五郎丸歩がラグビーW杯の見どころを徹底解説&日本の勝敗も予想! 日本代表の強化合宿に密着した「100カメ」を見て懐かしさも2023/09/09
9月8日から開幕する「ラグビーワールドカップ2023」。2019年には日本で開催され、国内を熱狂の渦に巻き込んだ大会が、今年はフランスの地で行われます。世界の強豪20チームが王座を目指し、白熱の戦いを繰り広げるフランス大会に、ブレイブブロッサムズ(勇敢な桜戦士)と呼ばれる日本代表も出場! NHKでは9月10日の日本の1次リーグ初戦・チリ戦の模様を総合テレビやBS4K、ラジオ第1で中継するほか、NHKプラスでも配信します。
そんな日本代表の強化合宿に密着した「100カメ」(NHK総合)が、チリ戦の前日9月9日に放送されます。「100カメ」とは、気になる場所に100台の固定カメラを設置して、人々の生態を観察するドキュメンタリー番組。今回はなんと160台のカメラを使い、およそ2300時間もの長期間撮影に挑んだといいます。そこには、厳しいトレーニングや想像を絶するプレッシャーの中で励むだけではなく、おちゃめな一面が垣間見られ、選手たちのリアルが映し出されます。
放送に先立ち、NHKラグビーワールドカップナビゲーターの五郎丸歩さんが登壇する試写会が行われ、番組の見どころや来るW杯の注目ポイント、果ては優勝予想までしてもらいました!
――「100カメ」をご覧になった感想をお願いします!
「私は常日頃、ラグビーは科学と非科学がうまく融合したスポーツだと思っています。『100カメ』でも映っていたレスリングの練習などは、まさに非科学なわけなんです。ただ、グラウンドに一歩出てみると、ドローンで撮影していて、走った選手たちの距離やスピード、スピードチェンジをどれくらいでしているかをすべてGPSで把握している。この科学と非科学がうまく融合した時に、ラグビーはいいパフォーマンスを出せるんだということをあらためて感じました」
――選手たちのコミュニケーションをご覧になって、懐かしさはありましたか?
「僕も当時はあんな感じでしたね。グラウンドを離れれば、和気あいあいとやっていますし、1日中、本当にラグビー漬けですよね。休み時間でも食堂に行って、ビデオを見返している選手は多かったです。われわれが戦っていた時は、主体性を持ちなさいと言われました。上から下りてくるものだけをこなすのではなく、自分たちがしっかりと分析し、仲間同士でコミュニケーションを取りました。その結果、最後ピッチ上でどういう選択をするかを自分たちで判断できる。それが映像で見ることができて、また2019年を超えるチームが出来上がるんじゃないかと思いました」
――ご自身が選手の時の合宿との違いと共通点を教えてください。
「違う点は、朝5時ぐらいから始まるヘッドスタートと言っていたトレーニングが今なくなっていると聞いています。共通しているのは、相変わらずきつそうなところですね(笑)。2019年にも史上最強にきついと聞きましたが、2015年の時にも言ってましたから。OBとしては、合宿はどこまできつくなるんだろうと思いながら見ています」
――いよいよ、8日からW杯が始まりますね。
「フランスとニュージーランドの試合に早くも興奮しております。今回10大会目になるんですが、2019年までの9大会は南半球が8回優勝していて、北半球は、なんとイングランドの1回だけ。だから、フランスが自国開催で優勝することをヨーロッパの皆さんが非常に期待している空気感は感じています。ただ、私が戦った2015年に、自国開催したイングランドが予選敗退という結果もありますし、なんといっても、フランスとニュージーランドは因縁の対決ということで。実は小さい頃にフランスがニュージーランドを破った試合を見ていまして、『ニュージーランドって負けるんだ』と衝撃を受けたことを覚えています」
――初めてラグビー観戦する人は、どこを見ると楽しめますか?
「ラグビーを一言で表現すると、“多様性”という言葉に尽きると思っています。人種的な多様性もそうですが、選手の体形も多様です。流(大)選手や齋藤(直人)選手のように比較的小さい選手もいれば、非常に大きい姫野(和樹)キャプテンみたいな人もいるわけで、そういう人たちがそれぞれチームのために自分の役割を果たして初めて成果が出るというのは、この社会の縮図になっているんじゃないかなと思います。ルールがなかなか難しくて分からないよ、という方も多いでしょうが、そういう“多様性”という観点で見ていただくと面白いんじゃないでしょうか」
――4年前に見て、また久々にラグビーを見る方も多いと思いますが、日本代表がこの4年間でどのように変化や進化をしたのでしょうか?
「難しい質問ですね。2015年から2019年にはもう明らかに変わった部分がありまして、何かと言いますと、制限されるプレーがなくなったことです。われわれが2015年に戦っていた時は、タックルを受けながら味方にボールをつなぐオフロードパスは禁止されていたんですが、2019年にはすべて解禁されました。そこから何が成長したのかというと、世界と普通に戦える肉体や精神状態のメンバーがそろってきた印象はあります。ハイパフォーマンスユニオン(旧ティア1)と言われるエリアに日本も入って。2019年ないし、2015年の時と勝敗で比べると、今回のメンバーは圧倒的に負け越しているんですが、戦っている相手が全然違うんですよ。主要な国々と日常的に試合ができているのは、日本ラグビー界にとって非常にプラスです」
――W杯初出場の選手が多い今回のメンバーを見た感想をお願いします。
「ラグビー界では非常に大きくルールが変わり、レッドカードが多発するようになったんですね。これは頭部への打撃ということで、たまたまタックルで当たってもレッドカードが出て、最低でも3試合出場停止。そうとなると、開幕戦でレッドカードをくらったら予選に出られないんです。そういったリスク管理を持って、監督はメンバーを選考しなくちゃいけない。そうすると、私のようにフルバックしかしたことのない人間が使えなくなってくるんです。専門のことしかできない人ではなく、いろんなポジションができる選手たちをしっかりと選ばなくちゃいけない。これまでは、基本的に試合に出ていたり、結果を残しているメンバーが主として選ばれていましたが、今回のメンバー見ると、主要なメンバーが抜けた場合など、いろんなシミュレーションした上で選考されたと。そういうリスク管理を取った上でメンバー選考をしているので、テストマッチで出場しなかった選手たちも選ばれているのかなと思います」
――日本代表が世界に勝つために何が大事だと思われますか?
「まず、国内のレベルを上げることが一番の課題だと思っています。私が戦っていた時は、国内試合は3月に終わっていて、W杯まで約半年あったんですが、今は5月まで国内試合をしているので、W杯まで3カ月しかないんです。準備期間が足りないことを考えると、国内リーグが世界レベルであれば、調整するだけで済む話だと思うんです。ただ、今のインターナショナルと国内のレベルは明らかに差があるので、かなりハードなトレーニングを積んでいかないと、世界基準まで上がらないという課題があります。だから、日本国内のレベルをまず上げていくことが、日本代表がこれから本当に強くなっていく鍵となっていくでしょう。今回、33人選ばれましたが、50人ぐらいは世界で戦えて、そこからメンバーを組めるくらいにならないと、優勝は見えてこないのかなと」
――その上で、ベスト8の壁を超えるために何が必要でしょうか?
「シンプルに勝つことです。まずはイングランド。選手たちは、まずはチリ戦だという話をずっとされていますが、イングランド、アルゼンチンに勝っていくということがいかに大事か。そして、レッドカードを出さないことですね。今、33人が選ばれていますが、他国と比べてもまだまだ層が薄い代表だと感じています。もしレッドカードを出されたら、出場できなくなってかなり崩れてしまうので、レッドカードを出さないこと。これは日本だけではないんですが、この大会の大きなキーワードになってきます」
――日本代表で五郎丸さんが一番注目されている、キープレーヤーになるであろう選手はどなたでしょうか。
「バックスですね。8月27日に行われたイタリアとのテストマッチからどれくらい戻せたかというところが、この大会のキーを握ると思っています。ディフェンスを取り戻すために、重要な選手は中村(亮土)選手と松島(幸太朗)選手です。彼らがしっかりとリードすることで、かなりいいディフェンスをしてくれるんじゃないかと。イタリア戦は内容的にはあまり良くなかったですが、フォワードは基本良かったし、数値的に見てもそんなに悪くない。ただ、バックスのディフェンスでかなり負荷がかかっている部分があるので、そこが安定するとディフェンスはかなり安定してくるんじゃないかなと思います」
――日本チームの強みは、どういうところなのでしょう?
「組織のために自分を犠牲にできるのは他国もしているんでしょうが、日本はちょっとレベルが違いますね。日本代表を背負ってワールドカップを迎えた時の“一つになる力”というのは私もすごく感じましたが、やはりこの33人の代表メンバーが選ばれると、ぐっと一つになる。このメンバーで戦うんだって決まった瞬間からの、一つになるこの1週間というのが非常に面白いですよね。一方で、選手たちはこの1週間というのは、この大会を通じて一番緊張する期間でもあります。いろんなものを背負って戦うということで、この1週間は非常に緊張した時間だと思いますが、それは選ばれたメンバーしか味わえないので、そういった緊張感もともに楽しんでほしいです」
――第1戦となるチリ戦で期待していることは?
「2019年、自国開催の開幕のロシア戦で、誰もが圧勝すると思っていたけれど、みんなが納得する形での勝ち方はできなかった。開幕戦のプレッシャーというのは、とてつもないものがあるんです。だから、おそらくロシア戦に近い形の試合展開になるんじゃないかと想像しています。チリがどこを目指して初勝利を取りに来るかと言ったら、間違いなく日本。他の試合のことは考えずに、日本だけに集中してくるチャレンジャーのチリと、歴史を残してきて、その後も考えなくてはいけない日本がぶつかった時に、すんなり勝てる相手ではないと。今は『100カメ』で例えると、パズルのピースはそろったから、後はどういうふうに組み立てていきましょうかというような形なので、期待していいんじゃないかと思っています」
――プール戦の日本の対戦順を見ると、2戦目がイングランド。イングランドが今のところ調子がなかなか上がっていないので、日本としてはすごくいい順番で大会を進めていけるのではないでしょうか。
「悪くはないと思います。あとは、チリ戦でフランスやヨーロッパのファンを味方に付けることですね。歴史的に見ても、イングランドが嫌いな人は結構多いので(笑)、そういった方々を味方につけることは非常に大事なことです」
――日本代表の技術として大事なのはどんなことでしょうか。
「技術的なところでいくと、とにかくフィールド上に15人が立ち続けることですね。でかい相手にどうやって勝つかというと、数で勝つしかないんです。あとは走行距離。相手が止まっている間にどれだけ早く走れるかという細かいところの仕事を、着実に一人一人がやれれば全く問題ないんじゃないかなと」
――ズバリ、プールDで戦う日本の勝敗予想と、五郎丸さんが考える今大会優勝候補を理由とともに教えてください!
「プールDの日本の勝敗は3勝1敗かなと感じています。アルゼンチンはちょっときついけど、イングランドには勝ってくれるんじゃないかなと。優勝候補は…南アフリカ。充実しすぎていて、レッドカードが全然出ないです。日本がやりたい早いブレイクダウンと低いプレー、あのでかい選手たちが低いプレーをしたら、もうやりようがないくらい出来上がっています。年齢的にも全チームを並べた時に、平均年齢が一番高いのは南アフリカなんですよ。この大会をピークにして、次の大会はきつくなってくるだろうなと。実は平均年齢が一番若いのはオーストラリア。これは次の大会がオーストラリアで行われるので、そこに照準を合わせて、われわれが知っているスーパープレーヤーを切って切り替えてきました。ちなみに、上から日本は5位。平均28.1歳だったかな?」
――チリ戦では、超ラグトークという副音声を利用した放送に、五郎丸さんと田村優さん、福岡堅樹さん、さらに岡田准一が登場されるそうですが、楽しみにしていることはありますか?
「岡田さんからは結構凝った質問来そうだなと(笑)。いろいろ準備してるんですけど、本当にライトな人たちが見ても楽しめるような形でやりたいですし、コアな方が聞いても面白くしなくちゃいけないと思っているので、あまり目線を落としすぎずに、逆に引き上げていくような放送になればいいなと思っている次第です。頑張ります!」
――最後に代表へエールをお願いします!
「早いもので、自国開催から4年たちました。今大会は、フランスで開催されます。前回大会で、日本はベスト8という偉業を達成しましたが、今大会でベスト8以上の結果を出してもらえることを、OBとして期待しております。日本国内が2019年度以上に盛り上がることを期待していますし、代表にはぜひ頑張ってほしいです」
――ありがとうございました!
【番組情報】
100カメ「ラグビー日本代表」
NHK総合
9月9日 午後8:15~8:50
ラグビーワールドカップ2023「日本×チリ」
NHK総合・NHK BS4K
9月10日 午後7:30~10:30
NHK担当/K・H
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