中沢元紀、「塚原監督の演出を受けて、あらためて目指したい俳優像が見えてきました」――「下剋上球児」インタビュー2023/11/26
TBS系では連続ドラマ「下剋上球児」が放送中。鈴木亮平さんが「日曜劇場」枠で約2年ぶり2度目の主演を務め、高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描くドリームヒューマンエンターテインメントです。
ここでは、越山高校野球部のエースピッチャー・犬塚翔を演じる中沢元紀さんにインタビュー。翔を演じる上で意識していることやエースピッチャーとしての心境はもちろん、おじいこと犬塚樹生を演じる小日向文世さんとのエピソードについても語っていただきました。
――初めに、ここまで翔を演じてこられた感想を教えてください。
「物語序盤では翔の心境が変わる様子が描かれたので、今後はチームに溶け込んでどんな展開を迎えるかを楽しみにしています。翔は感情を表に出すタイプではなく、自分から行動することも少ないタイプです。そういった一面は自分と重なるところもあるので、演じていく中でだんだん役になじんできている感覚があります」
――越山高校野球部としては珍しくライバルがいる設定ですが、お芝居で心掛けたことはありますか?
「ライバルは、切磋琢磨(せっさたくま)してお互いが成長して高め合っていくけうな存在。役者仲間である日沖誠役の菅生新樹とは以前から知り合いで、同い年ということもあり友達としてよく遊ぶのですが、その一方で、同世代俳優としてのライバル意識もあります。そういった感情を星葉高校の児玉拓海(羽谷勝太)と江戸川快斗(清谷春瑠)に対して抱くイメージで演じています」
――作中では3年間の時が進み、翔の成長も描かれると思います。どんなことを意識されていますか?
「高校生は多感な年頃でもありますし、子どもから大人に変わる大切な時期だと思うので、3年生になったシーンでは少し大人になった一面を見せたいと思っています。あえて言葉には出していませんが、6人それぞれが同じ意識をしていることを、お芝居を通じて感じています。これからの僕たちの化学反応も楽しみにしているところです」
――本作の現場の雰囲気を教えてください。
「新井順子プロデューサーが、全体から僕たちの細かいところまで見守ってくださっている温かい現場です。(監督の)塚原(あゆ子)さんは、僕たちに『みんなで考えて自由にやってみて』と言ってくださるので、球児みんなでお芝居を考える力もついてきていて、シーンをよりよくするにはどうすればいいかを、移動や休憩中などにも話し合うようになっています」
――富嶋雄也(福松凜)が食べる弁当を見て「先輩、彼女いるんすか!?」と言っていた一言がアドリブだったと伺いました。野球シーン以外の高校生らしい一面も魅力的ですが、どのようなバランスで演じられていますか?
「あのアドリブはその場で出た言葉なのであまり覚えていないのですが、塚原さんに言われた『人間はいろいろな表情を見せた方が魅力的に見える』という言葉が頭の中にあったからこそ出たセリフかもしれません。企画書にも翔の野球以外の裏設定が書かれていたので、それも演じる上で生きていると思います」
――例えばどんな設定ですか?
「翔は女の子からモテるけど、おじいが全員『翔くんにはふさわしくない!』みたいな感じで突き放しているという設定が書いてありました(笑)。そういうことも頭の片隅に置いて演じています」
――そんなおじいを演じる小日向さんとは共演シーンも多いと思いますが、一緒にお芝居されてみていかがですか?
「小日向さんはたくさんお話をされる方なので、いらっしゃると現場がパッと明るくなります。俳優の大先輩なので最初の頃は緊張してしまう瞬間もあったのですが、そういう壁を小日向さんの方から壊してくださって、野球シーンの撮影についてや、これからの役者人生についての話もさせていただいています」
――南雲脩司役の鈴木さん、山住香南子役の黒木華さんは本作にとってどのような存在になっていますか?
「お二人は本当にリアルな先生にしか見えなくなっています。亮平さんも華さんも、何を質問しても真摯(しんし)に向き合って答えてくださいますし、お芝居での大切なことも球児たちと話し合いながら方向性をまとめてくださるので、監督であり、部長であり、先生でもある存在です」
現役時代はファーストで活躍「もともとピッチャーではなかったので、技術面では大変な部分も」
――ご自身の野球経験について教えてください。
「野球は小学校5年生から中学校3年生までの5年間やっていました。外野も内野も経験がありますが、最終的に中学校最後の試合はファーストのポジションで出場していました」
――翔はチームの中心選手ですが、撮影でのプレッシャーはありますか?
「試合シーンでは僕がピッチャーでストライクを入れないと始まらないシーンがあったり、『外角低めにスライダーを投げてください』という要求をカメラを通してそう見えるように投げないといけませんでした。もともとピッチャーではなかったこともあり、野球の技術面に関しては大変な部分もありました」
――翔のピッチングで意識していたことはありますか?
「物語冒頭では自分だけで勝とうとするようなエゴが強い部分もあったので、ほかの人のことは気にせずに自分のペースで動くように意識していました。投球シーンもゆっくり腕を上げて投げるようにし、マウンドでの立ち姿にも余裕を見せるようにしていました」
――「日曜劇場」でご自身が投げる姿をテレビで見てどんな思いを抱かれますか?
「素晴らしい作品に出演させていただき、ありがたい思いでいっぱいです! 性格上、自分が出ているドラマを平常心で見られないので、『ここはもうちょっとこうした方が良かったかな』と反省点ばかり探してしまうこともあるのですが、家族や周りの皆さんからの素直な感想をいただくたびにうれしくなりますね」
――どんな反響をもらうのが一番うれしいですか?
「ピッチングフォームに関してはオーディションの時から課題として意識していたので、『奇麗で格好よかったです』というお言葉やDMをいただけて、頑張ってよかったなと思えます!」
「魅せるところは魅せる、メリハリのあるお芝居もできるようになれたら…」
――本作を経て、どういう俳優になる目標を描いていますか?
「作品のジャンルにもよりますが、ベースとしてはナチュラルなお芝居ができる俳優を目指したいと思っています。その中で、魅せるところは魅せる、メリハリのあるお芝居もできるようになれたらなと。本作で塚原さんの演出を受けて、あらためて目指したい俳優像が見えてきたと思います」
――本作の現場で役者として気づかされたことはありますか?
「塚原さんの演出は『この子が悲しい表情をしています! 見てください!』と描くのではなくて、見ている人に想像させる演出になっていると思います。お芝居としてもそう見せられるように、やはり役者はいろいろな目線を持っていないといけないと常に感じています。視聴者の皆さんからの目線や、カメラにどう映っているかなどを多角的に考えつつ、本番では頭の中を空っぽにして役として生きなければならないなと。まだまだできていないことも多いので、より一層頑張りたいと思っています」
――客観的な視点を身につけたいんですね。
「はい。自分の出演シーンだけではなく、話全体のバランスを見ながら話し合っている亮平さんや塚原さんを見て、僕たちはまだ自分が出演するシーンのことにしか集中できていないと思い知らされました。冷静に俯瞰(ふかん)して作品と向き合いながらも役に集中できる、主演として必要な資質を目の当たりにさせていただけたことは大きな経験になっていると思います」
――では、最後に第7話の見どころをお願いいたします。
「新1年生も入ってきて学年が上がり、越山高校野球部がどんどん動き出すので、引き続き僕たちの成長に注目していただきたいです。今後は、翔の野球以外での葛藤や悩みが垣間見える場面が増えてきますので、翔の生き方や人との関わり方にも注目していただきたいです。最後の夏が始まる話でもあるので、迫力のある野球シーンもたくさんあります。ぜひお楽しみに!」
【プロフィール】
中沢元紀(なかざわ もとき)
2000年2月20日生まれ。茨城県出身。主な出演作に、連続ドラマ「ナンバMG5」(フジテレビ系)、「埼玉のホスト」(TBSほか)、映画「沈黙の艦隊」「さよならモノトーン」などがある。
【番組情報】
「下剋上球児」
TBS系
日曜 午後9:00〜9:54
文/TBS担当 松村有咲
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