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テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」2024/09/17

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

 脚本家、小説家として一時代を築き、ホームドラマの名手として人間模様を丁寧に紡ぐ山田太一氏の作品の中でも異彩を放つ「終りに見た街」。1982(昭和57)年放送時には細川俊之が、2005年(平成17)年放送時には中井貴一が主演を務め、それぞれの時代に生きる主人公とその家族たちが1944(昭和19)年にタイムスリップし、戦時下を生き抜く姿を描いてきた。

 テレビ朝日系で9月21日(土)に放送の3作目となる本作は、脚本を宮藤官九郎が執筆し、2024(令和6)年に東京郊外で何不自由なくありふれた生活を送るテレビ脚本家・田宮太一の一家を描く。今作で太一(大泉洋)の妻・ひかり役を演じる吉田羊さんに、ひかりの役柄についてや撮影中に感じたことなどを聞いた。

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

――台本を初めて読んだ際にどのような印象を持たれましたか?

「台本と原作も読ませていただいたのですが、戦争体験者である山田さんが描く戦争のリアルに宮藤さんがお持ちのユーモアと現代的な新しい感覚が合わさっていて、何度もリメークされている作品ではありますが、その都度その時代が反映され変化していく作品なのだなと。大変面白く拝読しました」

――ご自身が演じるひかりをどのような女性だと捉えていますか?

「とても真面目で責任感の強い女性だと思います。家事と仕事の両方をこなしながら、義理の母・清子(三田佳子)のケアも手を抜かずにやっていて。さらに、タイムスリップした後には家族を守るために前向きに物事を諦めることもできる強さも見え、とても愛情深い人なのだなと感じています」

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

――そんなひかりに共感できる部分は?

「私自身の考え方に近い人で、演じていて違和感を覚えるところがあまりなかったです。愛する人たちのために自分が今何をできるか考えて、それを選び取っていけるところには特に共感できました。大泉さん演じる太一さんとけんかをしながらも、心の中ではパートナーとして大切に思い、尊重している姿もとてもすてきだなと思います」

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

――ひかりを演じられ、今どのような思いを抱いていますか?

「これまで資料や授業などで戦争について学んできてはいますが、今回演じてみて、お芝居と分かっていても怖さを感じました。なので、当時の人々がこれをリアルに体験していたのかと思うと、どれだけ絶望的な気持ちで日々を生きていたのだろう…と。本当に恐ろしい時代だったのだなとあらためて感じました。ドラマの中では義理のお母さんが家族の中で唯一の戦争体験者で、彼女のあるアイテムによってわれわれは戦禍をくぐり抜けることになるのですが、家族の中に体験者が一人いるだけで身近なこととして戦争を感じるきっかけになるのかなと思って。実際、三田さんのセリフ一つ一つにすごく説得力がありましたし、三田さんのたたずまいに学ぶところが本当にたくさんありました」

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」
テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

――劇中では、次第に家族の中で戦争に対する価値観にずれが生じていくさまが描かれます。

「当初、子どもたちは戦争をどこか非現実的な虚構の世界のように捉えているようなところからどんどん戦争に感化されていくことになりますが、経験が少なく純粋な子どもだからこそ、良くも悪くも影響されやすいと思うんです。だからこそ、この現実でも大人たちが子どもに恥じることのないように正しく導いていく覚悟が必要だなと。そして今回、子どもたちが現状を受け入れていく過程、そのグラデーションを監督がすごく丁寧に作っていらっしゃって、本当に細かく繊細に彼らの気持ちの変化を演出されていたのがとても印象的でしたね。さらにはそれを受ける子どもたちのお芝居も現場でどんどん変わっていって、そのさまは俳優としてとても勉強になりました」

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

――どのような方にこの作品を届けたいですか?

「特にこの先日本を支えていくであろう、若い世代の皆さんに見ていただけたらいいなと思っています。世界で戦争が起きている今、時代は違うけれど戦時下というのはどういう状況なのか、そして戦争によって人間がどう変わっていくのか、はたまた変えられてしまうのかということを、このドラマをきっかけにもう一度考えていただけたらうれしいです。また、戦争ドラマというとどこかシリアスで重たいイメージがあると思いますが、このドラマは宮藤さんならではのユーモアがところどころにちりばめられていて、戦争を全く知らない世代の皆さんにも、より身近に自分事として捉えていただけるような物語になっています。ぜひご家族全員皆さんで一緒にドラマを楽しんでいただいて、見終わった後は戦争について話す時間が生まれるような、そんな作品になったらいいなと思っています」

テレビ朝日開局65周年記念 ドラマプレミアム「終りに見た街」吉田羊インタビュー「本当に恐ろしい時代だったのだなと」

【プロフィール】

吉田 羊(よしだ よう)
2月3日生まれ。福岡県出身。近作はドラマ「不適切にもほどがある!」(2024年/TBS系)、大河ドラマ「光る君へ」(24年/NHK総合ほか)など。現在、Netflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」が配信中。

【番組情報】

テレビ朝日開局65周年記念
ドラマプレミアム 「終りに見た街」
テレビ朝日系
2024年9月21日(土) 午後9:00~10:54

出演:大泉洋 吉田羊・奥智哉 當真あみ 今泉雄土哉・勝地涼 三田佳子 堤真一
特別出演:神木隆之介 田辺誠一 塚本高史 西田敏行 橋爪功(※五十音順)

取材/齊藤光香(テレビ朝日担当) 文/TVガイド編集部 撮影/蓮尾美智子



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