Feature 特集

高橋優が最新アルバム「HAPPY」に込めた思いを語る!2025/01/29

高橋優が最新アルバム「HAPPY」に込めた思いを語る!

 今年メジャーデビュー15周年を迎えるシンガーソングライター・高橋優が2年3カ月ぶり9枚目のオリジナルアルバム「HAPPY」を1月22日にリリースした。本作はタイトルの通り、“幸せ”をテーマにした全12曲(CDのみ収録のボーナストラック1曲)が内包される。このタイミングでなぜ、高橋は“幸せ”をテーマにアルバムを制作することに至ったのか、曲の制作の背景をひもとき、このアルバムの魅力について迫っていこうと思う。

――本作「HAPPY」は、ただ幸せを歌うだけでなく、不幸というマイナスな部分にもフォーカスしている、さまざまな感情にタッチしたものになっていると思います。このタイミングである種、普遍的な幸せというテーマに向き合うことでどのような感情が生まれましたか。

「コメントにも少し書かせていただきましたけど、10代~20代の頃はとにかく自分の夢をかなえたい、自分の願望がかなえばそれが幸せなんだろうと思っていました。ただ、今は、例えば、自分の好きな友達や家族がいるとして、その人の誕生日プレゼントを買いに行って、『何をあげたら喜ぶかな?』と考える。必ずしも自分が好きなものが最適解ではない状況の中で、自分も年を重ねて、誰かの幸せ、幸せまではいかずとも、ちょっとした喜びを与えたいという気持ちが強くなってきたんです。幸せにできるかどうかは正直分からないけど、そうやって試行錯誤して考えている時間が自分にとって幸せだったりする。もちろん失敗もありますよ(笑)。余計なお世話になってしまったり、喜んでもらえないプレゼントを買ってしまうこともある。ただそうやって考えている時間が幸せなんだなと思ったりします」

――その何げない幸せに気付いたからこそ、本作のテーマに幸せを選んだ。

「単純に皆さんのハッピーを伺ってみたいという気持ちが強かったのかもしれません。幸せな瞬間にちゃんとフォーカスをしていますか? と問うてみたかった。2025年、現在の現状において、歌を聴いてくれる方と自分のHAPPYが共鳴するのか、はたまた反発し合うのか、そこを音楽で奏でたいと思いました」

――では、聴き手に委ねる部分も本作は大きいですか?

「3割くらいは委ねるというか、問いかける感じで制作していますね。残りの7割は、今自分が感じていることや実際に見たもの…その中で、自分でそしゃくしたものを表現しています」

――本作は「明日から戦争が始まるみたいだ」からスタートします。HAPPYとは真逆の戦争をキーワードにした曲から幕を開ける、この曲をなぜ1曲目に置いたのでしょう。

「象徴的なものが詰まっているなと思ったんです。アルバムの1曲目というのは、ある種、高橋優を知らない人に向けた自己紹介の曲になる。フィジカルでアルバムを手にとっていただいて、CDプレイヤーに入れて再生ボタンを押した時、その人の中での高橋優の第一印象になるかもしれない。自分にはありがたいことにバンドやストリングスを用いたサウンドの楽曲もあるけど、47都道府県をアコースティックギター1本で回るツアーや路上ライブ時代もあって、なりわいとしてそういう音楽をやらせていただいている中で、1曲目は『弾き語りをしている人』という印象を与えられたらいいなと思ったんです。改めて『HAPPY』という作品で出合ってくれる人が多いような気がしたし、きっとたくさんの人に聴いてもらえるアルバムになるかもしれないと自分の中でも何となく期待したり、予感しているんですよね」

――内容については、いかがですか?

「内容的には、ジョン・レノンの『イマジン』とは真逆というか。あの曲は戦争がない世界を想像してみようというものだけど、『明日から戦争が始まるみたいだ』は戦争がある世の中を想像してみようという曲になったと思っていて。それも『明日はきっといい日になる』を歌っている人間が奏でている辺りも、次のタームに進む上では、この曲から始まることが象徴的な感じがしましたね」

――鳴るサウンドは確かに、原点回帰の部分もあると思いました。

「プリプロもせず、セッションをする感じで制作したんですよ! レコーディングのやり方もすごく楽しかったし、少しハプニング性も期待したというか。どうなるか分からないけど、やってみよう! という感じで制作できたのは、この曲だけですね」

――その他にも多くの楽曲が収録されますが、印象的な楽曲はありますか?

「『はなうた-pray for Akita-』と『青春の向こう側』は最後の最後で録ったんですが、自分で作っておいてアレですけど、難しい曲で(笑)。ただ、いい締めくくりになったなと思っています」

――「はなうた-pray for Akita-」は地元である秋田を思って書かれた曲、そして「青春の向こう側」はアルバムの最後を彩る楽曲です。

「『青春の向こう側』では、歌詞にも入れたんですが、ちりも積もれば山となるとか、千里の道も一歩からと言われた時って、気が遠くなりませんか? 例えば、僕の場合、メジャーで15年歌わせてもらって、年も重ねて、じゃあ、今何里目なんだろうと思うんです。もしかしたらまだスタートしてすぐの場所かもしれない。そんな時、千里に行ける人って最初から決まっているんだな、そういう星の下にいる人よねと思ったりもする。僕は幸か不幸か、一度もパーンと花火を打ち上げたことがないというか、常に地道にやってきたんですよね。ありがたいことに聴いてくれる人はどんどん増えて、まだ終わってない。だけど、一つ一つ積み重ねるって、気が遠くなるし、当たって砕けろということを毎日やっている気持ちになるんですよ」

――分かります。

「でも、当たって砕けたら、物資で例えるなら砕けたがれきが残るじゃないですか。壁に当たっていけば砕けて、砕けたかれきが積もって壁を越えられるのではないか! と思ったんです。今お話したことをそのまま歌詞に書いています。だから、年齢も性別も何も関係なく壁にぶち当たっている人がいるとしたら、そういう人にこそ聴いてほしいと思うし、前に進めない、前に進む意味が分からないと思っている人たちに少しでも今を感じてほしい。今ここにいることに意味があるということに気付いてほしいなと思うんです」

――今回改めて、高橋さんの楽曲は人に寄り添うものが多いと感じたんですが、その辺りはどう考えていますか?

「僕に寄り添われたら気持ち悪いと思うから、実は寄り添いたいとは思っていないんですよ(笑)。この間、初めて知った言葉なんですけど、トナラーって知ってます? 周囲が空いているにもかかわらず、あえて隣に座ったり駐車したりする人のことを指すみたいなんですけど、そうはなりたくないんですよ(笑)。BGMとして、高橋の曲を聴いてほしいなと思っているし寄り添いたいというよりは、『こういうことってない?』って問いかけている感じかな。例えば『近所に体にいいパン屋ができたら行くじゃん?』みたいな話をみんなでしていたいというか。ハッピーを届けられるおっさんでいたいなと思ってます(笑)」

――なるほど(笑)。そのハッピーを届けることができるツアーも目前に迫っていますね。

「いい曲が出そろったなという手応えもありますし、そのアルバムを届けることで本作の『HAPPY』というテーマが完結すると思っています。ツアータイトルは『ARE YOU HAPPY?』ということで、来てくれる方と、めちゃくちゃハッピーになれるライブをしたいなと思っています!」

――そして7月にはメジャーデビュー15周年目を迎えます。最後に展望についても教えてください。

「いろいろと作戦は練っているんですが、僕自身、自分の誕生日を祝うようなタイプではないので、15周年だからと言ってやりたいことってそんなになかったりするんですよ。ただ支えてくれるスタッフの皆さんが盛り上げてくれる、高橋をしっかりみんなに届けていこうと言ってくれる、そんな状況に感謝の気持ちがあふれている状態なので、今年はアルバム『HAPPY』を皆さんに届けることと15周年イヤーをすごく美しい形で、皆さんに楽しくお届けできるよう、スタッフと一丸となってやっていこうと思います。きっと、ワクワクしてもらえる、1年間ずっとワクワクの15周年イヤーだと思います」

高橋優が最新アルバム「HAPPY」に込めた思いを語る!

【プロフィール】
高橋優 Yu Takahashi
1983年12月26日生まれ。秋田県出身。札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。2010年にシングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。9th Album「HAPPY」を提げたライブツアー「ARE YOU HAPPY?」が2月22日、山梨県を皮切りにスタート。

【INFOMATION】
「HAPPY」
発売中
新録曲やタイアップソング、ボーナストラックなど、全12曲を収録。さらに、CDのみ収録のボーナストラックとして、2023年の秋田豪雨災害被災地に向けて制作された「はなうた-pray for Akita-」を初音源化。

取材・文/笹谷淳介 撮影/蓮尾美智子 ヘアメーク/眞弓秀明 スタイリング/上井大輔
衣装協力/ADONUST、ayame、Sian PR、ニューバランスジャパンお客様相談室



キーワード

この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.