池田エライザ、「舟を編む~私、辞書つくります~」で野田洋次郎とタッグ!「みどりが何かを伝えているところは全部が見どころです」2024/02/16
NHK BS、NHK BSプレミアム4Kで2月18日からスタートするプレミアムドラマ「舟を編む~私、辞書つくります~」。本作では、三浦しをん氏による原作小説の主人公・馬締光也ではなく、辞書編集部へ異動してきた若手編集部員・岸辺みどりの目線で描いていく。くせ者ぞろいの辞書編集部のメンバーに翻弄(ほんろう)されつつも、辞書作りに誇りとやりがいを見いだし奮闘するみどりを池田エライザ、超が付くほど生真面目な辞書編集部の主任・馬締光也を野田洋次郎が演じる。
大人気ファッション誌の編集部で働くみどりは雑誌の廃刊が決まり、突如、辞書編集部へ異動に。戸惑うみどりを待っていたのは、人生を辞書にささげている変人上司・馬締を筆頭としたくせ者たち。最初は異動に納得がいかず悩んでいたみどりだったが、1冊の辞書を作るために十数年間にも及ぶ時間と手間をかける根気と熱意に触発され、次第に仕事にのめり込んでいく。
放送に先駆け、岸辺みどり役の池田エライザさんと馬締光也役の野田洋次郎さんにお話を伺いました。
――主人公・みどりを演じる上で苦労はありましたか?
池田 「以前ドラマを見ていた時に、このワンシーンは何ページ分ぐらいセリフがあるんだろうと思ったことがあるんです。今回、それが自分にも来たなと。初めて台本を読んだ時はこれをどうやって撮るんだろう、どうやって覚えればいいんだろうと考えていましたが、1話、2話と重ねていくうちに、たくさん話し合い、文字について語り合うことが日常になってくるのでスッと覚えられるようになって、みどりの気持ちも分かり、どう伝えたいのかも考えられるようになって、すんなりセリフが出てくるようになりました。それは、三浦先生や脚本の蛭田直美先生が書かれたしゃべり言葉のナチュラルさのおかげもあるんじゃないかと思います」
――お二人の演じた役について印象を教えてください。
池田 「みどりは感情の幅が豊かな子だなと思うけど、人に対して抱く感情にどんな名称が付いているのかを知らず、自分でも把握できていないのかなと。だから私もみどりと同じように、私自身が感じた気持ちを辞書で引くことで、この言葉ってこんな意味もあるんだなと知ることができました。私もみどりと共に、自分の気持ちに一番近い感情で伝えたくて言葉が生まれてきたんだと学ばせてもらいました。そうしたら、みどりを演じる上ですごく身近に感じられて、この子と一緒に転んで、学んで立ち上がって、頑張って演じようと思いました」
野田 「あらためて原作を読み直し、脚本を読むと、自分も言葉を紡ぐミュージシャンとして活動しているので、馬締の言葉は人ごとに思えませんでした。どうやったら顔も知らない相手に気持ちが届くんだろう、もっと深く自分の気持ちを近い言葉で届けられるだろうと毎日考えながら歌を紡いでいた20年なので、馬締の言葉に対する姿勢は自分の分身のようにも思え、絶対演じたいと強く思わせてくれました。作詞と辞書としての言葉を作るのは全く違う作業で、辞書は人々にとっての言葉への入り口でもあるので、自分だけのエゴで解釈して言葉を紡いでも駄目だし、いろんな人がその言葉を使っていくきっかけにもなるべきものであると教えられました。馬締のセリフに毎週いろいろなことを気付かされました」
――お互いの印象はどうでしたか?
池田 「結構前からの知り合いでした」
野田 「そうなんですよ。でも仕事は初めてで」
池田 「初めてお芝居を一緒にしましたが、普段の野田さんと馬締さんはそう遠くない気がします」
野田 「本当ですか?」
池田 「言葉を丁寧に扱う、言葉と真摯(しんし)に向き合うというのは似ていると思います。セリフに追いつめられる日々だったので、たくさんおしゃべりできていないですけど」
野田 「他の役者さんがおしゃべりしている時に、頑張ってセリフを覚えていましたね」
――池田さんとみどりで似ている部分を教えてください。
池田 「みどりが感じた『おかしくないですか』を放っておけないところかなと思いました。みどりが辞書作りで気になる点を放っておけないように、私も台本の気になる部分を放っておけませんでした。三浦さんが原作を書いた時と脚本家さんが脚本を書いた時、そして私たち出演者が台本を読んだ時のそれぞれに、新たな『舟を編む』が生まれると思っていて、それを話し合って擦り合わせることが大切だと感じています。なるべく丁寧に、三浦さんや原作ファンに失礼にならないようしっかり向き合いました。編集部が16年間で作っていく中で、時代も変わり言葉が変化してしまった部分に対して、みどりの『現代だったらそんなふうに言わない気がする』みたいな感覚は、私も今を生きる20代なのですごく共感します」
――辞書に対しての思い出はありますか?
池田 「私は電子辞書が普及している時代に育ちましたが、小さい頃から本が好きで、将来は小説家になると強く思っていました。当時、本屋さんや古本屋さんでも毎回買ってもらえるわけもなく、図書館で借りてもすぐ読み終わっちゃう時に手に取っていたのが辞書でした。家にある一番厚い本が辞書で、それを眺めて読んで、分からない言葉を見つけるとその横の説明を読んで、それも分からないとそれを調べて、ドラマにも出てくる辞書引き学習というのを実際にやっていました。とても身近にあった気がするんですけど、大人になって距離が開いちゃったと感じる存在ではあります」
野田 「僕は中学が進学校といわれるところで、必ず国語辞書と辞典の両方を買わなきゃいけない学校でした。それがとても重くて嫌だと思春期の学生時代は思っていて、国語の先生も辞書を引く時は5秒以内に引けるようにしろ、という体育会系の学校だったのでトラウマがあります」
――池田さんはみどりを演じていて印象に残っているシーンはありましたか?
池田 「みどりが自分の気持ちを伝えようとして言葉に詰まるシーンで、馬締さんに『それでも言葉にしてください』と言われ、一生懸命に自分なりの言葉をひねり出して、間違っているかもしれないけれど言葉にしている場面です。三浦さんや蛭田さんの独特な言い回しで、みどりや今の自分を超えて、幼少期の弱虫で泣き虫だった頃の気持ちが呼び起こされ、幼い頃の、大人にどうしても伝えたくて頑張っている時の自分を思い出して『もっとかわいい顔でお芝居したいのにできない』みたいな感覚がありました。でも、その感覚は今思い出してもゾクゾクするほど楽しかったです。みどりが何かを伝えているところは全部が見どころです」
――お二人の注目してほしいシーンを教えてください。
池田 「私のセリフではないんですけど、柴田恭兵さんが演じる松本朋佑先生の『“なんて”を今度、辞書で見てください。辞書はあなたを褒めもしませんし、責めもしません』と、馬締さんの『悪い言葉はありません』というセリフです。普段生活している中で何度も思い出す言葉になりました」
野田 「馬締がどんな人なのかは第1話で分からないだろうし、疑問ばかり浮かぶと思うんです。みどりも馬締に対してそう思っているだろうし、視聴者も同じように思っていいと思っています。第2話以降もどんどん気になっていくだろうし、みどりと一緒に知っていってほしい。普段、当たり前に僕らは言葉を使っているんですけど、その言葉に今一度、立ち返る瞬間がドラマの中にたくさんあるので、ぜひ体験してほしいと思います」
――印象に残っている共演者の方とのエピソードはありますか?
池田 「宮本慎一郎役の矢本悠馬くんとは6回目の共演で、一緒にお芝居する時は肩肘張らずに、目を見ていても余計なことがよぎらないぐらい安心してお芝居ができる方で、ありがたかったです。前田旺志郎くんははつらつとしている方で、本人の持っている魅力が少しずつ漏れてきちゃっている感じで、第1話、第2話ではまだつっけんどんとしているところがあるけど、あれができるのは旺志郎くんだからだと思ったり。佐々木薫役の渡辺真起子さんも人として厚みがある格好いい方で、西岡正志役の向井理さんも意外な役でしたが、すべてがピタッとハマっていたと思います」
野田 「今回の撮影で、学生以来こんなに辞書をめくるかっていうくらい毎日めくっていて、見開きページに思いがけない発見が必ず1個あり、ある時『ラッコって語源はアイヌ語らしいよ』とみんなで盛り上がりました。辞書は実は堅苦しいものではなくて、当たり前に会話するように気付きを持たせてくれるものだとあらためて感じさせられました」
――池田さんは日本語に対して、どういう印象を受けましたか。
池田 「『舟を編む』では辞書の言葉を“言葉の海”と表現されるんですけど、私は多面鏡だと思いました。普段は正面からしか見ないけど、横の鏡を見ると他人から見た自分が見える。辞書を見ている時も、自分の発している言葉が違う意味を持っている事実を教えてくれるので、日本語は一つの言葉でいろいろな意味をはらむから難しいけど、実は思いやりのある言葉かなと感じています」
――最後に今後の見どころのシーンを教えてください。
池田 「第5話に戦隊ヒーローみたいな格好をして辞書引き学習をするシーンがあり、今までそんな役が来たことなかったので、ものすごく楽しかったです。エキストラの子どもたちも、自分が知っている言葉に付箋を貼っていくシーンで、カットがかかってからもたくさん貼って自慢気に見せてくれて、最高の体験でした。そのシーンも言葉を選ぶのは大切なんだとものすごく心にくるお話なので、ぜひ楽しみにしてください」
――ありがとうございました。
第1話あらすじ
みどりは、大手出版社「玄武書房」のファッション誌編集者。仕事熱心だが、ある日突然、辞書編集部への異動を命じられ、知らない言葉にやたら食い付く上司・馬締や、日本語学者の松本先生、社外編集の荒木公平(岩松了)らと共に、玄武書房初の中型辞書「大渡海」の編さんに関わることになる。慣れない辞書作りに戸惑うみどりにとって、同棲中の恋人・昇平(鈴木伸之)だけが唯一の癒やしだったが…。
【番組情報】
プレミアムドラマ「舟を編む~私、辞書作ります~」
2月18日スタート
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後10:00~10:50
NHK担当/S・A
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