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「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!2024/04/23

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

 向田邦子賞委員会と東京ニュース通信社の主催で、優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞。その選考会が4月23日に東京都内で行われ、第42回の受賞は、2023年3月19日~5月7日に放送された「グレースの履歴」(NHK BSプレミアム)の脚本を手掛けた源孝志氏に決定した。

 授賞理由は「人生の機微、さまざまな登場人物の心情をあぶり出す描写力と、現在と過去を行き来する巧みな構成力によって、誰もが避けられない情愛と喪失、生と死の問題を見事に連続ドラマとして昇華させた、その確かな手腕を称えます」というものだった。

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

源孝志 コメント】

これだけのそうそうたる脚本家の方に、こういう場だとしてもお褒めの言葉をいただくというのは、汗顔(かんがん)の至りといいますか…。本当に僕も、大森(寿美男)さんが先ほどおっしゃってましたけれど、割と脚本書いているんですよ(笑)。

数にしたら、100本以上書いているんですよね。ただ、それは自分が撮るものなので、作品になった時にはディレクターというか演出家というか、映画の場合は監督ということで世間に認知される。でも、僕の場合、脚本がすごく大事で、毎回一生懸命書いているので、脚本家として認めてくれないかなと、ずっと何十年も思っていました(笑)。中でも、この向田邦子賞というのは憧れの賞というか、第一線の一流の脚本家の方に選ばれるということでその意義や価値があって、すごく憧れの賞だったんですね。

僕が少年時代から青春時代にかけては、やはり向田さんが書かれたドラマをテレビで見ていましたし、そういう文化の中で育ってきました。向田さんとか、山田太一さんとか、市川森一さんとか、そういう世界の方々が作るテレビの上質なドラマというのを見てきたので、それが血肉になっている。僕は、脚本の勉強もしたことはないんですよね。どなたか師匠がいるとか、そういう学校に通ったとかいう経験は全くない。なので、そういう子どもの頃に見ていたテレビが先生というか、そういった意味で、向田さんの書かれる脚本というのは、はっきりと言葉として自分の中に取り込まれている気がしています。だから、このような賞をいただけるというのは、ちょっと感動的なんですよね。やっといただけたというか。

皆さん若い時から頭角を現している、第一線で活躍されている(脚本家の)方が多いので、30代とか40代とか一番エネルギーにあふれている時に代表作に出合うということが多くて、そういう時期に受賞されていると思うんですが、僕は「やっと見つけていただいてありがとうございます」という感じです。

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

【プロフィール】

源孝志(みなもと たかし)
1961年6月5日生まれ。岡山県出身。立命館大学産業社会学部卒業。卒業後はホリプロに入社した後、日本テレビに出向。主にバラエティー番組のプロデューサー、ディレクターとして活躍。2003年に独立して株式会社オッティモを設立。99年に「同窓会へようこそ」(TBS)で初のテレビドラマ脚本を担当。主なテレビドラマ作品は、「京都人の密かな楽しみ」「スローな武士にしてくれ~京都 撮影所ラプソディー~」「令和元年版 怪談牡丹灯籠」(すべてNHK BSプレミアム)、「ライジング若冲 天才 かく覚醒せり」(NHK総合)、「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」(NHK BSプレミアム)など。多くのテレビドラマ作品では演出も手掛けるほか、映画「東京タワー Tokyo Tower」や「大停電の夜に」などの監督も務めている。 

【選考委員 コメント

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

大石静(第15回受賞者)
「候補の4作はどれも素晴らしくて、本当に高いレベルの選考会だったと思います。源さんの作品に関しては、『スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜』というドラマを初めて見た時に、『こんなすてきなものを書く人誰なんだろう』と思い、その時に源さんのお名前を胸に刻みました。それから気が付けば拝見するようにしていて、『京都人の密かな愉しみ』第2シリーズはDVDも買っちゃうぐらい繰り返し見て、今でも楽しんでいます。自身で監督もなさって、美しい絵柄の独特の世界観で、しかも私みたいに必死こいて次々やらないで、たまにお仕事をなさるというスタンスがカッコいいなと思っていました。今回の作品はミステリー風にも構築されているし、ロードムービーとしてもすてきで、本当に見事なプロフェッショナルの仕事で、うまいなと思いました」

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

大森寿美男氏(第19回受賞者)
「皆さんご存じのように、源さんは素晴らしい演出家として世間では認知されていますが、同時に素晴らしい脚本家だったということを今回の作品で実感しました。独自な路線で自由に作っていく姿勢を昔から尊敬していて羨ましかったですし、『毎回どんな作品を作るんだろう』『次はどんなことをやるんだろう』と思わせてくれるクリエーターです。今回の『グレースの履歴』では、これまでの源作品にないような新境地を開いて、そこで圧倒的な安定感と完成度を見せつけられました。文句なしの受賞だと思います」

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

■岡田惠和(第20回受賞者)
「源さんの作品はいつも楽しみに拝見していて、仕事のスタンス、やり方がすてきだなと思っていますし、“誰にも似ていない作品を作る人”だなと思っておりました。今回脚本を読ませていただいて、本当に美しい台本で、神経がすべてに行き渡って、素晴らしい構築力とある種のロマンチシズムのようなのもあって、唯一無二な作品だと思いました。今回の選考は4作品ともレベルが高くていい選考会でしたが、その中でも勝ち抜かれたことは当然かなと思っていますし、敬意を表したいと思います」

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

大森美香氏(第23回受賞者)
「初めて選考委員をさせていただいて、1話から最終話まで脚本を読ませていただきました。最後に残った四つの作品は、ジャンルも違ってどれも面白くて、今まで(選考委員の)先生方が迷いながら選んでいたんだということがよく分かりました。その中でも、『グレースの履歴』は最後までワクワクさせられた作品でした。脚本は視聴者の方に直接行くものではなく、スタッフやキャストが読むものですが、これを受け取ったスタッフやキャストは本当にワクワクしただろうなと思いました。美しいだけでなく、見る人を楽しませる仕掛けもたくさんあって、脚本としてすてきだなと思い、最初の第一印象から選ばせていただきました」

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

■井上由美子(第25回受賞者)
「今回の選考は、(候補者が)20代~60代までとバラエティーに富んでいて、作品の質もいろんなものが集まっていて、とても楽しい選考会でした。その分、悩みも多かったんですけど。私は、最初から源さんの『グレースの履歴』が素晴らしいなと思っていました。今は若い方向けのドラマが多い中で、“大人による、大人のための、大人のセリフを楽しむドラマ”っていうのは非常に少ないので、そこをきちっとやってくださって、見応えもありました。8本ある台本を読みましたが、8本ぐらい書くと真ん中の方が少し緩んでしまうことがあるんですけど、全く緩まず、全話均一に練り上げられていて、かといって決して堅苦しくない、静かなおかしみもあって素晴らしいシナリオでした」

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

■坂元裕二(第26回受賞者)
「審査にあたって膨大な数の脚本を読むのですが、『グレースの履歴』はとても楽しく、穏やかな世界観に浸るように読むことができました。何よりその手腕といいますか、技術力として、その高さに、同業の人間が言うのも変ですが、舌を巻きました。ちょっとその技術を分けてもらえたらいいなと思いました」

【作品情報】

「グレースの履歴」の源孝志が第42回向田邦子賞に決定!

作品:「グレースの履歴
放送日・放送局:2023年3月19日~5月7日放送(NHK BSプレミアム)
原作:源孝志
演出:源孝志、西山太郎
音楽:阿部海太郎
制作統括:樋口俊一、八巻薫
プロデューサー:森井敦、中森幸介、石崎宏哉
出演:滝藤賢一、尾野真千子、伊藤英明、柄本佑、林遣都、山崎紘菜、黒谷友香、宇崎竜童、広末涼子 ほか

日本の美しい風景を舞台に、夫の心の旅路を妻の愛車でたどるロードムービー。妻を突然の事故で亡くした蓮見希久夫(滝藤賢一)に残されたものは、妻・美奈子(尾野真千子)の愛車・グレース。日常から遠く離れた場所ばかりカーナビゲーションの履歴に残されていたことを知り、妻の不貞を疑った希久夫は謎を解くため履歴をたどる旅に出る。往年の名女優、グレース・ケリーと伝説のエンジニアのエピソードを乗せて、人々に引き継がれていく名車の存在は、希久夫の人生に意外な展開を及ぼしていく。

<向田邦子賞とは>

故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績を称え、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定。主催は「TVガイド」を発行する東京ニュース通信社で、選考は歴代受賞者らによる向田邦子賞委員会が担当。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定している。選考委員は大石静氏、大森寿美男氏、岡田惠和氏、大森美香氏、井上由美子氏、坂元裕二氏(向田邦子賞受賞順)。


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