大森南朋、演じる家康の叔父・酒井忠次のえびすくいに困惑!?「こんなに話題になるとは思っていなかった」2023/04/23
第15回(4月23日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)では、織田信長(岡田准一)から浅井・朝倉討伐の先陣を申し付けられた徳川家康(松本潤)の元に、浅井長政(大貫勇輔)から「信長を討ち取ろう」と呼び掛ける密書が届きました。家臣の中でも意見が分かれ、紛糾する徳川軍でしたが、信長を裏切るか否かの選択を迫られ、ギリギリのところで決断に至り、浅井・朝倉軍を撃破しました。
今回は、家康の叔父で徳川家臣団のリーダーでもある酒井忠次(左衛門尉)を演じる大森南朋さんに、忠次の人物像や特技の宴会芸・えびすくい、家臣団の仲良しエピソードなどを伺いました!
――今作の酒井忠次をどのように捉えていらっしゃいますか?
「最初に登場した時は30代前半でしたが、回数を重ねるごとに年も取り、今撮影しているのは50代。やっと自分の年齢に追いついてきました。だからと言って、年寄りくさい芝居にすることはないです。忠次は立派な武将で策士でもあり、面倒見がいい人物だと思っていますので、策士の部分が出ている時はビシッと演じて、おどける時はおどけ切るという振り分けをしています」
――ご自身と忠次の共通点はありますか?
「脚本の古沢(良太)さんの頭の中は分からないですが、すごく演じやすいです。僕に寄せてくれているのではないかと思うくらい。ただ、本当の歴史上の忠次は、もう少しちゃんとした人だったと思います(笑)。だけど、気を使って家臣や自分の部下の前でもえびすくいを披露してしまうので、相当気さくでいい人です。そのあたりは自分と似ている気がします」
――今や忠次といえば、えびすくいですよね。最初にえびすくいを踊ると聞いた時はいかがでしたか?
「嫌だなと思いました(笑)。そもそもこんなに話題になるとは思っていなかったです。僕は、あくまでもお芝居として、どう楽しくするか、盛り上げていくかを真面目に考えていたはずなのに、どんどん思っていたレールから外れていって、えびすくいの人みたいになっちゃいました(笑)。ちょっと困るなと思いながらも、子どもたちが喜んでくれているのを見ると、盛り上がるに越したことはないとも思っています」
――まねをしている子どももいる気がします。
「やっていただけると面白いですし、ありがたいです」
――えびすくいのパターンがいくつかあるようですが、その回ごとに工夫されているのでしょうか?
「基本的には監督やディレクターと一緒に歌詞を考えて、相談しながら作っています。実はえびすくいは4番ぐらいまであるんですが、まだ4番までやり切ったことはないんです。お稽古でやった時以来、踊っていませんし、4番までやって持つ世界観ではないですが(笑)。撮影ではいつも長めにカメラを回されて、ずっと踊らされているんです。こんなに使わないだろうなと思いながら踊っています(笑)」
――難しいところはありますか?
「難しいところはありませんが、踊る週の前週に歌詞が来ることがあるので、それを覚えるのがちょっと大変です。それに歌は全員が歌えるわけじゃないんです。僕以外は『えびすくい』の部分しか歌えないから、その時に音量の上げ下げをお願いすることはあります」
――第14回(4月16日放送)では、信長の前で忠次のえびすくいと木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉/ムロツヨシ)のカニすくい対決が披露されていましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
「ふざけているわけではなく、大真面目なんです。忠次がえびすくいをしていたら、藤吉郎がカニの扮装(ふんそう)で出てくるんです。ちょっと敵対心を燃やして。結構ちゃんとしたカニっぽい扮装でしたね」
――いろんな場所で披露していますが、信長の前はやはり違うものですか?
「違います。信長は怖いので、少し緊張感を持って。こっちは三河育ちの田舎者ですから、これさえやればウケる、絶対大丈夫だと思っているんですけど、全然ウケていない。そうなったら全力で行くしかないですから。終わった後、岡田くんが『よかったです』と言ってくれて、それでちょっと救われました(笑)」
――教育係的な石川数正(松重豊)に対して、忠次は優しく見守る立ち位置です。これまで忠次は殿(家康)の若さゆえの危うさや甘さを心配していましたが、撮影が進んだ今、殿の成長を感じられますか?
「立場もどんどん変わっていき、着実に立派になっているのを感じます。そうなってほしかった忠次の気持ちは今も変わらず。ただ、たまに危ういご決断をされる時には、ちょっと強い口調になることも。家臣団はみんな、殿の成長を支えている1人だという意識があると思います。殿の成長なのか、松本くんの成長なのか分からないですけど(笑)」
――演じる松本さんの成長や進化も感じられますか?
「本人が悩んだところもいっぱいあると思うけど、そこを1個ずつクリアして確実に成長していると思います。それは見ていてすごく楽しいですし、応援しています」
――家臣団のリーダーとして、周りの仲間たちの成長も感じていらっしゃいますか?
「特に本多平八郎(山田裕貴)や榊原小平太(杉野遥亮)、そして来たばかりの万千代(板垣李光人)は、若くてかわいくて身軽だなと(笑)。若者たちがどんどん変わっていって、軍議にもどんどん口を出してくるようになってきたので、頼もしいです」
――忠次は家臣団のまとめ役ですが、現場でもまとめ役をされているんですか。
「そんなことはないです。殿は人をまとめる力がありますし、年長者である松重さんが冷静な意見を出されて、お芝居に関してもいろいろアドバイスをしていただいて。僕はみんなとイチャイチャしているだけです(笑)」
――どなたとイチャイチャされているんですか?(笑)。
「鳥居元忠役の音尾(琢真)くんと(笑)。ずっとしゃべって、うっとうしくないかなと気にしております。最初の頃は、本多忠真役の波岡(一喜)くんもいて、僕や音尾くん、松重さんもベラベラしゃべっていて、山田(裕貴)くんが引いているんじゃないかと心配していたんですが、大丈夫でした(笑)」
――どんな話で盛り上がるのでしょうか?
「殿、松重さん、音尾くん、山田くんの4人はカメラが好きで、ずっとカメラの話をしています。僕は入っていけなくて、心の中で『家臣団カメラ同好会』と名前を付けているんですが、まだ誰にも言っていないです(笑)。ほかには、鎧(よろい)疲れをいかにケアしているかという話をしています」
――やはり、負担になりますか?
「1日中、身に着けている時は負担だと思います。休憩のたびに外せるんですが、相当きついです。みんなも結構つらいと思う。人によって、鎧の重みが全然違うんです。七之助(平岩新吉)を演じる岡部(大)くんがちょっと偉くなって、僕らと同じ鎧を着け始めたら、『重いですね!』と。『正直、最初の頃はおじさんたちだから、すぐ重いと言うんだと思っていたんですけど、本当に重いですね! すみませんでした!』と言っていました(笑)。それだけではなく、お芝居の今後の展開について、僕らというよりも殿がどうなっていくかということについて、よく話したりもします」
――第17回(5月7日放送)の三方ヶ原の戦いの前には、妻である登与(猫背椿)とのシーンがありますが、振り返っていかがですか?
「三方ヶ原の戦は大戦なので、家臣団の代表として、命懸けの決戦に行く覚悟を表すちょっと切ないシーンです。そういう心情を表面的に出すというよりも、心の中でそう思っているように見えたらいいなと思った記憶があります。先輩(猫背)も手練れなので、いいリアクションをしていただきました」
――登与とのシーンを台本でご覧になった時、大森さんご自身はどのように感じましたか?
「戦国時代だからハグはしないという概念を取っ払って取り組んでいました。そこに疑念を持たなかったけれど、確かに戦国時代は女性とハグすることはなさそうです。殿はやっていましたが(笑)。僕は完全に武装していたので、刀が邪魔でした」
――忠次は古参の家臣として数正と一緒にいる場面が多いですが、数正を演じる松重さんとの共演で印象的だったシーンはありますか。
「第3回(1月22日放送)で殿に今川の元を離れましょうと、数正と一緒に深く土下座して、自分の命を懸けてでも今川へは行かせないという2人の思いが通じた場面です。松重さんとは何度も共演させていただいているし、付き合いもだいぶ古いので、一緒にやらせてもらえたのはすごくうれしかったです。あのやりとりやリズムは『さすが先輩』と思いました」
――松本さんとの印象的なシーンも教えていただきたいです。
「戦の軍議みたいな堅いシーンではなく、たまにバカバカしい楽しいシーンがあるんです。そういう時はみんな楽しそうで、僕も楽しいです。第7回(2月19日放送)の於大の方(松嶋菜々子)とお方様(瀬名/有村架純)がいるところにナスを持って行ったりするところとか。もう一つは、第15回で信長と浅井のどちらにつくかを決める際、浅井につきたい理由が、『浅井殿が好きだからじゃ!』と言う家康に、忠次が激怒するシーンです。そこは殿にちゃんと説教ができてすごく気持ちよかったです(笑)。忠次としては、殿の道をちゃんと正す、何回かに1回しか出てこない貴重なシーンです」
――三方ヶ原の戦を経て、これからどんどん状況が変わっていきますが、どんなところを楽しみにしてほしいですか?
「家康がどうなっていくのかですね。史実をベースにしながらも、新説も積極的に取り入れ、一般的に言われている徳川家康の歴史とは若干違う角度で物語を組み立てていく古沢さんの脚本は見事です。新しい台本をもらうたびに楽しいです。固まった概念をどんどん壊してくれる脚本なので、そういうところを歴史と照らし合わせて、こう描いたんだと見つけるのも面白いんじゃないでしょうか」
――ありがとうございました!
【プロフィール】
大森南朋(おおもり なお)
1972年2月19日生まれ。東京都出身。うお座。2007年、「ハゲタカ」(NHK総合)で主役を演じる。以降、10年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で武市半平太役、22年のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」では主人公の父・比嘉賢三を好演するなど、映画やドラマ、舞台で幅広く活躍。現在公開中の映画「シン・仮面ライダー」では、クモオーグの声を務めている。また、今秋公開の北野武監督作品「首」にも出演している。
【番組情報】
大河ドラマ「どうする家康」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BS4K
午後0:15~1:00ほか
NHK BSプレミアム
日曜 午後6:00~6:45
NHK担当/K・H
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