「ネタパレ」演出が明かすこだわりと課題「芸人さんの気持ちが最優先」。67回出演のゾフィー&2代目王者・モシモシへの思いも【インタビュー】2023/12/08
2017年4月にスタートした「ネタパレ」(フジテレビ系)。「笑い」を愛するゲストに“今、見てもらいたいネタ”を芸人たちが披露し、劇場支配人・南原清隆さん、副支配人・陣内智則さん、従業員・増田貴久さんとともに鑑賞するネタ番組です。
テレビで大人気の芸人から、劇場で笑いの渦を巻き起こしているブレーク前夜の芸人、劇場でも知る人ぞ知る芸人まで、知名度に縛られないキャスティングで新しい才能を発掘している同番組。今年2月から始まった新企画「ニュースター勝ち抜きパレード」では毎週3組の芸人が火花を散らし、翌週のオンエアと賞金を懸けて、ここぞというネタを披露しています。
ここでは「ネタパレ」の演出を務める登内翼斗さんに、番組を作る上でのこだわりやキャスティングの決め手、芸人たちに対する思いなどをインタビュー。また、11月6日をもって解散したゾフィーにとって、コンビとして最後のテレビ出演となったのが11月17日放送の「ネタパレ」。ゾフィーの出演回数はなんと67回! 上田航平さん、サイトウナオキさんと長い時間を過ごしてきた登内さんに、ゾフィーへの思いも語っていただきました。
「『ネタパレ』を作る上で、“発掘”というのはかなり大切にしている部分」
――2023年10月27日の放送で、放送300回を突破した「ネタパレ」。まずは、ご自身と「ネタパレ」の関係について教えてください。
「16年4月から17年3月まで放送していた、前身番組の『超ハマる!爆笑キャラパレード』から携わっています。『キャラパレード』の時は僕はADだったのですが、その頃から今の『ネタパレ』までずっと携わっているのはおそらく僕1人。『ネタパレ』が始まった当初はディレクターで、2、3年前から演出を担当しています」
――芸人さんがネタを披露するというシンプルなネタ番組ですが、番組のコンセプトを教えてください。
「ネタ番組なんですけど、あまり縛りをつけたり、芸人さんに『こうしてほしい』と言うことはしないようにしています。ネタは芸人さんのものであり、芸人さんの気持ちが最優先。おかげであまり摩擦もなく、いい雰囲気で収録できていると思います。あと、僕が特に意識しているのは“いち早く若手の芸人さんを出すこと”。そこに非常に重きを置いていますね。今年から始めた『ニュースター勝ち抜きパレード』という企画はまさにそれが目的で、ほかの番組には出ていないような、まだまだ無名の芸人さんにも出てもらっています。『ネタパレ』を作る上で、“発掘”というのはかなり大切にしている部分なんです。『ここからスターが生まれるような番組を作ろう』という思いが強いですね」
――最近は4組の芸人さんがネタを披露した後、「ニュースター勝ち抜きパレード」で3組の若手芸人が勝ち抜きバトルで戦うという、1回の放送で7組の芸人さんが登場する構成が基本になっているかと思います。出演する7組は、どういうふうに決めているのでしょうか?
「7組の人選に関しては、漫才やコント、ピン、リズム芸、キャラクターなどのバランスは大事にしながらも、僕の好みもかなり比重として大きいですね。ただ、僕の好みだけでキャスティングすると偏ってしまうので、そこは意見をもらいながら決めたりしています。完全に僕の好みのラインアップになってしまって、南原さんに『今日、濃すぎない?(笑)』と言われてしまったこともありました(笑)。あとは番組の会議で、1、2カ月先のお笑いのライブ情報を一気に情報収集して、スタッフ同士で『どこのライブ行ける?』って聞くんですよ。いろんなライブをスタッフが実際に見に行って、『めちゃくちゃ面白いネタありました!』とか感想をもらって、『じゃあその芸人さんに出てもらおうよ』って決めることも多いです」
――南原さんに好みを見抜かれているんですね(笑)。たくさんいらっしゃると思うのですが、注目している芸人さんを挙げるなら?
「めちゃくちゃいっぱいいるんですけど…。や団、ヤーレンズ、隣人、インポッシブル、ネルソンズといった方々は本当に面白いなと思います。インパクトのあるネタやキャラが好きなのかな。ヤーレンズの楢原(真樹)さんがボケ倒すのとか、すごく面白いなって思うんですよ。楢原さんは、将来ザキヤマ(アンタッチャブルの山崎弘也)さんみたいになったらいいなって勝手に思ってます(笑)。『ニュースター勝ち抜きパレード』に出てもらった芸人さんだと、リンダカラー∞、魔族、豆鉄砲…。すみません、絞れなくて(笑)」
「確実に面白い芸人さんに出てほしいと思って、モシモシにお願いしたんです」
――今年2月に始まった新企画「ニュースター勝ち抜きパレード」。5週勝ち抜くとチャンピオンの称号と賞金30万円が獲得できる企画ですが、初代王者には吉本興業所属のトリオ・cacao、2代目王者には太田プロダクション所属のトリオ・モシモシが輝きました。5週勝ち抜くというのは、すごく難しいのではないかと思います。
「めちゃくちゃ難しいです(笑)。『ネタパレ』は毎回、3週分の収録をしています。なので、1本目でウケるとだいぶ勢いがつくんだなと感じますね。1本目がウケると、スタジオの空気も味方になってくれるような気がします。5週勝ち抜くためにはまた次の収録にもネタを持ってこないといけないので、本人たちの気持ち的にもモチベーションを保つのが難しいんじゃないかと思います。よって、3週目、4週目あたりが鬼門。ネタの順番も大事ですよね。1本目はその芸人さんの名刺となるネタ、彼らの世界観を出すようなネタをやってもらって、2本目、3本目も極力その世界観を壊さない方が勝ち上がっていける感じがあります。期待値が膨らんでいるところに次もそういうネタをぶつけた方が『やっぱりこの芸人さんだったら、こういうネタを見たいよね』という空気が生まれるなと。ただモシモシは、3週目に披露した『デスゲーム』というコントで、もう勝負に来てましたよね」
――「骨格ストレート」や「イエベ」「ブルべ」といったワードが、見事に観客の女の子たちに刺さっていた感じがしました。
「彼らのコントはボケの切り口が今っぽいなと思います。しかも男女トリオだからこそできる女の子目線の要素が入って、さらにウケていましたね。彼らはハートフルな設定が多い中で、またちょっと彼らの色が変わった感じがしてよかったのかもしれませんね」
――モシモシさんが2代目チャンピオンになるという予想はしていましたか?
「正直、最後まで勝ち抜くとは思っていませんでした。モシモシは、1年くらい前に出てもらった時に『めちゃくちゃ面白い!』と思って。それから今年になって『ニュースター勝ち抜きパレード』を始めた時、確実に面白い芸人さんに出てほしいと思って、モシモシにお願いしたんです。そしたらどんどん勝ち上がって。元々ネタは本当に面白いと思っていたんですけど、3人が期待を超えてきてくれて、見応えのある戦いになりました」
「ネタパレ」が最後のテレビ出演。ゾフィーへの感謝
――11月6日をもって解散したゾフィーさんにとって、コンビとして最後のテレビ出演となったのが11月17日放送の「ネタパレ」でした。解散後のオンエアとなりましたが、エンディングでは2人の門出を見送る愛のある演出。出演回数はなんと67回とのことです。
「ゾフィーさんを初めて見たのはオーディションでした。当時、僕はディレクターの1人だったのですが、『こんなに面白い人たちがいるんだ!』って衝撃で。グレープカンパニーに入る前、フリーの頃でした。番組としても、お二人には本当に助けていただきました。『湾岸スタジオに来るのが楽しみだった』なんてことを最後に言ってもらえたのが本当にうれしかったです。ゾフィーへの安心感がすごすぎて、番組で新企画など、何かあればゾフィーに頼っていた部分はあるかもしれません」
――「ネタパレ」放送開始から約6年半。最後に、今後の展望について教えてください。
「課題は“ここからスターを生むこと”。まだまだ世に出ていない面白い芸人さんを発掘して、『ニュースター勝ち抜きパレード』から『M-1グランプリ』や『キングオブコント』で決勝に進出する芸人さんが、もっともっと出てきたらうれしいなと思っています。とはいえ、スターになるにはネタだけじゃなくてその芸人さんのキャラやトークも大事。『じゃあ、もっとトークのコーナーもやった方がいいんじゃないか』とか考えたりもするんですけど、やっぱり『ネタパレ』はネタ番組なので。そのあたりは僕らの課題です」
――世間的な知名度はまだまだこれからだけど、劇場を沸かせている芸人さんのネタが全国ネットのテレビで見られるのは貴重だと思います。
「だからこそ、やっぱりいろんな人に見てほしいです。業界の人にも見てもらって『いいな』と思った芸人さんには、フジテレビ以外でもどんどんいろんな番組に出てもらいたいですね。芸人さんには新しい場所で輝いてもらいながら、心のどこかで『ネタパレがホームだな』って思ってもらえるなんてことがあったらうれしすぎますけど(笑)。僕としては『ネタパレ』がそうなれるように、芸人さんの気持ちを優先しながらこれからも番組を作っていきたいです」
【番組情報】
「ネタパレ」
フジテレビ系
金曜 午後11:40~深夜0:10
「ネタパレSP」
フジテレビ系
12月31日 深夜0:30~3:30
取材・文・撮影/宮下毬菜(フジテレビ担当)
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