関水渚主演「#who am I」スタッフが語るドラマが出来上がるまで。「ゴールデンだったらできないエグみなどを出して攻めたつもり。最後まで楽しんで」2023/03/21
関水渚さん主演で描く“エグすぎる”考察型SNSサスペンスドラマ「#who am I」(フジテレビほか)が、本日3月21日に最終回を迎える。
本作でプロデュースを務める宮﨑暖さん、演出担当の柳沢凌介さん、そして脚本を担う谷碧仁さんに本作が出来上がるまでの経緯や、主人公に関水渚さんを選んだ理由などをたっぷり伺った。
――企画の始まりを伺えますでしょうか。
宮﨑 「フジテレビとして、『火曜ACTION!』という枠を若手にやらせたいという思いがあり、企画のコンペが実施されました。そこに柳沢監督が『記憶喪失の女の子が、自分のSNSのアカウントを使って何があったか探っていく話』という企画書を出しまして。それが通って、監督が僕のところに来て一緒にやろうという話になりました。今まで何回か一緒にやっているので、『いいね、面白そう』となりタッグを組んだ形です。内容をちょこちょこ話す中で、結構ダークな話になっていくなというところから、絶対いつか一緒にやりたいなと思っていた谷さんにお願いしました」
――SNSを題材にしようと思ったきっかけを教えてください。
柳沢 「5、6年前のSNSって、自己紹介というか履歴書みたいな…そのくらい離れたものだったのが、ここ数年、べったり体に張り付いているものになったなというのがまずベースとしてあって。初めましての人を知る時にその人のSNSを見ると、『こういう人なんだ』という印象を抱いちゃうこともあると思うんですけど、実際会うと全然そんなことないな、勝手にその人のことを分かった気になっちゃっていたなと思ったところが発想の種でした。SNSって、もう一種の外見なんじゃないかなと思っていて。でも、それってちょっと(自分の中で)操作しているものでもあるだろうなと。それで、発信している人が記憶をなくした後に自分のSNSを見てみたら、そこに本物の自分はいないかもしれないなというところからスタートしました」
――谷さんは企画書からどんなふうに発想を広げていったのでしょうか。
谷 「最初はムズって思いました(笑)。でも、3行のログラインにすごくひかれましたし、面白そうだなという印象を受けました。ただ、視聴者ではないので、これを作るとなるとどこからどうしよう…みたいな。最初の打ち合わせは、柳沢さんと宮﨑さんの話を聞いて、1回持ち帰りました。どこから攻めていこうかなと。本当に難しいなと思いましたね」
――実際に、SNS使用者に取材をされたりは…。
谷 「TikTok、Instagram、Twitterを使っている人たちに、今、何が行われていて、何が古いのか、何が新しいのかを聞き回りました。それで、実際に困っていることや何に怖がっているかとか、ちょっと深いところまで取材を重ねて、それを脚本に落とし込んだ感じです」
――取材した中で、驚いたことや初めて知ったことなどがあれば教えてください。
谷 「僕の中では“いいね”の数が大事で、どうやって稼ぐかというところで止まっていたんですけど、コンテンツによっては“いいね”の数は度外視で、それよりも再生回数をどう稼ぐかとか、どう差別化されるかみたいな…いつの間にかそういうところに変わっていたところが驚きましたね。案件をもらったりするためには、“いいね”の数じゃなくフォロワーの数とかの方が今は大事だから、フォロワー数をちゃんと担保していれば仕事は継続的にあるらしく。瞬間的に評価されることではなく、継続的にあなたがあなたでいるということのブランディングというか、そこがすごく意識されていると聞きました。『これしんどいだろうな…』って思いましたね」
宮﨑 「SNSが悪いんじゃなくて、その道具を使う人間の使い方の問題だっていうところにちゃんとテーマを持っていきたいよね、という話をしながら企画を進めていきました。おしゃれをするのもその人の自由だし、どう見せたいかっていうのも自由だよねって。だから、決してSNSを悪く描いているわけではなくて、それを使っている人間の悲しさとか、寂しさみたいなところに落ち着けていこうみたいな話をずっとしていました」
――主演に関水渚さんを選ばれた理由をお聞かせいただけますか。
宮﨑 「企画段階で監督と、関水さんがいいなという話になっていたんです。キャッチコピーに“エグすぎる”とつけているくらいかなりハードな内容になるので、真摯(しんし)に向き合っていただける方を探そうっていうところから、関水さんにと。もともと、僕がドラマ『元彼の遺言状』(2022年/同系)という作品でご一緒した際に、すごく頑張ってくれる方だなという印象を受けたのと、作品のテイスト的にけなげに見える方…茜というキャラクターが嫌みに取られないようなキャラクターにしたいっていう思いと、健康的な美しさ、はかなさを兼ね備えている方だなと思い、関水さんにお願いしました」
――脚本ができる前に、関水さんに決めた感じでしょうか。
宮﨑 「そうですね、関水さんにお願いすることを決めた状態でスタートしました」
――脚本の中で、関水さんのこんな部分を取り入れましたみたいな部分はありますか。
谷 「全くないです(笑)。制限されてしまうというのもあって、僕は当て書きで書けないというか…女優さんや俳優さんをイメージして書くっていうのが苦手で。キャラクターは3人で『こんな人間かな』としゃべりながら作っていきました」
――物語を作る上で、重点を置いたポイントがあれば教えてください。
谷 「監督と宮﨑くんとお話していた時に、普段日常で隣にいるような人の、僕たちには見せない顔の部分を書きたいねっていう話になりました。茜が記憶喪失になる前はどういう人間だったのかというところが、一番の見どころにはなるのかなと思いますね」
――実際に撮影してみて、印象的だったシーンはどこでしょうか。
柳沢 「記憶喪失の主人公が自分のことを知っていく中で、そんなにいい人間じゃなかった…と分かっていくんですけど、あるシーンで主人公が謝るんですね。でも、記憶消失だから、自分がしたことがよく分かっていない…でも謝らなきゃいけない。その矛盾している時の関水さんの複雑な感情が、声色や表情に現れていて。それを見た時に関水さんでよかったなって思いましたね」
――そのシーンに関して、何か打ち合わせはされたのでしょうか。
柳沢 「打ち合わせはしなかったです。台本通りに1回やってみましょうとなって、やってみたらぽろっと出てきたので、それでいきましょう!となりました」
――深夜の放送だからこそ挑戦できた部分も多いかと思います。
宮﨑 「もし、これをゴールデンタイムでやるとしたら、もっともっと分かりやすくしなきゃいけなかったなと思います。でも、今回はゴールデンだったらできないエグみがあると思うし、リアリティーさだったり、かなり強烈なセリフを出したりして僕らは攻めたつもりです。そこも最後まで楽しみにしてほしいなと思います」
【番組情報】
火曜ACTION!「#who am I」
フジテレビほか
火曜 深夜0:35~1:35
取材・文・撮影/Y・O(フジテレビ担当)
キーワード
この記事をシェアする