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「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」2023/11/30

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

 NHKで放送中の「きょうの料理」(Eテレ=月・火曜午後9:00、総合=金曜午後0:20)。料理人や料理研究家を講師として招き、おいしい料理のレシピや役立つテクニックを24分の短時間で紹介する料理番組です。昨年の11月に番組誕生から65年となり、テレビ料理番組の最長放送記録としてギネス世界記録にも認定されました。

 放送開始から現代まで親子2代にわたり「きょうの料理」を講師として支え続けている土井善晴さんに、番組の歴史や講師として意識していることをお聞きしました。

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――初めにギネス世界記録を受賞した感想を教えてください。

「『きょうの料理』は以来、父の土井勝が放送開始当時から出演していて、それを引き継いだ形で私も現代に至るまでやらせていただいているので、長さや歴史をあらためて感じることができました」

――お父さまの土井勝さんはどんな方だったのでしょうか?

「『きょうの料理』は、当時から講師とNHKのアナウンサーのアシスタントが2人で進行するというのが定番でしたけど、父に関しては1人でやっていることが多かったと思います。自分自身で番組を取り仕切って一から十までやっていたというのは、他の人たちと違った点だと思います。現代では料理の情報のほかに番組に面白さを求められているような感じがしていますが、当時はそのような感じが一切なく、非常に真面目に料理を伝えていた時代の1人だったと思います」

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――子どもの頃の土井さんにはお父さまの姿はどう映っていたのでしょうか?

「世間から見る土井勝像というものは、私が見ていた姿と変わっていなかったと思います。家でテレビを見て、お酒を飲みながら寝転がっているというのは一切なく、家でもきちっとしていました。でも、私に厳しいという感じではなく、自分に厳しい人だったと感じます。とても忙しい人で、趣味がヘラブナ釣りということもあり、あまり家にいなかったと思います。今度はいつ帰ってくるのか楽しみで、休みの時にどこに連れて行ってくれるのか、旅行を楽しみにしていた思い出があります」

――お父さまの姿が、料理研究家の道に進むきっかけになったのでしょうか。

「結果的にはそうなったと思います。私の場合は料理をどこで身に付けるかということになった時、今の時代みたいにパティシエやイタリアンみたいにジャンルせずに、料理というものを全体で見ていました。フランス料理や日本料理を学ぶのも、父のつてもあり、超一流のお店で研修や修業ができたこともあったので、とてもありがたいと思っています」

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――以前、塩むすびの回がとても話題になり、先日のギネス世界記録の授賞式でも後藤繁榮さんが印象に残っているとおっしゃっていましたが、その秘話を教えてください。

「普段はリハーサルをやってから本番に至るのですけど、あの回はプロデューサーの皆さんにおむすびを握る段取りだけ話して、余白の時間に何を話すのか、私と後藤さんにお任せしますというぶっつけ本番で挑みました。普段はリハーサルをきっちりやって時間を調整して挑むので、リハーサルと同じことを話してしまい演技がかってしまうのですが、生放送のような感じで挑んだので、リアリティーさが出て魅力的になったんじゃないかと思います」

――歴代の料理の中で印象に残っているものを教えてください。

「塩むすびをはじめ、里芋の煮っころがしなど『シンプルでこんなに簡単でいいの?』と思う料理が、実は1年で一番人気のある回になったというのが印象に残っています。私が料理をどうしたいかということではなく、視聴者が作りやすいということを第一に考えて、常に視聴者のことを考えて料理しているので、私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています。どうしたらおいしくなるのかを指導するわけですから、その先の工夫は皆さんの家庭でしてください」

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――番組の魅力はどんなところだと思いますか?

「NHKということもあり、より多くの人が見ているという意味でもギネス世界記録級なんじゃないかと思います。長いということもだけど、日本の大衆を映す鏡というものでもあり、時代ごとに紹介する料理が変わっていくので、今の時代を映すものだと思っています」

――番組を振り返ってみていかがでしょうか?

「『きょうの料理』は私が物心ついたころから父が出演していて、番組の歴史を含めて体の中に入っていて、私自身が生き字引みたいなものだと思っています。番組は必ず見ていたし、帝国ホテルの村上信夫さんや辻嘉一さん、王馬熙純さん、陳建民さんなど、各料理界を代表するような名物シェフの方が出演されていて、今も番組が続いていると思ったらとてもありがたく思います」

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――出演者の方との裏話を教えてください。

「3月に卒業された廣瀬智美アナウンサーや今も出演中の守本奈実アナウンサーは、本番前に事前に取り上げる料理を作って家族に食べてもらうなど、しっかり予習をして本番に臨まれています。テキストの写真撮影がある際にも、忙しい中、早くから撮影現場に来て説明を聞いていて、どんな料理を私が作ってどんな話をするということを、本番に向けてA4サイズのノート2ページにわたりびっしり書いていました。皆さん知識がない状態で質問しようと思ったらとんちんかんな質問をしてしまうし、番組が成立しません。番組中はお伝えしたいことが山ほどあり、余計な情報に時間をかけることができない中でも面白さなど多くのものが番組に要求されているので、たくさん努力をしていると思います」

――番組中にやっていたシャンシャン茶こしも、視聴者を楽しませる工夫なのでしょうか?

「クリスマスに家族みんなで楽しんでほしいので、以前から毎年どこかのメディアでやっています。鈴を買ってきて、茶こしにリボンで結ぶだけで作れるので、やってみてください」

「きょうの料理」を親子2代にわたり講師として支え続ける土井善晴、「私は料理を工夫せず、基本を教えるというのを意識しています」

――最後に今後の目標を教えてください。

「いつの時代も変わらず、みんなに料理をしてほしいと思っています。皆さんが想像しているよりも、人間にとって料理というものは大事なものだと思います。人間は料理をする動物ですから、自分が人間である証明になるんですね。人間らしさを失わないためにも料理をしてほしい。そして、それで苦しまなくても、料理って楽しめるということを精いっぱい伝えたいと思います。1人暮らしの若者もおじいちゃんも、料理することで生き生きできるんですね。料理っていいなって分かってもらうことが『きょうの料理』の使命だと思います」

【番組情報】

「きょうの料理」
NHK Eテレ
月・火曜 午後9:00~9:25
NHK 総合
金曜 午後0:20~0:45

NHK担当 S・A



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