吉田鋼太郎、「おいハンサム!!」続編&映画化も「いきなり海外に行ったりはしませんし、さしたる事件も起きません(笑)」2024/03/25
漫画家・伊藤理佐さんの複数の漫画のエピソードを縦横無尽につなぎ合わせ、吉田鋼太郎さん演じる昭和の頑固おやじ・伊藤源太郎が、個性的な3姉妹の娘たちの未来を案じて立ち上がる姿を描いたホームドラマ「おいハンサム!!」(フジテレビ系)。2022年に放送され、SNSを中心に称賛を受けるとともに数々の輝かしい実績を残した本作の続編「おいハンサム!!2」が4月6日からスタートします。
6月には映画公開も控えた本作の見どころや驚きの撮影エピソードを、主演の吉田さんがユーモアたっぷりに語ってくれました。
──まずは、続編が決まった時の心境をお伺いできますでしょうか。
「日常の細かいことにこだわった、どちらかといえば地味めなドラマなので視聴者の方からの反応がなかなかつかめなかったのですが、皆さんに愛されているという声を聞くことができてうれしいです。でも、まさか続編までできるというのは想像をしていなかったので、最初に聞いた時は驚きました。さらには映画化もされるということで不安もありましたが、もう船は出てしまいましたので『航海をしきるぞ』と、挑む気持ちです」
──2年ぶりに源太郎を演じられて、あらためて感じた作品の魅力について教えてください。
「3人の娘との関係が主軸になっていくドラマなので、厳しさを含んだ源太郎の娘たちへの愛ですかね。教訓みたいなものを、あくまで昭和的にがっつりと娘たちに言い聞かせていくというのが、今の時代にはなかかないので面白いと思います。続編と映画では、そういった部分が前作より色濃く感じられる内容になっています」
──伊藤家のキャストの皆さんにはどういった印象をお持ちですか?
「長女役の木南晴夏さん、次女役の佐久間由衣さん、三女役の武田玲奈さんそれぞれが、僕からは役の人物そのままにしか見えないです。MEGUMIさんは、実際の年齢でいえば3人の母親役という設定には多少無理があるのですが、貫録といい、頭脳明晰(めいせき)ぶりといい、完全にお母さんに見えますよね」
──視聴者からの反響の声について、どう受け取られていますか?
「正直に申し上げますと、こんなに反響の声をいただけるのが少し意外です。もちろん面白いですし、これまでにあまりない類のドラマだとは思いますが、やっぱり僕の印象としては、ハリウッド映画や恋愛もののドラマに比べると地味なので(笑)。たくさんヒットするような題材があるにもかかわらず、その中で本作が皆さんに喜んでいただけるというのはうれしいです。山口(雅俊)監督の脚本は面白いですし、非常に丁寧に作ってくださる方なので、それが視聴者の方に伝わったのかなと」
──脚本の面白さはもちろん、山口監督が手掛ける作品の魅力はどういったところにあると感じていらっしゃいますか?
「誰もが抱えている悩みや、実は人に知られたくない部分など、人間の本質を優しくえぐり出すような表現がとてもうまいです。脚本も面白い分、非常に複雑な印象です」
──複雑というと…?
「例えば、源太郎が娘たちに話して聞かせるような長ゼリフが、普通の“てにをは”ではないというか…。人が話す時って、書いてあるものを読むわけではないので理路整然としゃべらないじゃないですか。本当に普段話しているような言葉で書かれている脈略を無視した台本なので、非常に覚えにくいです(笑)。僕はそんなに記憶力が悪いわけではないけど、なかなか覚えられなくて大変です。でも、それが本作の複雑さ、多重構造さを生み出している気がしますし、山口監督独自の脚本の書き方と視点だと思います」
──前作では、山口監督は斬新な演出をされるともお伺いしましたが、本作ではいかがでしょうか?
「前回よりも現場は混乱しています(笑)。まず、台本を渡された時点では、その台本は完成していないということが大前提です。だから、セリフを覚えて行っても、現場に行ってほとんど変わります」
──それは相当苦労されるのではないでしょうか?
「撮影の前日の夜に改訂版が送られてくる時はまだいい方で…。本当はそれでも迷惑な話ですが(笑)。現場に行くと口頭でセリフを変えられるので、助監督の方々に『お願いだから印刷してちょうだい』と頼むということが、毎回のように起こっています(笑)」
──事前の準備が何もできないのですね(笑)。
「セリフが変わりますから、準備した演技プランは使えません(笑)。ゲストで来られた方は慣れていらっしゃらないので、見ていて本当に気の毒でした。もらった台本で準備をしてきたのにほとんど変えられてしまうので、変更したセリフを言うので精いっぱいみたいなことになってしまうわけですよ。本当は良くないことなのですが、実際に完成したシーンをチェックすると良いものが撮れているという、不思議なことが起こるんです。ゲストの方々も、緊張感のある現場を楽しんでいらっしゃるようでした」
──伊藤家のキャストの皆さんもその状況を楽しんでいらっしゃいましたか?
「僕たちは前作で慣れていますし、楽しみにしている部分もあります。伊藤家の皆さんは当然のように撮影を進められるので『そのセリフ、いつ覚えたの!?」と驚きますね。すごい対応力です。僕が全部間違えずにセリフを言い終わった時は、MEGUMIさんが必ず『すごーい』って言ってくれます(笑)」
──これまでで、特に記憶に残っているセリフやシーンがあれば教えてください。
「娘たちに対して、(要約すると)『人生の選択は簡単ではない。完璧な選択なんてない。自分の選んだ道を正解と思えること、正解にしていくこと、それが大切なんじゃないか』というセリフですね。自分が選んだ道で悲惨なことが起きると、選択肢が間違っていたかもしれない、失敗したかもしれないと思うことは多々あると思いますが、それを源太郎は『間違っていないものにして生きろ』と。もちろんその通りですが、なかなかそうは思えないですよね。でも、間違った選択をしたといって悩み苦しむよりも、いい選択だったと信じて進む方がいいよなと、言いながら思っていました」
──ご自身にも源太郎のセリフが刺さったのですね。
「正論ですよね。その正論をしっかりと真剣に言うのが、とても快感です。なかなか人に対して、正面から『こうした方がいいぞ』なんて言うことはないので。もちろん親子という関係性もありますが、毎話の終盤に必ず娘たちに向かって訓示を垂れるシーンが、毎回楽しいです」
──そういったキャラクターの父親像は、今の時代とても貴重ではないかと思います。
「家族全員が集まって会話の時間を持つということは、昔に比べるとだいぶ少なくなってきている気がします。説教まではいかなくても、家族みんなで話をしながらご飯を食べるという習慣は大事だと思います。親子のコミュニケーションが主軸になっているドラマなので、あらためてそう感じました」
──では、本作の面白さはどういったところにあると思われますか?
「日常をリアルに描いているので、どこにでもあるような家庭や会社での光景に見えますが、実はありえないことがたくさん起こっていて。父親が、娘が付き合っている男の態度が悪かったからといって暴れたり、娘たちが傷ついて帰ってくると、ゴルフクラブを持って寝巻き姿のまま外へ飛び出して行ったり(笑)。結構激烈で、実際はありえないじゃないですか。皆さんはよくある家庭の光景だとだまされているかもしれませんが、非常にフィクション色が強いと感じています」
──視聴者には本質をついていると思わせながらも、実はとんでもないことをしているような?
「そうだと思います。実際にこんな親子関係や恋愛関係があるのかと聞いてみると、当てはまる人は少ないんじゃないかなと。でも、そこが皆さんが面白がってくれているポイントかもしれないですね」
──続編の後には映画公開が控えていますが、前作からの変化はあるのでしょうか?
「分からないくらいの微妙なスケールアップをしています。ぜひ見つけていただきたいです。いきなり海外に行ったりはしません(笑)。僕たちの立ち位置は変わらないですし、さしたる事件も起きません(笑)」
──最後に、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします!
「続編から映画まで、皆さんが盛り上げてくださったことは本当にうれしいです。最初、僕たちはそんな思いで始めていませんから、こんなに愛される作品になったというのは、本当に皆さんのおかげです。続編や映画化だからといって派手にはなりませんし、非常に繊細な本質をつくような、皆さんの共感を得られるような、よーく見てそしゃくしないとおいしさが分からないようなドラマのうま味は変えないようにやっております。引き続き応援していただけると大変うれしいです」
【プロフィール】
吉田鋼太郎(よしだ こうたろう)
1959年1月14日生まれ。東京都出身。近年の主な出演作は、「おっさんずラブ-リターンズ-」「unknown」(ともにテレビ朝日系)、映画「君と世界が終る日に」(2024年)など多数。6月21日には、映画「おいハンサム!!」が公開。
【番組情報】
土ドラ「おいハンサム!!2」
フジテレビ系
4月6日スタート
土曜 午後11:40~深夜0:35
映画「おいハンサム!!」
6月21日(金)全国公開
取材・文/M(フジテレビ・東海テレビ担当) スタイリスト/SAKAI ヘアメーク/熊谷波江
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