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「アンチヒーロー」が混戦を制し【年間ドラマランキング2024】No.1に!2025/01/30 10:00


BRAND NEW TV WORLD!!/長谷川博己主演 日曜劇場「アンチヒーロー」公式メモリアルブック

 今回は関東146万台を超えるレグザ視聴データを基に、2024年の「年間ドラマ視聴ランキング」を発表していこう。現在TVガイドWebで毎週掲載しているテレビ視聴ランキングの指標を使って、リアルタイム視聴と録画視聴を合わせた総合ポイントによる年間ランキングを集計。前年の「VIVANT」(TBS系)のように飛び抜けたモンスタードラマがなかった24年、最も愛されたドラマはどの作品だったのか?

放送回ランキングはTBSドラマ3本が大混戦

 まず、24年に放送された連続ドラマを放送回ごとに集計した「放送回ランキング」の年間ベスト30。ポイントは1位を100とした場合の割合を表している(以下同)。

BRAND NEW TV WORLD!!/2024年ドラマ年間放送回ランキング ベスト30

 例年、ずば抜けたヒットドラマが上位を独占することも多い放送回ランキングだが、24年はまさに大混戦。4月クール長谷川博己主演「アンチヒーロー」(TBS系)の最終回が第1位、7月クール二宮和也主演「ブラックペアン シーズン2」(TBS系)初回が2位、そして3位が1月クールの「不適切にもほどがある!」(TBS系)の最終回と、エンタメ性の強い3作品がベスト3を分け合った。以降もこの3ドラマが交互に登場する拮抗したランキングが続く。

 その3作品以外でベスト30に入ったのは、17位の「海のはじまり」(フジテレビ系)最終回、26位「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(TBS系)初回、そして28位「ライオンの隠れ家」(TBS系)最終回の3回のみである。混戦の中でも「アンチヒーロー」「ブラックペアン シーズン2」「不適切にもほどがある!」の上位3作品が他に差をつけていたことが分かる。

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全話の平均視聴ランキングでも同3作が並んでTOP3

 続いて「年間平均視聴ランキング」。各作品のリアルタイム+録画の総合ポイントの全話平均を集計して、高い順に並べたベスト20である。

BRAND NEW TV WORLD!!/2024年ドラマ年間平均録画視聴ランキング ベスト20

 「アンチヒーロー」「ブラックペアン シーズン2」「不適切にもほどがある!」がベスト3。3作品は僅差だが、4位以下に差をつけていることからも、この3本が24年を代表するドラマだったということは間違いないだろう。3作品ともTBSのドラマ。4位に「さよならマエストロ」、6位と7位には10月クールの「海に眠るダイヤモンド」と「ライオンの隠れ家」が入り、ベスト10本中6本がTBS作品となった。ベスト20中では半数の10作品をTBSが占めており、「VIVANT」のようなモンスターヒットはなかったものの、24年もTBSドラマの優位は揺るがなかった。

BRAND NEW TV WORLD!!/「ブラックペアン シーズン2」制作発表会見より主演の二宮和也

 そんな中、王者TBSドラマに立ち向かった形になったのが、5位、Snow Man目黒蓮主演、生方美久脚本の「海のはじまり」。そして、8~10位に「Believe-君にかける橋-」「Destiny」「ザ・トラベルナース」と、3本がランキングに食い込んだテレビ朝日も大善戦だったと言えるだろう。

作品の“満足度”では順位が大きく入れ替わる結果に!

 続いて「最終回継続率ランキング」の年間ベスト20を見てみよう。「最終回継続率」とは最終回のポイントを初回のポイントで割った数値。最終回継続率が高い(=初回に比べて最終回のポイントが高い)ということは、作品内容に対する満足度が高い傾向にあるのでは、という仮説に基づいた検証である。

BRAND NEW TV WORLD!!/2024年ドラマ年間最終回継続率ランキング ベスト20

 ベスト20に入った作品はすべて継続率が100%を超えている(=最終回が初回のポイントを上回っている)。今回は「年間ランキング」ということで、朝の連続テレビ小説枠や夜ドラ枠などNHKの帯ドラマは対象外としたが、大河ドラマ「光る君へ」を集計対象に加えた結果、見事継続率8位にランクインした。

 ざっと見渡しただけで、「平均視聴ランキング」と作品が大幅に入れ替わっているのが分かる。「平均」と「継続率」の双方でベスト10入りしているドラマは「ライオンの隠れ家」「不適切にもほどがある!」「Destiny」「Believe-君にかける橋-」の4本。ベスト20まで広げても「わたしの宝物」(フジテレビ系)のほか、「海のはじまり」と「アンチヒーロー」、「笑うマトリョーシカ」(TBS系)を加えた8本にすぎない。

BRAND NEW TV WORLD!!/「ライオンの隠れ家」制作発表会見より柳楽優弥、坂東龍汰ら出演キャストの面々

 特に圧倒的な強さを誇ったTBSのプライムタイムドラマのうち、継続率が100%を超えたのが4本だけというのは、ドラマの内容が視聴者に満足を与えているのかという点では問題が残るだろう。その意味では、逆に137%という高数値で1位をゲットした「ライオンの隠れ家」は、内容に対する確かな信頼が大きな支持につながったということで、今後のドラマ制作におけるヒントになるかもしれない。24年の大きな収穫だったと言えるだろう。

 逆に「平均値ベスト20」には1作もランクインしなかったNHK総合のドラマが4本ランクインしている。大河「光る君へ」はじめ、2位「燕は戻ってこない」と14位「宙わたる教室」などへの高い評価は注目に値する。NHKドラマの一歩踏み込んだ制作スタンスは近年際立っており、25年も引き続き目が離せない。

 そして、今年も午後7:00~11:00のプライムタイム以外(深夜・早朝)のドラマが継続率で好調だ。「肝臓を奪われた妻」をはじめとする日本テレビの深夜の過激路線は変わらず順調だが、「あの子の子ども」(フジテレビ系)や「毒恋~毒もすぎれば恋となる~」(TBS)など、独自の路線で支持を広げるドラマも現れている。

 特に「あの子の子ども」への支持は、TBS日曜劇場に代表される社会性を帯びたドラマが主流となる現状に一石を投じる新たな可能性を示しているように思う。これは「燕は戻ってこない」や「アンメット」(フジテレビ系)にも通底するものだ。身の回りの小さな物語への優しい目線を備えたこれらのドラマの在り方は、今後のドラマの一つの方向性を示唆しているだろう。

 配信ドラマとの競争はより強く、より刺激的にという動きを加速させる。そうした流れとは一線を画した新たな潮流への予感に期待しつつ、今後の動きを見守っていきたい。今年もTVガイドwebでは新たなテレビの楽しみ方を紹介していくので、ぜひお楽しみに。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社



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