細田佳央太「築山殿・信康事件がなければ、信康はどんな生涯を送ったのかなと考えてしまう」――「どうする家康」インタビュー2023/07/02
大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)で、徳川家康(松本潤)とその正室の瀬名(有村架純)の息子・松平信康を演じている細田佳央太さん。
第25回(7月2日放送)では、武田勝頼(眞栄田郷敦)によって暴かれた、瀬名と信康の“はかりごと”が織田信長(岡田准一)に知られてしまいます。2人の始末をつけなければ織田勢との戦は免れない家康は、信長の目をあざむいて身代わりを処刑し、妻子を逃がそうと決意しましたが、岡崎城を出た信康は、逃げ延びることを良しとせずに切腹。瀬名は、身代わりの女を逃がし、首を切って自害します。正室と嫡男をいっぺんに失い泣き崩れる家康の姿や、自分の命と引き換えに徳川を守った瀬名と信康の勇姿に涙を流した人も多いのではないでしょうか。
ここでは、信康を演じた細田さんへのインタビュー後編をお届け! 前編(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2266247/)では、信康の人物像や共演者の方々とのエピソードをお聞きしましたが、後編では死と向き合う難しい役を演じた感想や印象に残っているシーン、戦国時代について考えていたことなどを伺いました!
――前編のインタビューでは「徳川家の仲の良さが今後に向けての見どころになってくる」とおっしゃっていましたが、瀬名と信康の“はかりごと”は平和な世をつくるためのものだったとはいえ、武田と通じていたことには変わりはなく、家康は大切な家族と徳川のどちらを守るかの判断を迫られる…と、本当に涙を誘う展開になっていましたね。
「そうですね。瀬名さんと信康に関してすてきに描かれているのは、時代劇の中では今回が初めてかもしれないですね」
――信康の最期について「役で死ぬことが怖かった」とおっしゃっていましたが、どう乗り越えられたのでしょうか?
「気付いたら吹っ切れていたというのが一番正しいですが、監督方が寄り添ってくれたことは大きかったですね。役作りは監督方とディスカッションしてできるものではありますが、役者が1人で向き合わなければならない孤独な時間もあるんです。そういう時に、“自分1人でやらなきゃいけない”と思い込んでいたのですが、監督をはじめ皆さんが『何かできることがあれば力になります』『分からないことがあったら聞いてください』と言葉をかけてくださったので、だいぶ楽になりましたね。当たり前ですが、1人じゃないということをあらためて実感できたので、乗り越えることができました」
――信康が死んでほしくないという気持ちは、最後まであったんですね。
「撮影が終わっても思いますよ。家族や五徳さん(久保史緒里)と、もっと長く時間を過ごせたらよかったのにと思います」
――信康を演じ切った時の気持ちも聞かせてください!
「無事に終わってよかったですが、僕自身がまだ達成感を感じることができていないんです…。達成感を味わえるのは、完成した第25回を見てからですかね」
――特に印象に残っているシーンはありますか?
「信康の切腹と、五徳さんとの別れのシーンはすごく印象に残っていますね。ただ、それ以上に、父・家康さんと母・瀬名さんの別れのシーンは、撮影に参加していないですが気になっています」
――信康は徳川を守るために死ぬことを決断しますが、撮影に臨んだ際に感じたことはありますか?
「僕自身はリハーサルから覚悟ができていました。演出の村橋(直樹)さんも寄り添ってくださっていたので、焦りはなく、落ち着いていました。お芝居に関しては、何回もやるようなシーンではないので、おなかを切った時の仕掛けをどうしようかと相談したぐらいです。あとは村橋さんとの決め事として、その場にいた家臣の大久保忠世さん(小手伸也)、七之助さん(平岩親吉/岡部大)、服部半蔵さん(山田孝之)に、信康がそれぞれに言葉をかけると約束していました。本番で初めてちゃんとお芝居をしたんですけど、異様に空気が熱かったのを覚えています。皆さんが本当にすごい熱量だったからじゃないかなと思うんですけど、演じている最中も、終わってからも、すごく汗をかきましたね。そのぐらい熱が高まったシーンでした」
――事前に周りの方とコミュニケーションを取ることはせず、本番に集中していたんですね。
「そうですね。誰もしゃべっていなかったと思います」
――五徳との別れのシーンはいかがでしたか? 信康と五徳の関係について、久保さんと現場で「ドラマで描かれているくらい史実でも仲が良いといいね」と話をしたとおっしゃっていましたが。
「信康が岡崎城を出る時に、五徳さんが『これからもずっと、どこに行こうと、私は岡崎殿と呼ばれとうございます。お許しくださいますか?』と言って、2人がほほ笑み合うシーンがあるんです。このセリフが信康にすごく刺さるので、僕が一番好きなシーンです。このシーンを撮り終えてから、ますます『信康と五徳さんの関係性が良いものだったらいいな』という思いが強くなりました。史料では、五徳さんと信康はあまり仲が良くなかった、けんかばっかりだったと書かれています。今回のドラマでも、もちろんそういったシーンはあるんですけど、明らかに仲が悪いようには書かれていなかったですし、五徳さんの方が数段しっかりしているんですよね。戦国時代という、激しく目まぐるしい時代の中で生き抜くためにはどうあるべきかを、五徳さんの方がしっかり捉えていたというか、信康は五徳さんに引っ張ってもらっていたんじゃないかと想像していました。お芝居の面でも、僕が久保さんに助けていただいた部分が多いので、いがみ合うような関係でもなく、気持ちいい距離感の中で最後まで撮影できました」
――信康が亡くなったのは21歳で、細田さんと同じ年齢ですよね。現代の青年である細田さんからご覧になって、信康の生涯はどんなふうに映りますか。
「今作での信康の生涯だと、やっぱり戦国時代に生まれてほしくなかったなという思いはあります。今の時代だったら、普通の男の子としての暮らしができて、何にも流されることなく生き抜くことができたのかもしれないのに…。強さを強要され、強くないと生きられない時代に生まれて、それにのみ込まれていく信康を最初から最後まで見ていたので、いまだにつらさは感じます」
――もっと平和な時代だったらという思いがあるんですね。
「戦国時代じゃなかったら、もし築山殿・信康事件がなかったら、一体どんな生涯を送ったのかなって考えてしまいます。あまりにも早過ぎる年齢で亡くなったので、もし何かが違って、もうちょっと長く生きていられたらどれほど良かったかと、瀬名さんも含めて思います」
――戦国の世の中に生きる人について、どんなことを考えて演じていましたか?
「やっぱり今と比べものにならないぐらい、男性、女性、年齢関係なく強い人たちしかいないんだなと感じました。信康は若くして城主になったので肝が据わっているというか、今とは全然違いますよね。昔の人って、“死”との距離感が近い気がするんです。責任を取る手段として、“死”は今の時代にはないものですよね。命を懸けることが当たり前だったからこその強さは、やっぱりすごいなと感じました」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
細田 佳央太(ほそだ かなた)
2001年12月12日生まれ。東京都出身。4歳から活動を始める。19年、1000人越えの応募者の中から抜てきされ、映画「町田くんの世界」にて主演。同作で、おおさかシネマフェスティバル2020 新人男優賞、第29回 日本映画批評家大賞新人男優賞(南俊子賞)を受賞。ドラマ「ドラゴン桜」(21年/TBS系)などドラマや映画で活躍中。8月には初の有観客舞台「メルセデス・アイス MERCEDES ICE」が控えている。
【番組情報】
大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/Kizuka
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