マキタスポーツ「ロビンソン酒場漂流記」インタビュー「ずっと肩を温めていて“よし来た!”と」2025/01/10 17:00
Webマガジン「考える人」(新潮社)でレギュラー連載中の加藤ジャンプさんによるコラムを実写化した「ロビンソン酒場漂流記」(土曜午後10:00)が、BS日テレ・BS日テレ4Kで1月4日にスタートしました。
駅近の繁華街からずいぶんと離れているのに愛され続ける酒場を、孤島で生き延びたロビンソン・クルーソーに重ね合わせて「ロビンソン酒場」と称し、そのお店の秘密やそこにまつわる人々の物語を解き明かしていく同番組。「どうしてこの場所でお店を」という場所にたたずむロビンソン酒場を求めて歩いて探し、店の扉を恐る恐る開けて入っていく“さま酔い”人はマキタスポーツさん。マキタさんに、番組の魅力や“飲みの師匠”とのエピソードなどをたっぷりと語ってもらいました。
――「ロビンソン酒場漂流記」への出演が決まって企画内容を知った時のお気持ちを教えてください。
「すごく楽しみでした。いつか飲み歩き番組をと、ずっと肩を温めていたんです。『なかなかお呼びがかからないな』と思っているところで、万全の態勢ができているタイミングだったので、『よし来た!』みたいな感じでした。ありがたいと思います」
――どんな番組になると思い描いていましたか?
「原案の『ロビンソン酒場漂流記』と同じ媒体で僕も連載をしていたんですよね。それで読んではいたので、『ああいうものでやらせていただくんだ』と。でも、『本当にさまようのだったら大変だな』という不安はありましたけど、見事にその不安が的中という…『本当に歩くんだ…』という感じでしたね(笑)。でも、非常に面白い企画に参加できると思いました」
――実際にロケに出てみての感想をお聞かせください。
「通常の街ぶら系のロケですと、編集という技術がありまして、あたかも歩いたかのような感じでジャンプできるものなんですけれども…。『それをさせてくれないことの不安、分かりますか?』って感じですね(笑)。しかも、ディレクターが、非常にぼんやりとした情報しか与えてくれないんですよ。初回から『本当に大丈夫なのかな、このロケは?』という感じがいたしました。だんだん心細くなってくんですよね。歩いて行く道中で、本当に店がなくなって。それで、いよいよ底がついたという状態になって、その先にお店ののぼりが見えた時、『本当にたどり着けるんだ!』っていう。2回目のロケの時は郊外で、英会話教室や中古車店が途中で出てくるんです。そうなると普通はその街道沿いには飲み屋はないんですよ。それなのに、その先にまだ行こうとするという…。その時は、そぼ降る雨にも見舞われまして、『そろそろ(車に)乗せてくれないかな』と思って。初回で(スタッフさんが)僕を脅しておいて、2回目ぐらいからは雨も降ってるし、『マキタさん、ここはちょっとインチキですけど乗りますか?』と言ってくれるんじゃないかと期待していたんですけど、それもなく。本当に“酒場のピリオド”の向こう側へ連れて行かれるという経験をさせられました(笑)。でも、それがこの番組の良さなんだろうなとは思いましたけどね」
――ロビンソン酒場に入って、お店の方やお客さんとの交流ではどのようなことを感じられましたか?
「初めて行くお店で、ファーストタッチという状態で中に入るんです。郊外のポツンとある1軒の飲み屋さんっていうのは、(お客さんが)地元の方しかいらっしゃらないんですよ。だから、完全に『ん? よそ者が来た』みたいな。非常にローカル色があるんですが、ローカル色って一口に言うといい感じですけれど、現地の方がいらっしゃるところに身一つで行く恐怖を皆さん、分かりますか(笑)? 毎回、転校生のような気持ちと言いましょうか、そんな感じですね。でも、そこからお酒の力も借りて会話の糸口を見つけて、実際にいただく料理なども非常においしいものが多いので、そこで心がちょっと和む。それで、『おいしい』と一言、わざと聞こえるように言うと、店主の方にちょっとほほ笑んでいただいたりとか、そんな感じで交流を始める瞬間が1番いいかな」
――今後チャンスがあったら、一緒にロビンソン酒場に漂流してみたいと思い浮かぶ方はいらっしゃいますか?
「絶対に周りから怒られそうなんですけど、いろいろな飲み番組があるじゃないですか。その人たちを1人ずつ連れてきてほしいな。まず、玉袋筋太郎さんですね(※BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」に出演)。それで、NHKから六角(精児)さんに来てもらったりね(※NHK BS&BSプレミアム4K「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」に出演)。本丸は吉田類さんみたいな感じで(※BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」に出演)。『その代わり私もそちらにお邪魔しますよ』みたいな交流を図りながら。この世界にもいろいろなレジェントたちがいますからね。それとは別でちょっと想像してみたんですけれど、女性でもいいですよね。お酒が好きな方で、交流がある方で言うとですね、YOUさんは面白いんじゃないかな。相当お酒好きですからね。でも、YOUさんも歩きたがらないだろうな。『やだ、もうスポーツだけ行って!』みたいなこと言いそうですけどね(笑)」
――実生活で漂流してお店にたどり着いたご経験などはありますか?
「普段の私は、すぐ家に帰りたがる気質でして、寄り道をして定番的に寄るお店があるわけではないんです。ただ、地方に仕事で行く時には、あえてそういう冒険をしていますね。しかも、地元の人しかいないだろうというところで。だから、ジャンプさんと同じようなことを、実はちょこっと地方に出た時のみ限定でやってきてはいるんですよ。さすがにジャンプさんほど歩き回って、果ての果てに行くという態度ではないんですけど。どんな地方でも、駅前とかにはそれなりの設えの地元料理を中心としたバルみたいな所ってあるけど、それだとちょっと不満足なんですよね。それよりも、普通の焼肉屋さんとか、普通の中華食堂的なところ、あるいは中が全く見えないおでん屋さんみたいなところなどを狙ってドキドキしながら行くことをしています」
――どんなお店と出合いましたか?
「例えば仙台での仕事の終わりで、『1人じゃちょっと怖いけど、一緒に行こう』と、一緒にいたマネジャーも引っ張って行きましたね。そこは中が全く見えないんですよ。それで、ちょっと耳を澄ますと中から少しだけ声が聞こえてきてので、『ここにしよう』ととりあえずマネジャーを先に行かせて。それで、カウンターに2人ぐらいお客さんいらっしゃったんですけど、入った瞬間、お客さんが黙っちゃうんですよね。その瞬間は、『申し訳ないことをした』みたいな感じの空気なんですけど。そこはおでん店だったものですから、ドキドキしながらおでんなどをいくつか注文して、いただいて。そうすると、カウンターの中にいらっしゃるママさん的な方とお客さんのやりとりが始まるので、耳をそば立ててその会話を聞きながら、黙ってお酒をいただくという」
――緊張感がありますね…。
「あるいは、豊橋でロケをやった時にも、中が全く見えないスナックに、『えーい!』と思って飛び込んだことがあったんです。その時は、三角帽を被ったお店の女性の方が、お客さんの膝の上に座って、マラカスを持っていたんですよね。カラオケがある店だったんですけど、ガテン系の方が、『とんぼ』を絶唱していたんです。分かりますよね、この雰囲気(笑)。『やばい』と思って…『とんぼ』はもう止まっちゃっていますし。『本当にすいません』って。ああいうところって、ママと常連のお客さんとかが悪口を言い合っていたりするんですよ。その、悪口を言い合ってるので、こっちのよく知らん者をけん制してくるんですよね。『ここの料理はまずいからな』みたいな、言わなくていいことを常連さんがおっしゃって、『まずいのはお前の顔だろ』みたいなことをママさんが言っているっていう。『多分こっちに向けているんだな』と思いながら。それで、ちょっと笑って見せたりすると、仲間だって思っていただける感じになるんですよね。あと、カラオケのある店だと、絶対“長”がいるんですよ。そのトライブ(共通の趣味やライフスタイルを持った集団)の長が誰かを見定めながら、その長のおはこを選んでしまうとマズいんですよね。だから、無難なものを選んでみたりとか。選曲をするのも、ピリピリ考えながら、『俺は一体何しに来たんだろう…』と思って。でも、そうやってだんだん打ち解けていく感じが思い出にはなりますけどね。地方に行った時はそういうことをしています」
――ちなみにですが、飲みの師匠というべき方はいらっしゃいますか?
「志村けんさんに、飲み方ではすごく影響されました。ある時、志村さんと共演をさせていただいた打ち上げの席で、 緊張しつつその日の仕事の内容について相談を持ちかけながら、志村さんの空いたグラスを手に取って、焼酎の水割りだったので、焼酎を足して、水を足して、当然マドラーでかき混ぜて渡そうと思ったら、志村さんが『待て!』と言うわけですよ。『混ぜるとみんな味が同じになっちゃうだろ』とおっしゃったんですよね。志村さんが言うには、『混ぜないでいることで、ゆっくりと味が変化してくんだよ。氷が溶けて味が変化していって、その一つのグラスの中でも味の変化とグラデーションがあるので、それを楽しみたい』って。『この人本当に酒に対してスケベだな』と思った(笑)。たった1杯の焼酎の水割りだろうが、変化していくものを見逃さず味わい尽くそうという態度。 僕は今までそういった気分でお酒を飲んでいなかったことに気付かされましたね」
――志村さんから学ばれたんですね。
「その時に、志村さんが僕に対して駄目出しをしてくださったんですが、『お笑いっていうのはライブなんだから、カメラさんに合わせてお前が動きをするのではなくて、こっちがドキュメンタリーでやっている雰囲気を向こうにのぞき見させるようにして撮らせるんだよ。そういう、変化していくことに注意を払って感じていなさいよ』ということを志村さんはおっしゃっていて、コントというものをすごく楽しんでおられた人だったんだなと、非常に感銘を受けました。それから私は、蒸留酒は一切混ぜません! 混ぜないでいただくことで変化を楽しむっていうのは、志村師匠に教えていただいたことでした」
――すてきなお話ですね! ところで、この番組のようにBS局には趣味嗜好(しこう)に特化した番組や街ぶら番組が多いですが、そういった番組の魅力についてお聞かせください。
「BSは僕らの味方ですよ。中高年が安心して見られる。目抜き通りにある大型のお店みたいなものが地上波ならば、ちょっと裏路地感があるのがBSじゃないですかね。僕もいろいろレギュラー番組やってきてはいますけれど、こういうBSの飲み歩き番組で声を掛けていただいたことの縁・運命みたいなものは感じますよ。それで現場に行くと、スタッフの全員おじさんなんです(笑)。僕と同年代が1番若いぐらいで。『テレビ界のシニアリーグがここにあるな』という感じで。見ている人たちもおじさん・おばさんならば、作っている人たちもそうだったっていう実態が味わい深かったですね」
――その中にご自身の番組が仲間入りするというのは…?
「必然ですよ。僕は視聴者としていろんな番組を見て、いろんなスターを見て、っていう時代を経験しているんですよね。多分1番いい時期を視聴者として見て、かつ僕は90年代末期にテレビなどに、うっすらですが、出始めるということを経験して。それから、メディアの変質・変化とともに、僕自体も年をとって経年変化をし、そこに迎え入れていただいている。(番組の)ターゲットになっている方たちも、僕と同年代あるいはそれ以上の方たちっていうことですよね。こうやって年を取って、楽しみ方も変化していますが、楽しむメディアとかも用意されているんだっていう感覚をひしひしと感じていますね」
――よく見るBSの番組などはありますか?
「BSの番組って味付けが薄いんですよ。おだし主体のものがBSにはあるので、目が休まる番組が多いですよね。散策しているようなものとかも、BGMの音量も低いし、過激な編集上の味付けも特にないですし、情報もやたらうるさく入ってこない。それで、不意に弘兼憲史の漫画の黄昏流星群的な番組とか出てくるんですよ(※2023年6~7月「弘兼憲史セレクト 黄昏流星群 おとなシアター」)。漫画をただ映しているだけのやつですよ。それがまた弘兼憲史の世界がね、中高年のとうの立った男女がちょっとただれた肉体関係っていうんですかね…いや、弘兼さんがただれたって表現をするんですよ。そういった行間がぷんと臭うような漫画を見られる。アニメじゃなく、ただ漫画を映しているものでペラペラなんですよ。そういうのがぱっと入ってきた時に『いい味だ!』と思うんですよね。事件的に不意に目に飛び込んで、『うわっ、これいいことやっているな!』っていう感じ。あれはもうBSじゃないとありえないですよ。再放送してほしいなあ。絶対いいよ、あれ。絵を動かしたりとかアニメとかじゃなく、ただ二次元の漫画を映してる。『何やってんだろう?』と一瞬思うけど、黙って見ていると面白いから、いいなと思いますね」
――最後に、読者や視聴者の皆さんに、番組の見どころを教えてください。
「老いも若きもですけど、ある種、旅的な体験ができるような感覚と、そういう目線で世の中を見つめるセンスというものなどを味わってもらえたらと。だから、捨てどころがなく、いろんな飲み屋さんやお店を、探し当てて楽しむことができることを体験的に見られる番組なんじゃないかなと思います」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
マキタスポーツ
1970年1月25日生まれ。山梨県出身。ミュージシャンや芸人、俳優として多方面で活躍。「ビットワールド」(NHK Eテレ)、「東京ポット許可局」(TBSラジオ)などのレギュラー番組のほか、俳優としては映画「苦役列車」で第55回ブルーリボン賞新人賞などを受賞。近年の主な出演では映画「ゴールデンカムイ」(24年)、「地面師たち」(24年)など。2月8日放送のドラマ「鬼平犯科帳 老盗の夢」(時代劇専門チャンネル)にも出演。
【番組情報】
「ロビンソン酒場漂流記」
BS日テレ・BS日テレ4K
土曜 午後10:00~10:30
【1月11日放送】
マキタスポーツが小田急線の狛江駅周辺の”ロビンソン酒場”を探し回る。道中、ベテラン勢が集まるビリヤード場で腹ごなしをし、やがて駅から20分ほど離れたところにある酒場を発見。お酒とともに、店主おすすめのメニューや常連客がよく頼むという品を堪能する。
【1月18日放送】
今回、マキタスポーツが歩くのは、大学時代を過ごしたという小田急線の鶴川駅。雨の降る夕暮れどき、思い出をよみがえらせながら”ロビンソン酒場”を探す。ようやく見つけた店で、店主が師匠から受け継いだタレの焼きとりや、豚のタンシチューなどを味わう。
【プレゼント】
サイン入り生写真を2名様にプレゼント!
TVガイドWeb公式X@TVGweb(https://x.com/TVGweb)をフォローし、下記投稿をリポスト。
https://x.com/TVGweb/status/1877628813082779877
【締切】2025年2月7日(金)正午
【注意事項】
※ご当選者さまの住所、転居先不明・長期不在などにより賞品をお届けできない場合には、当選を無効とさせていただきます。
※当選で獲得された権利・賞品を第三者へ譲渡、または換金することはできません。
※賞品をオークションに出品する等の転売行為は禁止致します。また転売を目的としたご応募もご遠慮ください。これらの行為(転売を試みる行為を含みます)が発覚した場合、当選を取り消させていただくことがございます。賞品の転売により何らかのトラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いませんので、予めご了承ください。
※抽選、抽選結果に関するお問い合わせにはお答えできませんので予めご了承ください。
取材/TVガイドWeb編集部、デジタルTVガイド編集部 文/デジタルTVガイド編集部 撮影/尾崎篤志
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