祝・向田邦子賞ノミネート! 担当Pが語る「イチとも」が伝えたい思い2024/04/12
テレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞・向田邦子賞のノミネート作品が発表され、兵藤るりさんが脚本を手掛けたNHK総合の夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」が候補入りしました。
これを受け、4月23日の本選に向けて、プロデューサー・押田友太さんからのコメント&ドラマの振り返りをお届けします。プロデューサー業が初めてだったという押田さんがドラマに込めた思いや、兵藤さんとのドラマ制作を振り返った感想など、たくさん語っていただきました!
押田プロデューサーからのコメント
向田邦子賞の印象について
オリジナル作品にしか与えられないものということと、作品ではなく作家さん本人に与えられるものなので、テレビ界では最高の賞だなと思っていて。脚本があってのドラマなので、ノミネートされただけですごくうれしいです。正直、脚本作りはとても大変だったので、苦労が報われた思いでした。今回、ノミネートされることを兵藤さんに連絡した時にも心から喜んでくださっていましたし、笠松ほたる役の蒔田彩珠さんと、鍵谷美晴役の髙石あかりさんにもご連絡したところ、2人もすごく喜んでくれていました。みんなで喜びが共有できたことがよかったです。
ノミネートされた感想&手応え
今回ノミネートされた作品はどれも面白い作品ですし、経験豊富な方たちが多い印象で、この中に並んでいるだけでも素晴らしいことだなという思いはあります。私は、このドラマのプロデューサーなので最初に読者として読む立場にいたのですが、台本をもらった時の衝撃が忘れられなくて。はっきりとは言えない微妙な感情の揺れみたいなものが文字で表現されていて、共感もできる話で。なおかつ、ほたると美晴の関係を「アリとアブラムシ」と表現されたり、市川実日子さんが演じられているクリーニング店の(東)聡美さんが「合同昆虫パーティー、略して合コンをやりましょう」と提案したりするなど独創的な部分もあって。しかも、真面目な話だけじゃなくて、コミカルでユニークな部分も合わせ持っていたので、読んでいてすごく面白い台本だったんです。今までこんな台本を見たことがなくて、次が待ち遠しくなるのは初めてでした。私がこの脚本の一番のファンだと思います。ファンとしてぜひ受賞してほしいです。もし今回取れなかったとしても、兵藤さんは才能にあふれる方なので、いつか必ず受賞すると思っています。手応えは分かりませんが、もし受賞できたらうれしいです。
作品への思い
私なりの考えですが、主人公が成長して自分らしさに気付いていくストーリーのドラマが多い中、このドラマは自分らしさや、やりたいことが分からないことを否定せず、肯定してくれるドラマだと感じています。主人公のほたるは本編中、大きく変わっていくわけじゃなくてずっと悩み続けているんですけど、この世界に、ほたると美晴が存在しているんだなと考えるだけで救われる人もいると思うんです。向田邦子賞のノミネートが決まった時、SNSで「お守りになるドラマ」とつぶやいてくださっている方がいて。まさに誰かのお守りになったドラマなのかもしれないと思うとうれしいですね。
兵藤さんへの期待
私はプロデューサー業が初めてで、作家さんと一から最後まで責任をもって脚本を作るのが初めてだったんです。以前から兵藤さんはいろんなところですごく才能あふれる方だと伺っていたんですけど、(それは私自身のスキルも含めて)最初は正直不安もありました。でも、一緒にやっていくうちに、コミュニケーションをしっかりとってくださるタイプの作家さんで、物語自体は見ていて分かりやすく進んでいくドラマではないのですが、人ってそんなにすぐ変わるものじゃないですし、変わらないこともいいんじゃないか。そんなドラマが今の時代には必要なのではないかと、兵藤さんの思いを感じた打ち合せの日々だったと思います。私もつい伝わりづらいことをテーマにしようとしてしまうのですが、兵藤さんは一個一個の話を丁寧に聞いてくださって。こちらが投げかけたテーマをより面白く返してくれる本当に素晴らしい作家さんです。これからもたくさん書いていかれると思うので、もっと兵藤さんという方を世の中の人に知ってもらえるきっかけになれたらうれしいです。
受賞への意気込み
ほかの候補3作品は脚本家の方も経験豊富な方だと思うんです。そういう面ではまだ初々しい作品ではありますが、今回をきっかけに、ぜひいろんな方に知ってもらえればと思います!
ドラマあらすじ
就職活動で連戦連敗中の大学4年生・笠松ほたる(蒔田)には、ある“天敵”がいる。小中高も一緒、そして、今も家の近くに住んでいる同級生の鍵谷美晴(髙石)。クラスのもめ事にも正論で返し、さまざまなアクシデントにも創意工夫で乗り越える。いつも自分の前でまぶしいスポットライトを浴び続ける存在。そんな幼なじみのキャラクターを自分で装い、入社試験に臨んだとしたら――「わたしにとってこんな自分だったらいいのには、鍵谷美晴だった」。
<第1週>
ほたると美晴は「腐れ縁」で結ばれている。ある日、リクルートスーツを洗うために訪れたクリーニング店で、店主の東聡美(市川実日子)から2人の関係を問われたほたるは、自分と美晴の関係について思いを巡らせる。そんなほたるは、最後の頼みの綱である大手企業のエントリーシート執筆に思い悩む。気を許せる同級生の長野慎吾(倉悠貴)やアルバイト先の店長・桜井沙瑛(サーヤ)にアドバイスをもらいながら、エントリーシートを書き進めるほたるに、ある思いがよぎる。
<第2週>
エントリーシートに美晴のプロフィールを書き、志望している会社に送ってしまったほたる。罪悪感で選考辞退をしようとした時、メールが届く。それは、ほたるが書類選考を通過したお知らせだった。美晴になりきるためダンス練習に取り組むも、虚しさで一杯に。
<第3週>
美晴のプロフィールを元に一次面接を通過してしまったほたる。人生のテンポ感がおかしいと思い立ったほたるは、同級生の慎吾と共に始めた「役作り会」でそのことを相談する。次々と試験を突破し、ついに東京でグループディスカッションに参加することに。そこでほたると同じ就職活動に苦戦している城島和佳奈(久間田琳加)と出会う。思いもよらない言葉をかけられるほたるだったが…。
<第4週>
大手化粧品メーカーの最終面接を迎えたほたる。意気揚々とエントリーシートに書かれている自己PRを話していくも、面接官の木下雅人(原田泰造)らから「あなたの話を聞きたい」と総ツッコミを受けてしまう。思いもよらない言葉に口ごもってしまい、落胆するほたるだったが、結果はなんと通過。そんな気持ちの中、道で美晴と出会う。
<第5週>
3年後。社会人になったほたるは、大手化粧品メーカーで商品開発のリーダーを任されていた。上司・木下の期待を受け、チームメンバーの三島麻衣子(倉科カナ)たちと共に仕事に取り組む日々。恋人・相澤賢人(高杉真宙)とは穏やかな関係を築いているが、賢人からの「ちゃんとしてるよね」という言葉に戸惑ってしまう。
<第6週>
街で偶然再会したほたると美晴。美晴は会社を辞めて、次なる道を探していた。予想だにしない美晴の近況に打ちひしがれるほたる。そんなほたるに美晴は「変わったけど、全然変わってない」という言葉をかける。変わろうと頑張ってきたはずの3年間に戸惑いを隠せない。仕事も手につかないある日、恋人である賢人の前で頑張ろうとする自分に違和感を抱く。
<第7週>
自分をリセットするために地元・神戸に戻ってきたほたる。そこで、変わらずクリーニング店を営む聡美に再会する。昼休憩に一緒にまかないのお弁当を、と誘ってくれる聡美だったが、この店にはもう1人いるという。それは、アルバイトとしてこの店で働いている美晴だった。驚くほたるの前に、さらに大学時代の同級生・慎吾が現れる。
<第8週>
「鍵谷美晴さんを奪った。」。美晴のプロフィールを拝借して就職試験に臨んでいたとことを酔った勢いで話してしまったほたる。美晴はそんなほたるに「出てって」と言ってしまう。美晴はなぜそう言ってしまったのかを思い返すため、ほたるとの学生時代に思いをはせる。「笠松さんは、いつも何か良い影響を与えてくれる存在で、それは変わらないと思っていて…」。そんな時、美晴の前にほたるが現れる。
美晴がほたるにこれまでずっと抱いていた思いとは? 美晴側の視点が明かされる…。夜ドラ「わたしの一番最悪なともだち」はNHKオンデマンドにて絶賛配信中です。
NHK担当/kizuka
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