信長の娘・五徳を演じた久保史緒里。家康役の松本潤からの言葉に手応え「お芝居を褒めていただいたことが大きな自信になりました」2023/06/25
第24回(6月25日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)では、瀬名(有村架純)と松平信康(細田佳央太)が各地に密書を送っていることを知った徳川家康(松本潤)が五徳(久保史緒里)らと共に築山に踏み込むと、瀬名たちは壮大な“はかりごと”を告白し始めました。瀬名の話を聞き、新しい国の在り方に希望を見いだした家康は、武田軍との密約に動きますが、武田四郎勝頼(眞栄田郷敦)の裏切りにより、世に知れ渡ってしまいました…。
今回は、五徳を演じる久保史緒里さんに、初めての大河ドラマ出演への思いや五徳の人物像、家康を演じる松本さんや夫・信康役の細田さんらとの撮影エピソードを伺いました!
――まずは、五徳役が決まった時の感想からお願いします。
「今まで大河ドラマに出演した経験がなかったので、正直自分に決まると思っていなくて。NHKのプロデューサーさんの前で何度かお芝居をした時も選ばれると思っていなかったから、リラックスして台本から読み取れる五徳の人物像を思い切り表現できました。その後、本当に決まったという連絡をいただいた時は、正直すごく震えました。史実で五徳がどんな影響をもたらす人物かも勉強していたので、震えて緊張した半面、脚本の古沢(良太)さんが五徳や築山殿事件をどのように描くんだろうという楽しみもありました」
――大河ドラマにはどんな思いを抱いていましたか?
「私の名前の史緒里に歴史の“史”が使われているのですが、父親が歴史好きなんです。私自身も歴史がすごく好きで、地元である東北の歴史的な場所にも連れて行ってもらっていました。いつか両親に恩返ししたいと思っていたタイミングで大河ドラマが決まったので、それを伝えたら家族がとても喜んでくれました。山形に住んでいる祖母は毎週、私が映る姿を見ながら泣いているそうです」
――タイトルバックでご自身のクレジットを見た瞬間の気持ちはいかがでしたか?
「実感がより湧いた瞬間でもありました。自分の名前がこの作品に刻まれている瞬間を目の当たりにして、あらためて緊張もしました。それと同時に浮かんだのは、家族が見てくれているのかなということでした」
――どんなシチュエーションで見ていたのですか?
「放送が始まる5分くらい前からテレビの前で1人で正座をして見ていました。オープニング音楽も好きで、自分が出ていない時も、『いつかここに自分の名前が載る日が来るのか』という気持ちで見ていたので、『いつ来るんだろう』とちょっと怖くありつつも緊張しながら待っていたのですが、見た時にはやはりうれしかったです」
――乃木坂46のメンバーからはどんな言葉をかけられましたか?
「初登場の時は『あのシーン見たよ』と言ってくれたり、5期生の中には第1回からこのドラマを見ているメンバーもいるみたいで、毎週すごく楽しみにしてくれているようです。同期の向井葉月ちゃんは、いつもメンバーの出演作を見ているんですけど、会うたびに『いつ出るの?』と楽しみにしてくれていて、初登場後も『すごく格好よかったよ』と感想を言ってもらいました。ほかにも、齋藤飛鳥さんの卒業コンサートで会場にいらしていた先輩の生駒里奈さんに会った時に、『大河すごいよね』と声をかけていただけたんです」
――撮影ではどんなことに驚きましたか?
「随所で感じた細部へのこだわりです。特に着物。五徳の着物は徳川家の皆さんとちょっと違うんですよ。掛け(打ち掛け)もちょっと生地のいい豪勢なものを着ていて、視覚的に織田家から来た人物だと分かるんです。さらに、五徳が織田家のプライドを捨てきれていないことを衣装で表現しているところにもすごく驚きました。実際に映像で自分を見ても違うので、感動したのを覚えています」
――これを機会に着物に興味が出てきましたか?
「そうですね。以前、舞台で着物を着た経験があったので着付けは自分でできるのですが、今回は自分の浴衣を着てリハーサルをしていて、皆さんをお待たせしてはいけないので急いで着替えるのが身に付いたし、奇麗に着付けができるようになったので、もっともっと学びたいと思いました」
――初登場は第17回(5月7日放送)の「三方ヶ原合戦」からでした。プレッシャーも大きかったと思いますが、OAを迎えられるまでどんな気持ちでしたか?
「時間が来るまですごくドキドキしながら待っていました。少女だった五徳が大人になり年齢を重ねるということは、築山殿事件に向かう前触れで、ついに近づいてきたと感じる場面でもあったので緊張しました」
――五徳という人物をどのように捉えて演じましたか?
「自分が勉強した史料では、築山殿や信康さまと五徳の関係があまり良くなかったのですが、演出陣から、『五徳はきっと優しい方だったと思うんです』と言われて戸惑いました。最初はそれを自分の中で飲み込むのにすごく時間がかかって、五徳の優しさの形が定まらないまま現場に入ってしまったんです。でも、現場に入って、徳川家の皆さんと会話を交わしていく中で、五徳の優しさが分かってきた気がして。五徳は信長(岡田准一)の娘としてのプライドがあるので表立った優しさは見えませんが、常に優しい気持ちは持っておくように意識していました」
――表面的な部分だけを見ると勝気で怖い印象を受ける五徳を演じることについては、いかがですか?
「五徳が関わる築山殿事件は重大で知っている方も多いので、果たして五徳が元凶なのか、どう関わっていくのかを毎週皆さんはドキドキしながら見てくださっていると思うんです。そういう意味では、事件が起こる瞬間まで五徳が何をして、どう動くのか、どの選択をするのかが見えない方が面白いと思っています。織田家の血が強く、お市さま(北川景子)みたいな織田家としてのプライドや威厳、気の強さが見えているけど、ここからどう徳川家になじんでいくのかが五徳として大事な部分になってきますし、それをどう受け取ってもらえるかなと。悪女として見られることに対しても、五徳としての威厳を感じていただけているのであれば、すごく光栄なことです」
――五徳もそうですが、この作品には強くて格好いい女性がたくさん登場します。時代は違いますが、同じ女性として共感できる部分はありますか?
「自分の中には家族が大きいテーマとして色濃く残っているんです。各地にある大河ドラマ館でパネルを見た時も、五徳は徳川家の中にいるけれども、色で分けると1人だけ織田家の色で。そして、自分だけずっと五徳さまと呼ばれていて、着物も徳川家の皆さんと違うというささいなことですが、自分は徳川の家族になりきれていないんじゃないかという思いがあり、常に疎外感を感じていたんです。この時代を生きる女性はすごく強いけれども、もしかしたら五徳も孤独や寂しさを感じていたんじゃないかと思って。だからこそ、誰よりも五徳に寄り添いたいと考えて演じていました」
――では、難しかったのはどんなことでしょう?
「徳川家の中に織田方の人間が1人いるので、徳川家の皆さんと少し空気の違う異質な感じを出せたらと考えていました。そして、見てくださる方にとって、五徳が何を考えているか分からないように見えたらいいなと思っていたのですが、それを出すことはすごく難しい作業でもありました」
――第22回(6月11日放送)で五徳が父・信長から徳川家を見張れと命令されるシーンがありました。信長役の岡田さんは怖かったですか?
「普段はものすごく優しい方で、あのシーンのリハーサルの時も『ごめんね。嫌だったら言ってね』と優しく言ってくださいましたが、現場に入ると威厳があって、かなわない存在だと感じました。顔をガッとつかまれるシーンは、羽柴秀吉役のムロツヨシさんから、『(十分怖いから)多分リアクションの準備をしていなくても大丈夫だよ』と言っていただきました(笑)」
――ムロさんが言われたように、素で怖がれましたか?
「怖がれました(笑)。五徳として気持ちがかなり徳川方に寄っていた時に徳川家を見張れと言われたので、『はい』と言わざるを得ない状況で。あそこは信長と五徳が一番関わる、織田家の家族の形を表す大事なシーンであり、その後のすべてにつながるシーンでもありましたが、岡田さんにそれを引き出していただけました」
――第24回では家康に築山に同行したいと懇願し、「信康さまをお慕い申し上げております」と訴えるシーンがありましたが、どんなふうに撮影に臨み、撮り終えた時にはどんな気持ちになったのでしょうか?
「徳川家に来た時の五徳は、信長の娘というプライドを強く持っていましたが、徳川家の皆さんと時間を共にしていくうちに、信康さまの妻であるというプライドも同じぐらい強くなっていったと思っていて。徳川家を見張れと信長に言われた時は、気持ちが織田方にありながらも、二つの家の間で大きく揺らいでいたと想像します。徳川家の皆さんを客観的に見ていた五徳ですが、徳川家で過ごすうちに、その家族の形や在り方に憧れを抱いてしまったんじゃないかと。そんな中、身ごもって、自分にも家族ができると分かった時に、いろんなプライドはあれど、徳川の家族を守りたい気持ちがあの時に強くなって決意が固まったのかなと思いました。撮り終えた時、五徳は家族にこだわりを持っていて、実はすごく寂しかったのかもしれないとあらためて気付きました」
――家康に向かって言うシーンでしたが、松本さんとのやりとりはありましたか?
「そのシーンでは松本さんと直接的なやりとりはなかったんですが、初めて現場でお会いしてあいさつをした後、『声もお芝居のトーンもすてきですね』とお芝居を褒めてくださって、すごくうれしかったのを覚えています。幼少期の五徳は強気な子だったので、視聴者の方も『五徳、大人になったな』と雰囲気の違いに驚かれた方もいると思うんです。でも、きっとその数年間で五徳は信康の正室としての教養を与えてもらって成長したと思って演じていたので、お芝居を褒めていただいたことが大きな自信になりました」
――松本さんは劇中以外でも演者の皆さんから慕われている印象ですが、久保さんから見ていかがでしたか?
「演者やスタッフなど、誰にでも分け隔てなく声をかけてくださる方です。現場で写真を撮るのがはやっていて、有村さんと私が現場でお話しているところを殿(松本)が遠くから撮ってくださったことがうれしかったです。初めての大河ドラマに緊張して、自分から話しかけに行くことはできませんでしたが、そんな中でも写真を通してコミュニケーションをとってくださったので、すごく救われていました」
――久保さんの自称・人見知りは、発動しなかったんですね。
「そうですね(笑)。なかでも一番うれしかったのは、殿が家族写真を撮ろうと言ってくださったことです。その時はお芝居とは関係ない場所ではありましたが、瀬名さん、信康さま、亀姫(當真あみ)がいて、五徳として徳川の家族に入っていいのかなとためらっていたら、真ん中に入れてくださったんです。あらためて『徳川家の皆さんのことが大好きだな』と。泣きそうなくらいうれしかったです」
――徳川家が好きとのことですが、夫・信康を演じた細田さんの印象もお願いします!
「ものすごく心優しい人物である信康さまを細田さんが演じられるからこそ、さらに優しさを感じました。第20話(5月28日放送)で謀反をたくらんだ大岡弥四郎(毎熊克哉)に対して、五徳が『あの者たちをしかと処罰なさいませ。この上なくむごいやり方でな』と言ったのは、信長を侮辱されたことに対して怒っていたからですが、心優しい信康さまを思うと、すごく酷なセリフだったんじゃないかと思っちゃって。もしかしたら、“松嶋(菜々子)さんが演じる於大の方が『妻や子を平気で打ち捨てなされ』と家康さまに言ったセリフと少し重なる部分があるのかもしれないね”と細田さんと話して、五徳の言葉は信康さまにとって実はつらいことだったのではないかと感じました」
――五徳と信康はよくけんかをしていましたが、第24回では慕うまでになっています。彼女の気持ちはどのように変わっていったのでしょう?
「政略結婚でぶつかり合うこともありましたが、自分にないものを持っていることへの憧れや、妹や母、家族を思って行動を起こす部分にひかれて、尊敬する気持ちがどんどん湧いてきたと思うんです。客観的に見ていた五徳だからこそ、信康さまの決意や誰かのために行動する部分に、実はすごく影響を受けていたのではないでしょうか」
――築山で瀬名の“はかりごと”を聞いた時、五徳はどのような心持ちだったと思われますか?
「五徳は同じ時代を生きる女性としての強さや、瀬名さんの覚悟にすごく感化されていましたが、あの時も父の存在があったんですよね。だから、『されど、わが父が許さぬでしょう』と一度口を挟むんです。だけど通説とは違って、あの瞬間には徳川方に気持ちがグッと寄っていた。だから、瀬名さんの話を聞いた上で『信康さまについていきます』という言葉がスッと出てきたんです。あのシーンは、織田家の人間だから超えられないし変えられないと、心にずっとふたをしていた五徳の心のふたが外れた瞬間だったと思います」
――その瞬間には信長に伝える気持ちがなかったと。
「あの瞬間にはなかったと思います。元々、第23回(6月18日放送)で『われらも気を付けなければなりませぬな。疑われるようなことがないように』と瀬名さんに言う時も、『お願いだから、これ以上怪しい行動をしないでほしい』という気持ちがあって。五徳は何度か警告をしたけれど瀬名さんが行動を起こしたから、同じ徳川家の家族として受け入れようと覚悟をしたんです」
――そんな瀬名を演じる有村さんとの共演エピソードを教えてください。
「現場に入る前から五徳と瀬名さんの関係をある程度知っていたので、お話できるのかという不安がありましたが、リハーサル初日に声をかけていただいて、『初めてで急にリハーサルが始まって緊張するよね。私も最初すごく緊張したんだ』とお話をしていただいて、ほぐれました。同じシーンの時はいつも声をかけてくださって、長時間で緊迫したシーンが続いて集中力が切れてしまうと、重たい緊迫した空気を1回リフレッシュするためにスタジオの外に連れ出してくださるなど、お気遣いをいただいたことがとてもうれしかったし、支えでした」
――瀬名と五徳はピリピリした場面が多かったですが、その中でも印象に残っているのはどのシーンですか?
「演出陣や現場の皆さんで、描かれてはいないけれども『五徳が徳川方に気持ちが動いた瞬間はいつなんだろう』という会話をよくしていたんです。それで、有村さんを含め皆さんと意見が一致したのが、瀬名さんから『そなたも三河のおなごであろう』と言われた時なんじゃないかと。幼さやプライドで『織田信長の娘じゃ、無礼者』と言っていたけれども、『三河のおなごであろう』と言われたことが五徳の中でフックになっていた気がして。あれが徳川家に嫁いだ女性としての意志が芽生えた瞬間だったんじゃないかと思うので、あのシーンはすごく大事で思い出深いシーンです」
――皆さんでそういうお話をされるのですね。
「私が初めての大河ということもあって、脚本で描かれない部分もすごく繊細に話し合いながら作り上げてくださって。『もしかしたらこうなんじゃない?』と話し合いながら演じました」
――乃木坂46として活躍しながら、ドラマや舞台などで女優の仕事もされています。女優業に対する思いは、大河ドラマに出演したことでどのように変化しましたか?
「グループに入っていろんな経験させていただく中で女優業にも興味を持って、いろんなことに挑戦したいと思っている中、この大河に挑戦させていただきました。現場で皆さんとお芝居する中で、自分の中で考えても出なかった答えや役として出なかった答えをいただき、今までにない感情が芽生える瞬間が何度もあって、この感覚を味わえることはすごく貴重なことだと感じました。これからもそういう瞬間を重ねていける人になりたいですし、大河に出演したことで『乃木坂の子なんだ』と知ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません」
――女優として芽生えた夢はありますか?
「この大河ドラマでご一緒させていただいた皆さんにすごく救われて支えていただいてきたので、皆さんとまたどこかの現場でご一緒することが今の夢です」
――初挑戦の大河ドラマで新たに学べたこと、今後に生かしたいことを教えてください。
「実在した人物は史実が残っているけれど、実際はどうだったのかは誰も知らないですよね。私自身も五徳はどうしてこの行動に出てしまったんだろうとか、本当にその事件の引き金になっていたのかなど、視聴者の皆さんと同じくらい疑問が数多く浮かんできたんです。ですが、古沢さんの脚本を読むたびに、五徳が優しい人物だったのかもしれないという新しい解釈がスッと入ってきて、『なるほどな』とふに落ちた部分がすごくあって。終わった今、最初に自分が考えていた五徳よりも、ずっとずっと人間味があって他者を思える人物になりました。それは現場の皆さんやスタッフさん、演出の皆さんに引き出してもらった感情でした。現場の皆さんに引き出していただく感覚を得られたのは、すごく大きな財産になりましたし、本当に初めての大河だったので感謝の気持ちでいっぱいです」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
久保史緒里(くぼ しおり)
2001年7月14日生まれ。宮城県出身。かに座。O型。16年9月、乃木坂46の3期生としてデビュー。21年、「クロシンリ 彼女が教える禁断の心理術」(関西テレビ)で連続ドラマ初主演。翌年11月には、映画「左様なら今晩は」で初主演を果たす。現在、ラジオ「乃木坂46のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)の2代目パーソナリティーを務める。また、ファースト写真集「交差点」が7月11日に発売予定。
【番組情報】
大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/K・H
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