チーフカメラマン・関毅氏、「役者さんがカメラを意識せずにお芝居をできるように」――「下剋上球児」インタビュー2023/12/10
TBS系では連続ドラマ「下剋上球児」が放送中。鈴木亮平さんが「日曜劇場」枠で約2年ぶり2度目の主演を務め、高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描くドリームヒューマンエンターテインメントです。
ここでは、本作のチーフカメラマンを務める関毅さんにインタビュー。「下剋上球児」ならではの独特のカット割りや、球児たちの躍動感のある映像の秘密を語っていただきました。
――今回の撮影でこだわった点を教えてください。
「塚原あゆ子監督とは10年ほどご一緒していますが、毎回、“新しいカット”にこだわりを持って撮っています。今回は、監督から『久我原篤史(橘優輝)と並走したい』という要望がありました。久我原は50mを6秒台で走るのですが、球場にそこまで速く移動できる特機は用意できないので、『ワイヤーを使ってみてはどうか』と提案し、そこからいろいろとアイデアが広がっていきました。また、ピッチャーが投げるシーン、バッターが打つシーンも、野球中継と同じような画にして、そこにスーパースローのカメラで撮った画をうまく挟み込んでいくといった方法をとりました。野球のシーンに球児たちの躍動感を生むことができ、この作品の特色にもなったと思っています。さらに今回は、カメラと被写体との距離感にもこだわっていまして、俯瞰(ふかん)的視点でいられるように、長めの距離をとることが多かったですね。三重のシーンでは自然が雄大でしたし、野球のシーンでも球場も広く、少し離れて撮った方がよりよい画になるので。そうしつつも、感情がこもるような芝居の時には距離を近くして、表情が全面に出るように撮りました」
――撮影現場ではどのようにシーンが作られていったのですか?
「現場では、塚原監督と役者さんがセッションのような形で作ることが多いです。役者側からの『ここをこうしたい』と要望を監督が受け、今度は監督が『こうしたいんだけど、役のどういう受け応えがある?』といった具合です。一応、事前にカット割りも準備はしているのですが、その場で必要に応じて流動的に対応しています。役者さんがお芝居をやりづらくならないように、より感情を入れやすいように環境を整えるのが、塚原組の特徴ですね。そして監督の『ココはこの画じゃないといけない』という狙いは、撮影前に監督と自分とで、“その画が成立するためにはどうしたらいいか”と何度も話し合い、その結果、こちらで役者さんの立ち位置を指定することもあります。その都度、最良の方法をとるように進めています。塚原監督のチームは、現場が変わるたびに新しいことにトライし、視聴者さんの見たい映像を撮るために最善を尽くすので、瞬発力が必要なチームです。撮影前に、主演の鈴木亮平さんと監督が話していることが多いですが、塚原監督はどんなに若い役者さんでも、自分から発言すれば必ずそれに対応してくれる方です。球児たちも自分の芝居に不安があると、よく監督に相談していますね」
――出演者の方々とはどんなお話をされますか?
「僕自身は、役者さんとはあまり硬い話はせず、たわいもない会話をします(笑)。三重で撮影した時も「何を食べた?」など、お互い気を使わない関係性です。撮影で、僕が“カメラを構えています”といった雰囲気にならないような距離感をいつも心掛けています。先日第6話の撮影をしていた日に、楡伸次郎(生田俊平)に急に『今日、初めてカメラを意識しました』と言われたんです。その時は、特に意識してドキドキしてしまったらしく(笑)、それまでは意識させずにやれていたことが分かりました。役者さんがカメラを意識せずに自然にお芝居をできるということが、自分の仕事ができているということなので」
――球児たちの成長を感じる瞬間はありましたか?
「もちろん、みんな成長していますが、強いて言えば、楡が一番成長を感じましたね。彼は地上波のドラマもほとんど初めてだったみたいなので、後半にかけて変わっていくのを感じました。根室知廣(兵頭功海)は1人のシーンもあり、塚原監督とマンツーマンで話す機会が多いこともあって、成長を感じました。塚原監督はキャストを上に引き上げてくれる話をたくさんされるんですよ。なので、その頻度が多い役者さんは、必然的により演技が良くなっている気がします。塚原監督はこれまでもドラマが初めての新人俳優や、現場に慣れていない方が居ても、その人を引き上げるのがとても上手です。なので、特に若手にとっては、一緒に過ごすことで成長できる監督なのだと思います。僕はそれを格好よく見えるように撮っているだけですね」
――関さんのおすすめシーンを教えてください。
「第1話冒頭の三重の球場でのシーンは、最終回までにはぜひ見返してほしいです。あのシーンは皆さんもお気づきのように、ドラマのキーとなる決勝のシーンなので、もう一度見て『根室がダイビングキャッチしたのはこういう展開だったから?』『ココとココがこうつながるの!?』というように楽しんでいただければと思います」
【プロフィール】
関毅(せき つよし)
TBSアクト所属。TBS制作の人気作を多く担当し、直近では「最愛」「MIU404」はじめ、新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督作品の多くで撮影担当を務める。
【番組情報】
「下剋上球児」
TBS系
日曜 午後9:00〜9:54
TBS担当 A・M
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