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「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】2023/04/26

「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】

 昨年4月、2日間で4公演の単独新ネタライブ「ななまつり 二〇二二」を開催したお笑いコンビ・ななまがり。4公演で新ネタ28本、幕間VTR20本、そしてゲストとの催し四つをゼロから作り出し、その準備の大変さから「二度とやるか!」と思ったという。

 しかし、今年も「ななまつり 二〇二三」の開催を決めた。さらに今回は東京のみならず、2人が学生時代を過ごし、ななまがりを結成した地でもある大阪でも2公演を実施する。

「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】

「やらんかったら負け」。

 自分たちを追い込み、独自のスタイルで突き進む森下直人さん、初瀬悠太さんのお二人に、今の思いを語ってもらった。

「ネタ数は誰にも負けない」

「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】

――昨年の「ななまつり 二〇二二」から1年。前回の取材ではその準備の大変さについて話していただきましたが、今年も「ななまつり 二〇二三」の開催を決めた理由を教えてください。

森下 「去年、賞レースで勝ち切れなかった。『キングオブコント』も『M-1グランプリ』もどちらも準決勝敗退という成績で、その未練がずっと残っていたのが大きいです。“賞レースで優勝する”ということを目標にしているので、もう、やれることはマックスでやろうと。『やるしかねぇ』という気持ちで開催を決めました」

初瀬 「これで今年『ななまつり』をやらんかったら、なんか去年より落ちた感じがするというか。すごいレールに乗ってしまった感じはありますね(笑)。自分たちを追い込んでるんですけど、そうもしないと『やらんかったら負け』って思っちゃうんで」

――お二人の中で、自然と「今年もやろう」という雰囲気になったのですか?

初瀬 「ちょっと悩みましたね。プロデューサーの方から声を掛けていただいたんですけど、『去年と同じ場所で、この日付で、今年も何かやりませんか』という形でのお誘いだったんです。だからいろんな使い方ができたと思うんですけど、でもほかにやりたいことが見つからなかったので、今年も『ななまつり』をやろうと」

森下 「そうですね。結局優勝しないともう、なんか…(苦笑)。『ななまつり』をやるにしても、『今年は全公演新ネタじゃなくてもいいんじゃないですか?』という打診もいただいたんですが、『それやったら(新ネタで)やるわ』って。しんどかったけど、去年できちゃったし…(笑)」

初瀬 「去年、新ネタを28本作ったんですけど、結構残ってるネタが多くて。捨てるネタがあまりなかったので、『意外といけるやん』って思ったんですよね。とにかく数作るのは僕らの強みやし、今年ももう一回やってみようと。ネタ数は誰にも負けない、そこが僕らの強みなので」

――初瀬さんの表情から、重荷を背負っている様子が伝わってきます。

初瀬 「めちゃくちゃしんどいですよ!(笑)」

森下 「正直、来年はやりたくないです(笑)。だからこそ、今年は優勝。優勝して、来年はもうちょっと自分たちが楽しい内容のライブを企画したいなと思ってますね」

初瀬 「今は、ちょっと修業に近くなっちゃってるんで(笑)」

森下 「ただ、ネタ作りハイにはなってきてるんで、そんなに苦しくはないですね。『何も思いつかない』ということがあんまりなくて。ありがたいことにお仕事もそれなりにあるので、時間があまりない中、集中して作れています。昔やったら1本作るのに1カ月かかることもあったんですけど、今は割とサクサク進めてます」

初瀬 「ずっとネタを作り続けているのが、ちゃんと筋肉になっている感じ。新ネタ作りの筋肉がどんどん発達している感覚ですね」

森下 「半年くらい新ネタ作らんくなったら、また衰えるとは思うんですけど。今はずっと肩温まってる感じがしますね」

「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】

――今年は東京での4公演に加えて、大阪でも2公演を開催されます。

初瀬 「プロデューサーの方が『大阪も場所取れました!』とおっしゃるので、僕らは従うのみというか…(苦笑)。でも大阪は元々活動していた場所でもあるので、大阪で単独ライブができるというのはうれしいし、ありがたいです」

森下 「ここ最近の単独ライブに関しては、そのプロデューサーの方に全部プロデュースしてもらってる感じがあります(笑)。『これやりましょう!』って言われたら、僕ら断らないんですよ」

初瀬 「めちゃくちゃお世話になっている方でもあるので、その方に背中押してもらったら、そりゃ僕ら『やりますよ!』って(笑)」

森下 「去年の『M-1』で僕ら準決勝までいけたのもあって、その方が『場所取ったんで、年明けにライブやりましょうよ!』って言ってくださったんですよ。本番当日まであと1カ月くらいしかなかったんですけど、漫才7本を披露する『ななまんざい』という初の漫才単独ライブをやろうと決めて。言われるがまま…(笑)」

――すごくストイックですよね。

初瀬 「ははは!(笑)。僕らの性格そのものはたぶんストイックじゃないんですけど、気がついたらストイックになってました。状況にストイックにされてます(笑)」

「本当はこっそりやりたかった(笑)」

「やらんかったら負け」。ななまがりが、新ネタ28本の単独ライブ「ななまつり」に込める覚悟【ロングインタビュー前編】

――本番まであと1カ月ほど。手応えはいかがですか?(取材は4月上旬に実施)

初瀬 「いい感じですね。ネタもできてきてますし。楽しみの方が強いかもしれないです。去年は例えば僕の父親が書いたネタをやるとか、そういう催しもあったんですけど、今年は完全にガチガチのネタ28本になりそうです。いいネタができてるなって実感もあるし、『間に合わない!』って感じでもないので、あとはクオリティーを上げていくだけですね」

森下 「去年の『ななまつり』では、最後に『後夜祭』も開催したんです。そこではお客さんのアンケートで上位だったネタのランキングを発表したんですけど、4公演のそれぞれ1位だったネタが、ほぼ本番直前に作ったネタやったんです。結構僕らっていつもそうで、もう足りるんだけど、まだ台本の締め切りまで数日あるな、最後に粘ってみるか、って作ったネタが一番良かったりするんです」

初瀬 「僕が結構せっかちなタイプで。『間に合わない!』ってなったらネタができづらいんですけど、『もう28本できてます。さぁ、ここからはこの28本よりいいネタ作ろう!』って時は、気持ちに余裕があるぶんいいネタができやすいというか」

森下 「まだめどがついてない時の初瀬、ホンマにイライラしてるんで。分かりやすいんですよ」

初瀬 「今のところ今年作ったネタがすでに28本くらいありそうなので、あとはどんどん更新していくだけというか。その作業は楽しいですね。『こっちの方がおもろない!?』とか言いながら」

――昨年、初の「ななまつり」を開催して、どんな反響がありましたか?

森下 「周りの芸人からは『単独で変なことしたんやろ?』とか『めっちゃネタ作ったんやろ?』って言ってもらえて、そういう印象を持ってもらえたんかなって。1個申し訳ないことしたなと思ったのは、今年の3月に、ゾフィーが新ネタ33本やる単独ライブをやったんですよ。『あれ、もしかして』と思ってゾフィーに会った時に上田(航平)に『ごめん、もしかして俺ら、数増やさせてない?』って聞いたら、『そうっすね』って。どうせなら誰よりも多く新ネタやりたいと思って調べたら、僕らの28本が出てきたらしいです(笑)」

初瀬 「僕らのせいで、新ネタを作らせてしまってる(笑)」

森下 「インフレを起こしてしまってる(笑)」

初瀬 「でも僕が逆の立場やったら、『もっとやろう』ってなっちゃう気持ちも分かるんですよ」

森下 「そうそう。自分たちのペースでうまいことやってる人も、『これじゃヤバいな、もっと作らな』って気持ちにさせちゃったり。うるとらブギーズの八木(崇)さんを『じゃあ俺もやらな』みたいな感情にさせちゃったりとか」

初瀬 「大阪の社員さんからも『ななまがりに影響されて、みんなめっちゃ新ネタ作ってるよ』って言われましたね。うれしいんですけど、僕らは賞レースで勝つためにやってるんで、周りも作り始めたらライバルが増えてしまう(笑)。全体のレベルがどんどん上がるのはいいことなんでしょうけど…」

森下 「本当はこっそりやりたかった(笑)」

 インタビュー後編はこちら:https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2175307

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【プロフィール】

ななまがり
森下直人(1986年5月20日生まれ、神奈川県横浜市出身)と、初瀬悠太(1986年4月5日生まれ、香川県高松市出身)が大阪芸術大学の落語研究寄席の会で出会い、2008年11月に結成。14年より、活動拠点を大阪から東京に。「キングオブコント2016」ファイナリスト。「R-1ぐらんぷり2020」ファイナリスト(森下)。昨年は「キングオブコント2022」、「M-1グランプリ2022」で準決勝進出。5月5日、6日の2日間、東京・北沢タウンホールと、5月28日、大阪・心斎橋パルコ SPACE14にて、単独ライブ「ななまつり 二〇二三」を開催する。

取材・文/宮下毬菜 撮影/尾崎篤志



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