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「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形2024/12/25

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

 東宝のプレミア音楽朗読劇VOICARIONシリーズ第19弾「スプーンの盾」(原作・脚本・演出 藤沢文翁)が、12月28日の大阪公演を皮切りに幕を開ける。声優・ミュージカル・舞台…さまざまなフィールドで活躍する豪華キャストが、日替わりで出演する本作。総勢51名のキャストによる1カ月超のロングラン公演は、朗読劇というジャンルでは異例中の異例だ。

 2022年の初演時からナポレオンを演じ続けてきた大塚明夫は、今回の公演で初めて敏腕外交官・タレーランを演じる。一方、山寺宏一は昨年の再演で演じたタレーラン役を今回も続投。ナポレオンの帝政を外交から支えた“食えない男”の料理外交が、フランスの命運を大きく動かす。ベテランの2人が語るのは、長年変わらない演じることへの純粋な渇望。生の掛け合いを“殴り合い”と表現する、熱い芝居への思いが飛び出した。

――VOICARIONシリーズの人気演目「スプーンの盾」は、今回で3度目の上演となります。ご出演にあたり、どのようなお気持ちですか?

大塚 「再々演となると、僕らもある程度慣れているのでは? という目でお客さまから見られるでしょうから、プレッシャーは感じます。しかし、今回は初めてタレーラン役も演じますので、初演時の新鮮な気持ちを思い出しながらワクワクしております」

山寺 「前回に引き続き参加することができて、本当にうれしいです。『スプーンの盾』は、フランス革命以後の“料理外交”を題材にしていて、『食で国を救う』というメッセージがとても斬新な作品でした。昨今、世界情勢が大きく変化する中で、エンターテインメントとしてこの作品を上演することの意義を、僕自身も深く感じています」

――今回初めてご覧になられる方に向けて、演じる役の見どころについてお聞かせください。

大塚 「ナポレオンは軍人としておなじみで、“戦争の天才”と称される彼の勇ましい面は、これまでも多くの作品で描かれてきたと思います。しかし、それは彼の表の顔。この『スプーンの盾』では、生身の人間としてのリアルな姿を描いています。栄光の面だけでなく、ナポレオンのダメな部分や弱い部分も含めて、ぜひご覧いただきたいですね」

――英雄の人間らしい部分に焦点を当てているんですね。

大塚 「セリフの行間にある、その人の人間性や真意をどう作っていくのか…。それが常に、僕の中には命題としてあります。そこを感じていただけるとうれしいですね。きっと皆さんそれぞれの中にナポレオン像があると思いますが、本作に触れて、今までよりももっと彼のことを好きになってもらえたらいいなと期待しています」

――山寺さんが演じるタレーランは、どのような役どころですか?

山寺 「タレーランは、ナポレオンの時代に活躍した実在の外交官で、ウィーン会議で料理外交を展開した中心的な存在です。史実では“裏切りのタレーラン”という異名で知られていて、藤沢さんの演出ノートにも“食えない男”と書かれているような人物。とは言え、物語の内どこまでが史実で、どこからがフィクションなのか分からないところが藤沢作品の特徴なので、ぜひどんな人物なのかをご自身で確かめていただければ」

――ナポレオンとの関係を含めて、謎に包まれていますね。

山寺 「そうなんです。いろいろ調べてみると、保身のために寝返ってどんどん人を裏切る一方、ナポレオンを皇帝にまで押し上げられたのは、彼の力によるところが大きいとも言われています。結局、最後はナポレオンと仲たがいするわけですが、その真相は物語の中に隠されていて…。なので舞台では、『うさんくさい』と思ってもらえたら成功かな? 彼の本心がどこにあるのか、人間としての深みを見せられたらと思って演じています」

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

――今回の公演では、大塚さんがナポレオン役、山寺さんがタレーラン役として共演される回がありますね(※1月18日夜公演)。どんな会話劇が繰り広げられるのか、楽しみです。

山寺 「正直、明夫さんがタレーラン役を演じられると聞いて、ビックリしました」

大塚 「最初からやりたかったの」

山寺 「それは知らなかった!」

大塚 「タレーランの演説シーンをやってみたくて。『1日でいいから、タレーラン役ができる回を作ってほしい』とプロデューサーにお願いしていて、やっと念願がかなったんです。あとはね、後輩から『おい、若造!』と呼ばれるのが、ちょっと…(笑)」

――タレーランは、ナポレオンに向かって「若造」と呼ぶ場面があるんですよね。

山寺 「だから、ナポレオン役の人よりも若手の役者だと、何ともやりにくいんですよ(笑)。タレーラン役の人が、ナポレオン役の人よりも年上だったら――例えば安原(義人)さんとか山路(和弘)さんだったら、違和感ないと思うんだけど(笑)」

大塚 「でしょう? 普段僕のことを先輩として仕事をしてきた子たちが、セリフとはいえ『若造』とは言いにくいという意見を聞いて、それは気の毒だなと」

山寺 「だから、ご自身がナポレオンに対して『若造』と言う側に回ってみようかなと?」

大塚 「そう(笑)。逆に、やまちゃん(山寺)はナポレオンはやらないの?」

山寺 「普段であれば、僕はどんな役でも演じてみたいと思うタイプなんですが、初めて台本を読んだ瞬間から、タレーランに心を奪われてしまって。他の役には、全く目が向かなかったんです。料理人のカレームは設定的にも若い役なので、できれば若い俳優さんに演じていただきたかったですし、ナポレオンについては、どう演じればいいのか、私には全く分からなかったんです」

大塚 「なるほど。そこが僕と山寺くんのすみ分けなのかもしれないね」

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

山寺 「ただ、最近ちょっとやってみようと思って、家で全部の役を通して読んでみたんですよ。そしたら、『あれ、ナポレオンも面白いな』と。カレームも若い役だけど、今ちょうど高校生の役をやっているからいけそうだなって(※TVアニメ『らんま1/2』に響良牙役で出演)。4人の登場人物のなかで紅一点のマリー以外はやってみたいという気持ちが、ちょっと芽生えてきました(笑)」

大塚 「でも、われわれはおじいさんだから…(笑)」

山寺 「そんなことないです! キャストの組み合わせ次第ですよ。明夫さんがナポレオンをやって、安原さんがタレーランをやったら、僕がカレームでもきっと大丈夫(笑)。ちょっとずうずうしいけれど、そんなことも思いました。藤沢さんが書かれる台本は、内容もセリフも素晴らしいので、ついやってみたくなるんですよ」

大塚 「分かる。相手役の心にグサッと刺したくなるような、思いが強いセリフばかりなんだよね」

山寺 「そう、まさに言葉で急所を刺す感じ。役者に『言ってみたい!』と思わせる名ゼリフが、全ての登場人物にあるんですよ」

「この世界で泳ぎたい」とベテラン声優を心酔させる、藤沢文翁作品の魅力

――印象的なセリフの他にも、役者さんとして刺激を受ける部分はありますか?

大塚 「表現が難しいのですが、演じていると、世界観にすごく合っているなと感じるんです。『あぁ、この世界でずっと泳いでいたい』と心から思ってしまう。つい先日も、『全ての公演に出たい』と発言したのですが、それはまだかなっていません(笑)」

――「この世界で泳ぎたい」という感覚について、もう少し詳しくお聞かせください。

大塚 「VOICARIONシリーズは、必ず生演奏とともに上演されます。そんな生の音楽と芝居が融合する感覚が、とっても楽しくて。役者だけで作り上げたものに、生演奏という要素が加わることで、1+1=2ではなく、3にも5にもなるような、想像を超えた化学反応が生まれるんです。しかも藤沢さんが書く脚本にはト書きがないので、僕らのセリフと音楽だけで世界観を構築していくことになる。それもあって、より観客と演者が一体となり、劇場の空間全体が一つの物語で満たされていくような、特別な感覚を味わうことができるんです。この感覚は、例えるならまるで水の中にいるよう。ずっとこの世界に浸っていたいと思うほど、心地がいいんです」

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

――観客としても、VOICARIONシリーズの朗読劇はただ朗読を聞くのではなく、想像力を刺激されながら物語の中に入り込む感覚があります。

大塚 「直近の公演ですと、今年の夏に上演された『Mr.Prisoner』も、滂沱の涙でした」

山寺 「その節は、見に来てくださってありがとうございました。僕も明夫さんと同じく、藤沢文翁作品は全て傑作だと思っています。彼との付き合いはもう15年以上になりますが…なぜ毎回こんなにも素晴らしい作品が書けるのかと、驚かされてばかりです」

――作品によって、時代設定は異なりますが、現代の私たちに響く普遍性がありますよね。

山寺 「何百年たっても、シェイクスピアの作品が人々の心を打つのと同じですね。藤沢さんは、どれだけ時代が変わっても人々の心の中にあり続ける“大事なもの”を描いているからだと思います」

大塚 「現代のシェイクスピアたらん、というのが彼の野望ですからね」

――脚本にト書きがないことも、役者魂をくすぐるのでしょうか?

大塚 「何と言っても、読み手の力量が試されますからね」

山寺 「状況を説明するような地語りがないので、物語は基本的に登場人物の会話のみで進行していくんです。でも藤沢作品はどれも壮大で、長い年月にわたる物語が展開します。ドラマチックな分、どんどん時系列や場面が転換するので、下手な役者がやってしまうと、お客さんにはなかなか伝わりにくいと思いますよ。だから、声優学校の教科書に推薦したいくらいです」

――今回の公演の中で、お二人が個人的に楽しみにしている座組はありますか?

山寺 「僕は、吉野圭吾さんと一緒に出演する回ですね(※1月7日昼公演)。普段ミュージカルで活躍なさっている方と一緒にお芝居できるのが楽しみです。キャスト一覧を拝見したら、濱田めぐみさんが出演していらっしゃることにもビックリしました。お二人とも、歌がないのがもったいないくらい! 決められた立ち位置から出ることなく、ただ声だけでお芝居するわけですからね」

大塚 「ちなみにさ、僕がタレーランで諏訪部(順一)くんがナポレオンをやる回があるんだけど、カレームは誰がやると思う? 安元(洋貴)くんなんだよ(※1月11日夜公演)」

山寺 「え、安元くんがカレームをやるんですか!?」

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

大塚 「ビックリでしょう? 今から楽しみで、すごくワクワクしているんです」

山寺 「安元くんがカレームをやるなら、明夫さんがタレーランをやるしかないでしょうね。俺だと無理なんじゃないかな(笑)」

生の掛け合いは“殴り合い”、舞台と客席が共有する緊張感と想像の空間

――生のお芝居でかけ合う醍醐味といえば?

大塚 「それは間違いなく、こちらが投げた球をキャッチして、投げ返してもらえることですね。時にはあえて、すごく取りにくいところに放ってみたりして。そういったやり取りをライブでできることが楽しいです。以前、別のシリーズの藤沢朗読劇で林原めぐみさんと共演したのですが、彼女は本当にすごかった。こちらの急所を的確に、決して過不足ない最適の力で刺してくるお芝居をするんです。あれには大きな刺激を受けました」

山寺 「アニメのアフレコで、尺や絵の口パクといったいろんな制限がある中で演じるのも、それはそれで楽しくて大好きなんです。でも、それとは全く違う面白さのある生の朗読は、最高に楽しいですね。例えるならば、どこにも逃げられないところで、殴り合いをしているような感覚がするんです」

大塚 「そうだねぇ。その殴り合いの精度が上がってくればくるほど、お客さんもグッと引き込まれる。あの感覚がたまらないね」

――確かに。役者さん同士の芝居の殴り合いは、生の朗読劇でしか体感できない迫力があります。

山寺 「だから見る側も、よりカロリーを使いますよね。通常の舞台でも集中力は必要ですしカロリーを使うだろうけれど、朗読劇はなおさらだと思います。よく『脳に汗をかく』という表現を使いますが、まさにその通りだなと。お客さんたちも想像力を働かせながら見ることが求められるからこそ、極限に近い状態を体感できる」

大塚 「ある意味、小説を読んでいる時と近い感覚かもしれないね。映像で、全ての情報が目に入ってくる状態と、何も見えないところで自分で情景を作り出さなくてはいけない状態では、脳の消費カロリーが大きく変わってくるから。ただ能動的に見るだけではなく、想像の翼を広げる感覚は、他のエンターテインメントにはない部分。だから面白いんだと思います」

山寺 「時折、『どうしてわざわざ朗読でやるの?』という声をいただくこともあるんですよ。『そこまでこだわるのなら、もう普通に動いて演じればいいのに』って。でも、ある程度のしばりがある方が好きなんです。ひと言で朗読といってもいろんなスタイルがありますが、VOICARIONシリーズは固定のスタンドマイクを使った、その場から動かないスタイル。それって、日本に昔からあるさまざまな語りの芸の延長線にあるものだと、僕は認識しているんです。そしてVOICARIONシリーズは、すでにそういった文化の一つになりつつあると思います」

大塚 「落語や語りの芸が、なぜ今も残っているのかということだよね」

山寺 「だから、『どうせ普通の朗読でしょ?』と思っている方には、ぜひ一度見に来ていただいて、体感してもらいたいんです」

大塚 「脳内のスクリーンが優秀かどうかは、ご覧になるあなた次第です、ってね?(笑)」

山寺 「その点、VOICARIONシリーズはとても親切にできています。開演前の場内アナウンスでも、物語の時代背景や歴史について、分かりやすく解説してくれる時間が用意されているんですよ。それを聞いていただけたら、朗読劇が初めての方でもより深くお楽しみいただけると思います」

大塚 「アナウンスを聞くためには、余裕を持って劇場に到着していないといけないから、とてもよくできたシステムだね(笑)」

「スプーンの盾」で再共演!声優界のレジェンド・大塚明夫と山寺宏一が胸を躍らせる朗読劇の進化形

【プロフィール】
大塚明夫(おおつか あきお)
1959年11月24日生まれ。東京都出身。B型。主な出演作は、「ブラック・ジャック」「攻殻機動隊」「ルパン三世」「ONE PIECE」など多数。現在TVアニメ「らんま1/2」(日本テレビ系)、「殿と犬~わんわん!~」(TOKYO MXほか)に出演しているほか、映画「PUI PUI モルカー ザ・ムービー MOLMAX」「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」が公開中。2025年は、「天久鷹央の推理カルテ」(TOKYO MXほか)が1月1日スタート、「サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話」(TOKYO MXほか)が1月6日スタート、「悪役令嬢転生おじさん」(MBS・TBS系)が1月9日スタート。


山寺宏一(やまでら こういち)
1961年6月17日生まれ。宮城県出身。A型。主な出演作は、「かいけつゾロリ」「新世紀エヴァンゲリオン」「ルパン三世」「カウボーイ・ビバップ」「昭和元禄落語心中」など多数。現在TVアニメ「らんま1/2」「それいけ!アンパンマン」(ともに日本テレビ系)に出演中。「異修羅」第2期が25年1月8日スタート。「TO BE HERO X」(フジテレビ系)が4月、「LAZARUS ラザロ」が25年、連続テレビ小説「あんぱん」(NHK総合ほか)が25年春に放送を控えている。

【インフォメーション】
「VOICARION XIX~スプーンの盾~
https://www.tohostage.com/voicarion/2025spoon/castsch.html
大阪公演 2024年12月28日(土)・29日(日) サンケイホールブリーゼ
東京公演 2025年1月4日(土)~30日(木) シアタークリエ

※大塚明夫 出演回
東京公演 1月11日(土)19:00回/1月18日(土)18:30回/1月19日(日)18:30回/1月25日(土)19:00回

※山寺宏一 出演回
東京公演 1月7日(火)13:00回/1月8日(水)13:00回/1月17日(金)12:00回/1月18日(土)18:30回

取材/実川瑞穂 文/本多恵 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/(大塚)藤井康弘、(山寺)岩井マミ(M) スタイリング/(大塚)森島あさみ、(山寺)濱中麻衣子(M)

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