。半年やってきて、まだ一度も楽屋に入っていないです。というのも前室いるのが好きで、スタッフの方とお話していると皆さん楽しそうにお仕事されていて、すごくいい現場だなと思います」

――以前、朝田家のムードメーカーは浅田美代子さん、吉田鋼太郎さんとおっしゃっていましたが、柳井家はどなたになりますか?

「(寛役の)竹野内豊さんです。すごくチャーミングな方でした。その時期、竹野内さんが出ている作品を再放送でやっていて、あらためて『かっこいいな~』と思っていました(笑)。そして、僕も千尋(中沢元紀)も髪が短いので、『髪を伸ばしたいな』と話していて、その光景を竹野内さんが見ているという(笑)。ふとした瞬間に笑いが起きることは多かったです」

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

――舞台である高知県の印象を教えてください。

「ご飯がおいしくて、幸せな1週間でした。畑を作ってくださって自然に囲まれた中で撮影ができて、『嵩やのぶ、ヤムおんちゃん(屋村草吉/阿部サダヲ)たちはこの空気を吸って生きていたんだ』というのを感じられたのが良かったです。すごくいい時間でした」

――印象に残っている自然や景色はありますか?

「畑が一番感動しました。あとは、嵩が悩んだ時に行く場所があって、そこから見える川、山、畑のいろいろな植物だったり、風の音が心地良かったです。嵩がそこに行く理由を感じることができました」

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

――演じていて、苦労したことはありますか?

「嵩は内気な性格で、声も小さいですし目もなかなか合わない。感情が子ども時代からあまり表に出ないんですよね。僕も同じタイプではあるのですが、やなせさんご本人はユーモアがあり、ひょうきんで人の目を見て話す、優しさと愛がある方だなと思います。演じていく上で、ここに至るまで『この暗さで正解なのか』と悩むこともあり、難しさを感じながら慎重に演じています」

――最後に、嵩はのぶの、どのようなところを好きになったと思いますか?

「嵩にできない真っすぐな生き方で、自分の中で恋心に気づくのは明確ではない瞬間が多いです。のぶはずっと嵩の前を走っていて、そこをたどって歩いていた人生だったので、自分の人生に足りないものというのを理解した時に初めて気付くことも多いのかなと思います。性格や外見というわけではなく、人生というのは1人で生きるには大変で、誰かと手をつないで歩いていかないといけない瞬間がたくさんある。『千尋は隣で肩を組んでくれるけれど、自分は誰かと手をつないで歩きたいんだ』と思いながら、お互いの人生を経て、のぶと横に並んだ時に『この人が大切な人なんだ』と気付いて歩んでいく物語だなと思います」

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、ヒロインの夫・柳井嵩を演じながら「自問自答する日々」

【番組情報】
連続テレビ小説「あんぱん」

NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45

【プロフィール】
北村匠海(きたむらたくみ)
1997年11月3日生まれ。東京都出身。4人組バンド・DISH//のリーダー。近年の主な主演作に、映画「東京リベンジャーズ」シリーズ(2021・23年)をはじめ、「法廷遊戯」(23年)、ドラマは「星降る夜に」(テレビ朝日系/23年)、「風間公親-教場0-」(フジテレビ系/23年)、日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系/24年)など多数。現在、映画「悪い夏」が公開中。

取材・文/a.o

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