Feature 特集

世界体操男子代表のエース兄弟・谷川航選手&谷川翔選手2019/10/02

Cheer up! アスリート2020!

 55年前の東京五輪で団体2連覇を果たした男子体操。2020年もまた東京で、リオに続く2連覇を狙う。その前哨戦、世界体操で谷川兄弟が世界へ羽ばたく。兄弟からライバルへ、そして日本のWエースへ。谷川兄弟の輝く未来とは…?

世界の“谷川兄弟”へ

 東京五輪では団体2連覇を狙う日本男子体操陣。前哨戦の世界体操では金メダル奪還が大命題だが、リオ五輪優勝の立役者内村航平、白井健三は不在だ。

谷川航(以下、航) 「内村さんが出場しないので、去年の内村さんの存在感をあらためて感じました。でも、いつまでも頼りっぱなしでも駄目。僕ら下の世代が頑張らないと日本のレベルも上がらないので、甘えてばかりではなく自分たちで引っ張っていこうと思っています。このピンチをチャンスに変えていきたいです」

谷川翔(以下、翔) 「僕は去年、補欠だったので、世界体操は初めて出場する一番大きな大会という感じです。でも、兄から『気負わずに他の大会と同じだと思って、いつも通りやってくれればいい』と言われていますので、いざ試合になったらいつも通り伸び伸びとできればと思っています。ただ、全日本とNHK杯で優勝して、現時点で日本一になったからには、その自覚を持って日本を引っ張っていく気持ちでやらなければ、というプレッシャーも多少はありますね」

 翔はNHK杯での優勝後、プレッシャーから解放された安堵感から涙を流し、周囲を驚かせた。

 「試合中は他の人たちにそんな姿を見せられませんから(笑)」

 「去年のNHK杯でずっと1位だったのに、最後の鉄棒で落下しているんです。そのプレッシャーは絶対にあるな、と思っていましたが、インタビューでの涙を見て、それほどだったのかと思いました。僕は優勝がないので感じたことはないのですが、ちょっと驚きでしたね」

 高校・大学の先輩でもある航は、翔をどう見ているのか?

Cheer up! アスリート2020!

 「体が柔らかくてあん馬の開脚旋回などが得意。僕はあまり体が柔らかくなくて開脚旋回ができないので、そこは素晴らしいと思います。あとは体の線が奇麗で美しい体操をするところが長所ですね。弟なので負けたくないという気持ちはありますが、普段の練習ではお互いにアドバイスをしたりしています。ライバルというよりは、仲間という感覚の方が大きいですね」

 逆に翔は兄をどう見ている?

 「僕よりも瞬発力があるというか、爆発的な力を持っているんです。筋力がすごくてパワーがある体操をするというところはすごいと思います。練習も淡々とこなす、というか、うまく練習をして試合に合わせてくるところもすごいですね」

 航は跳馬、翔はあん馬が得意種目と言われているが、これには共にクールな反応を見せた。

 「個人総合で戦いたいので6種目を満遍なくやる、と思っているのですが、団体は得意種目だけに出場しますよね。なので、そこで武器になるものに力を入れてやる、という感じです」

 「あん馬が、というか開脚旋回が得意なので結果的にあん馬の点が良くなるという感じです」

Cheer up! アスリート2020!

 昨年の世界体操で団体3位となったことで東京五輪の出場権は手に入れた。その東京ではWエースとなるかもしれない。

 「五輪には小学生の頃から出たいと思って、ずっと体操を続けてきました。それが東京で行われるので絶対に出たいという気持ちが強いです。初めての五輪ですが、自分の演技をしてアテネの冨田(洋之)さんみたいに金メダルを取れたら、と思います。団体に出られる選手は4人なので、弟と一緒に出場するというのは大変なことだとは思いますが、それが可能な位置にいる。このままレベルアップして五輪を迎えられたらと思います」

 「五輪には絶対に出たい、という気持ちはあります。ただ、今代表に入っているから大丈夫、ということではなくて、今年の冬から来年の春にかけての選考会で権利を勝ち取らなければいけない。絶対に勝ち取って東京五輪で最高の演技をして金メダルを取る、というのが目標です」

 そのために必要なレベルアップも2人は自覚している。

 「去年の世界体操で中国とロシアに負けて3位になって感じたのは、Dスコアが足りないということでした。新しい難易度の高い技をもう少し入れて、完成度を落とさず演技する、ということが大事になってくると思います。それについてはこの1年間意識してやってきたので、今回の世界体操でまず去年の悔しさを晴らし、来年に向けていい流れを作りたいと思います」

 「兄はDスコアを上げると言っていましたが、日本の選手は全体的に少し低いかな、という印象があります。そこを頑張るのと、あとはある程度のレベルになったら失敗しない人が勝つ、という試合になるので、どれだけ失敗をなくしていくかが大切になると思います。そのためには練習を積み重ねていくことが大事なのかなと思っています」

Cheer up! アスリート2020!

【TVガイドからQuestion】

Q1 印象に残っているスポーツ名場面を教えて!

 「アテネ五輪の冨田さんの鉄棒の着地で、『栄光への架け橋』と実況された場面です。何度見ても涙が出るほど感動します。あの場面で五輪に出たい気持ちが強くなりました」

 「リオ五輪で内村航平さんが個人総合の最後の鉄棒で逆転優勝を決めたシーンです。感動的で、自分だったらこんなにできるかなと。内村さんのすごさをあらためて感じました」

Q2 好きなTV番組/音楽(応援歌)を教えて!

 「お笑い番組が好きなんですが、最近はあまりテレビを見ないので番組名が思い浮かばないです。音楽はラップ系が好きです。『フリースタイルダンジョン』などは見ますね」

 「僕もお笑い系が好きで『アメトーーク!』や『水曜日のダウンタウン』は見ています。音楽は携帯にたくさん入れて、その時の気分に合わせて聴きたいものを聴いています」

Q3 “2020”にちなんで、“20”時間兄弟でどう過ごしたいかを教えて!

 「えー! ウイイレ(ウイニングイレブン)ですかね! 今も合宿中ですが、持ってきています。駄目ですか…?」

 「ゲームも部屋でやる分には問題ないだろうって(笑)」

 「部屋で弟と戦っています」

 「でも、20時間もゲームばっかりやれると思う(笑)?」

 「さすがに無理かな(笑)」

 「いつものおしゃべりかな。あまり意味のない話とか(笑)」

Cheer up! アスリート2020!

【体操競技概要】
男子は1896年の第1回アテネ大会から、女子は1928年アムステルダム大会から実施。ゆか、鉄棒など器械上の演技における技の難易度・美しさ・安定性などを基準に採点。その得点で優勝者を決定する。技がどれだけ難しいかを得点化したDスコアと演技の完成度を得点化したEスコアの合計得点を争う。男子の種目はゆか・あん馬・つり輪・跳馬・平行棒・鉄棒。日本男子は五輪団体で、1960年ローマから1976年モントリオールまでの5連覇を含む通算7度の優勝を誇る。

【プロフィール】

谷川航(たにがわ わたる)

1996年7月23日千葉県生まれ。獅子座。B型。

谷川翔(たにがわ かける)

1999年2月15日千葉県生まれ。水瓶座。

▶︎「幼稚園の頃に体操の時間があって補助をしてもらいながらバク転の練習などをしていました。そこで体操を続けないかと言われ」航は小学校1年から体操クラブへ。

▶︎そんな兄を見ていた翔も同じ幼稚園から同じ体操クラブへ入り体操を始める。

▶︎航は2014年全日本種目別のゆかで3位、16年同大会の跳馬で優勝。17年世界体操に初出場し、18年NHK杯5位、同年の世界体操にも出場。団体3位に貢献する。19年は全日本選手権個人総合5位、NHK杯では弟に次ぐ2位で3度目の世界体操出場を決める。

▶︎翔は17年全日本種目別あん馬4位から翌18年には内村航平、白井健三らを抑えて全日本選手権・個人総合で優勝。19年全日本選手権2連覇、NHK杯個人総合優勝。そのほか、兄と共に出場したユニバーシアード団体優勝に貢献する。19年、初めて世界体操の代表に決定。

【番組情報】

Cheer up! アスリート2020!

「世界体操2019 ドイツ・シュツットガルト」
10月8日~13日 テレビ朝日系で放送

◆10月8日 午後11:00~深夜1:00[女子団体決勝]
◆10月9日 午後11:00~深夜1:25[男子団体決勝]
◆10月10日 深夜0:15~深夜2:10[女子個人総合決勝]
◆10月11日 深夜0:20~深夜2:50[男子個人総合決勝]
◆10月12日 午後11:30~深夜3:00[種目別決勝 第1日]
◆10月13日 深夜0:05~深夜3:00[種目別決勝 第2日]

夏季五輪が開催されない年に行われる国際体操連盟主催の国際大会。10月4日~13日にドイツ・シュツットガルトで開催され、男女団体、個人総合、種目別で優勝が争われる。前回男子は団体3位で東京五輪出場権を獲得した。

取材・文/田村友二 撮影/增田勝行(SIGNO)



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.