【独占インタビュー】声優・梶裕貴の音声合成プロジェクト「そよぎフラクタル」のクラウドファンディングが始動! もう1人の自分“梵そよぎ”に込めた思い2024/04/04
声優活動20周年を迎えた梶裕貴さんが自ら主導する、自身の“声”を軸に展開する音声合成プロジェクト「そよぎフラクタル」。これまで、公式SNSでメッセージ動画やキャラクターデザイン、公式サイトが公開されてきましたが、新たな展開として、4月からクラウドファンディングを開始することが明らかになりました。
発売中の「TVガイドPERSON vol.140」では、そんな梶さんの撮り下ろしグラビア&インタビューを8ページにわたり掲載。その番外編として、誌面には掲載しきれなかった“梵そよぎ”制作裏話と、TVガイドWebだけの撮り下ろしカットをお届けします。
「そよぎフラクタル」は、2023年9月に梶さんの自主企画として始動したプロジェクト。梶さんの声を元に作られた合成音声システム“梵そよぎ”のボイスが公式YouTubeチャンネルにて公開されると、人気声優の“声”を使った新たなエンターテインメントとして話題に。また、キャラクターデザインをイラストレーター/アニメーターの米山舞氏、オフィシャルサイトのテーマ曲を作曲家の澤野弘之氏が手掛けるなど、梶さんとご縁のある豪華クリエーターがさまざまな形で関わっていることも大きな注目を集めています。
──梶さんが、合成音声プロジェクト「そよぎフラクタル」を立ち上げた理由を教えてください。
「コロナ禍を経て、『声優である自分だからこそできる表現とは何だろう?』と考えたこと──そして、自分の年齢とキャリアを思った時に、『何かを残したい』と強く感じたことが本企画の原点です。そこから試行錯誤を重ね、ようやく誕生したのが、この『そよぎフラクタル』。声優にとって最大の武器である“声”を生かした音声合成プロジェクトです。加えて、自身の声優活動20周年企画という側面もあるので、これまでお世話になってきたアニメ業界や声優業界に少しでも恩返しができればという思いも込められていますね」
──「梵(そよぎ)そよぎ」というキャラクター、そして「そよぎフラクタル」というプロジェクト名の由来を教えてください。
「まだ、このプロジェクトが具体的な形になる前、まずは自分のイメージするエンタメの方向性を分かりやすく周りに伝える準備が必要だなと思い、メモ的要素を兼ねて、あらかじめ脚本を書いていたんです。つまりは『もしも、いつの日かアニメ化できた際、こんな世界観を描けたらいいな』というモデルですかね。その時に書いた物語のテーマの一つに“本当の自分と偽りの自分”というものがありました。陽と陰は表裏一体と言いますか。自分だけが知るもう1人の自分って、誰しもが潜在的に持っているものだと思いますし、どこかのタイミングで向き合わなくてはならない存在だとも思うんです。完全に清廉潔白な聖人なんて、基本的にこの世にはいないでしょうからね。そもそも役者という仕事は、自分のネガティブな部分…醜さや情けなさ、目を背けたくなる部分にも、逃げずに真正面から向き合っていかなければ全うできない職業だと僕は思っているので。『進撃の巨人』のエレン(・イェーガー)なんて、まさにそういったキャラクターでしたしね。だからこそ、そんな『真と虚』というテーマは、自分にとって欠かせない要素でした。“梵そよぎ”は、“声”を手に入れたことでデジタル世界に誕生した、もう1人の自分(僕にとってはもちろん、本企画に触れられる皆さんにとっても、そういった存在であると考えてほしいのです)」
「そうやって“対になる自分”という視点から物語を書き進めていく中、あるタイミングで、インドのバラモン思想であるブラフマン(=梵)とアートマン(=我)という概念を知りました。“梵(ぼん)”とは宇宙の最高実在であり、神秘的な力を意味します。“我”とは、個。自分。つまりは“梵そよぎ”に対する本体に当たります。『その二つが究極的に同一であるという真理に達することで輪廻を逃れることができる』というのが、この思想の教え。それを『梵我一如(ぼんがいちにょ)』と言います。この思想を自分なりにかみ砕いて形にしたのが、前述した脚本のベースというわけです。要は“精神と肉体”、もしくは“中身と器”という捉え方をした時に、どちらか一つでは成り立たないものだよなと。今こうして、この世に存在している自分。それから、声を与えられたことによって生まれた、もう1人の自分。そう分けられるだろうなと感じたんですよね。…少し複雑な話をしてしまいましたが、要は“『自由を手にしているはずなのに不自由』な自分”と“『不自由でありながら自由を手に入れた』梵そよぎ”の対比を描きたかったんです。『真と虚』、それぞれが合わさって、初めて真理に到達できるものではないのかなと。…少々ファンタジックな話になりますし、もともとの教義からは解釈がズレてしまっている部分もあるので、あくまで裏設定といいますか、エンタメを作る上でのアイデアやヒントとして創作に生かしたんだなと受け取っていただけると大変助かりますが(笑)」
「いろいろと説明してきましたが、つまりは、そんな紆余曲折(うよきょくせつ)を経て“梵”という文字にたどり着いたというわけです。この漢字で“そよぎ”と読むという面白さもあり、漢字とひらがなという組み合わせが実に日本らしくてすてきだなと考えて名付けたのが“梵そよぎ”。世界中の人に親しみを持って触れていただきたいプロジェクトなので、変に格好つけた名前よりも、日本らしい穏やかな響きや見た目がいいのかなと」
──“そよぎ・そよぎ”と2回繰り返すところに意外性がありつつ、音の響きもかわいいですよね。
「ありがとうございます。以前出演したバラエティー番組で、僕の声を科学的に分析していただいたことがあって。そこで、自分の声には“1/fゆらぎ”(※人間の脳や心に癒やしの効果を与える周波数)があることを知ったんです。なので、“ゆらぎ”という名前もアリかな、なんて頭に浮かんだこともあったのですが、その言葉も、アウトプットを変えたら“そよぎ”に通ずるところがあるよなと。そんなわけで、“そよぎ”を2回繰り返す音の面白さを優先しましたね」
「それから、実はこれまで自分が声を担当してきたキャラクターたちから受け取った“魂”のようなものも込めているんです。というのも、演じたキャラクターたちの多くが“戦う”という強いを信念を持っている人物ばかりだなと気付いた瞬間がありまして。自分の根っこにも間違いなくそのハートがあるので、これは大事なエッセンスになり得るであろうと考えたんですよね。それからいろいろな資料を調べていく中で、同じ漢字を使った“戦ぎ(そよぎ)”という言葉が存在することが分かって。不勉強でお恥ずかしいですが、僕は初めて知った読み方だったので、とても驚いて(笑)。で、もうなんだか運命的なものを感じてしまって、あらためて『これは、もう“梵そよぎ”しかない!』と名前を確定しました。最初の段階では、テーマが『もう1人の自分』ということもあって、自分の名前を一度分解して、アナグラムを使って再構築することも考えたのですが…“KAJI YUKI”って、そもそも使っているアルファベットがすごく少なくて…」
──確かに(笑)。
「あまり、しっくりくる組み合わせがなかったんです(笑)。結果的に決定した文字列は、僕自身とは直接関係のない言葉になってしまいましたけど、名前というものは、その響きや、そこにある気持ちが大事かなと考えているので。とにもかくにも、とてもすてきな名前を付けてあげられたなと大満足しています。それから余談なのですが…プロジェクト名にある“フラクタル”という言葉は、実は最初から付けようと思っていたわけではなかったんです」
──“フラクタル”(幾何学模様)は、どんな思いを込めて付けることにしたのでしょうか?
「本企画のテーマには、先ほどもお話したように“感謝と恩返し”があります。『仕事』というタスクは、基本的に大勢の人がそれぞれの役割を担って集まり、作り上げていくもの。1人ではできなかったであろうことも、チームであれば実現できる。そういうメリットがあると思うんですよね。でも同時に、集まるが故に自由が利かなくなってしまう部分もある。そこで本プロジェクトは、本来であれば付きまとってしまうであろう“がんじがらめのルール”をなくし、僕が個人で始めたからこそ生まれるネットワークとコミュニティーを駆使して動かしていきたいという思いのもとスタートさせました。さらには、プロフェッショナルたちが『面白そう!』と純粋な興味から集い創作したものから刺激や影響を受けた、いわゆる一般の皆さんの間にも、二次創作のような形でそれぞれの作品づくりが広がり、つながっていってくれたらすてきだなと。そうやって、同じ理想を持ったクリエーター同士が、それぞれ楽しみながらもの作りをしていくうちに、どんどんとその輪が広がり、最終的に誰も想像しなかった新しい形が見えてくる──。そんな願いを込めて“フラクタル”と名付けました」
──なるほど。そして、4月から新たな展開としてクラウドファンディングが始まるそうですね。
「そうなんです。みんなで一緒に盛り上げ、育てていくプロジェクトが『そよぎフラクタル』。そんな本企画に、クラウドファンディングは、まさにピッタリのイベントであると考えます。もちろん人さまの大切なお金を預かり、それを運用していくことへの責任を考えると、どうしても不安に思ってしまう部分はあります。でも、誠意を持って向き合えば、必ず気持ちは伝わると信じていますし、なにより、これは自分の人生をかけたプロジェクトです。二の足を踏んでいたら何も始まりませんからね」
──最後に、梶さんが考える“声”を使った表現の可能性についてお聞かせください。
「声優業をしている中で…とりわけ朗読劇に出演した際に、声や音、その限られた表現だからこその可能性を強く感じます。視覚を必要としない世界だからこその自由。たった一言で安心させることもできるし、逆にものすごく不安にもさせてしまう。“言霊”という言葉があるように、声にもそれだけ大きな力が宿っていると思うんです。さらに言ってしまえば、もはや言葉すらなかったとしても、息遣い一つで感情を伝えることもできてしまう。そんな、声や音の表現に特化した能力を持つ人を“声優”だと思っているので、その無限の可能性を『そよぎフラクタル』を通して、自分自身もっと突き詰めていきたいですし、それこそ言葉の壁を越えて、世界中の人たちに伝えていけたらなと。もしも実現できたとしたら、それ以上の喜びはありません」
「昨今、AIとの向き合い方について、しばしば議論されていますよね。クリアしていかなければならない問題も多々あると思います。それでも僕は、敵対するのではなく、共存すべきだと考えています。AIという技術自体に善悪はない。あくまで、それを使用する人間側のモラルにかかっている──。いま現在、無法地帯となってしまっているであろう、そのあたりのルールづくりにも、本企画を通して貢献することができたら幸いです。同時に、上記のようなデジタル技術を使った企画はもちろん、アナログな表現にも全力で取り組んでいきたいと考えています。新しいエンタメが急増しているこの時代だからこそ、朗読劇などのシンプルかつストレートなコンテンツから学べることを蔑ろにしてはいけない。その両輪がそろってこそ、誰もが魅力的に感じるエンターテインメントは生まれると、僕は信じています」
【プロフィール】
梶裕貴(かじ ゆうき)
1985年9月3日生まれ。東京都出身。おとめ座。O型。近年の主な出演作には、テレビアニメ「進撃の巨人」(エレン・イェーガー役)、「マッシュル-MASHLE-」(レイン・エイムズ役)、「銀河英雄伝説 Die Neue These」(ユリアン・ミンツ役)などがある。4月期は、「僕のヒーローアカデミア」(読売テレビ・日本テレビ系)、「となりの妖怪さん」(テレビ朝日系)、「ザ・ファブル」(日本テレビ系)、「忘却バッテリー」(テレ東ほか)に出演。また、孤爪研磨役として出演している「劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦」、日本語吹き替えを担当する映画「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」が公開中。さらに「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」第4弾が2024年夏に公開を予定している。
【INFORMATION】
■TVガイドPERSON vol.140
発売中の「TVガイドPERSON vol.140」では、梶さんの撮り下ろしグラビア&インタビューを掲載。同号をアニメイト通販でご購入いただくと、梶裕貴さんの本誌未掲載カットによる特典生写真を1枚プレゼントいたします。なお、特典の数には限りがありますので、お早めにお買い求めください。
■そよぎフラクタル
オフィシャルサイト https://www.soyogi-fractal.com/
公式X @kaji_project
YouTubeチャンネル @soyogi-fractal
クラウドファンディングCAMPFIRE「そよぎフラクタル」
https://camp-fire.jp/projects/view/748273
◆クラウドファンディングのリターン返礼品一覧表
ILLUST DAYS
https://illust.daysneo.com/award/soyogi-fractal.html
講談社が運営する「イラスト」や「マンガ」の投稿や閲覧が楽しめるアトリエサービス。随時コンテストなども開催されており、今回の「そよぎフラクタル」マンガコラボ企画も、ILLUST DAYSのサイトから募集を受け付けるとのこと。諫山創先生のネーム冒頭5ページや作画コンテスト応募に関する詳細もILLUST DAYSの企画ページに記載されているそうなので、ぜひチェックを!
◆諫山創先生描き下ろし“梵そよぎ”
◆種田優太先生描き下ろし“梵そよぎ”
デフォルメ“梵そよぎ”LINEスタンプ開発中
【プレゼント】
サイン入り生写真を1名様にプレゼント!
TVガイドweb公式X@TVGweb(https://twitter.com/TVGweb)をフォローし、下記投稿をリポスト。
https://twitter.com/TVGweb/status/1775722076491685912
【締切】2024年5月1日(水)正午
【注意事項】
※ご当選者さまの住所、転居先不明・長期不在などにより賞品をお届けできない場合には、当選を無効とさせていただきます。
※当選で獲得された権利・賞品を第三者へ譲渡、または換金することはできません。
※賞品をオークションに出品する等の転売行為は禁止致します。また転売を目的としたご応募もご遠慮ください。これらの行為(転売を試みる行為を含みます)が発覚した場合、当選を取り消させていただくことがございます。賞品の転売により何らかのトラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いませんので、予めご了承ください。
※抽選、抽選結果に関するお問い合わせにはお答えできませんので予めご了承ください。
取材・文/篠崎美緒 構成/TVガイドPERSON編集部 撮影/天日恵美子
ヘア&メーク/中山芽美(e-mu) スタイリスト/SUGI(FINEST)
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