「ゼンカイジャー」「ドンブラザーズ」の現場を経て生まれた“芝居への余裕”――駒木根葵汰が振り返る「スーパー戦隊シリーズ」での2年間とは2023/02/21
2月26日に最終回を迎える「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(テレビ朝日系)。桃太郎をモチーフにした「スーパー戦隊シリーズ」最新作は、戦闘時に戦隊全員がそろわないことがあったり、終盤に入っても新キャラクターが登場したりと、その斬新さがこれまでの作品とは一線を画している。
その中でひときわ謎めいた存在なのが、駒木根葵汰さん演じる「喫茶どんぶら」のマスター・五色田介人だ。2021〜22年に放送された「機界戦隊ゼンカイジャー」でも同名の人物が登場したが、「ドンブラザーズ」の介人は口数が少なく、とにかく謎が多い。駒木根さんの2年連続の「スーパー戦隊シリーズ」出演も、「ドンブラザーズ」の制作発表会見で大きな話題となった。
そんな駒木根さんは、現在放送中のドラマ「星降る夜に」(同系)にも出演中。ピンク色の髪で、添い寝店の指名No.1“添い寝士”として働くチャーリーこと犬山正憲を演じている。2年間の“戦隊”の現場を経て、新しい現場で今何を感じているのか。駒木根さんに「ゼンカイジャー」と「ドンブラザーズ」への思い、そして「星降る夜に」の現場の魅力について語ってもらった。
――2年連続の「スーパー戦隊シリーズ」作品への出演はかなり珍しかったと思いますが、「ゼンカイジャー」から「ドンブラザーズ」へ出演すると聞いた時は、率直にどう思われましたか?
「当時は2年連続で出演するということが珍しいなんてことも分からずに、『2年目か』と考えながらも、こちらからも『ぜひやらせてください』とお願いしました。でも、前例があまりないということを後々聞いて、そういうことって僕自身、結構好きで。男のロマンではないですけど、誰もやったことのないことをやってみたいので、断るつもりもあまりなかったです。『面白そうなことに頭から突っ込んでいけ』という感じのモチベーションでいるので、これからもどんどん突っ込んでいきたいなとは思っています。もう東映さんとテレビ朝日さんにはこれからも一生お世話になっていこうかなと思っているので(笑)、よろしくお願いします!」
――「ゼンカイジャー」「ドンブラザーズ」ともに同じ五色田介人を演じられていましたが、やりやすかったと感じたのはどちらでしょう?
「正直に言うと、最初はどちらも演じやすかったんです。『ゼンカイジャー』の時の介人も演じやすかったですし、『ドンブラザーズ』の介人もやりやすかったです。でも、今となってはマスターの方が全然楽ですね(笑)。やっぱり、(『ゼンカイジャー』の)介人はテンションがとにかく高いのもあって、酸欠になりそうでした」
――「ドンブラザーズ」では、何か起こるたびに発する「あるよ」というセリフが印象的でした。「もうすぐ聞けなくなるのか」という視聴者からの声もありますが、あのセリフは監督と何か話し合ったりされましたか?
「監督からは“『HERO』(フジテレビ系)のマスター(田中要次)のイメージだ”と言われたんです(笑)。最初の方は『あるよ』とか『いいよ』とセリフがちゃんとあったんですけど、だんだんそのセリフがなくなってきて。言わない方がいいのかなと思ったんですけど『別に言ってもいいか』と思って、いろいろ注文されたら『あるよ』とか『いいよ』と、その都度言うようにしていました。台本に沿って言っていたら、たぶんもっと少なかったのかなと思います」
――ドン47話では、ソノザ(タカハシシンノスケ)からの「何者なんだ?」という質問に「ただ者ではない」と返答したことがSNSでも話題になっていました。あのセリフについてはどう感じましたか?
「僕から言わせてもらうと、逃げですよね(笑)。正体を明かさないための逃げというか。でも、きっと視聴者の質問に対する答えがあの答えだったんでしょうね」
――残り3話でその答えなのかとびっくりしました(笑)。演じていてモヤモヤすることはありませんでしたか?
「もちろん、物語の中盤ぐらいまでは『これ最後どうなるんだろう?』とすごくモヤモヤしていました。撮影のたびにいろいろな人に聞きましたし、(脚本を手掛ける)井上敏樹先生とお会いする機会もあって、そこで聞いても『お前が知ってどうすんだよ(笑)』と言われて、『まぁそうか』みたいな感じで。最後の最後で『ただ者ではない』という正体だったんですけどね」
――今お話に上がった井上さんが、「ドンブラザーズ」の脚本を全編担当されています。どんなところに井上さんの脚本の魅力を感じていますか?
「正直、僕らの脳みそでは台本を見ただけでイメージもつかないところがたくさんあって、そういったところを監督が具現化していく。脚本を読んだだけで満足せず、放送も楽しみになるようなところですね。あとは、台本に対してしっかりと悩みが持てるというか、『これは何なんだろう? この意味は何だろう?』と1回見て満足せずに何回も悩まされる台本だと思うので、そこが魅力的なのかなと思います」
――疑問や悩みが生まれた時は、現場で監督とも相談しながら撮影に臨まれていたのでしょうか?
「最初はずっとそういう感じでした。『すみません、ここ分からないんですけど…』って聞いたら『ごめん、俺も分かんない』と言われて、『ですよね、とりあえずやってみます』となって。途中からは『もういいや、考えても無駄だ』という発想に至りました(笑)。感じて考えたものを素直にぶつける感じで、もう“Don’t think”ですね」
――「ドンブラザーズ」では「喫茶どんぶら」のマスターとして桃井タロウ(樋口幸平)らを見守ってきましたが、駒木根さんから見て、作品としての「ドンブラザーズ」の魅力、そして「ドンブラザーズ」5人の魅力を教えてください。
「5人の魅力から言わせてもらうと、とにかく仲がいい。『ゼンカイジャー』の時もすごく仲が良かったんですけど、僕らの時は同世代というのがあったんです。でも、『ドンブラザーズ』って、こはくちゃん(志田こはく)が18歳で、ふみくん(鈴木浩文)が34歳だけど、あんなに仲がいいのはすごいなって。“令和感”というか、こはくちゃんの年を気にしない立ち振る舞いももちろんすごいですし、ふみくんも年下に一切気を使わせない立ち振る舞いがすごいなと思います。みんなすごくいいテンションでやっているなと思いますね。作品の魅力は『何これ…』みたいな、ぶん殴られたような気持ちになるというか(笑)。これは褒め言葉なんですけど、考えていた自分がばかみたいに思えてしまうんです。もちろん考えることもたくさんありますし、シリアスな場面も多いと思うけど、それでもふたを開けてみたら『なんじゃこれ』みたいなお話なので(笑)。そういう気持ちの裏返しの早さと、『なんだこれ』と思わせる話が僕の『ドンブラザーズ』の好きなポイントですね」
――「ゼンカイジャー」を含めたこれまでの45作品とは全く違う系統ですが、ある意味、これが今後の「スーパー戦隊シリーズ」の新しい形になっていくのかなとも思います。
「いや〜…そうなると思うんですけど、そう思いたくもないんですよね。なんて言えばいいんだろう…もちろん面白い作品だとは思いますし、自分もやっていてよかったと思うんですけど、すごく“闘いたくなる戦隊”というか。脚本に対しても、もちろん、ああやってガツガツ来られると反論したくなります(笑)。視聴者と対話するわけではないけど、バーっと言われたものに作品でしっかり返すことができている作品だなと思います。『ドンブラザーズ』は唯一無二じゃないですかね(笑)」
――「ドンブラザーズ」が無事クランクアップして、現在は「星降る夜に」に出演されていますが、演じるチャーリーは髪がピンクだったりと個性的な役ですね。髪色を変えたことで気持ちの変化というのはありましたか?
「外を歩くのがちょっと嫌になりました(笑)。嫌になるというか、目立つので、友達と買い物に行った時もパッと振り返られたりするんです。でも、ピンクにしたことによって、いつもと違うお洋服を楽しめるようになりました。帽子とかもたくさん集めるようになりましたし、撮影でも、黒髪だったらしないようなアイメークをしたりして、そういったところはすごく楽しめているなという実感はあります」
――私生活にも影響がありそうですね。
「ありますね。髪色が移らないようにタオルとかも白だったのをグレーや紺色に変えたり、枕カバーも買い変えたり、布団のシーツも白からブラウンにしたり。身の回りのものも変わりました」
――ドラマを見ていると、「イェイイェイウォウウォウ」というチャーリーの登場にも「マロニエ産婦人科医院」の人たちが温かく迎えているなと感じました。「星降る夜に」の撮影現場はどのような雰囲気ですか?
「(キッパリと)めちゃくちゃいいです!! 『ゼンカイジャー』を1年間やっていた時も、『ドンブラザーズ』と並行してほかの作品をやっていた時もそうですけど、目の前のことに追われる毎日だったので、逆にすごく余裕があって落ち着いた現場というか。そういうのがすごく新鮮で『なんて穏やかな現場なんだ!』って。すごくいいテンションで仕事できていますね。吉高由里子さんや光石研さん、ディーン・フジオカさんもすごく温かい人たちばかりなので、最高です」
――「スーパー戦隊シリーズ」の2年があってからの今回の現場になりますが、戦隊の現場を経てよかったなと感じることはありますか?
「技術さんのことを知ることができたのが大きかったなと思います。例えば、録音部さんだったり、撮影部さんや照明部さんだったり。1年、2年やっていると皆さんの動きが分かってくるので、そういうスタッフさんたちの動きに合わせて、僕らの立ち位置を変えたりすることも多くて、周りを見ることができるようになったなと思います」
――周りを見る余裕もだんだんと出てきましたか?
「そうですね、やっぱりそれがすごく大きいです。例えば、技術さんたちが直している待ちの時間でも、『あ、今直しているんだな』と考えられて、『レンズチェンジして今このぐらいの寄りだな』というのもなんとなく分かるようになってきて。僕らはあまり知らない方がいいとは思うんですけど(笑)、でもそういうことを知っていると、待ち時間でも『次のお芝居はどうしようか』と考える時間にもできますし、そういう一つ一つを知ることによって自分のお芝居に対しても余裕が生まれてくるので、本当にこの2年はいい経験をさせてもらったと思います」
――最後に、今後挑戦してみたい役や作品ジャンルを教えてください。
「やってみたい役か…めちゃくちゃ悪い役をやってみたいですね。2年間ヒーローをやらせてもらって、今やっている役もポップな役なので、もうちょっと闇に落ちた役をやってみたいです。あと、今ピンクにして髪の毛も傷んでいるので、次は坊主にしたいなと思っていて(笑)。でも坊主って仕事柄なかなかできないので、戦争ものの作品だったり時代劇が来たらうれしいですね」
【プロフィール】
駒木根葵汰(こまぎね きいた)
2000年1月30日生まれ。茨城県出身。高校時代に始めたInstagramをきっかけにスカウトされ芸能界入り。映画「ジオラマボーイ・パノラマガール」(20年)や、「NO CALL NO LIFE」(21年)に参加した後、21年からスーパー戦隊シリーズ「機界戦隊ゼンカイジャー」(テレビ朝日系)の主人公・五色田介人役に抜てきされた。22年からは同名の役で「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」に出演。その後、「探偵が早すぎる~春のトリック返し祭り」(日本テレビ系)、「クロサギ」(TBS系)、「差出人は、誰ですか?」(TBS)、「商店街のピアニスト」(BS松竹東急)などに出演。出演する「映画ネメシス 黄金螺旋の謎」が3月31日に公開予定。
【番組情報】
「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」
テレビ朝日系
日曜 午前9:30〜10:00
「星降る夜に」
テレビ朝日系
火曜 午後9:00〜9:54
取材・文/平川秋胡(テレビ朝日担当) 撮影/蓮尾美智子
衣装/DIESEL、Habie
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