平八郎こと本多忠勝を演じた山田裕貴、「どうする家康」クランクアップ目前の苦悩を明かす2023/11/19
第44回(11月19日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)で、関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康(松本潤)。時は流れ、征夷大将軍となり、ついに江戸幕府が誕生しました! 国づくりに励む中、平八郎こと本多忠勝(山田裕貴)から老齢を理由に隠居したいと言われた家康が、平八郎と小平太こと榊原康政(杉野遥亮)に「まだお前たちの力がいる」と伝え、隠居は認めないと言った姿に3人のこれまでの絆を見た気がしました。
今回は、徳川家臣団の四天王として関ヶ原の戦いの時にも家康のそばにいた本多忠勝役の山田裕貴さんから、クランクアップ目前の思いや忠勝を演じる上でのこだわり、家康を演じる松本潤さんとのエピソードなどを伺いました!
――クランクアップを目前にした(※取材時)今の気持ちを教えてください。
「今、第44回のリハーサルをやってきたんですけど、これまでで一番気持ちがつながっていない気がして、明日なのにどうしようと悩んでいます。お芝居はセリフのキャッチボールだけじゃなく、表情を見て受け取ったり、相手の間に合わせることもあれば、あえて合わせないこともあったり…。そして、忠勝の思いを表現するために、どこに焦点を合わせるべきかを考える時もあれば、考えずにやれる時もあります。おそらく、今は武士としてまだ戦っていたい気持ちと、引き際だから引かなければならない思いがグルグルしすぎていて。僕は引き際を分かっている武士の方が格好いいと思っているけど、忠勝としては殿(家康/松本潤)に言われたことに感化されて、もっと戦いたいと思っている部分があって、それが拮抗しているから、分からなくなっているのかもしれません」
――忠勝を演じる上でどんなところにこだわりましたか?
「忠勝の甲冑(かっちゅう)や兜(かぶと)など、身に着けている大事なものを見つめて感じたのは、助けてもらったものに対して敬意を持っていて、人のことをものすごく思っている人だということです。兜に鹿の角が付いているのは、戦の時に鹿に導いてもらったことから付けているようですし、肖像画にも描かれている数珠は、自分が失った人も斬った人も全部背負って戦うという意味合いで身に着けているらしく、そこまで他人のことを背負う人なんだと思いました。だから、第1回(1月8日放送)からそういう人だということを頭に置いていました。また、武士は涙を見せないものだと思っていたのですが、人のことをそこまで思えるのであれば、誰かのために涙を流すことは当たり前にできるんじゃないかと想像しました。忠勝は“剛”のイメージがあるけれども、実は繊細でいろんな人の気持ちを分かっていて、人の思いを受け止めて戦っているんだろうと思っていたので、僕にカメラが向いていても向いていなくても、一言もしゃべらなくても、殿を見ている目にはめちゃくちゃこだわって演じていました」
――山田さんが演じたかった忠勝像はどのようなものだったのでしょうか。
「記念館を案内してもらった時に、岡崎の武将隊の方から『実は本多忠勝の肖像画は本人が8回書き直させているんですよ。だから、もしかしたら山田さんみたいにスラっとした人なのかもしれませんね』と言われたんです。それまでは忠勝に対して屈強なイメージを持っていて、僕が選ばれた理由が分からなかったのですが、忠勝のエピソードを聞いた時に『もしかしたらそうだったかも』と思えて、自分が忠勝を演じることに関して自信が持てました。歴史の真実は分からないし、イメージはあくまでその人の空想だし、人の気持ちは相手のことを見つめているだけじゃ分からない、体感した人しか分からないよなと。そんな中、疑似的だけど、忠勝を体感できるのは僕だよなと思って。だから、僕がやりたい忠勝が演じられればいいと思えて、本当に武将隊の人に感謝しています。忠勝が愛用していた蜻蛉切(とんぼきり)も持たせてもらって、本当の重さを実感することができました」
――そんな体験をされていたんですね。
「そんな中、僕がやりたい忠勝を考えた時に、人の思いをちゃんと背負える柔軟で繊細で、人の心を受け止められる人物として演じようと思いました。殿が悲しかったら同じように悲しいし、苦しかったら同じように苦しい。反発してしまうのは、その気持ちが分かるから。武骨で真っすぐな部分もあるけれど、内面は全然違っていて『わしが強くいなければ、この殿はダメかもしれん』という思いで強く立っているんです。本当は、叔父上が死ぬ時、『もうありえない。本当は泣きたいし、逃げ出したいし、一緒に死にたい』という思いがあったんじゃないかと考えています」
――第43回(11月12日放送)では天下分け目の関ヶ原の戦いが描かれましたが、台本を読んでどのように感じましたか?
「関ヶ原の戦いといえば、刀を交えて騎馬が倒れ、鉄砲もバンバン撃ち合っているイメージがあるかもしれませんが、『どうする家康』では、9月15日に開戦する前から戦いは始まっていて、殿が『私に付いてほしい』という書状を書いて、どれだけの武将たちを引き込めるかで戦が決まっていたというところを描いているので、そこが見どころだったと思います。この戦いは力で戦う戦争というよりも、誰に付いていきたいかの話で、小早川秀秋(嘉島陸)も戦場にいながら、まだどっちに付くか分からない。あれは、小早川秀秋だけがそういう思いだったわけじゃなくて、みんなそうだったんです。勝つ方に付きたいから。そういう戦だったということをあらためて教えてくれる回でした」
――そんな関ヶ原の戦いで、忠勝をどのように演じようと思っていたのでしょうか。
「これまでも殿のそばにいることが多かったので、どんな思いで忠勝は殿の隣にいたんだろうということだけを考えていました。忠勝の思いを表現するセリフはなかったので、たたずまいだけで殿をどう思っているのかを見せなければいけない難しさを感じながらやっていました。実は、関ヶ原に昔からの徳川派の武将がどれだけいたのかを調べると、忠勝と井伊直政(板垣李光人)しかいないんです。あとは元豊臣派の福島正則(深水元基)や黒田長政(阿部進之介)、藤堂高虎(網川凛)が前線に張っていて、彼らに豊臣側へひっくり返られたら一巻の終わりなわけです。僕は最初、忠勝は前線にいると思っていたのですが、殿の一番近くにいるんです。それは、裏切られた時に殿を守るためにそこに布陣していたんじゃないかと。しかもたった500騎で、動きやすいようにそこにいた。殿の命が一番で、この戦いで忠勝は死んでもいいと思っていたんじゃないかと思います」
――家臣団と殿の関係は控室でも和気あいあいだったそうですが、関ヶ原の戦いに向けて雰囲気は変わったのでしょうか?
「関ヶ原の戦いの時には小平太もそばにいなかったので、第1回(1月8日放送)から出ていた徳川家臣団は忠勝しかいなかったんです。直政も第15回(4月23日放送)からの登場だったので。ほかは新たに入ってきたキャストや元豊臣方の武将だったので、寂しかったです。殿と一緒に、『違うドラマみたいだね』と言っていました(笑)。殿には申し訳ないなと思っていました。殿も(大森)南朋さんや松重(豊)さん、音尾(琢真)さんなどの先輩の方が相談しやすいと思うし。僕は年下なので、ちゃんと力になれているのかなとずっと思いながらいたんです。でもこの間、初めて『ここのセリフは、息子の秀忠(森崎ウィン)に強く当たった方がいいかな』と聞いてくれた時は救われました。やっと頼ってくれたとうれしかったです」
――小平太を演じる杉野遥亮さんとのコンビが“平平コンビ”として人気でしたが、山田さんにとって杉野さんはどのような存在でしたか。また、平八郎にとって小平太はどのような存在だったと思いますか?
「杉野くんと僕は、根底にある魂の感覚が全然違うんです。彼自身は戦国時代に向いていないと思っているんです。『山田くんは戦う気を持っているからいいよね』とよく言われました。僕が火なら彼は水で全然違うものとして捉えているので、負けたくないというより、『違うからいいんじゃない』と思っています。僕は誰に対しても負けるとか負けないということを考えていなくて。平八郎も『お前にはお前の役割があるだろ』と思っていたんじゃないかと想像して。もしかしたら、僕と平八郎が思っていたことは一緒かもしれません」
――小平太とのシーンで特に思い出に残っている場面を教えてください。
「小平太がちぎれ具足で出てきた最初の頃が好きでした。今は、もうお互い年を取っているので、相手を気にすることも減らしていると思うんです。小平太を意識すればするほど子どもっぽく見えちゃうので、いち武将として殿を支える身としてという感覚があります。長期間、同じシーンで撮影も多く共に戦ってきたので、平平コンビと言っていただけることはありがたいです」
――最初は殿を認めないところから始まって、最終的には命に代えても守ると変化していきましたが、どのタイミングで忠勝の思いが変わっていったと思いますか?
「第2回(1月15日放送)で殿の目に強い思いが宿った時に、忠勝は本当にちょっとした動きで一歩だけ後ろに下がっているんです。その後、殿が門を開けて出ていく時のセリフのところでも一歩下がっているのですが、それ以降、織田信長(岡田准一)や武田信玄(阿部寛)が来ても一歩下がることはやめようと。忠勝のことを退かせたのは殿しかいない。もうそこで忠勝は味わったことにしようと思って。それをずっと言っていたら、結果、セリフが増えていて。第44回で、小平太に『いつから認めていたんじゃ』と聞かれて、『大樹寺』と言うんですけど、それは自分が演じてきた忠勝の思いが、最後の最後に伝わった瞬間だなと思っています。忠勝は口で認めていないって言っているだけなんです」
――そうなんですね!
「実はあそこで認めちゃっていたという逆の発想で。最後の最後まで認めていないことはよくあるけど、実は最初に認めちゃっていたというのは、ほかの話でもあまりないですよね。夢が、ずっと殿を守って死ぬことだったんで、あの時点で心を打たれていないと、いつまでたっても俺は認めんって言いながらそばにいなくてはいけなかったので、それは苦しいなと思って、もうあそこで認めているということにしました。本当は認めているけど…という思いでやっていたので楽しかったです」
――自分にカメラが向いていない時も殿を見つめているところを大事にしていたとのことでしたが、どういう思いで殿を見ていたのでしょうか。
「シーンによっていろんな気持ちになるので、ずっと同じというわけではないんです。例えば、瀬名(有村架純)が死んでしまった時、忠勝が殿を見る目は、自分が悲しい時よりも悲しい。殿が悲しいことが悲しいと思いながら見つめていました」
――ラストが小平太とのシーンでしたが、初めて台本でご覧になった時、どんな気持ちでしたか?
「本多忠勝は最後まで戦っている人なんだなと思いました。引き際を分かっている武士の方が僕は格好いいと思っていたから、最後まで『俺は認めぬ』って言うんだな、この人と(笑)」
――「俺は認めぬ」というセリフが最初に出てきたのは第1回でした。第1回の最後、家臣団が家康に「どうする!?」と詰め寄るシーンでの印象的な「俺は認めぬ」は山田さんのアドリブとのことでしたが、それが最後まで生きてくることについて、どう思われましたか?
「これまで僕がやってきたお芝居の中でも、アドリブで言ったことが作品の中で生かされることが多いんです。古沢(良太)さんのすごいところは、そこをちゃんと拾ってくれるところですよね。叔父上のひょうたんを身に着けたら、ひょうたんで酒を飲むくだりをト書きで増やしてくれていて。僕が提案したことを、ちゃんと引き取って『山田くんの忠勝ってこうなんだね』と書き続けてくれることが、本当にありがたいなと。第1回の最後のシーンの『俺は認めぬ』はカットがかからなくて、ずっと見ていたら言いたくなっちゃって言ったんですよ。そしたら、それが使われていて。殿や南朋さんから『狙っていたんでしょ、あれ』と言われたのですが、全然カットがかからなくて、何の計算もなく言っちゃっただけです。でも、そういう時に『ちゃんと役を生きている』と実感できるんです。台本超えた瞬間から、自分の一番やりたいと思っている“役を生きること”ができたと感じられるんです。だから、クランクアップの時も役を生きて終えたいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/K・H
関連記事
- 吹越満、津田寛治、栁俊太郎、マイコ、玉山鉄二らがクライマックスへと向かう「どうする家康」に出演
- 松本潤主演「どうする家康」に大森南朋、山田裕貴、杉野遥亮、山田孝之、広瀬アリスらの出演が決定!
- 佐藤隆太、和久井映見、高畑淳子、山田真歩、淵上泰史、深水元基、中村七之助が「どうする家康」に出演決定
- 「どうする家康」お万役で再登場の松井玲奈がトークショー!“家康”松本潤との対面で「オーラを強く感じました」
- 北川景子、「どうする家康」のお市は岡田准一の威厳と威圧感のある信長を意識。松本潤とのエピソードも
- 「どうする家康」織田信長を演じる岡田准一、いよいよ迫る本能寺の変に「天下人の中に住まう寂しさを表現できたら」
- 大河ドラマ「どうする家康」
この記事をシェアする