「このままじゃいけない」「特殊なことをしているという意識はない」。2023年、EXITが47都道府県を駆け巡る理由【ロングインタビュー前編】2023/10/03
2017年、「M-1グランプリ」に出場するために即席コンビ「SCANDAL(スキャンダル)」を結成し、同年12月、正式に「EXIT」を結成した、りんたろー。さんと兼近大樹さん。瞬く間に大ブレークを果たし、今や「お笑い芸人」の枠にはとどまらない活動で存在感を放っている。
現在は、初の47都道府県ツアーを開催中。そのツアーを完走した翌日の12月10日には、自身最大規模となる単独ライブの開催を控えている。思わず投げかけた「EXITとして、まだまだやりたいことがありますか?」という問いに、2人は真逆の答えを口にする。
「いつか特大ストレートをカマしたい」。
2023年、EXITは“創成期”を迎えようとしている。冷静と情熱、熱意と空虚、光と影――。さまざまな思いが溶け合うロングインタビュー。
全国各地にEXITが到来「日本全体が盛り上がっている」
――テレビ、ドラマ、映画、ラジオ、YouTube、舞台、音楽活動、本の執筆…。多岐にわたってお仕事をされている中、2023年は全国47都道府県を巡るツアー「47°M~2023年中に達成する持続可能な47のファンミ兼チャLIVE~」が開催中のお二人。お休みはあるのでしょうか…?
りんたろー。 「僕、昨日休みでした。ふいなバラシとかで、たまに休みありますよ」
兼近 「うーん…。ちゃんとした休みはないですね。なんかしてます。溜まってることをまとめてやったりとか。休んでみたいですね。1日中家でゴロゴロとか、してみたいです」
――1日中休みという日は、長らくないですか。
兼近 「ないですね。絶対にやんなきゃいけないことが常にあるので、それをやる日に充てちゃいます」
――多忙な中、47都道府県を巡るツアーは28公演を終え(取材時)、折り返し地点を過ぎた頃ですが、手応えはいかがですか?
兼近 「日本全体が盛り上がっているなと。だから自分の県にEXITが来たのにツアーに参加していない人は、かわいそうだなって思いますよ。ライブの情報を見つけられなかったということですから。自分自身をもっと責めてほしいなと思います(笑)」
りんたろー。 「1年でこんなに舞台に立つことがないんですよ。自ずとネタと向き合うし、あとはやっぱり目の前でお客さんの反応が見られるというのは、楽しいですね。結成して5年半なんですけど、たくさん舞台に立っていたのは最初の頃だけだったので。お客さんも楽しいと思ってくれていたらいいなと思います」
――ツアー中に披露するネタは、回を重ねる中でブラッシュアップしたり、変化しているのでしょうか?
りんたろー。 「そうですね。本当に、二度と同じネタはないと思います。ありがたいことに何公演も来てくださる方もいるので、新しいネタも入れながらやっています」
――ツアー中のハプニングなど、印象に残っていることはありますか?
りんたろー。 「高級すし屋の設定のコントがあるんですけど、そのコントの最中に、爆音でクラブミュージックが流れたりとか」
兼近 「流れちゃった(笑)」
りんたろー。 「トラブルなんですけど、それも生ならではの楽しみかなと」
兼近 「あとは、コントをやる時は、毎回壁に『コント○○』ってタイトルを映し出してからコントが始まるんです。なのに手違いでテーブルを前に出しすぎて、壁に映ったのが『コント』だけだったんです」
りんたろー。 「ははは!!(笑)」
兼近 「意図せず、すごく尖ったことしそうな感じを出しちゃいました」
――今年は「キングオブコント」に初挑戦。47都道府県ツアーは、コントがメインなのでしょうか?
兼近 「途中まではそうでした。内容は変えながらなので、コントが多かったり、漫才が多かったり。これからは『M-1グランプリ』も控えているので、漫才の方が多くなると思います。『キングオブコント』はね、決勝手前で落ちてしまって…」
りんたろー。 「結構手前だけどね」
兼近 「その悔しさをバネに、次は『M-1』に挑みたいと思っています」
――ツアーでは、終演後にサイン会も実施されています。直接お客さんと触れ合う時間は、いかがですか?
りんたろー。 「お客さんの生の反応とか、声が聞けて楽しいですよ。僕ら土地勘がないので、実は県庁所在地からすごく遠いところでライブをしようとしている県もあったみたいで。そういう時、隣接する県から来てくれたお客さんが『あそこでは絶対にやらないでください。どんな交通機関を使ってもたどり着けません…』『帰れないです』って教えてくれたんです(笑)。そういうコミュニケーションができるのがうれしいですね」
「特殊なことをしているという意識はない」
――ネタ作りは、りんたろー。さんが?
兼近 「そうですね」
りんたろー。 「いやいや。2人でやってますよ!(笑)」
兼近 「りんたろー。さんが作ってくれますよ。覚える作業は大変ですけど、作る方が大変だと思うので、感謝しています」
――さまざまなお仕事にツアー、そして賞レース。EXITさんは、とにかくいろんなことを両立しながら活動されている印象があります。
兼近 「ツアーなんかは、全然苦じゃないんですよ。どっちかというと普段の仕事の方が『キツいな…』と感じてしまうんですよね。ツアーでは気持ちも体も楽になります。で、そこから通常に戻ると『キツいな』ってなります」
――ルーティンな日々を苦痛に感じてしまう?
兼近 「そうかもしれないです。普段の仕事の中に、ツアーがあるといいなって思うんですよね」
りんたろー。 「今までは、ホッとひと息つく時間があったんですよ。仕事と仕事の合間にダラダラする時間があったんですけど、今はそこもネタ合わせをしていて。でも逆に、『ここ使えばできるんだ』と感じましたね。移動中もネタ合わせしていますし。やっぱり、ずっと同じことをやっていても楽しくないので。いろんな活動をしているのは、それが大きいかもしれません。『このままじゃいけない』って思うので」
――47都道府県ツアーの開催を発表した時、周りの方からはどんな反応がありましたか?
兼近 「(ハチワレの声で)『それって、全国47都道府県、全部回る…ってコト!?』って、ハチワレが俺に問いかけてきました」
りんたろー。 「誰?」
兼近 「『回るって…コト…!?』って言われましたね」
――ハチワレも驚いていたんですね(笑)。
兼近 「はい。『…ってコト!?』って、びっくりしてました」
りんたろー。 「さっきから何をしゃべってるの?(笑)」
兼近 「(ICレコーダーに付いていた、ちいかわのキーホルダーを見ながら)僕もちいかわ好きなんです」
――ハチワレとお話できたなんて、うらやましいです。
兼近 「『回る…ってコト!?』って。ハチワレが…」
りんたろー。 「(遮って)何の話?(笑)。周りの芸人さんからってことですよね? 芸人じゃないじゃん」
兼近 「ハチワレは違うか」
りんたろー。 「なんですか? ハチワレって(笑)。芸人からの反響の話してくださいよ(笑)」
――兼近さん、お願いします(笑)。
兼近 「(笑)。47都道府県ツアーをやっている人が少ないので、周りの芸人さんたちは『マジかよ、よくやるな』とか言うんですけど、でも世間の人からしたら、芸人ってそういうもんだと思うんです。全国各地を飛び回るのが芸人というか。世間の皆さんからしたら、別にすごいことだとは思わないと思うんですよ。だから僕としては、特殊なことをしているという意識はないですね」
りんたろー。 「芸人の先輩に『忙しい?』って聞かれて『ツアー回ってるんです』って言うと、『へー。何カ所くらい行くの?』『47都道府県行くんですよ』『えっ!?』みたいな。初めてそこで驚かれますね。『偉いなー!!』とかも言われるんですけど、『え? 偉くはないけどな…』って。『よっぽどあんたたちの方が偉いよ!!』って思いますもん。でもやってみて気づいたのは、『47都道府県ツアーを成立させるのって、意外とすごいことなのかも』って。めちゃくちゃタフじゃないといけないし、あとは地方の壁。どれだけ東京やテレビでイケイケな人でも、地方に情報を行き届かせて、人を集めるのは至難の業だと感じました」
――集客に苦労した地域はありますか?
りんたろー。 「九州とか、四国、中国地方は苦労します。その地方のローカルのレギュラー番組もないので…。でも、今回足を運んだことでまた変わってくるものもあるのかな? 東京では見られない景色が見られるのは、楽しいですね」
――なかなか観光はできないかもしれませんが、ツアー中の思い出を聞かせてください。
りんたろー。・兼近 「観光してないんですよ…」
兼近 「次の日もスケジュールが入ってしまっているので、行って、ネタやって、帰る。強いて言うなら、りんたろー。さんのおごりで飯を食うくらいです。3回に1回くらいは、そういう時間を楽しめていますね。それがツアー中の恒例行事です」
りんたろー。 「せめて、その土地のものを食いたいんですよ。だからみんなに無理させて、『ここで飯を食おう!!』って率先して誘ってます」
兼近 「俺は全部そばでいいんですけど(笑)。食にこだわりがなくて…」
りんたろー。 「そばの時はおごってくれます(笑)」
兼近 「俺が食べたいから(笑)。俺が食べたいものに付き合わせた時には、絶対おごりたいんですよ」
――「M-1」も始動しますが、ツアー後半戦の展望はありますか?
りんたろー。 「漫才を仕上げていきたいですね」
兼近 「うん。漫才を仕上げたいっていうのと、あとは12月10日にデカい単独ライブも控えているので、そっちのネタも作んなきゃなと。そのことも考えながらのツアーになるかなと思います」
インタビュー後編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2470353/
【プロフィール】
EXIT(いぐじっと)
りんたろー。(1986年3月6日生まれ、静岡県浜松市出身)と、兼近大樹(1991年5月11日生まれ、北海道札幌市出身)により、2017年12月にコンビ結成。18年11月、吉本興業所属芸人で最速となる結成11カ月で東京・ルミネtheよしもとでの単独ライブを開催し、完売を果たす。19~22年の4年連続で「M-1グランプリ」準々決勝進出。テレビ、ドラマ、映画、ラジオ、YouTube、舞台、音楽活動、本の執筆など、活動は多岐にわたる。現在のレギュラー番組は、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)、「EXITV~FODの新作・名作をPon!Pon!見せまくり!!~」(フジテレビほか)、「EXITのモータースポーツ応援宣言」(テレビ朝日系)、「EXITのアヤシイTV アチ~の見つけました!」(テレビ北海道)、「EXITのオールナイトニッポンX」(ニッポン放送)など。
【公演情報】
「チャランの園 1億年と2千年たっても笑わせる~カネチ&リンと林檎かじり散らかしてアチャーな新人類創生計画ブッカマ!!~」
日時:2023年12月10日(日) 午後4:00開場/午後5:00開演(約90分公演)
会場:東京ガーデンシアター(東京都江東区有明2丁目1−6)
※FANYチケット、チケットぴあ、ローソンチケットにて、チケット発売中
取材・文/宮下毬菜 撮影/蓮尾美智子
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