「漫才やろうな」「漫才やりましょう」。結成19年の漫才師・ギャロップが「THE SECOND」初代王者に!【優勝会見リポート】2023/05/22
結成16年以上の漫才師による新たなお笑い賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」の最終決戦「グランプリファイナル」が5月20日に東京・台場のフジテレビにて行われ、吉本興業所属のコンビ・ギャロップ(林健、毛利大亮)が初代王者に輝いた。
グランプリファイナルに登場したのは、金属バット(小林圭輔、友保隼平)、マシンガンズ(滝沢秀一、西堀亮)、スピードワゴン(井戸田潤、小沢一敬)、三四郎(小宮浩信、相田周二)、ギャロップ、テンダラー(白川悟実、浜本広晃)、超新塾(イーグル溝神、タイガー福田、サンキュー安富、ブー藤原、アイクぬわら)、囲碁将棋(文田大介、根建太一)の8組。準決勝でマシンガンズVS三四郎、囲碁将棋VSギャロップの4組が激突した結果、決勝戦にはマシンガンズとギャロップが進出。先攻のマシンガンズは246点、後攻のギャロップは276点を獲得し、結成19年目のギャロップが大会を制した。
放送終了後、囲み取材に応じたギャロップ。これまでの戦いを振り返りながら、漫才への思いや、今後の展望などを力強く口にした。
テンダラー、囲碁将棋と対戦
――優勝おめでとうございます。今の率直なお気持ちを教えてください。
毛利 「まだ全然実感がないですね。ふわ~っとしてて。どれくらいで(実感が)湧いてくるのかが楽しみです」
林 「この瞬間、なんだか笑ってしまいそうな。『ギャロップですよ? 大丈夫ですか?』と。本当にこういう経験がないので、『本当に(カメラの)シャッター切ってます…?』みたいな気持ちです。実感は全然ないです」
――1回戦はテンダラーとの対戦。いかがでしたか?
毛利 「抽選会の時から、当たるのが一番嫌でした。ここを勝つことができたら、なんとかなるんじゃないかという思いはありました」
林 「吉本興業の先輩なので、決まった時からいろんな先輩に『テンダラーさんやん…』『よりによって…』『どえらいとこ入ったなぁ』と言われることが多くて。僕自身も思ってましたので、逆に『テンダラーさんに勝てたら優勝やな』という気持ちで戦わせていただきました」
――トーナメント組み合わせ抽選会では、「関西ダービー」という言葉も飛び出しました。
毛利 「“トレンドワードメーカーの毛利”なんで。でもあれは自然に言っちゃったんです。偶然の産物でした」
――準決勝では囲碁将棋と対戦。284点で同点の中、3点を付けた人数が多かったギャロップの勝利となりました。
林 「ノックアウトステージでラフ次元という後輩とも戦ってるんですけど、『どんだけ吉本の人と戦わなアカンねん』と。3連続やったんで。ラフ次元には1点差で勝ったので、梅村(賢太郎)くんに『ギャロップさんが優勝してくれたら、僕らは実質2位みたいなもんです』と言われたんですけど、囲碁将棋と同点だったので、ラフ次元が2位というのは幻想になりました。梅村くん、申し訳ない」
毛利 「ごめんね、梅」
林 「でも、本当にすり抜けて、すり抜けて。紙一重でした」
毛利 「囲碁将(囲碁将棋)とは絡むことがなくて。ただ『漫才がすごい』というのは昔からいろんな人から聞いていたんですよ。本当に強かったですね。戦えてよかったなと思います」
林 「囲碁将棋とは、同じ日の劇場の出番というのも1回か2回くらいしかなかったので。『どっかで知らぬ間に誰かが倒してくれてたらいいのに』という感覚でした」
決勝戦はマシンガンズと
――マシンガンズとの決勝戦はいかがでしたか。
毛利 「ネタを見させていただいて。『ホンマすげぇな』『すごいぞこの人ら』って、コンビで何回も言っちゃうくらい。見ないようにしようと思いましたけど、やっぱり見ちゃいました」
林 「めちゃくちゃシンプルに言うと、『面白いことを言うのが上手なおじさんたち』。先輩のことをこんなふうに言うのは失礼ですけど、最初から『ネタがない』『ネタが弱い』と言うわりには、ずっとウケはるなぁと。確かに僕も『ちょっと弱くなったな』と思ったんですけど、弱くなったのを逆手に取ってちゃんと笑いに変えていて、すごいなぁって。『これはちょっとできへんわ』っていうテクニックを見させていただいて、後半には『本当にないんだなぁ』と。それもすごいなって。なんであんなに面白いのに“勝てると思っていない”という前提でやってこられたのかとか、そういうのもいろいろ重なって、すごい方々だなと感じていました」
――133組の頂点に立った心境は?
毛利 「中途半端なところで終わるのが一番嫌やったので。優勝できてよかったなと思ってます」
――優勝賞金1000万円の使い道は決まっていますか?
林 「ねぇ!(笑)。自分たちに縁のない、『そんなん無理やわ』って時は好き勝手買いたいもん言うんですけど、いざ入るとねぇ、使わないでしょうね(笑)。これが大多数の日本人じゃないかなと。将来に不安を抱えてる人って多いんで。『THE SECOND』は老後のことも考えてくれとんやなって、今になって思います」
毛利 「それは正しいと思うんやけどさ、芸人ですから。ちょっとかぶくところも聞きたいんじゃない?」
林 「高級車的な?」
毛利 「(笑)。この決勝に出ると決まって、こういう質問をいただくこともあったんですけど、やっぱり漫才で恩返しできるような使い方をしたいなと思ってますね。『スーツでも作ろうか』という話も2人でしていたんですけど、まさか副賞でいただけるなんて」
林 「どっちみち買おうと思ってたものがもらえるなんて。最高です」
――今日の優勝は、どなたに報告したいですか?
林 「80歳になる母親が家で見ててくれたと思うんですけど、母親にこういう姿を見せるタイミングってもうないなって思ってたんですよ。今日、家出る時も『出られるだけでええやん』って送り出してもらって、それがすごくありがたかったので、母親に伝えたいです」
毛利 「結局、家族ですね。オカンもそうやし、最近あんまりオトンとしゃべれてなかったんで、これをきっかけにがっつり酒でも飲みに行けたらなと思います。あとは、この決勝に行くまで、周りの芸人さんや師匠方からむちゃくちゃ応援してもらったんですよ。皆さん一人一人にお礼を言いたいです」
林 「特に、大阪でくすぶってる芸人というか。面白いけどチャンスがない芸人さんにも伝えたいですし、その人たちも、ギャロップが優勝したことできっと色めき立ってくれてると思います」
勝因は「コンビでの会話の多さ」
――今回の勝因はどこにあると思いますか?
毛利 「コンビでの会話がすごく多くて、めちゃくちゃしゃべるんですよ。周りの芸人も『仲ええなぁ!』ってびっくりするくらい。相方がそういうリラックスできる空気を作ってくれたのもありますし、あとは楽しんでできたのがデカいかなと。2本目と3本目のネタは、急きょ変えたんです。相方が『変えよう』と言って」
林 「(2本目と3本目の)順番を逆にしたんです。囲碁将棋がネタ中に“パン”と結構言っていたので、パンが続くのはどうかなと」
毛利 「急きょネタを変えるのも、普段ならガチのけんかするんですけど、今日はリラックスできて。楽しんでできたのが勝因かなと思います」
林 「緊張によって口数が増えるという現象やったんですけど、相方がそういうふうに捉えてくれてたならよかったです」
毛利 「なんか嫌やな(笑)」
林 「リラックスさせようとかではなくて、緊張がすごかったので、口をちょっと動かしといた方がいいかなって。勝因か…。1回戦でテンダラーさんと当たって、いい意味で開き直れて。囲碁将棋に対しても、それくらいの気持ちでいかないと勝てないなと思って臨みました。勝因は、3本目も用意していたということですかね(笑)」
毛利 「そうやな(笑)」
林 「でも、3本目も結構悩んだんで。一か八かというネタではあったんですけど、選んでよかったです」
――この3本に決めた理由は?
毛利 「1本目は、僕らの中で強いネタ。ラスボス的な存在のテンダラーさんをつぶすためにはどうしようかというのを、相方としゃべって決めました。温存するという考えはなかったです」
林 「うん。温存したまま負ける可能性が高いので。強い順に出すしかないというか。ただ2本目、3本目はあんまり自分たちの中では順番がなかったので、囲碁将棋のネタは関係なく、ギリギリまで『どうする?』って2人で話していました」
――優勝が決まってからこの会見まで、周りの方からはどんな声を掛けられましたか?
林 「舞台上では、いろんな方から『おめでとう』と。番組の最後にMCの東野(幸治)さんに振ってもらったんですけど、頭が真っ白になってしまってるんで、普通のことを大声で言ってしまいました(笑)。松本(人志)さんからは『あそこは後ろを向かないと』と。本当におっしゃる通りで、『何をしてるんだ俺は! もう浮かれてるじゃないか』と自分を戒めて。同じような機会はもうないかもしれないですけど、今日のことを胸に、これからの芸人生活をやっていきたいなと思います」
毛利 「言われてない僕もピリッとしました。『ホンマやな』と思いました(笑)。僕は、本番前に喫煙所で、スピードワゴンの小沢さんと『このメンバーでツアーしたいですね』と話していて。その時に『優勝者が指揮取ってやってほしいよな』と話していたので、本番終了後に小沢さんから『お前だな』と言われました。『ちょっと考えます』と返しました」
林 「やれよ!」
コツコツ、マイペースに
――2018年に「M-1グランプリ」の決勝に進出。それから5年がたちますが、漫才との向き合い方の変化について教えてください。
林 「コロナがあってライブができない時期もあったので、ちょっとややこしい話になるんですが…。頻繫に単独ライブができるタイプでもないので、コツコツやってきました。こういう大会が始まるなんて全く思ってなかったですけど、新しいネタを作って、劇場にアピールをするというのを積み重ねるしかないかなと思っていました。プラス、漫才と違うところで、おのおのの趣味を生かすとか。漫才に関しては、マイペースに新ネタを下ろして、使えそうなネタは残して…という感じでやっていました。『M-1』に出ていた頃のようにはネタが浮かばないんですよ。年齢ですかね(笑)。“どう書いたら覚えやすいか”を重視していました(笑)。だからマシンガンズさんの紙を読むのはうらやましかったです。あとは、『しゃべくり漫才』と言われたらすごくうれしいので、極力そういう漫才を心掛けています」
――これから出演したい番組や、やりたい仕事についてお聞かせください。
毛利 「やっぱり漫才の番組に出たいですね。僕も『THE MANZAI』のバッジがほしいんで。あれやっぱね、うらやましいんですよ。後輩がどんどんもらってるんで。ネタをやり続けたいので、ネタ番組、漫才番組には出たいです」
林 「僕も全く同じです。漫才の番組に出たいですし、漫才の舞台に立ちたいです。あそこで後ろを向くこともできないような僕なんですけど、一通り出させていただいた後は、劇場で70歳くらいまで元気にやっていけたらいいなって。『おじいちゃん、まだ新ネタやってはるわ』とか言われながら。もしかしたら紙は読んでるかも分かんないですけど(笑)。そういうのができたらいいなと思いますね」
毛利 「年はいっても、新ネタはどんどん作りたいですね。漫才やろうな」
林 「漫才やりましょう」
【番組情報】
「フジテレビ開局65周年×吉本興業110周年 特別番組『THE SECOND~漫才トーナメント~』」
フジテレビ系
5月20日 土曜 午後7:00~11:10
取材・文・撮影/宮下毬菜(フジテレビ担当)
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