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真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」2025/01/10 12:00

真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」

 初演、再演ともにチケット完売となった話題のミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」が、3度目の幕を開ける。この作品は、「キャッツ」など世界的に有名なミュージカルを数多く手掛けた作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、自身最大のヒット作である「オペラ座の怪人」の後日譚として生み出したもの。オペラ座から姿を消して10年、ニューヨークのファンタズマ(見世物小屋)に身を隠していたファントムのもとへ、思い続けていた歌姫。クリスティーヌが現れたことから、新たな物語が展開していく。

 TVガイドWebでは、新たに本作に挑むキャストの中から、真彩希帆と加藤和樹にインタビュー。2人は過去に、ファントムを主人公にしたもう一つのミュージカル「ファントム」(作詞・作曲/モーリー・イェストン)で、クリスティーヌとファントムとして共演。今回はクリスティーヌとその夫・ラウルとして向かい合う。何度も芝居を交わしている2人が、今どんなふうにこの作品に取り組んでいるのか。互いの役者としての印象や、「ラブ・ネバー・ダイ」の魅力など、たっぷり語ってもらった。

──ミュージカル「ファントム」(2023年)でも共演されたお二人。同じファントムを題材にした「ラブ・ネバー・ダイ」の稽古をしていて、どんなお気持ちでしょうか?

加藤 「作品自体が全く別の世界線ですし、今回僕が演じる役は、クリスティーヌの夫・ラウル。ファントムではないので、自分の中のファントムが出てきたりはしないんですけど(笑)。でも、ファントム目線で見てしまうことはありますね」

真彩 「2倍おいしいですね(笑)。私は『ファントム』のクリスティーヌ役を、宝塚(歌劇団)在団中と、和樹さんとご一緒した公演で演じています。もちろん今回は作品が違うんですけど、やっぱり残っているものはあって。クリスティーヌは、ファントムに教わって音楽の喜びを知りました。“彼がいるからこの声が出るんだ”という感覚は、引き続き自分の中にあるなと思っています。ただ、今回和樹さんとは夫婦役なので、『ファントム』でのお芝居のことよりも、普段の関係の方が出ているかもしれないです。やっぱり安心感があります」

加藤 「僕としても、今回は夫婦役ということで、『ファントム』では思いがかなわなかったクリスティーヌに、やっと振り向いてもらえたという喜びを感じつつ(笑)、夫婦の関係性を作っていくにあたっては初めましてではない安心感がもちろんあります。10年たったラウルとクリスティーヌを、2人でどう作っていけるのか、楽しみにしています」

真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」

──クリスティーヌは、あれからパリで幸せに暮らしていたものの、夫・ラウルがギャンブルで多額の借金を抱えてしまう。その借金返済のために、夫婦は息子・グスタフを連れてニューヨークへ渡る。一方のファントムは、謎の興行主を装ってクリスティーヌにファンタズマへの出演と高額報酬を持ちかけて…というストーリーになっています。ラウル役はやっとクリスティーヌと結ばれたにもかかわらず、実はダメ男になっているという…。

加藤 「そうなんです(笑)。『なんで!?』と思うんですけど。ただ、今回改めて台本と向き合い、言葉と向き合い、音楽と向き合って、サイモン(・フィリップス)の演出を受けていると、ただのクズではないと思えてくるんです。まだ役を作っている段階ではありますけど、僕が思うに、ラウルはクリスティーヌとの間にどうしても壁を感じてしまっているんですよね。ファントムはクリスティーヌと音楽でつながっているけれども、自分は音楽では彼女を理解し支えてあげることができない。しかも、何もかも失った状態でアメリカに来ている。夫としても男としても強みが何もなくて、でもプライドだけはあって…と、話せば話すほど悲しくなってきますけど(笑)。この作品の中でのラウルって、かわいそうな立ち位置だなと思うんです」

真彩 「クリスティーヌも、ラウルが何にそんなに悩み苦しんでいるのか、自分がどうしたら助けてあげられるのか分かっていないから、なおさらかわいそうだなと思います。でも、和樹さんがおっしゃっていたように、台本を読むとクリスティーヌもラウルに対する愛情はしっかりあるんです。愛はあるんだけど、お互いのことが理解しきれていない夫婦なんだろうなと。だから、ラウルには夫婦としての愛もあるし、分かり合えないもどかしさがあって、ファントムに対しては強い絆を感じ、自分が受けたたくさんの恩を裏切ることはできないという思いがある。その意味では、見ている方に『クリスティーヌは、ラウルとファントムのどちらを選ぶんだろう?』と、ドキドキしてもらえたらいいなと思うんです」

加藤 「そうですよね。今は酒に溺れてしまっているラウルですけど(笑)、最初から勝負がついているように見えてはいけないから。10年の間に夫婦が築いてきたものや愛情を、しっかり見せていければと思いますね」

真彩 「10年って長いですからね。それこそ、愛しているからこそ相手のことを思って踏み込めなくなったこととかもあるでしょうし」

加藤 「何も言わないのは、今さら言わなくても分かるから。10年の間に、2人はそういう関係性になったんだなというふうに見えたらいいなと思うし。クリスティーヌへの愛も、ファントムとのつながりにはどうしてもかなわない、それでもあきらめたくない、彼女の心は自分のものだと信じたいという、情けないけど、“男”なところを見せられたらいいなと思います」

真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」

また違う役で出会える楽しさ

──クリスティーヌとラウルというその複雑な関係の夫婦を演じるにあたって、それぞれに相手のお芝居をどう感じていますか?

加藤 「自分が演じたファントムは、醜い顔のせいで心を閉じ込め、大人になり切れていない青年。まともにクリスティーヌの目を見ることも触れることもできないところがあったので、今回は面と向かって芝居できている感じがします。それがうれしいですし、また違う目線で芝居できるのは楽しいですね」

真彩 「違う役として出会えて、交わす言葉も変わって、お芝居はそれが楽しいですよね。和樹さんとは初めましてじゃないから、自分がチャレンジしてみたいと思ったことを思い切ってできるのもありがたいです。初めましての人とでもお芝居はできるものですけど、やっぱり普段からお芝居のことを話し合える間柄だと、こうしてみようかなっていうことを、やっても大丈夫かなという迷いを飛び越えてパッとアプローチできますし」

加藤 「変に遠慮することがないからね」

真彩 「演出で『違う』と言われたときも、じゃあ次はきっとこうやるだろうなっていうことが感覚で分かるのも、すごくありがたいです」

──改めて、お互いの役者としての魅力を教えてください。

加藤 「真彩さんは、真っすぐというか強さがあるんですよね。それはご本人が持っている資質も大きいんでしょうけど、歌声、芝居の声、セリフの出し方、目線、その端々に、説得力のある真っすぐさが感じられる。だから、たとえば悲しい場面でも、ギュッと切なさが増すんだろうなと思います」

真彩 「ありがとうございます。だからこそ、自分の中で感情がつながらないと、ノッキングを起こしてしまうこともあるんですけど。でも、真っすぐという意味では、和樹さんも同じだなと思います。まず自分がその役をどう思うかというところから役を作っていかれるので、全てにおいてうそがないんですよね。全部に筋が通っているんです。それにプラスして素晴らしいなと思うのが、お稽古場でずっと芝居を見て楽しんでいらっしゃること。お稽古場での和樹さんは、アンサンブルの皆さんの場面まで全部見ているんです。この人はどう芝居しているんだろう、どう歌っているんだろうと見ていらっしゃるその姿が、魅力的だなと。学ぼうとしていらっしゃるのか、興味からなのか、分からないですけど」

加藤 「やっぱり、自分が出ていないシーンがどう作られているのか気になるんです。ファントムもやっぱり、いつか自分も演じてみたいので気になるし(笑)」

──今回のファントム役は、市村正親さん、石丸幹二さん、橋本さとしさんのトリプルキャストです。それぞれどのように感じていますか?

加藤 「本当に三者三様で、見ているだけでぜいたくな空間で、『これはやっぱり見なきゃ!』ってなるんですよね(笑)。ラウルとしても、それぞれ違うファントムとどう向き合っていくか、見て考えたりしていますし。クリスティーヌのトリプルキャストの、真彩さん、平原綾香さん、笹本玲奈さんの3人もやっぱりそれぞれ違うので、見て考えています」

──クリスティーヌからは、ファントムのお三方の違いはどう見えていますか。

真彩 「『ジキルとハイド』(23年)でご一緒した石丸さん以外のお二人とは初めてお芝居をしますが、個性の強い方々であることは間違いなくて。『ポケモン』のゲームに“炎”、“水”、“電気”といったような属性があるんですけど、それが違う感じです(笑)。それから、今回のクリスティーヌはどこかファントムに操られて歌っている感じがあるんですが、それぞれ違う魔術にかけられている気もします。三者三様の魔術師です(笑)」

真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」

音楽に身を委ねてもいい! いろんな楽しみ方ができる作品

──「ラブ・ネバー・ダイ」の魅力を一言で言うと?

真彩 「音楽です」

加藤 「間違いないね」

真彩 「はい。本当に美しくて、音楽自体が『歌ってほしい!』って言っているんです」

加藤 「だから、そこに頼りたくなっちゃう」

真彩 「そう。ミュージカルは『しゃべるように歌う』と言われていて、それが一番だとは思うんですけど、この作品に関しては、やっぱり奇麗な旋律は歌った方がいいな? と思いながら稽古しています。『オペラ座の怪人』の音楽もそうですけど、アンドリュー・ロイド=ウェバーさんの『歌え!』っていう強い思いを感じるんです。その『歌え!』の引力が、この作品の魅力なんだと思います」

加藤 「モーリー・イェストン版の『ファントム』は、芝居として音楽を歌うという感じでしたけど、アンドリュー・ロイド=ウェバー版は逆というか。もう音楽が芝居になっているんですよね」

真彩 「だから、何も考えずとも音楽が導いてくれる感じがあって。クリスティーヌとしても、『なんだか分からないけど、そっちに引かれてしまうわ』っていう方がいいのかもしれないなと思いながら演じています」

加藤 「芝居で表現したいところも、もちろんあるんだけど」

真彩 「はい。芝居は芝居でちゃんとあって、音楽に紛れていない感じがします。だから、音楽に身を委ねてもいいし、芝居を面白がってもいいし、役者の表情に注目してもらってもいい。見に来てくださる皆さんそれぞれに、好きに見ていただけたらいいなと」

加藤 「いいこと言った(笑)。本当にいろいろな楽しみ方ができると思います。トリプルキャスト、ダブルキャストの役も多いので、組み合わせによって見どころも楽しみ方も変わってくると思いますし。舞台セットも素晴らしいですし」

真彩 「そうなんです。ファンタズマのサーカスのみんなが、音楽に合わせてクルリンクルリンと動いていて、それだけでも『はぁ~!』って感動するんですよ。プロローグからすっかり世界に入り込めるので、いい体験をしてもらえると思います。…いい体験をしてもらえるように頑張りたいと思います!」

──役者さんとして、今のこのタイミングで「ラブ・ネバー・ダイ」という作品に出会えたことについてはどう感じられていますか?

加藤 「僕は、今で良かったと思っています。40歳になって、いろいろ経験してきて、自分でもはっきり分かってきたことがあるので。例えば、どんな声を出せるのかとか、自分にできることも見えてきましたし。逆に、まだこの作品のファントムはできないな、まだまだ吸収することがあるなと、自分の今の立ち位置みたいなものも分かりますし。そういう意味で、今この作品にチャレンジできるのはいいタイミングだったのかなと思います」

真彩 「私は息子のグスタフ役をやりたかったので(笑)、自分が男の子だったら、子どもの時にこの作品と出会いたかったな。でも、『ファントム』でクリスティーヌと出会い、またこの作品でクリスティーヌを演じるという運命をいただけたのだから、自分が意図せずともこの役とのつながりは深いんだと思います。トリプルキャストのあーやさん(平原)、玲奈ちゃん(笹本)には及ばないですけど、だからといって気持ちまで引いてしまわないようにしたいですね。1回1回の公演を、『今日はこんな発見ができた』と思えるような瞬間にしていきたいと思います」

真彩希帆&加藤和樹が新キャストとして挑戦! 「オペラ座の怪人」10年後の物語描く「ラブ・ネバー・ダイ」

【プロフィール】
真彩希帆(まあや きほ)
7月7日生まれ。埼玉県出身。2012年、宝塚歌劇団に98期生として入団。17年、雪組トップ娘役に就任。21年に退団後も、舞台を中心に活動。近年の主な出演作は、ミュージカル「ジキル&ハイド」「ファントム」「LUPIN〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜」(全て23年)、「モーツァルト!」(24年)など。


加藤和樹(かとう かずき)
1984年10月7日生まれ。愛知県出身。近年の出演作は、日本テレビ開局70年記念舞台「西遊記」(23~24年)、ブロードウェーミュージカル「カム フロム アウェイ」(24年)、舞台「裸足で散歩」(24年)、ドラマ「青春ミュージカルコメディ oddboys」(テレ東系/24年)など。4月には、ミュージカル「フランケンシュタイン」が控えている。

【インフォメーション】
ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」
https://horipro-stage.jp/stage/loveneverdies2025/
2025年1月17日(金)~2月24日(月・祝)
東京・日生劇場

取材・文/大内弓子 撮影/蓮尾美智子



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