「たとえあなたを忘れても」主演の堀田真由が、美しくもはかないラブストーリーの魅力を語る。役者の道に進むことを決めた“青春の記憶”も明らかに2023/10/22
ABCテレビが4月から新設し、日曜夜10時の全国ネット連続ドラマ枠の第3弾としていよいよ10月22日から放送がスタートする新ドラマ「たとえあなたを忘れても」。脚本家・浅野妙子さんが手掛ける本作は、夢を失った女性と、記憶を失った男性が奏でる切なくも美しいヒューマンラブストーリーです。
本作で主演を務めるのは、地上波連続ドラマ初主演となる堀田真由さん。浅野さんが手掛ける作品の魅力を丁寧に言葉に紡ぎながらも、4度目の共演になる萩原利久さんには「安心感があります」と恥ずかしそうに笑顔を見せます。主演作への意気込みや役作りの中での葛藤、さらに学生時代の堀田さんの心を動かした“記憶”について、たっぷりとお話を伺いました。
――地上波連続ドラマ初主演になりますが、お話が来た時には率直にどんなことを感じましたか?
「やりたいと思ってできるものではないので、『主演』と言ってくださる気持ちがすごくうれしかったです。今回はラブストーリーということで、夢に破れたりと現実でも誰かに起きているような等身大のキャラクターのラブストーリーは初めてで。これまでのラブストーリーは『こうなりたい』という目的や、『彼女はどういう人ですか?』と聞かれた時に一言で必ず答えられるようなキャラクターが多かったんです。自分でも、その役が悩んでいても心(しん)が通っていて、お芝居を通して答えを出す方がやりやすかったのですが、今回演じる河野美璃は自分にはない感情を持っているキャラクターになると思ったので、いろいろな人が想像できるからこそ、すごく無限大な可能性を持っている女の子だと思っています。何にでもなれる要素と、その選択肢がある役は初めてなので、『このキャラクターを私が愛せるのかな。もっとよくできるかな』というところで、実は不安に感じるところもありました」
――そんな中でも、今作のキーパーソンでもある青木空を演じる萩原さんとは4度目の共演になりますね。情報解禁時の「戦友」という言葉が印象的です。
「10代の時に『あの日のオルガン』(2019年)という作品で初めてお会いして、その時は作品の中でも全く関わりがなかったのですが、それから『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)で共演して、その時は席も前後だったので、すごく仲良くなって。そこから『ラジエーションハウスⅡ』(フジテレビ系)では幼なじみとして、萩原さんの役が私を好きになるけど、私の役は彼に対して幼なじみの感情しかないような関係だったので、4度目にしてようやくお互いの矢印が同じ方向に向きそうだなと感じています(笑)。いろいろな関係性をやらせていただいているのですごく楽しみでもあり、今回はオリジナルストーリーなのでどう話が進んでいくか分からない中で、作品に対していろいろなことを話せる人だと思うと、萩原さんと一緒でよかったと思います」
――ドラマのビジュアル撮影時には、堀田さんが顔を赤らめることもあったと伺いました(笑)。
「いやぁ、恥ずかしいですね(笑)。共演した作品の中でも『3年A組-今から皆さんは、人質です-』が撮影期間として長かったので、同級生と恋しているような感覚なんです。同級生と大人になって再会して恋が始まったような(笑)。萩原さんも『1回目、2回目ぐらいだったらいけそうなのに、2周ぐらい回って逆に恥ずかしい』みたいに言っていました。変に意識してしまっている感じもありましたね」
――この作品で久しぶりに再会した時は、どんなお話をされたんですか?
「久々にお会いしたのがこの作品の衣装合わせの時で、その時も全然しゃべれなかったんです(笑)。私は一度ご一緒した方でも、ちょっと期間が空くとまた(関係が)ゼロに戻ってしまうようなタイプといいますか。今作の関係を組み立てていく作業は、以前お会いしていることもあってスッと早かったのですが、久々に会ったファーストコンタクトは変な感じになってしまって、監督の皆さんにも『なんかしゃべりたいことないの?』と聞かれたのですが、『いや…何もないです』とちょっとよそよそしく帰っちゃいました(笑)。これまでのキャラクターの関係性とはまた違うので、初めましての感覚もあるけど同級生と恋に落ちるような、ずっとつながっているような感覚があるんですね。だから、ビジュアル撮影の時にカメラマンさんから『手をつないで見つめ合ってください』と言われた時は、『いやいや、ちょっと…!』みたいな感じでした(笑)」
――共演を重ねるごとに距離もだんだん近づいている気もするのですが、やっぱり恥ずかしさのようなものも?(笑)。
「学園ものの作品をやると、共演したみんなが友達のような感覚になるんですよ。だからこそ、“お芝居の共演者”というより“学生時代の友人”のような感覚がすごく強くて、時間が空いて会ってしまうと『あ、元気だった?』というところから始まるんです(笑)。初めて共演する方だったら『頑張りましょう!』というスイッチが入るのですが、昔から知っている方だと『が、頑張ろうね!』とよそよそしくなってしまって…。でも、今回は神戸での撮影で、撮影していても『みんなで頑張ってるぞ』というチームになれている感覚があるので、すてきな環境で撮影させていただくことでグッと距離も縮まるのではないかと思っています」
――クランクアップの時には今の距離感がどうなっているのか楽しみですね(笑)。共演を重ねてきた中で、役者としての萩原さんにはどんな印象を持たれていますか?
「同い年でありながら、私よりも前からお仕事もずっとされているので、役者としても先輩なんです。お芝居も、声のトーンがすごく柔らかい印象があるので、今作で美璃を包み込むような空というキャラクターはピッタリだなと思います。どちらかというと、派手さのあるお芝居よりも繊細なお芝居が私はすごく好きで。それは『ラジエーションハウスⅡ』の時も『病を抱えている』という自分の中では分からないところに近づく作業をしている時に、お芝居で受け止めてくださっていた印象があります。4度目というのもそうですし、萩原さんのお芝居は常にキャッチボールをしてくれているような感覚があるので、本番で違うことをしても、きっと返してくれるという安心感を持っています。そこは作品の見どころにもなるのかなと思います」
――美璃は「ピアニストになる夢」に破れて東京から神戸に引っ越してきた役どころ。その背景もかなり複雑なものが入り乱れているとのことですが、そんな美璃をどのように捉えていますか?
「第1話ではまだ描かれてはいないのですが、だんだん彼女のことが分かってくる描写もある中で、美璃にとっては母親と話せる共通のものが“ピアノ”で。母が喜んでくれることがうれしくて、それに応えたいという思いもあって、だからこそ自分ファーストではなく『誰かのために』と生きてきて、自分がどうしたいのか分からない中で生きているような女の子なのかなと思っています。美璃にとって、神戸という地は初めこそ自分から逃げるための場所だったのかもしれませんが、新しい地で自分とはちょっとかけ離れた場所にいるような空と出会って、彼女自身が変わって成長していく物語になるのだろうなと感じています」
――生活のためにアルバイトを始めたり、ピアノ講師という仕事の現実に葛藤する美璃に共感できる部分もありますか?
「私は早くから自分の夢が決まっていたタイプだったので、学生の頃からこの仕事をしていますが、実際に友達が就職活動を頑張っていた時の話を聞いていると、『自分がやりたいことってなんなんだろう?』と悩んでいる友達がたくさんいて。私の世界がちょっと違うだけで、もし自分が決まった職種に就いたとしたら、同じように『これで良かったのかな?』と悩むのだろうかと考えたこともあります。作品をお届けする時って、どこかきらびやかな世界に現実逃避できる時もあったり、『こういう世界いいな』と憧れるのもエンタメとしての一つの魅力だと思うのですが、今回のお話は『好きなことがやりたいけれど、その前に生活を安定させなければいけない』という現実や、『好きな人への思いよりも働く時間の方が大事』という葛藤があって、そういった等身大の悩みに寄り添うことや問題提示が、浅野さんの脚本ならではなんだろうなと思っています」
関連リンク
この記事をシェアする