「18/40~ふたりなら夢も恋も~」に込めた真の思いとは――韓哲プロデューサーロングインタビュー2023/08/15
福原遥さん、深田恭子さんがダブル主演を務めるTBS系の火曜ドラマ「18/40~ふたりなら夢も恋も~」が絶賛放送中です。本作は、キュレーターになるという夢に向かって歩き始めた18歳の妊婦・仲川有栖(福原)と、アラフォーで恋を後回しにしてきたアートスペシャリスト・成瀬瞳子(深田)の2人の女性が年の差を超えたシスターフッド(=女性の絆)を築き、それぞれ訳あり男子と恋に落ちるラブストーリーです。
8月8日に放送された第5話では有栖がついに出産を迎え、SNSでも話題となりました。物語もいよいよ後半に向かう中、有栖の夢や瞳子の恋の行方がどのように進んでいくのか注目を集めています。ここではプロデューサーの韓哲さんに、物語の後半を楽しむための見どころや、さりげないこだわりなどをお伺いしました。
――本作を企画した背景を教えてください。
「実は最初『20/40』、20歳と40歳で考えていました。年の差のある2人の女性の物語を作りたいと考えていた時に、『18/40』が生まれるきっかけとなる二つの出来事がありました。一つ目は、ちょうど18歳が成人になるという民法改正。もう一つは『女性活躍』『少子化問題』などに関連した女性の生き方の変化をめぐる議論の高まりです。こうした社会の変化が、その中で生きる個人個人にとってより希望ある世界につながるのか、そういったことを考えるうちにドラマの骨格が決まり、主人公は18歳と40歳にしようと考えました。突然2年早く成人となったことで、大人か子どもかとても難しい年齢になった18歳は、法律上は大人だけれども都合よく子ども扱いされ、時には責任ある大人扱いをされ、まさに翻弄(ほんろう)されている年齢だと思います。その難しい年齢で生き方に葛藤し、諦めない女性の姿を描こうという経緯があります」
――そこで18歳の主人公が生まれたのですね。では、40歳の主人公や、この物語が生まれたきっかけを教えてください。
「40歳という年齢は私とも近いので、周りを見渡した時に瞳子に重なる女性が少なからずいました。ですので、瞳子と同じような悩みを持つ方も多いのではと考えました。私が仕事を始めた頃、ドラマの現場は圧倒的に男性が多かったです。それから20年以上たち、見渡してみると昔とは異なり女性がとても多いです。年齢が下がれば下がるほど男性よりも女性の方が多く、それはとても良いことだと思います。一方で、そうした変化に制度や環境が追いついているとは到底言えません。20年以上前と比較して、果たして個人が生きやすくなっていると言えるのだろうかと。ドラマには社会問題を解決するような大きな力はありませんが、物語の登場人物を通して、変化する社会の中で生きる個人の思いをリアリティーを持って描くことができます。見ていただくことで、当事者でなくても自分事として想像し、話せるきっかけを作れる。僭越(せんえつ)ですが、そんなことも考えながら瞳子と有栖の物語を組み立てていきました」
――「〜ふたりなら夢も恋も〜」という言葉をタイトルに持ってきた理由をお聞かせください。
「『18/40』というタイトルは2人の女性の年齢を表しているのですが、これだけだと伝わりづらいのではないかと社内で議論になりました。年の差のある2人が出会ったことで何が起こるのかをイメージしやすくするために、『〜ふたりなら夢も恋も〜』というサブタイトルを入れました」
――“恋”ではなく、先に“夢”を持ってきたのはなぜでしょうか。
「ラブストーリーがメインである火曜ドラマとしては、“恋も夢も”の方がセオリーなのですが、2人の関係性を考えると先に“夢”の方が良いとなりました。特に18歳の有栖は夢に向かって歩き始めたばかりのタイミングで物語がスタートし、彼女にとっては恋することよりも自分が夢をつかむことができるのかということの方が大きいので」
――18歳と40歳の女性2人の役を、福原さんと深田さんにお願いした理由を教えてください。
「福原さんはお芝居もそれ以外のお仕事でも、常に誠実な方だと思っていました。キャリアも長い方ですが、インタビューなどを見ても何事にも真摯(しんし)でピュアな方だなと。有栖はとても難しい役であると同時に強い信念の持ち主なので、福原さんの誠実さと真摯なところが重なりオファーさせていただきました。また、純粋さゆえに脆くもある18歳の危うさも、福原さんならば説得力を持って演じてもらえると思いました。世代を代表する俳優さんの1人になるのは間違いないと思いますし、このドラマでも素晴らしいお芝居をしてくださっています」
――深田さんはいかがでしょうか。
「瞳子の世代を代表する方なので、もしも引き受けていただけたらこれ以上のキャスティングはないと思い、お声がけさせていただきました。深田さん自身のこれまでのキャリアとも重なる部分のある役ですが、ともすればテレビドラマとしては重くなってしまうところを、深田さんに演じていただくことでいい意味で見やすくなると思ったのも理由の一つです」
――実際にその芝居をご覧になって感じたことはございますか。
「福原さんと仲川市郎役の安田顕さんとの芝居は圧巻です。本物の親子のようなリアルな芝居は現場で見ていても胸を打ちました。第5話の出産シーンは、彼女のこの役への強い覚悟を感じました。あそこまでやり切れる俳優はどれだけいるだろうかと。福原さんに有栖を演じてもらえてよかったと何度も現場で感じています。深田さんのお芝居はいつも場の雰囲気をプラスにしてくださいます。どんなにシリアスな内容でも、深田さん演じる瞳子の存在がドラマの世界を華やかに彩ってくれます。言うまでもないのですが、あらためて素晴らしい俳優だと日々感じています」
――現場の雰囲気はいかがでしたか。現場を盛り立てるムードメーカー的なキャストなども含め、エピソードをお聞かせください。
「ムードメーカーは、やっぱり福原さんと深田さんです。2人がいるだけで時の流れが優しくなります。最初の頃から、福原さんも深田さんもキャストやスタッフに自分から声をかけてくださっていました。セリフ量も多く大変な中で周りに気を配り、良い雰囲気を作ってくださる姿はすてきです。あとは、鈴鹿央士さんです。鈴鹿さんは写真がお好きで、クラシカルなポラロイドカメラを現場に持ち込みよく撮影の様子などを撮っていたら、なぜか福原さんやほかのキャストも影響されてカメラを購入していたという。なので現場では写真がはやっています」
――男性キャストの起用理由を教えてください。
「鈴鹿さんは以前一緒にお仕事をしたことがあり、現場での立ち居振る舞いも含めすてきな青年だという印象を持っていました。黒澤祐馬という役はダンスシーンなどもあって、いい意味でチャラいイメージの大学生です。これまでの鈴鹿さんのイメージとは真逆かもしれないのですが、だからこそ彼が祐馬を演じたらとても新鮮だなとも思ったのです。鈴鹿さんも『自分の中で新しい挑戦になりそうな役です』とおっしゃってくださってうれしかったです」
――上杉柊平さんはいかがですか。
「上杉さんはビジュアルも含めて、加瀬息吹のイメージ通りの方でした。音楽活動を通じた独自の表現力や魅力を持っている方だなという印象もありお願いしました。深田さんとは初共演なので新鮮なラブストーリーになり、視聴者の皆さまにも楽しんでもらえるのではと思います」
――八木勇征さんは、いかがでしょうか。
「何度かFANTASTICSのライブに行かせていただいた時、客席から見た八木さんがとても輝いていたのが起用の理由です。麻生康介という役は後半から重要になっていきます。康介は有栖にひどいことをしてしまうのですが、八木さんの輝く魅力があれば有栖が引かれたもともとの康介の魅力が伝わり、視聴者の皆さまにもこの先を期待していただけると思ってお願いをしました」
――上杉さんは恋愛関係にあたる役を演じるのが初めてとおっしゃっていたのですが、恋愛模様を演じる上で苦戦したり、相談されたりなどございましたか。
「最初にお会いした時に、上杉さん自身が『深田さん演じる瞳子の気持ちをしっかり加瀬に恋してもらうこと、それができるかどうかが自分の役割です』とおっしゃってくれたのです。ご自身が加瀬を演じることを50%として、残りの50%は瞳子さんと出会ったことで、どれだけ彼女に近づいていけるかということを重点に置いていて、そのアプローチが加瀬というキャラクターを崩さず、素直に瞳子へ思いを伝えるストレートな演技につながっていると思います」
――安田さん演じる有栖のお父さんがSNSを中心に注目されていますね。
「ご覧になった方々から『この役は安田さんしか思いつかない』という声もいただいておりますが、まさに私も同じ気持ちです。企画を作った時点から安田さんにお願いしたいと考えていましたし、脚本の龍居由佳里さんも安田さんを思い描いて書いてくださっていました。市郎は物語のキーパーソンで、安田さんに引き受けていただけるかが境目でした。お引き受けいただいた時は本当にうれしかったです。安田さんと市郎の年齢は同じですし、お嬢さんもいらして、そうしたご自身と重なる部分も含めて直球で演じていただけたら間違いなく最高で唯一無二の市郎になると思っていたので、皆さまからお芝居に感動したという声をいただけて本当にうれしいです」
――毎話、異なるキャラクターのモノローグで番組が始まるのがとても印象的で感情移入がしやすいですよね。そういったさりげないこだわりなど、意識して視聴するとより作品を楽しめるというポイントはございますか。
「さまざまな登場人物の回想シーンから入るという形を取り、各回想シーンで伝えたいことが入っています。例えば、第4話では西武ライオンズで活躍する加瀬が出てきて驚いた方もいるかと思います。今後もそういった形が続いていくので、回想シーンを見る際にはその話のテーマとリンクとしているところに注目してもらえたらより楽しんでいただけると思います」
――アートについても注目してほしいところがあるそうですね。
「アートについてはこだわっています。劇中でさりげなく飾られているような絵画をはじめ、すべてのアートを監修をしているThe Chain Museumの皆さまが、その場にふさわしい作品を選んでくださっています。アート好きな方はもちろん、そうでなくても少しでも気になった方が、登場したアート作品に関心を持っていただけたらうれしいです。番組の公式サイトやThe Chain MuseumさんのSNSなどで本作に登場したアート作品について解説していますので、アート作品にも注目してご覧いただけると、さらにお楽しみいただけるかと思います」
――劇伴を担当されたのが大河ドラマなど数々の名ドラマを手掛けた吉俣良さんですが、本作で吉俣さんの音を入れようと思った狙いやこだわりをお聞かせください。
「これは内川祐紀プロデューサーが提案してくれましたので、彼にお答えいただきましょう。(内川)NHK大河ドラマ『篤姫』と『江〜姫たちの戦国〜』という、どちらも女性が主人公である作品の劇伴を手掛けられていたというのが大きな理由で、女性主人公ならではの繊細な楽曲が本作に合うのではと直感的に思いました。もう1点の理由として、吉俣さんは『ニュー・シネマ・パラダイス』という映画のサウンドトラックを手掛けている作曲家のエンニオ・モリコーネさんを敬愛されています。この作品は映写室で働くおじいさんと子どもを描いており、年の差を超えた絆の映画です。“年齢を超えた絆”というところで本作と吉俣さんがリンクしたため、韓さんや監督をはじめ、製作陣の皆さんに提案したところ決定に至りました」
――演じる上でキャストにお願いしたことや注文したことなどがあれば教えてください。
「こちらからお願いしたわけではないのに、自主的に日焼けをしてきてくださった髙嶋政宏さんですかね(笑)」
――そこは視聴者が気になっているところだと思います。強めに日焼けされていますよね。全国の社長をイメージされたのかなと思っていました(笑)。
「髙嶋さん演じる社長のキャラ設定をお話したところ、似たような境遇で成功されたお知り合いの社長さんたちとお会いになり、話を聞いたそうです。髙嶋さんいわく、お会いした社長さんたちの共通項はゴルフ、サーフィン、クルージングとおっしゃっていて、共通項が日焼けだという結論に至ったとのことでした。クランクインの日に真っ黒に日焼けをされていたのでびっくりしましたし、奥様のシルビア・グラブさんも驚いていました(笑)。髙嶋さんのお芝居のアプローチは面白く、さりげなくアクセントを入れてくださいます。物語が平坦な流れにならないよう、髙嶋さんがアクセントを入れてくださったことは大変ありがたいなと思いました」
――先ほどもお話にありましたが、仲川親子の空気感が絶妙ですよね。特に第3話の妊娠を打ち明けるシーンで引き込まれてしまったのですが、そのシーンに関して印象的なエピソードはございますか。
「脚本を手掛けている龍居さんは、市郎に『子どもをおろせ』というセリフを言わせたくなかったのですが、私はあえて入れてくださいとお願いし、そこは最後まで話し合いをしました。本心ではそんなこと思っていなくても、娘を愛するあまりいきすぎた言葉を言ってしまうこともあるのではないかと。視聴者の皆さまがどんな気持ちになるかなど特に慎重に考えた場面でしたが、安田さんと福原さんのお芝居に助けていただいたと思います」
――その重要なシーンを撮影されてみていかがでしたか。
「福原さんと安田さんはそのシーンに懸ける思いがとても強く、長い時間をかけて話し合いながら撮影しました。俳優さんは撮り方について発言することはあまりないのですが、どうやったら福原さんが全力で演じ切れるかというようなことを安田さんが自ら発言されていたことが印象に残っています」
――オンエアされてからの反響で印象に残っていることや感じたことを教えてください。
「『感動した!』という意見から、『ここはどうなのかな?』ということまで賛同も批判もいただいて、ドラマを見て感じた自分の考えを伝えてくださるのはとてもありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。18歳で妊娠してシングルマザーとなり夢に向かって頑張るというのは、本人がどれだけ努力をしても無理が起こるだろうし、間違うこともあると思います。自分で考えても、18歳の時は今と比べると分かっていないことばかりで、有栖のような独立した考えも行動もできないダメダメな18歳でした(笑)。当時の大人は間違いを犯しても“18歳なんてこんなもの”と寛容に見てくれていたようにも思います。そう考えると、今の18歳は都合よく大人扱いされたり子ども扱いされたりして、われわれ世代に比べて生きにくいのではないかとも感じます」
――エンタメとしてドラマを作る際、社会が抱えている課題や問題を描く時に気を付けられていることはございますか。
「作品によっても違いがあり、これが答えですというのはないのですが、まずは皆さんからいただいた貴重な時間をこのドラマを見ることで楽しんでもらいたいです。その上で、本作に限って言うならば、女性も男性もあらゆる性の方も、18歳も40歳も何歳であっても、葛藤や悩みを抱える人たちに対して寛容で、その人の人生の選択を後押しできるような世の中になってほしい。そんな願いをドラマに込めています。ドラマが社会が抱える課題を解決することはできないと思いますが、誰かの背中を支えたり後押しできる存在になれたらと常に思って制作しています」
――これから注目してほしい新たなキャラクターは出てきますか。
「第5話までは有栖と瞳子のシスターフッドを中心に描いてきましたが、後半はラブストーリーにドライブがかかり始めます。康介が帰ってくることも重要ですが、瞳子と同じ名前の榊原透子(北香那)というキャラクターが登場し、物語を動かすキーパーソンになりますので、ぜひご注目ください」
――後半に向けての見どころをお願いします。
「第5話で出産をするのは展開が早いなと思われた視聴者もいらっしゃったと思います。龍居さんは有栖の子どもが生まれた後をしっかり描きたいとおっしゃっていました。ですから、後半は子どもが生まれてからの物語になっています。出産をめぐるお話は生まれた後の方がいろいろなことが起きると思うので、第6話以降の物語にも注目していただきたいです。さらに、火曜ドラマの見どころであるラブストーリーの部分も進展していきます。有栖と祐馬、瞳子と加瀬、康介や光峯綾香(嵐莉菜)、さらには新キャラクターの透子が登場し物語が動いていきますのでご期待ください。家族愛や友情など、各キャラクターがどんなラストを迎えるのかをぜひ見届けてほしいです」
――最後に、本作に込めた思いなど視聴者の皆さまに向けてメッセージをお願いします。
「有栖と瞳子の姿に“困難の中でも夢を諦めない尊さと、その人を応援し支える存在のかけがえのなさ”を感じていただけるよう、キャスト・スタッフ全員で力を合せてドラマを作っています。最後までドラマを楽しんでいただけたら、そしてドラマを見た後に“出産・育児・キャリア”などライフステージでの選択や悩みについてどなたかと会話が生まれたり、話しやすくなったら作り手としてこんなにうれしいことはありません」
――ありがとうございました。“このドラマを通してみんなが幸せに”という韓プロデューサーの思いが伝わりました。後半の物語がどう進んでいくのか楽しみです!
【プロフィール】
韓哲(はん ちょる)
「桜蘭高校ホスト部」で映画初監督を務める。主なプロデュース・演出作品として「ATARU」「S-最後の警官-」「アルジャーノンに花束を」「家族ノカタチ」「コウノドリ」「ハロー張りネズミ」「チア☆ダン」などがある。
【番組情報】
火曜ドラマ「18/40~ふたりなら夢も恋も~」
TBS系
火曜 午後10:00~午後10:57
※地上波放送後、TVer、TBS FREEにて1週間無料見逃し配信!
※U-NEXTにて最新話まで全話配信!
TBS/MBS担当 S・Y
この記事をシェアする